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僕らは巡り会ったから

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第35-36話

◆エピソード35「マブシーナ放浪記」◆ (監督:山口恭平 脚本:井上テテ)
 「ふぇっ?! な、なんですかぁ?! これぇ?!」
 「……おやまぁ、覚えてない。あ、そう……これぜーんぶ、姫がやったんだよ?」
 全身泥だらけで目を覚ましたマブシーナが見たのは、嵐が去った後のような室内、負傷した博多南、大破した作戦テーブル……そう、見所は、リミッターを外した姫様の頭突きの威力。
 本当のクリスタリア空手を見せてやる!!
 作戦テーブルの大破によりヨドン反応もサーチできず、TVのニュースで邪面獣出現を知ったキラメイジャーは、キラメイジンでカート怪獣と戦っていたが不安定な動きを繰り返す敵に苦戦した末、何故か怪獣は姿を消してしまい、キラメイジンの出番はこんな時ばかりですね……。
 ひとまずココナツベースに戻ったキラメイジャーは、地球の日本茶に酔っ払う体質だった姫様が、泥酔状態で宝路からお宝手帳を奪うと室内で暴れ回り、作戦テーブルを粉砕した顛末を博多南から語られる。
 「そして二人は、嵐のように去っていったんだ……。それからにぃにとは連絡も取れない。ドリジャンを呼んだみたいなんだけど、戻ってきてないんだよねぇ……」
 この言い回しが大変面白く、博多南さんがここに来て、ぐっと演技が良くなっている気がします。
 お宝手帳に目を止めた瀬奈が、ここにお宝を探しに行ったのでは?! とマッハで駆けだし、慌ててその後を追う時雨。小夜と為朝は博多南の容態を気遣いつつ作戦テーブルの修理を手伝う事になり、充瑠&姫は、宝路探しに参加する事に。
 ヨドンナと遭遇した4人は、前日ヨドンナがゴルフ邪面(関西弁なのは、猿なのか……?)と活動していたところ、そこに現れた兄妹がドリルで暴れ回った一部始終について聞かされ、呼べるんだ、ドリル……。
 大暴れの末に掘り当ててしまったモンストーンをクリスタリア酔拳で撃破する姫様だったが、その破片がゴルフ邪面に入り込んでしまい、二人はハイテンションで走り出したゴルフ邪面を追いかけていった……というヨドンナの証言に基づき宝路捜索を続ける一行は、半ば湖に水没したドリジャンを発見し、ザビューンで救出。
 「マブシーナ、宝路さんはきっとこの中だ」
 充瑠、にこやかに言っているけど、水没したドリジャンの中に取り残されていたら、宝路、死んでいるのでは……からの、中に居たのはゴルフ邪面、は面白かったです。
 4人はゴルフ邪面を尋問して事態の推移について聞き出し、ドリジャンを呼び出したシルバーが、ゴルフ邪面の暗黒パターの一撃により、カート邪面と一体化してしまった事を知る。大金星をあげたゴルフ邪面だがクリスタリア空手の猛威に敗れ去り、ドリジャンに引きずり込まれた上に放置、水没。
 「そうして、ワイは意識を、失ってもうたんや……」
 しっかり死にかけていた。
 恐らくゴルフ邪面を通して、事態を把握したヨドン上層部では、宝路を葬るチャンス、とジョーキーで出撃したガルザが邪面獣に襲いかかり、酷いセルフパロディを放り込んできました(笑)
 赤青緑は逆襲に転じたゴルフ邪面と戦い、連絡を受けた黄と桃は王様を呼び出して宝路救出に向かい、敵味方の交錯する三つ巴の大乱戦が勃発(これをフェニックス苦戦の理由付けにするのは、今作らしい細やかさ)。
 「わたくしのせいで、こんな状況に……」
 不慮の酩酊状態の結果とはいえ、実際に都市の被害や仲間の危機を招いた事を完全スルーするのは引っかかるので、姫様自身から反省と言及があったのは良かった点。姫様はテレパシーを用いてカートに挟まっている宝路と通信し、過去何回かクリスタリアことわざシリーズで若干強引に話を進めた今作が、地球の慣用句から逆転の閃きを得るのはセルフパロディとしても巧く収まりました。
 宝路のアドバイスを受けたマブシーナが、お詫びの気持ちをキラメイバレットに注入すると、誠意という名の殺意が篭もったキラメイゴルフボールが誕生。
 それを受け取った青緑赤による、キラメイハリケーンもとい連携ショット味噌ラーメン(古いな瀬奈……)により、ゴルフ邪面の弱点である頭部の穴にイーグルショットがカップインし、こんな間抜けな死に様なのに、大・爆・発。
 番組史上最高と思われる規模の爆発で、爆発って、本当にいいものですね……。
 カート怪獣にはバーンブラッカーが直撃するが、ゴルフ邪面の死亡により状態異常の解かれた宝路は間一髪で脱出に成功し、前回の今回で再びの誤爆……!
 王様フェニックスは宝路を回収して飛び去り、宝路を怪獣ごと始末したと思い込むガルザは高笑いを上げ、ガルザそのまま帰ったの? と、それでいいのか感は若干ありますが、とにかく一件落着。
 平穏戻ったココナッツベースでマブシーナは手帳に日記をしたため、セルフパロディ要素も含めて小ネタの多いエピソードでしたが、為朝と時雨に黄金の腰が伝授されており、なんて事をしてくれているんだアイス屋(ゲスト出演:松本寛也)。
 最後は、マブシーナが再び日本茶を飲んでしまい、クリスタリア空手の恐怖再び、と定番で締めて、今作のノリならここまでOK……? とギリギリのラインを走るギャグ回でしたが、ちゃっかり叶えマストーンに言及しているのは、らしい目配り。一応、兄妹愛が随所に示されていたので、姫様×宝路回というカウントで良いのでしょうか……銀色の男は後半ずっと「かべのなかにいる」だったけど……後やはり、兄と妹というよりは、父と娘度が高いな、と(笑)
 次回、試される、魔進との絆――ほ、ホントに試してくれるの?!

◆エピソード36「RAP【ラップ】」◆ (監督:田崎竜太 脚本:下亜友美)
 ここでまさかの田崎さん……戦隊の監督やるの何年ぶり?! と思ったら、なんと『星獣戦隊ギンガマン』以来だそうで……白倉さんとの繋がりを考えると、『ゼンカイジャー』参加の布石だったりするのでしょうか。
 クリスタリアに伝わる聖なる祝祭クリスタスに浮かれる魔石たちだが、悪の組織はそんな事情に構ってくれず……自ら地球に降り立ったクランチュラが、字幕付きで歌っていた。
 「ひびくぜ邪悪なクランチュラップ! リアルなヤツらはクラップユアハンズ!」
 ヨドン反応に出撃する為朝たちだが、遅れて現場に到着した充瑠と宝路が目にしたのは、互いに背を向けてぼんやりと佇む黄緑青桃。オラディンとハコブーはリモートでパーティに参加、とか世相を取り込みつつ弛緩した空気の漂うココナッツベースに4人を連れて帰ると……
 「前から思ってるけど、クリスタリアの奴って自分勝手だよな。いつもそっちの都合押しつけられて、マジ迷惑」(ぐさっ)
 「てか……相棒とか言いながら、結局戦いが終わったらさよならでしょ? 最悪じゃない?」(ぐさっ)
 「地球の為とか言ってるが、けっっっきょくクリスタリアの事しか考えてないんだろ? ろくでもないな」(ぐさっ)
 「やっぱりキラメイストーンと私たちの間には越えられない壁がある。断絶~」(ぐさっ)
 何やら様子のおかしい為朝たちは突如として日頃の鬱憤をぶちまけ始め、衝撃を受ける各ストーン。悪い事にクリスタスの日には「悪口を言ってはいけない」という掟があり……いやその、自国の風習を、他国で“掟”と言い放つ姿勢が嫌われているんじゃないですかね……
 「そうやって押しつけてくるところがムカつくんだよ」
 「「「それなー」」」
 ハイ為朝さんリアクション早かった!
 「ぶっちーーん! 堪忍袋の緒が、めっちゃメラメラぶち切れだぁ!!」
 二重の意味で事の根幹を理解していないファイヤは絶交を宣言し、閉ざされる格納庫の扉。
 事態を把握しようと街に出た充瑠と宝路は、人々が悪口をぶつけ合う光景を目撃し、悪意の連鎖を振りまくDJクランチュラを発見する。
 「私が作り出したマイクでディスられると、心が闇に支配され、悪口しか言えなくなる。おまえの仲間は、先程私にディスられたのだ!」
 4人はそれぞれ「カッコつけゲーマー」「考えナシのランナー」「ヘタレ残念アクター」「変人怪しいドクター」とディスられて滅亡迅雷ネットに接続されていた事が判明し、4人に囲まれて攻撃を受けながら、それらを全てかわしつつ合間にラップで戦闘不能に陥らせるクランチュラさん、相変わらず、物凄く強いぞ……(笑)
 「ふざけやがって……」
 「私は本気だ! この作戦に、命を賭けている!!」
 今作のスタイルを決定づけた第2話を踏まえたやり取りですが、いやまだ、命賭けなくていいですよ?!
 急速にクランチュラさんの運命に暗雲が漂う中、銀は「ワンダーおとぼけ勘違いプリンス」とディスられて戦闘不能に陥り、この辺り改めて、下さんは“昭和の男”が使いにくそうに見えるのは、荒川さん以外の脚本陣とキャラ設定の噛み合わなかったところでありましょうか。
 「前から思ってたけどおまえなんで呼び捨てなんだよ!」
 残るは、暴発する銀の口を塞いだ赤のみ……いいこと思いついたクランチュラはあえて一時撤収し、博多南さんの分析結果、「悪口が心臓に刺さってる」が、本当に突き刺さっているのは、凄く『キラメイジャー』です。
 「負のパワーを跳ね返すほどのポジティブな衝撃」を与えられば悪口が無効化できるかもしれない、と伝えられた充瑠は、河川敷で黄昏れていたファイヤを発見、真相を説明して協力を求めるが……
 「だけど……あながち嘘でもねぇだろ?」
 「え?」
 「おまえらを俺たちの都合に付き合わせてるってのは確かだ。クリスタリアはクリスタリア、地球は地球。おまえもどうせ、この戦いが終わったら、俺らの関係は終わるって思ってんだろ?」
 「そんな……」
 「俺たち、出会わなければ良かったのかもな」
 「……何それ。……ファイヤの馬鹿!」
 「あぁん? おまえまで掟を破るのか!」
 険悪な空気になる二人だが、そこに割り込んだヨドンナがもたらしたのは、闇のMCバトルへの招待状。闇に囚われた仲間たちを救う為、キラメイレッドはクランチュラとのディスり合いラップバトルに挑む事になり、ここからラップ部分は字幕付きで展開。

 「俺はラップでも負けたりしない キラメイジャーに選んでもらった みんなを苦しめたひどい悪口 お前を絶対に許さない」

 「知ってるぜ悪口苦手なんだろ? まんまとかかった私の作戦 ここにいるやつら全員がくぜん 見込まれないのは形勢逆転」

 「悪口は正直苦手だけれど 何もしないままじゃ終われない 皆の為にここまで来たんだ 絶対倒して帰るんだ」

 「そんな悪口じゃ勝てない算段 韻も踏めないつまらん坊ちゃん リーダーの器全然ないじゃん ダサいラップだぜ余裕のよっちゃん

 おぼつかない赤に対して、クランチュラは絶妙なディスをぶつけていき、追い込まれた赤の前に、続けてMCヨドンナが登場。ベチャットが投入されて赤をステージから叩き落とし、アクションを交えながらで画面に変化をつけるのが巧妙な流れに。

 「お前が勝てる勝算はゼロ ダメなヒーローの味方もゼロ 名前変えな ひらめかないキング ネガティブシンキングな弱気ング」

 「勝算ゼロでもやるしかない ダメだって言われるのは慣れてる 俺は一人なんかじゃない みんながいるから頑張れるんだ」

 「お前の仲間は全員こっち お前は今じゃ ひとりぼっち キラキラしてないただのガキ やめちまえくだらないラクガキ」

 ヨドン側はかなりストレートな悪口雑言を投げつけてきているのですが、それをあくまで「闇のMCバトルのルールの中」として軽快なリズムに乗せる事でワンクッションを入れ、奇策だと思っていたラップバトルが、充瑠のウィークポイントを改めて正面から突かせる展開における表現の工夫としてバッチリ機能しているのが秀逸。
 それに対して返す言葉で、正負の両面から充瑠のキャラクター性を再確認しつつヒーロー性を引き上げるのも巧妙なアイデアで、少し遅くはなりましたが、今回でグッと、充瑠のキャラが磨き上げられました。
 「俺は……俺は……」
 ヨドンナの猛攻に言葉に詰まった赤はペチャットに倒されて変身も解け、クランチュラ渾身のラップバトルでキラメイジャー完全敗北……と思われたその時、姫様を引きずって駆け込んできたのは、キラメイストーン@ファイヤ。
 「ファイヤ……こんなとこまで何しにきたのさ!」
 「ファイヤは、充瑠さんが心配で」
 「いまさら心配とかなんなの? ……頭でっかち がんこで分からずや 見損なった 信頼してたのに そんなもんなの? 俺たちの絆!」
 立ち上がった充瑠の言葉に字幕を重ねる事で、ラップバトルの文脈がスライドした事を示すのが、大変お見事で、この手の変則バトルは田崎さんの好むところでもありますが、今作初参戦にして、ベテランらしい鮮やかな見せ方でした
 あと、充瑠のキャラ補強のついでに、遅まきながらファイヤを「頑固」に位置づけているのも、巧い(笑)
 「言いやがったな……DJ! 音楽!」
 DJペチャットはノリで音楽をかけ出し、ここに始まる、ファイヤと充瑠のラップバトル。

 「キラキラしてた他のキラメイジャー お前はどこにでもいるティーンエイジャー 唯一の友達はスケッチブック いつ自分の力に気付く?」

 「そうスケッチブックだけが友達 だった毎日は一変した それも全部全部ファイヤのせい 『お前は変われる』って言ってくれたから」

 「変わったのはお前の意思だ 俺はただのクリスタリアの石だ スケッチブックで俺らを変えた 何度でも言う お前スゲー奴だ!」

 「ありがとう俺と出会ってくれて 何があっても切れない絆 絶交なんてしない絶対 俺たち全員でキラメイジャー!」

 第1話を土台にした上で、「いつ自分の力に気付く?」「だった毎日は一変した」「全部ファイヤのせい」「『お前は変われる』って言ってくれたから」「変わったのはお前の意思」「スケッチブックで俺らを変えた」「何度でも言う」「ありがとう俺と出会ってくれて」と、やりとりにおける言葉のチョイスがいちいち素晴らしく、滅茶苦茶いい話に跳ねた!
 また、気弱な面のある充瑠と、頑固なファイヤがこじれた時に、歌に乗せる事で本当の気持ちを伝えられるというのは、バンド回や演劇回とも繋がっていて『キラメイジャー』としての納得度が高く、こんな時、心を癒やして、活力を与えてくれるのは…………エンタメだ! エンターテイメントだ!!
 充瑠の絵に始まって、広義の芸術活動を通して何かを伝える、というのは今作の根幹的なテーマに則っており、ラップ(正直苦手で身構えていたのですが)をこれ以上ないピースとして機能させ、『キラメイジャー』のを真芯を貫く物語として広げてみせた下さんが会心の仕事。
 二人のバトルは聴衆の喝采を受け、ポイント大逆転。
 「これが本当のバトルだ。リスペクトあってのディスだ」
 悪意に感染されていた司会ラッパー(今回のラップを観衆された本物のラッパーさんとの事)と仲間達も正気を取り戻し、実際のラップ(バトル)へのフォローを忘れないのも、手堅い目配り。
 並んだ6人はキラメイジャーに変身してペチャット軍団を蹴散らしていき、怪人ポジションを倒すプロセスを経なくても、怪獣呼んで巨大戦に移行できるのは、格をいたずらに落とさずに幹部を前線に投入できる良い設定ですよね……と油断していたら、どうして! 怪獣の! 上に乗りますか! そこはいけません! そこに立って生き残れるのは、某宇宙刑事だけです!!
 クランチュラ自ら操るDJ巨獣が出現し、皆をかばって、ファイヤ活躍! そこに他の魔進たちも駆け付けて仲直りし、充瑠とファイヤの掘り下げから、魔進大集合まで綺麗に納めて、魔進の名乗りも加えた豪華なフル揃い踏み。



「「キラッと参上!」」
「「カラット解決!」」
「「魔進戦隊!」」
「「「「「「キラメイジャー!!」」」」」」

 「ヨドンへイムよ、この星はお前達の好きにはさせん!」
 ここで主題歌入れてくれたらパーフェクトでしたが、4大ロボの変形合体を挟んでから、DJ巨獣と激突。追加武装の建機軍団が全て投入され、シールドで防いだDJ光線を4大ロボで反射し、最後はワンダードリルで決めさせる、ドリラーへの目配りも泣かせます。
 「まだだぁ! 私は、こんなところで負けたりしない!」
 そ、それも駄目な台詞…………!
 追い詰められたDJ巨獣はトリプルフォーメーションから最大出力のDJレーザーを放つが(この分離光線ギミックは格好良かったです)、王様ゴーアローがそれを突き破って炸裂し……チェックメイト
 「まさか私が……私がぁぁぁぁぁぁ!!」
 クランチュラは爆炎に呑み込まれ、え、え、え?! えええええ??!!
 た、た、た、退場………………?
 「……充瑠、すまなかった。別れを想像したら、たまらなく寂しくなって、出会わなければ良かったなんて言っちまったんだ」
 夕陽を見つめる充瑠にファイヤは本音を語り、巨大消防車状態で横にそっと寄り添うのがいいカット。
 そして、始まりがあれば終わりがあり、出会いがあれば別れがあり、それはとても寂しい事だけど、でも、出会いがなければ始まりもしない、のは“物語”の本質として非常に良い所を突いてきて、沁みる言葉でした。
 「わかってるから。もうやめて、ファイヤ」
 「ああ。充瑠……これから先、何があっても、俺はおまえと一緒だ」
 「……うん。……ずーーっと一緒に居てね、ファイヤ!」
 「ああ!」
 微笑み合う二人は夕陽を見つめ、当たり障りのないといえばなく、当たり障りを作ろうと思えば幾らでも作れるやり取りで……ここから年明け早々、
 「ふふふ、愚かな道化のガルザ、そして健気な充瑠くんは私の人形として、ここまで本当によくやってくれた」
 「……では王様、いよいよあの計画を?」
 「ああ。全ての準備は整った。今こそ私は、王を超え、不死鳥を超え、予言を超えよう……私が新たな神となる為に、力を貸してくれるね? 無鈴くん、君こそが真の戦士だ」
 というやり取りを聞いてしまった姫様が行方不明になったらどうしよう……(その説はもう取り下げる事にしたのでは?)。
 もう一つ掘り下げの不足していた充瑠が、いまいち存在感の薄かったファイヤともども爆発し、ラップ要素の組み込みがハイレベルな名作回だったのですが、ですが、まだちょっと、クランチュラさん退場? の衝撃に気持ちが整理できておりません……。
 もうちょっと心の準備期間が欲しかったというか、本当に退場編なら前後編でやってほしかったところですが……話数減の都合もありますし、内容的には1話の中に非常によくまとまっており、不足感も詰め込み感も無い完成度なのが、大変難しい……。
 メタ的には、年明け邪面師無しで乗りきるの? というのはあるものの、その辺りの理由付けはどうにでもなるところであり、まあ、ドサクサに紛れて回収していた事にしてもいいんですがガルザ(なんか冒頭で探していましたし)。
 一応、重力子レベルで生存に期待しつつ……今作においては准メイン的な扱いの下さんが、ここまでの今作をしっかりまとめて充瑠とファイヤの関係性を集約し、素晴らしい仕事でした。二人の扱いに関しては、第1話で既に完成していたので、ここまで特にスポットを当てる必要が無かった、という事になりましたが、ラップという要素を加える事で、お互いがその絆を再確認するやり取りが劇的になったのが、アイデアとして大変面白かったです。
 これは、ある程度の数を見ている故があるかもですが、ラップバトルにおける充瑠の言葉(「お前を絶対に許さない」「何もしないままじゃ終われない」「みんながいるから頑張れる」など)は概ねヒーローとしては定番で、しかし、それを苦境において慣れないラップの場で絞り出す事から真実味が増して劇的になり、その中で思わず洩れる「ダメだって言われるのは慣れてる」がある事で、後半の「『お前は変われる』って言ってくれたから」が跳ねる、という構成が本当に良く出来ていて唸らされました。
 メンバーの年齢ほど戦隊の現場から離れていながら、変化球の中にある正道の融合を見事に汲み取ってまとめあげた田崎監督の演出も、実にお見事。
 「どこにでもいるティーンエイジャー」と「ただのクリスタリアの石」が出会った時、そこに奇跡は生まれる――キラキラ輝く為に僕らは巡り会ったと思うから、それはいつか別れの痛みを伴うのかもしれなくても――

 「充瑠、今こそおまえも変われ! おまえの中のキラキラ、もう信じられるだろう!!」
 「変わる……変われる……変わりたい!!」

 下さんは前回の博多南回も良かったですが、今回はそれを超えてくる傑作回でした。
 次回――やってほしかった女性コンビ回で、突撃娘だった瀬奈にアンニュイな芝居をやらせてくれそうなのも、どう広がるか楽しみ。