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君は相撲を愛しているか

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第21話

◆第21話「ドスコイ勝負」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ジンバとズルテンにより、とある寺の奉納土俵に封じられていたスモウボーマが大復活し、逃げ惑うサッカー部員を強制的にまわし姿にする久々のトンデモ路線で、千切っては投げ千切っては投げの大暴れ。
 駆け付けたターボレンジャーも、バイクアタックを弾き返された上に必殺まわし飛ばしにより相撲時空に飲み込まれると次々と投げ飛ばされていき、ターボレンジャー相撲に完敗(笑)
 ところが相撲ボーマは相撲をする事しか頭になく、せっかく甦らせた暴魔獣をコントールし損ねたジンバとズルテンは、大帝様から3ヶ月減俸を言い渡されて大ダメージ。
 相撲ボーマの暴走は、二万年前には付けていなかった化粧まわしが原因に違いない、とジンバが見定める一方、一連の事件を目撃した山口先生は、相撲には相撲で立ち向かえ、と流星の肉体に目を付けていた。
 「こう見えても私、相撲にはうるさいのよ。コーチしてあげます。さあ、脱いで」
 「やめてください! 女性の前で肌をさらすなんて、僕の美学に反します」
 流星剣は破られ、リンゴは食べられず、どういう顔で出てくるのかと思われた流星はキザ路線は堅守して半裸を回避し、肉体美を自慢げに見せつける方向に行かずにホッとしたような残念だったような……とりあえず、学校には割と普通に来ているようです(笑)
 「なに言ってるの。相撲は、男と男が、裸でぶつかり合う、最も男らしいスポーツよ!」
 「裸ん坊ならお似合いの奴が居ますよ。ここにね」
 流星は盗み聞きしていた力たちを巻き込むと、大地をふん捕まえて秒でまわしを履かせ……いったい画面の外で何があったのか……。
 高笑いしながら立ち去る事で流星がなんとか格を保っていた頃、ただ一心に相撲を取りたいだけの相撲ボーマは、海を見つめて涙を流していた。
 「この世にはもう相撲を取る奴は居ないのか……相撲を取る奴は」
 行こう、両国!
 山口先生から逃げ回っていた大地はそんな相撲ボーマと遭遇して奇襲の足取りで勝利するが、相撲ボーマはおもむろに地面に土俵を描くと改めて仕切り直し。投げ飛ばされるごとに相撲本能に火が付いていく大地と暴魔獣の間には、いつしか相撲を通じた奇妙な友情が芽生え、二万年前、持ち前の怪力にものを言わせて暴れ回っていた相撲ボーマが、ラキア親方に敗れて化粧まわしを与えられ、真の相撲道に目覚めていてた過去が明かされる。
 地元の力自慢をスカウトして角界に入らせるのが妙なリアリティですが、ラキアの立ち位置はどんどん、偉大な聖獣というか、伝説の大親になっていきます。
 ラブ&スモウ&ピース!
 2万年の時を超えた相撲への愛が、人間と暴魔百族の垣根を越えて世界を真の平和へ導こうとしたその時、不意を打ってジンバが化粧まわしを破壊するや、相撲ボーマを即座に爆殺。すかさずズルテンが巨大化すると、愛を忘れた哀しい暴魔は形相を変えて暴れ出し、コンビナートを襲撃し始めてしまう!
 「待ってくれ! 俺にはあいつを殺すなんて出来ない! あいつは相撲を取りたかっただけなんだ! 相撲が好きなだけじゃないか!」
 「でもあんなになってしまったらもうどうする事もできないよ!」
 苦悩する大地はスモウパワーで妙案を閃き、まわしを締めたターボロボで巨大な土俵を描く事で相撲ボーマの相撲本能を刺激(黒がコックピットのセンターなのがおいしい)。山口先生(変身時はちょうど気絶)の行司により巨大相撲対決がスタートし、壮絶な死闘の末、遂にターボロボの上手投げが炸裂する。
 「横綱ターボロボ! ばんざーーーい!」
 全力で相撲を取った末の敗北により、かつてラキアに教えられた相撲への愛を取り戻した相撲ボーマは、此の世への無念を抱える事なくターボロボを讃え、土俵に倒れて大爆死。
 「さらばだ、相撲ボーマ」
 結末は相撲ボーマの爆死なのですが、ターボロボで斬り(撃ち)殺すのではなく、真っ正面から相撲で勝負する事で、たとえ着地点は同じでも「爆殺」ではなく「鎮魂」に巧みにスライド。予告映像で相撲をするターボロボを見た時はどうなる事かと思いましたが、神事をもって悪鬼の怨念を鎮め、「愛を知らない哀しい暴魔にはるかな眠りの旅を捧げる」『ターボレンジャー』の文脈で処理してみせたのは、お見事。
 別会社の公式配信『ウルトラマン80』と相撲ネタが被る(解決法も重なる)というまさかの事態でしたが、曽田脚本としては、「さあ! 野球やろうぜ!!」(『電撃戦隊チェンジマン』第38話)の変奏曲ともいえ、やはり今作、根っこの意識は妖怪退治ものなのでは。
 ちなみに、『80』相撲回の予告で連呼されていた千代の富士は、1980年に幕内上位に定着すると関脇まで昇進、翌81年には幕内初優勝を果たすと横綱に上り詰め、ウルフフィーバー到来。1988年には53連勝を達成すると、今作放映の1989年には国民栄誉賞を受賞して、1991年に引退する事となり、くしくも『80』と『ターボレンジャー』で、角界における「千代の富士時代」の幕開けから現役晩年までと重なる奇縁の相撲回でありました。
 次回――EDテーマになぞらえたサブタイトルで、力vsヤミマル! これは期待。