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謹賀新年

 あけましておめでとうございます。
 今年の更新初めは『鎧武』で。

仮面ライダー鎧武』感想・第9話

◆第9話「怪物インベス捕獲大作戦!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:虚淵玄
 「インベスとの戦い方を知っているのは、俺たちビートライダーズだけだ」
 市内に生まれたチャックから迷い出たインベスが人を襲っているかもしれない……その可能性に思い至った紘汰たちは、街を守る為の自警団を結成しようと他チームにも声をかけて回るが、無償の人助けなんてする気は無い、と戒斗からはザックリと拒絶を受ける。
 「今、おまえたち「鎧武」は、最強という地位にいる。頼られる事があっても、頼ることなどは許されない。それが勝利者の宿命だ」
 戒斗の“強さ”へのこだわり――最強ロジックを物語の展開と繋げてくるのですが、インベスゲームで序列1位に居る者は他人に引っ越しの手伝いとか頼んではいけない、レベルで前後に飛躍があるので、相変わらず一人だけ異世界からやってきた人みたいな論理展開(笑)
 勿論、登場人物の行動や考え、物の見方が「正しい」必要は無いのですが、〔市民をインベスから守ろう! → インベスの相手をするならビートライダースが適任! → インベスバトル最強チームに協力するチームなど無い〕という、最初に掲げた目的意識から二段階でスライドする流れに、登場人物の信念や錯誤というよりは“視聴者を誤誘導する為の作り手側の意識的な誤魔化し”が見えてしまうのが、厄介なところです。
 その為、描写は省かれますが、自分の利益を求めそうなメガネ、チーム鎧武が気に入らないから断りそうなワイルド、といったサブキャラの行動原理の方が想定して呑み込みやすく、下手にそこで自分ロジックを掲げる戒斗の方がこじつけに見えてしまうのは、今作序盤の大きな難点。劇中において最も頑なに自分の信念を貫こうと描かれている戒斗が、メタな役割において最も作り手の都合で視聴者を誘導する役割を担わされているのは、どうにも皮肉な構造です。
 一方、貴虎兄さんはスイカシードが無くなったのはビートライダーズの連中が泥棒にでも入ったに違いないと自分を納得させており、傲慢なエリート意識も含めて「自分の常識の中で物事を解決したいタイプ」である事が見えてくる辺りの理屈の付け方は、悪くないのですが。
 チーム鎧武は手分けしてコウモリインベス探しを始め、すぐに変身したがる病の抜けない鎧武をはっ倒し、片手で引きずっていく舞……ダンスとは強さだ!!
 「私たち、こんなに怖い生き物を使ってゲームなんかやってたんだね」
 「そもそもあのインベスってなんなんだ?!」
 「こういう時に限って、なにか知ってそうな人は姿を見せないんだもんな」
 舞・紘汰・ミッチはパフェを突きながらインベスについて考えを巡らし、ミッチの台詞と共に空っぽのシドの指定席が映し出されるのが、印象的。そして、インベスに襲われた店長の証言から、インベスが餌を探しているのではないかと推測を巡らしたミッチが、参謀役としての地位を確立していく事に。
 ロックシードの果実を囮にした作戦で首尾良くコウモリインベスを追い詰めた紘汰とミッチは、ねぐらを突き止めてダブル変身し、前回からの流れを受けてヒロイックなバトルに到達してはいるのですが、アバンタイトルの演出などからコウモリインベスの正体には概ね見当が付くので(的外れかもしれませんが)スッキリと呑み込みにくいのは難。
 推測通りなら、原典を意識した本歌取りではあるのですが……「覚悟の有無」を前提にしないと、ただただ登場人物への騙し討ちになる可能性はあり、その騙し討ちが狙いだった場合に面白く受け止められる展開になってくれると良いのですが。
 ……逆にいえば、“ヒーロー物”が“ヒーロー物”を成立させる為に巧く削ぎ落としている要素があって、そこに踏み込んだ時に、それでも“ヒーロー物”として面白く成立させられるのか……という話になるのですが、それは継承と爛熟と挑戦の過程で必然的に生まれる禁断の果実であるのかもしれず、パズルのピースを面白い物語に仕立て上げられるのか、スタッフのお手並みに期待したいところです(ちなみに私は、いわゆる《平成ガメラ》で、『1』『2』は好きだけど、『3』は駄目だった人)。
 コウモリインベスを倒した紘汰とミッチは、広がる森とそこに集まるインベス、そしてそれらを切り倒すメロンと、森を焼却する謎の集団を目撃し、ミッチはメロンの正体が兄である事に気付く……。
 「クラックの出現頻度が、予想以上に増えている」
 「ヘルヘイムがいよいよ活性化を始めているようだね。興味深いな」
 貴虎は謎の男と言葉をかわすと、自ら「新型」の最初の被験者に名乗りをあげる。
 「このプロジェクトを引き受けた責任に、背を向けるつもりはない」
 「……その情熱はなんなの? 何がそこまで君を駆り立てる」
 「今や世界の命運は、ユグドラシルに託されているも同然だ。俺は、人類の未来を切り拓く」
 世界を侵食していく謎の森・そこから迷い出る怪物インベス・全てを知りながら隠蔽し、何らかの狙いを持って暗躍するユグドラシル……様々な要素が出そろったところで、次回、アーマードライダー大集合?!