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翔び発つ空を喪失した鳥

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第22話

◆第22話「青春ロード!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「どいつもこいつも腰抜けばかり。もう少しマシな奴は居ないのか」
 「おまえいったい、何者?!」
 「――街道の流れ星。その名も流星光」
 いつの間にか職業を変えていた流星はバイク乗りにバトルをふっかけて憂さ晴らしをしており、学生帽のままバイクにまたがっていたら面白かったですが、さすがにヘルメット着用していました。
 ターボレンジャーへの挑発に違いないと流星に立ち向かおうとする力だが、タイミング悪く太宰邸に乗り込んできた山口先生(多分、学校の近くに住んでいる不審な妖精おじさんについて父兄から問い合わせが入った)が、力を焚き付けていた太宰博士につかつかと近寄るや、全力の平手打ち。
 「何をするんですか?!」
 「貴方こそなんですか! まともな大人なら止めるのが本当でしょ?!」
 ごもっともです!
 「そもそも貴方がいけないんですよ。いい歳をして、カーマニアだなんて。あなた達、これ以上、こんな人と付き合っちゃいけませんからね」
 否定し辛い!
 室内でバイクを磨く太宰博士のカーマニア趣味が台詞で明言され、博士を一方的にやりこめた山口先生は、力からバイクのキーを取り上げると、流星は自分が補導すると宣言。
 他人の家に乗り込んできて家主に暴力を振るい人格を否定し生徒から私物を奪い取るという横暴極まりない素っ頓狂ぶりですが、相手が太宰博士なので並べると正気寄りに見えてしまう戦隊マジック(笑)
 仮にこの二人が親しくお付き合いを始めた場合、中間に落としどころが生まれるのか、山口先生がより狂気に引きずられてしまうのかが、不安になってきます。
 その頃、街道の流れ星はバイクで徒歩の学生を追い回し、脳細胞のハカイダー化が深刻になっていた。
 俺は! 正統派のライバルポジション! と間違った方法で自分を納得させようとする流星の前に、身を挺して立ちはだかったのは山口先生。
 「……俺はもう都立武蔵野学園高校の生徒じゃないんですよ」
 ……あ、れ。
 やはり敗北後も学校に居座るのは気まずかったのか、流星は既に転校済みである事が明らかになり、前回が最後の出席だったのか、前回は高速戦隊をストーキングしていたところを山口先生に捕まっただけだったのか(笑)
 「たとえ一日でも、私のクラスに入った子は、私の教え子よ」
 「ふん、泣かせる台詞だな」
 流星の行為を、あくまで無軌道な若者の暴走だと捉えている山口先生は、かつて教師として新人だった頃、教え子の一人をバイク事故で亡くしていた事を語り、懇々と流星の説得を試みる。
 「流星くん、命を粗末にしないで」
 「……はははははは、ははははは」
 「何がおかしいの?」
 「あんた、いい先生になるぜ」
 ヘルメットのフェイスガードを下ろしたその表情はハッキリせず、前輪で先生を払いのけた流星@2万と18歳は走り去るが、山口先生の決意は揺るがない。
 「ふははははは! 教師ごときに止められるものか」
 そしてレーダは、なんか変なところがツボに入っていた(笑)
 ヤミマルとターボレンジャーをぶつけようと目論む暴魔博士は、古びた絵の中から戦車戦の勇士・レーサーボーマ(イメージとしては、骸骨のベン・ハーといったところでしょうか)を復活させ、封印になっていた絵がなかなか格好いい。
 レーサーボーマは地獄ロード作戦でバイク乗りを襲撃すると流星の仕業に見せかけ、怒りのレッドターボとヤミマルはバイクファイトに突入。だがそこにレーサーボーマが横槍を入れて両者を電撃ネットに閉じ込めると、ローマ戦車どころか暴魔バギーに乗り込んで二人をまとめて砲撃し、造形も格好良くてかなり凝った暴魔獣です。
 力が変身してターボバイクに乗ってしまえると、山口先生がキーを取り上げた意味が限りなく薄くなるのですが、それはそれとして生身(変身前)と生身(変身前)でぶつからないと青春ドラマにならないよね! という文脈で首の皮一枚残し、その導線として生徒(流星)に体当たりでぶつかっていく教師(山口先生)を配置して方向性を示しているのが、パワー&テクニック。
 「なんでそんなにツッパるの、流星くん?! バイクばかりが青春じゃないでしょ! その大切な命、若さを懸けるものは他にもある筈だわ!」
 「……先生、青春の全てを懸けるもの、それは昔からただ一つしかないんだ。それは戦いさ」
 2万年間レベルを上げ続けていた男は、“青春”と接続される事で「2万年間青春している男」に落とし込まれ、18歳。人生で一番美しい時。そのパワーは、最高の力を発揮するんだ!
 「先生! いくら言っても無理ですよ。あいつには通じやしないんです!」
 「……炎くん」
 流星はバイクで走り去り、それを見送って吐き捨てる力に対して、山口先生の喋りのトーンが変わるのは大変良かった。
 「え?」
 「あなたからそんな言葉を聞くなんて思わなかったわ」
 「えぇ?!」
 「あなたたち、どうして信じようとしないの? どうして決めつけてしまうの? 同じ人間なら、同じ赤い血を持った人間なら、必ずわかりあえる筈だわ。真心を持って接すれば、必ず心は通じ合うはずでしょ?」
 流星光=流れ暴魔ヤミマル、と知る力たちと、知らない山口先生の間には当然の認識差があるが、力は逆に、そんな山口先生の言葉に考えを改める。
 「いや、先生の言う通りだよ」
 自分の言動を省みた力の表情を見た山口先生はバイクのキーを返し、バラード調の挿入歌(「哀しみの彼方へ」(矢沢永吉))に乗せてバイクで流星を追う力の姿が青春ロードとして描かれる、《戦隊》の枠を飛び越えにかかるぶっ飛んだ演出。
 前作『ライブマン』などでも、デートシーンのポップさを表現する為などで劇伴用とは別の楽曲を使用する例はありましたが、劇中のイメージを表現する為に他の作品世界を枠外から持ち込む用法には、当時のシリーズにおける“産みの苦しみ”も感じつつ、印象的なシーンとなりました(直接の影響があったかはともかく、後の『仮面ライダーW』の、エクストリーム誕生回を思い出してもみたり)。
 「先生はな! 先生は……同じ赤い血を持った人間なら、きっと心が通じると信じているんだぞ! 今のパンチ、山口先生のパンチだと思え!」
 流星に追いついた力は顔面に高速青春パンチを叩き込み、流星(ヤミマル)の正体にまつわるミステリー要素だった「赤い血」を、「心が通じ合えるかもしれない可能性の象徴」として別の角度からも拾ってくるのは、曽田先生がさすがの筆力。
 山口先生の動機として、悲しい過去が無から生えてきた時はどうなる事かと思いましたが(井上脚本回ですが、つい最近も同じ事をやりましたし)「先生の想い」から「人間の可能性」への飛躍が綺麗に決まる逆転タイムリー。
 「……たまらんぜ」
 呟く流星を後に残し、ターボバギーにのりかえた赤は単身レーサーボーマへと挑み、華麗なドライビングテクニックでシールドの障害物と吹き付けられる火炎放射を回避。
 「ターボレーザー!」
 ……あ、撃つんだ。
 ダメージを負ったレーサーも暴魔バギーに乗り込んで改めてバギー対決となり……
 「アタッカーバルカン!」
 ……あ、撃つんだ(笑)
 愛を知らない哀しい暴魔は正義の砲火で遙かな眠りの旅に送ろうとする赤だが、レーダ自らがウーラー軍団と共に戦場に降り立ち、5人揃ったターボレンジャーと激突開始。
 赤とボーマは再びバギーに乗り込むと互いの武器を構えて交錯し、すれ違いざまのGTソードが一閃!
 最後の最後でカーアクション回らしい決着となってホッとしましたが、そういえば自動車戦隊でもあった今作(正直、妖精パワーを振るう妖怪退治物として認識)、途中消滅する事には定評のあるバギーに、この先の見せ場は果たしてあるのか?!
 今作恒例、もう今ので倒した事にしてもいいのでは……?! という決めポーズと爆発の後、弱ったところにVターボバズーカを叩き込み、5色の妖精エネルギーを吸い込んだり、脈動するエンジンが派手に赤熱したり、全体的にエフェクトが強化されたような。
 5人はビクトリーを決め暴魔博士は一体何をしに……と思ったのですが、暴魔百族の巨大化システム上、現地に出張ってこないと巨大化できないのか(笑) レーダは全然働かないなと思っていたのですが、誰が途中退場しても大丈夫というスリリングなシステムである一方、気軽に動かしにくいキャラの作戦指揮回数が減らざるを得ない、のは思わぬ落とし穴……。
 ターボロボは、薙刀振り回すレーサーに連続パンチを叩き込むと、シールド防御からの銃撃、そして高速剣ターボクラッシュで大勝利。
 「ながれぼしくーーーん! 信じてますからねーーー!」
 「……たまらんぜ」
 さすらいバイク乗りはニヒルな仕草で色々と誤魔化す事を覚え、果たして、流星光と心の通い合う日は来るのか……とりあえず、山口先生と太宰博士の心はもう少し通い合ってほしい。
 …………山口先生→太宰博士はやはり藤井脚本の暴投だったのか、曽田脚本の方で拾う気配が全く無いのですが、こちらはこちらで一体どうなってしまうのか(笑)
 時代遅れのバンカラ転校生だった流星は、バイクを手に入れて正攻法の不良ロードをひた走り、いわゆる、体当たりで他人からぶつかられた経験が無い、といった様子をちらつかせる事で、気がつくと劇中で一番青春している2万と18歳に。
 出自の謎を引っ張りつつ、その「人間」の部分と心を通わせられるのではないか? と打ち出してきたのは物語の良い燃料となり、若いターボレンジャーの面々だからこそ、流星光とどう向き合おうとしていくのかは、楽しみな要素です。
 ヤンキー系第三勢力(風味)というと、前々作『マスクマン』の盗賊キロスを思い出すところですが、キロスが“ひたすら自分の欲望に忠実な男”と設定したものの“欲望”の範囲が広すぎて「愛の狩人」なのか「バトルジャンキー」なのかフワフワしてしまったのに対し、“2万年間レベルを上げ続けていた男”に、「レベル上げ以外にやる事があるんじゃないのか?!」と突きつけてきたのはネガポジ関係がハッキリしていい傾向で、巧いことジャンプアップを期待したい。