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スーパーメロンタイム

仮面ライダー鎧武』感想・第11話

◆第11話「クリスマスゲームの真実」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄/毛利亘宏)
 正式なサブタイトルは「クリスマスゲーム(の最中に明かされる数々)の真実」でしょうが、途中が省略された結果、「クリスマスゲームはチーム鎧武の陰謀だった!」事が露見して巻き込まれた他チームのリーダーが激怒する側なのでは、みたいな事に。
 そんな囮作戦の被害者一行であるバロンに、ロックシード集めの勝利条件を無視した黒影がさっそく喧嘩をふっかけると、ドリアンが乱入して挑発に乗ったバロンと殴り合いに突入。
 「よし、ここまでは計画通り。後は、うまく白いアーマードライダーが引っかかってくれればいいが……」
 それを物陰から確認した紘汰は弁解の余地なくヒグマもといメロンとかち合わせる気満々で、一度、大きく息を吸って伸び伸びと背伸びの運動をしてほしい。
 キウイ龍玄はインベスと戦い、ドリアンに弄ばれるバロンはマンゴーを発動し、脱やられ役を目指す黒影は龍玄を探し、ドングリは漁夫の利を狙い、各ライダーの思惑が交錯する中、全員の強制送還を目的に、メロン出陣。
 木の実コンビはひたすらコメディリリーフ扱いで、ロックシードを集めて勝ち逃げを狙うドングリは襲ってきたインベスを辛くも撃退するが、その背後に現れる武者メロンが、完全にレッドマン(笑)
 樹上から双眼鏡で目的の拠点探しをしていた紘汰は白いヒグマ出現に気付き、メロンファイトでなます斬りにされたグリドンは、Aパート保たずにリタイア。紘汰は思ったより間近でそれを見ていた事が発覚し……この時点では、メロンがグリドンを殺さない保証は全く無い(そう考える根拠が何もない)にも関わらず、どうして君はのほほんと見物に徹していますか。
 第4話の時点で危惧はしましたが、紘汰が深い失意から立ち直る展開を劇的に描こうとするが為に、「遊び半分なんかじゃなく、生きるか死ぬかを決める為のものなんだ」と打ちのめされ部屋の片隅で恐怖に震えていた姿を徹底的に強調していたのが見事な地雷となり、その殺意を向けてきた相手の前に知人を差し出して傍観するという、完全に一線を越えた人でなしの領域に突入。
 これがそこまでの恐怖でなければ(或いはすぐ間近で見ていたわけでなければ)まだ成立したのですが、展開Aをやる為に要素Bを強めに持ち込んだ結果、主人公の心理において重視されるべき要素Bが後の行動Cを疎外するので完全に無視される、という絵に描いたような家屋倒壊が発生してしまいました。
 変身が解けて気絶した城乃内はユグドラシルの特殊部隊に回収され、しめしめとその後を追って拠点に辿り着く紘汰。
 目的に向けた行動としては効率的で賢いのですが、手持ちの情報が「侵食した森を焼き払って証拠隠滅」だけで何をやってくるのか全くわからない相手(銃まで所持)に連行される城乃内を、助けようかどうかの葛藤さえ見せない完全な見殺しで、これはもはや「考えが甘い」とか「想像力が足りない」を通り越えて、「人の心が感じられない」では。
 やっている事は完全に、「何かを得るためには、何かを捨てなきゃ。俺、城乃内を捨てるよ」で、「ヒーロー未満」を描くにしてもさすがに限度があって(この場面の紘汰「人の心」も「ヒーローの魂」もどちらも無いので)、多分、リアルタイムで見ていたらここでリタイアしていたであろうポイントツーです。
 ……まあ、考えてみると今作ここまで紘汰と城乃内が言葉をかわした記憶がない(初瀬とは電話で話した。番号も登録されている)ので、紘汰が城乃内の事をミミズみたいなものだと思っている可能性もゼロではないですが……。
 紘汰への視線の温度が氷点下になりつつある中で、拠点内部に入り込むシーンをコミカルに演出してしまったのも具合が悪く、状況としては緊迫している筈なのにメタ的な“死なない前提”に乗っかった悪ふざけじみた描写の結果、紘汰の現在の心理状態まで軽く感じさせてしまう事に。
 視聴層を意識してコミカルなシーンを織り交ぜる意図は理解できるのですが、物語のトーンに合わない強引な挿入が目立ち、一番それに振り回されている事で主人公のふわふわ具合が強まってしまうのはどうしたものか。例えば黒影やグリドンが危機意識の無さからコメディリリーフを割り当てられるのはわかるのですが、この流れで紘汰をコミカルに描いてしまうと、ああ紘汰は本当に城乃内の事はどうでも良いんだな……というのが強調されてしまうわけで、それは紘汰の行動原理となっている筈の“人々の安全を守りたい”さえ、薄っぺらくする事になり、正直どうしてここまでちぐはぐな事になっているのやら。
 紘汰は潜り込んだテントで研究員の口にする「クラック」「ヘルヘイムの森」「モルモット」といった言葉を耳にし、監視モニターの中では、マンゴーとドリアンにヒグマが襲いかかるメロンファイト!
 「この森であまりはしゃいでもらっては困る」
 両者を超高速で切り裂くメロンの強者ムーヴにドリアンのハートゲージがぎゅいーーーんと急上昇し、何もフィーチャーされないままあっさり倒れるバロンの、ライバルだったような気がする雑な扱いに川の向こうから01ハカイダーが手招きしています。
 「トレビアーン! なんて美しい……戦場に咲く白い花、或いは、泉に舞い降りた白鳥。ああ、貴方はいったい!」
 愛のポエムを謳い上げるドリアンだが、俺はギャグ時空には巻き込まれない、と拒絶するメロンの連続攻撃を受けばったりリタイア。
 「さすが主任、仕事が早い」
 まさか外部からの侵入者が潜り込んでいると思っていない研究員は、全てはユグドラシルによる実験であるとべらべら喋り、劇中世界で大人気(という事になっています!)のホビーが世界の運命に関わる陰謀と繋がっていく、改めて、ホビーアニメ(ハード系)の文脈。
 ……これなら、表向きはもっと“ヒーローぽい行動に繋がる力”を配り、ヒーロー気分で活動していたら実はそれが……とした方が導入のフックに向いていたのではとも思ったのですが、商業的に変身ベルトを主力商品にしている以上は難しかったでしょうか。
 「若さってのは、強い力を求めるもんだ。たとえそれが、どんなに危険な力だったとしても。勿論、大人なら、そんなに危ない橋は渡らないがね」
 パフェ屋ではシドがおもむろに呟き……うーん……あくまで“シドの主観”ではありますし、“『鎧武』の世界観”でもあるのですが、明らかに“作品構造(紘汰らが繰り返す浅慮)への視聴者に対するフォロー”でもあるので、大人が敢えて危ない橋を渡る姿をヒロイックに描いてきたシリーズの劇中に持ち込むのは、あまり気分の良くない視点。
 勿論、『鎧武』はこういうアプローチです、というのはそれはそれでなのですが、看板に書いてあるメニューが食べたくて店に入ったのに「すみません、うちはうどん屋だけど、出せるのはハンバーガーだけです」と言われているような気持ちにはなります。
 ここまでがハンバーガーとして美味しければ、うどんは出しません宣言もそこまで悪感情を抱かないのですが、出てくるハンバーガーの出来が物足りないのに、うどん屋がうどん否定めいた事を言い始めるのは、さすがに感じが悪いというか、くどくどと言い訳がましい印象が強くなってしまいました。
 武部P作品だと、『オーズ』も前半はいまいちノりきれなかったので、今作もじわじわと歯車が好きな方向に噛み合ってくれる事を期待したいところでありますが(ちなみに、『オーズ』をアンチヒーロー路線だとすると、今のところ『鎧武』はアンチセオリー路線といった印象)。
 メロン主任がブドウと接触し、テントを飛び出した紘汰は拠点がインベスに襲われているのを見て鎧武に変身。ここで悩まないのは良かったですが、ユグドラシル迂闊すぎでは……。
 主任の活躍をモニターしながら(録画メディアは、ユグドラシル内部で暗躍する主任ファンクラブで闇取引されます)、紘汰らを「モルモット」呼ばわりしていた研究員に助けてくれと泣き疲れた紘汰が「都合が良すぎるだろ!」と毒づくのは自然な感覚ではあるのですが、事前に迷わず変身していたので、そこは変に強調しなくても良かったような。
 一方、慎重に距離を取りながらメロンの情報を集めようとした龍玄だが、その実力差の前にじわじわと追い詰められていた。
 「なんの真似だ。なぜ俺を観察しようとする?」
 剣を突きつけられ逃走を図る龍玄だが、メロンのシールド投擲を背後から受け、ガードから攻撃まで、盾の使いこなし方はメロンの強者感を上げて格好いいアクションの描写。
 龍玄の意識を奪おうとしたところで拠点襲撃の急報を受けたメロンは救援に戻ろうとするが、実にタイミング悪く黒影が乱入。鬱陶しいチンピラ感満載でしつこく突っかかってくる黒影に苛立つメロンは、救援への焦りから勢い余ってドライバーを半壊させてしまい、ここの初瀬は、凄くキャラが活きて良かったです。
 拠点ではインベスの大軍団による攻勢が続き、次から次に湧いてくるインベスを相手に、ミカン→イチゴ→スイカ、とフォームを変えた鎧武は、インベスを追ってクラックの向こう側――ユグドラシル内部に入り込み、タワー上空でインベス軍団を撃破する。
 「……まさか、クズに部下を助けられるとは」
 紘汰たちの事は「社会の役に立たないクズ」呼ばわりで傲慢なエリート意識の目立つ貴虎ですが、部下に対する責任感は持ち合わせている事が窺え、それは、さすが主任ファンクラブも生まれるわけです。一方、それら全てを更に高みから見つめて鎧武のインベス殲滅をフォローした前髪白衣が何やら怪しげですが、果たしてその瞳に映っているのはいったい何か。とりあえず、ドライバー破壊の一件を材料に、兄さんにどんな嫌がらせを行おうか考えていそうだ!
 龍玄は拠点に放棄されていたロックシードを確保する事で、大漁213個獲得でゲームにも勝利した事になり……DJランキングの表記によると、バロンが8個(ドリアンが3個)入手した事になっているのですが、回収班、ロックシードそのまま持たせて帰したの??(笑)
 「俺たちはあんたらの思い通りにはならない。……今日はそれを伝えに来た」
 「……そろそろ店じまいか」
 取引の約束通り、箱一杯に詰めたロックシードをシドに叩きつけた紘汰とミッチは、怒りの視線を向けて足早に立ち去り、残ったシドの手の中には、鈍く輝く謎のロックシードが……。
 「――今にして思えば、あの時にはもう全ての歯車は回り始めていたんだろう。でも俺たちは、まだ何も気付いちゃいなかった。その先に続く運命を、既に選んでしまっていた事を。
 何かを成し遂げられる力が欲しいと、そうすれば大人になれると、俺たちの誰もが願っていた。でも、大人ってのはなろうと思ってなるものじゃない。ただ子供で居られなくなるだけの事だったんだ。
 やがて始まる果てしない戦いの中で、俺たちはそれを思い知る事になる」
 『鎧武』名物・長い語りは、未来視点のモノローグにする事で飲み込みやすくなり、1クール目をダイジェスト映像で振り返りながら、改めて「大人/子供」の境界線に焦点を合わせる言い回しそのものは格好いいのですが、今のところそこへのこだわりが物語の面白さとして感じられないまま、つづく。
 第11話時点で、新ライダーも新フォームも登場しないのが2回目という構成も序盤のハードルを引き上げている事を感じさせますが、次回――量産型黒影?! そして、赤肉メロン。