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高速戦隊は体育会系

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第20話

◆第20話「暴魔族 はるな」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹
 蜘蛛とカニを合わせたようなデザインのモウドクボーマの強襲を受けたターボレンジャーは、桃をかばった青が猛毒を注入されてしまい、なにかとおいしい役回り。
 「……駄目だ。洋平の体内の毒は、我々には全く未知のものだ。どうしようもない」
 太宰博士にはもう少し、未成年の命の危機に諦めずに抗う姿勢を見せていただきたい。
 解毒剤を知っているのは暴魔百族だけ? とシーロンの話を聞いたはるなは飛び出していき、車両基地を襲っていたズルテンの後頭部に凄い飛び蹴り。
 「ズルテン! 解毒剤はどこなの? 今すぐ渡しなさい!」
 はるなは貨物車輌の上に仁王立ちして啖呵を切り、ところどころで片鱗は見せていましたが段々と男前路線になってきて、後の『ビーファイター』の初代レッドル(羽山麗)なども思い出します。
 だが、単身立ち向かったはるなはズルパッチンを受けて吹き飛ばされ、凄い勢いで頭部から電信柱に激突……し、死んだ?!
 そこに駆け付けた野郎衆がはるなを助け起こすが……なんとはるなは、記憶を失い、男達を拒絶。
 「どうしたんだはるな? 俺たちだよ。忘れたのか?!」
 「わからない! いったい私は誰なの?! あなた達は誰なの?!」
 真っ赤なTシャツに黒い指無しグローブ合わせてる奴とか、これ見よがしな黒のピチピチタンクトップの奴とか、吊りズボンに黄色いシャツで少年ぽさをアピールしてくる奴とか……ついでに青の縞々シャツの奴とか、私の男友達がそんなファッションセンスの筈がない!
 色合わせは飲み込んだ上でもなお(バリエーションとしてボーダーも投入されがち)、夏服の壊滅的なセンスが5人の間に深刻な亀裂を生み、これに付け込む事を思いついたズルテンはバイクモードになると、仲間を名乗ってはるなを拉致。
 一方、洋平は物凄いメイクで藻掻き苦しんでおり、前作『ライブマン』に比べると陽性でふわっとした雰囲気ながら、前回の俊介弟の事故死など、割とハードめの表現もちらほらと顔を出します。
 記憶喪失のはるなを探し回る男衆に、漆黒のライダー@フルフェイスがいきなり銃をぶっぱなして襲いかかり、日常を破壊する理不尽な暴力の表現方法が、凄く、井上敏樹(笑)
 走行中のバイクから、走行中のバイクへの飛び蹴りは仮面ライダーばりの格好いいアクションで、蹴り飛ばした力に対してヌンチャクで襲いかかる謎のライダーの正体は、さすらい転校生・流星光……ではなく、はるな。
 素顔をさらしたライダーは怯まず手榴弾を投擲して大地と俊介を吹き飛ばし、地球の治安が今、電撃戦隊!!
  「やっぱりアースフォースはあったのだ!」
 「ターボレンジャー、お前達に死を!」
 狼狽する男衆にはるなが猛然と飛び蹴りや回し蹴りを放つ生身バトルに突入し、花の戦士枠はるな、物凄い勢いで、メンバー随一の武闘派に(笑)
 「私は誇り高き、暴魔百族の戦士!」
 「なに?!」
 「いひひひ!」
 狂戦士化などではないので特に身体能力を引き上げられたりはしていないと思うののですが、記憶喪失設定をいい事に好き放題が、突き抜けた面白さに突入(笑) (※物語構造上の理屈としては、『チェンジマン』第37話「消えたドラゴン!」の変奏曲ともいえるかも)
 「ズルテン! 貴様はるなに何を吹き込んだ!」
 「はるなは生まれた時から暴魔百族。お前たちを地獄に送る使者なのだ」
 幾ら記憶喪失とはいえ、人間より暴魔百族を信用する時点でだいぶ不自然なのですが、それに気付かずコロッと騙されても格が落ちないのはズルテンの便利なところで、どんどん出番が増えていくのも頷けます(個人的には、声を務める梅津秀行さんが割と好きで、ズルテン独特の笑い方に味を感じます)。
 「ズルテン様、そんな攻撃では甘い!」
 再び手榴弾が炸裂し……そういえば東條監督はこの翌年、手榴弾の携帯は紳士淑女の嗜みな世紀末TOKYOを描いた『特警ウインスペクター』でパイロット版を担当するのでありました。
 洋平は猛毒で瀕死、はなるは記憶喪失で敵に回り、かつてない苦境に追い詰められるターボレンジャーは太宰邸に一時退却するが、決闘を求めるはるなから通信が入り、モアイの丘……本当に、モアイの丘だ……モアイは、暴魔百族の遺産だったんだ!
 「やめろはるな! おまえには聞こえないのか! 洋平の苦しみの叫びが!」
 どちらかというと清楚系ヒロインの立ち位置だったはるなですが、力の呼びかけに対する悪い笑顔がやたらなはまり方で、薄々思っていましたが悪役が似合います(笑)
 「くだらん! 虫けらども!」
 はるなは容赦なくアサルトライフルの引き金を引き、更に猛毒ボーマとウーラー軍団も登場して、前回今回と割と物量的にも力の入った映像が続き、前作の導入のような派手さはないものの、幹部や怪人の造形を始め映像面では細かくお金のかかっている印象。
 乱戦の中で力に猛毒噛みつきが迫ったその時、力に襲いかかったはるなが間に入る形になって噛みつかれ、慌てたズルテンが解毒剤を提供。それを飲んで自分の毒を治したはるなは何故かそのままバイクで走り去り……流れとしてはここで種明かしをした方が美しかったとは思うのですが、「太宰邸に戻って洋平に薬を飲ませる」プロセスがどうしても必要なので、一度分断せざるを得なかったのは、テンポ面からは惜しまれます。
 解毒剤を持ち去られ、絶望的な状況で変身した赤黒黄はズルテンらに追い詰められ、いよいよ壊滅が迫ったその時、戻ってきたはるなが猛毒ボーマにバイクでアタック!(ヒーローのイニシエーション)
 「何をするはるな?!」
 「ピンクターボ参上! なーんちゃって」
 ヘルメットを外したはるなは驚愕する男衆にウインクを飛ばし、更に洋平が復活。
 「初めから全部芝居だったのよ」
 サブマシンガンが火を噴いていたのも、手榴弾を投げつけていたのも、蹴り技に次ぐ蹴り技も、全ては解毒剤を入手する為にズルテンを騙す芝居であったと明らかにされ、挿入歌(はるなテーマソング?)に合わせて変身した青桃のコンビ攻撃から、Vターボバズーカ。
 二丁拳銃の連射で巨大猛毒ボーマを片付けたターボレンジャーは、冒頭で行われていたバレーボールに再び興じ、はるなの放つ殺人サーブを受け、次々と地面に這いつくばる男たち。
 「だらしがないぞ男ども!」
 ……あくまで冗談交じり、苦難を乗り越えてほのぼの大団円シーン……の筈……なのですが、どういうわけか、下が草地ではなくアスファルトの地面なので、はるな軍曹は本気かもしれません。
 「俺にはなにも、言えませーん」
 散々、近代兵器の脅威にさらされた力たちは、はるなは将来とんでもない悪女になるに違いないとからかい、命を助けられた洋平はかしこまり、一喝されてアスファルトに正座する男たちに殺人アタックが炸裂して、つづく。
 前作のめぐみさん(&コロンさん)が強烈すぎたのもありますが、ここまで良く言えば穏当、悪く言えばパンチに欠け、油断していると男子4人に囲まれて控え目な位置に落ち着いてしまいそうだったはるなに、「記憶喪失の偽装ギミック」をいい事にメンバー随一の武闘派の顔を与える空中殺法。
 井上脚本×身内バトルというと、前々作『マスクマン』第13話「アイドルを追え!」(監督:東條昭平)で、「怪しいアイドルの正体を暴く為に仲間割れを演じる」展開があったのですが、そちらが示し合わせているにしても茶番感が出過ぎていたのと比べると、生死の淵を彷徨う洋平の深刻な描写・銃器を投入しての激しいアクション・力たちは真相を知らない、事で茶番感を薄くしていたのが、良かった点。
 女性メンバーがはっちゃけた大暴れを見せるのは井上敏樹の好みだと思うのですが、「アサルトライフルや手榴弾を持ち出しても、そこまで悪印象にならない」のも上手い組み合わせとして機能し、ここまでの描写を台無しにしない範囲で大きなインパクトを作ってはるなの存在感が跳ね、振り幅の多い芝居を演じる女優さんも楽しそうで、良い女性戦士回でした。
 なお『マスクマン』第13話の感想を読み返していたら「怪人の溶解ガスを示す為の溶けオブジェが、どうしてモアイなのか(笑)」という一文があり、モアイ繋がりでもあったようなのですが、この頃、美術倉庫にモアイの置物がうずたかく積み重なっていたりしたのでしょうか。
 前作『ライブマン』では意外とはまらなかった井上敏樹ですが(曽田-藤井体制が盤石すぎたというか)、今作は曽田先生がそこまで突っ走っていない事もあって持ち味が活き、面白かったです。
 次回――なんの因果か配信『ウルトラマン80』と被るタイミングで相撲! 一回目と二回目のキャラ回の間がだいぶ空いた大地が今度は間を空けずに回ってきて、そうこうしている内に力の存在感が薄くなりつつあり、この辺りのバランスはちょっと悪い。