『仮面ライダー鎧武』感想・第１０話
◆第１０話「ライダー大集結！森の謎を暴け！」◆ （監督：柴崎貴行 脚本：虚淵玄／砂阿久雁）
街はクリスマスムード一色――サンタのコスプレしてビラを撒いていた紘汰はインベスに襲われている人を発見して鎧武に変身し、まあ、怪物に襲われたら怖い、というのはそれはそうなのですが、この作品世界の場合、「インベス」＝「ビートライダーズが召喚するもの」というのが一般認識の筈なのに、それに対するリアクションが「ただの怪物」になってしまっていて、意図的なスライドも含め、そういった部分の作りが行き届いていないのは、どうしても気になります。
沢芽市で何が起きているのかを知る為、森を焼いていた集団との接触を考えるも、メロン対策に悩める紘汰とミッチ。一計を案じたミッチは戒斗の発言を逆手にとって、勝者ならルールを決められるよね、と新しいゲーム――ロックシード争奪大運動会を提案し、散々メロンの危険性を訴えておきながら、囮作戦に他のライダーを巻き込む作戦を受け入れる紘汰のモラル判定がちょっと心配。
“守りたい範囲”がある程度明確なミッチは、恐らくわかっていて紘汰を丸め込んでいるのですが、“守りたい範囲”が伸縮を繰り返す紘汰の姿は、「モラトリアム真っ最中の少年以上青年未満」としてはリアリティがあるものの、「ヒーローフィクションの主人公」としては、引きつけられる魅力がどうにも不足を感じます。
「誰がヘルヘイムの森に選ばれるのか、まだ決まったわけじゃないんだ」
紘汰たちからロックビークルの融通を頼まれたシドは敢えてそれに乗っかり、どこまでが真意かは伺いきれませんが、貴虎の仕事を引っかき回す悪巧み。
そしていよいよ、人数分のビークルが揃ったクリスマスの日――争奪ゲームを囮に使い、ゲームへの不参加を宣言した紘汰が森の中にある拠点を探し出すチーム鎧武の作戦が実行に移されようとするが、そこにピエールが乱入し……いや、貴方、今、本業が一番忙しい時期では？
更に大量のインベスが現れて森へ突入前に乱戦となるが、じゃ俺、勝手に先に行くね、とバナナは一人で森へ突入。
「アーマードライダー黒影、この勝負に勝って、必ずランキングトップになってやるぜ」
「初瀬ちゃん気合入ってんねー」
木の実コンビも変身し、方便とはいえインベスバトルとダンスを繋げているのだから、登場人物（チームリーダー）にもう少しダンスへのこだわりを見せてほしいのですが、「ダンスの内容とランキングは関係ない」という謎すぎるルール設定の為に、舞を除く主要キャラからこぞってダンスへの視点が抜け落ちてしまい、「野球をする空き地の使用権を巡ってミニ四駆でバトル」している内に「ミニ四駆の方に夢中になってしまう」事そのものはあるとしても、“野球への情熱”が描かれていないので、“ミニ四駆への転換”が劇的にならない負のドミノ倒しが発生。
そしてそれは、「ミニ四駆もまた前振りに過ぎないから」が見え見えなわけですが、そこでこそ、これは本気でやっていると嘘をついてほしいわけで、あまりにも露骨に「野球編」と「ミニ四駆編」がハリボテな為に、真の開幕である「農業立志編」に辿り着くまでが苦行めいてしまうのが、今作序盤がはまった落とし穴の一つといえるでしょうか。
嫌がらせで生み出したカマキリインベスをブドウにけしかけたドングリと松ぼっくり、そしてドリアンは森へと走り去り、インベス軍団を相手取るブドウは、突然のキウイ発動。巨大な円盤を両手で振り回すアクションは格好いいのですが、またえらく雑に出てきました……（笑）
全員が森へ突入したので、物陰に隠れていた紘汰が参戦し、スイカーチェンジ。
バック宙からミカンＯＮ、ダッシュしながらのミカンアーマー展開、スイカに飛び込んでいる間にバイクで横切ったブドウが支援攻撃、と各種変身の凝り方は今回の良かったところ。
カマキリをあっさり撃破した鎧武も森へ突入する一方、部下から連絡を受けたメロン兄さんは、めちゃくちゃ怒っていた。
ユグドラシル内部には空間の裂け目を安定させた出入り口があり、片手をポケットに突っ込んだまま鍵を高々と放り上げ、降りてくるメロンに合わせて鍵をキャッチする格好いい変身で、メロンアームズ天下御免。
……どうすれば、部下の前で自分の尊厳を保ちながらメロンを被れるのか、三日三晩徹夜で真剣に考えた末に辿り着いて練習を重ねた変身ポーズです！ 或いは、このポーズをナチュラルに思いつき、一発で成功させる方が兄さんぽいかもですが（笑）
次回――混戦必至の大運動会に怒れるメロンが参戦し、勝負の行方はどっちだ？！
