東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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妖精パワーを信じるんだ

高速戦隊ターボレンジャー』感想・第15-16話

◆第15話「ヤミマル!必殺の照準」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 さすらい転校生・流星光から力たちに届く、ワープロ書きの挑戦状!
 「ふっふっふふ、地獄へ落ちるのはおまえたちの方さ。これがお前達への葬送曲だ」
 律儀に呼び出しの場所へ向かった5人に対し、流星がいきなり樹上から躍りかかると、校舎の壁を使っての三角飛びからスピンキックなど突然のすさまじい格闘戦が展開し、さすがに、生身のはるなは殴り飛ばしませんでした(笑) 結果として、もつれあう5人の外周で、ああでもないこうでもないと左右に動き回るはるなの図が微妙に間抜けな事になっているのですが、どうせ殴らないなら、挑戦状に女子の名前入れるよ流星!!
 「流星くん」「痺れるー」
 なお、これを取り巻くギャラリーからは黄色い声援があがっており、ここだけ凄く昭和中期(笑)
 「いったい、おまえは、何者なんだ?!」
 「いずれわかるさ」
 力たちを痛め付けるだけ痛め付けて流星は去って行き、教員にこっぴどく叱られた5人が廊下に立たされている頃、太宰博士は、新しい必殺武器の開発に全力をあげていた。
 そこへ5人が助手としてやってきて、「ちょっとしたショックで爆発する」小型エネルギー炉の調整をナチュラルに高校生に任せる太宰博士(笑)
 から壁が吹き飛ぶ映像に繋がって、太宰邸大爆発?! と思ったらそれは新たなる暴魔獣の破壊活動! は定番ながら面白い繋ぎで、街中を転がり回る謎の円柱を追う赤黒桃がバイクで轢くと、合体した円柱の正体は、巨大なダルマ落とし。
 ……今回はもう、ここだけで1話分の満足感でした(笑)
 更にヤミマルが現れてダルマ落とし攻撃で3人にダメージを与え、巨大ダルマ落としはダルマオトシボーマへと変貌。ダルマ落としそのままを人間のフォルムにしつつ、頭部がズレて歪んでいる事で怪人としてのグロテスクさが表現されていて、これは傑作デザイン。
 「ターボレンジャー、これで終わりだな」
 仲間のピンチを知った洋平と俊介は試作品の武器を持ち出して駆け付けるが、それは発射と共に敵味方を巻き込んで暴発し、バラバラに。一応、ヤミマルにもかつてないダメージを与えて撤退に追い込むが、その代償として小型エネルギー炉の制御装置が壊れてしまう。
 「このままでは、あと1時間で限界に達し、爆発してしまう。もし爆発したら、半径500m以内のものを、消滅させてしまう!」
 だざいーーーーーー!!
 ……博士は早く山口先生とお付き合いを始めて、人の心というものを学んだ方がいいかもしれません。
 「でゅっひゅっひゅっひゅっひゅ、馬鹿な奴らだってんだ! 自分たちの作ったメカで、ピンチに陥るとはなっどぅふっふっふ!」
 責任を感じる洋平と俊介は、不安定なエネルギー炉を命がけで人気の無い海岸まで運んでいく事になり、この状況を知った暴魔百族は、ヤミマルに高速戦隊を倒させるわけにはいかない、と輸送中を狙って刺客を放つ。洋平と俊介に向けてズルテンバイクが迫ったその時(この場合、体当たりが成功するとズルテンも死にますね……)、そこに割って入ってウーラーに平然とスピンキックを叩き込んだのは――
 「高校流れ者、さすらい転校生・流星光――」
 流星は、背中のトレードマークをズルテンに見せつけると、そのまま後ろ回し蹴りを叩き込み、不敵に笑う。
 「同級生のよしみで助けてやったぜ」
 「おまえツッパリだけど、本当は、いい奴だったんだな」
 「照れるじゃねぇか。さあ急げ。でもゆっくりとな。ゆっくり急げ」
 「む、難しいこと言うなよ!」
 ジンバ率いるウーラー軍団からも洋平と俊介の運搬コンビを救う流星だが、その手にヤミマルと同じ傷を負っていた事から力はその正体に気付き、海岸に辿り着いた洋平と俊介を狙う銃口……を構えるのは、流星光。その凶弾がエネルギー炉を貫く寸前、間一髪、身を挺した赤がカバーリング
 「流星光、いや、流れ暴魔ヤミマル! 卑怯な真似は許さないぞ!」
 「ふふふふふ、やっと今頃わかったか。そうさ、人間界にあっては高校流れ者、さすらい転校生・流星光。そしてその実態は――流れ暴魔ヤミマル!」
 さすがに前後編以上は引っ張らず、5人に背中を向けた流星はポーズを取るとヤミマルへと変貌し、仮面をあげて隈取りメイクの素顔を披露してから、高速戦隊へと襲いかかる。
 タイムリミットまで後わずか、自爆覚悟のダルマ落とし(追走する怪人の頭部がいきなりバネ仕掛けみたいに揺れており、頭部を飛ばして攻撃するシーンがあったがカットでもされたのでしょうか)に追い詰められた洋平と俊介は、爆発寸前のエネルギー炉をダルマ落としにぶつけて海に飛び込む事で、大惨事をなんとか回避。
 ダルマ落としボーマは、生身のヒーローに爆弾をぶつけられて死ぬ、という大変もの悲しい最期を遂げ、『ダイナマン』や『チェンジマン』でも、必殺技(兵器)が破られた後に、すぐに新たな技(兵器)が登場せずに既存の技の工夫などで撃退する、という展開があったので、割と曽田さんの好きなシチュエーションだったりするのでしょうか。
 巨大戦では、高速剣を投げつけて頭上から串刺しにする秘剣ジュウオウキングでダルマ落とし攻撃を封じると、銃の乱射でトドメを刺す凶悪なフィニッシュ。
 ひとまず窮地を乗り越えた5人は、夜の海に向けて口笛を吹く流星の姿を目にする。
 「ヤミマル」
 「おまえ達が都立武蔵野学園高校の生徒だって事は、暴魔には内緒にしといてやるからな」
 「なぜだ」
 「おまえ達を倒すのは、この俺でなければならないからだ」
 高校生戦隊という事でか、正体の秘匿といった要素が加わり、ヤミマルは勝利の為の手段は割と選ばないが、ところどころで自分勝手な侠気を見せてくる、独自のモラル系のキャラに。
 「ヤミマル、いや、流星光。なぜおまえの血は赤いんだ」
 その侠気を汲んだ力は流星に問いかけて定番の部分をしっかりと突き、ここで逸れる視線とピクリと動く右手のワンカットを入れるのが巧い。
 「流れ流れて二万年……昔の事は忘れたぜ」
 流星はニヒルに嘯き、果たしてその正体は、そして激化する戦いの行方はどうなる……?! エネルギー炉輸送の要素はそこまでスリルとして盛り上がりませんでしたが、ダルマ落としボーマは大変良かったです。

◆第16話「射てVターボバズーカ」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 一同の衣装が夏服に替わり、新兵器の動力となるエンジンが完成するが、そこにヤミマルとコブボーマが現れて試運転をしたばかりのエンジンが木っ葉微塵。ヤミマル流星剣を受けて再び真っ白になった5人は川に落ちた上に、迫るヤミマルの危機を伝えに来たシーロンの姿が見えなくなってしまう!
 「なんとしても俺たちのパワーを取り戻すんだ」
 「でも、あの力はなんだったの? 妖精が見えたり、声が聞こえたりするあの力は」
 変身も出来ない5人はヤミマルに追い詰められるが、そこに炸裂する妖精ダイナマイト! シーロン捨て身の一撃に救われ、ひとまず洞穴に身を隠した5人はそこで、幼い頃に妖精の光を浴びた神秘体験を思い出す……。
 第2話の初変身がかなり強引だったので、強敵登場の新展開の中でそこについて補強しようという狙いだったのでしょうが、そもそも流星剣で白くなったり変身能力を失ったりする理由が特に説明されないので(アンチ妖精エネルギー……?)、強引だった部分に理屈を付けようとしたら別の部分が強引になってしまう元の木阿弥。
 あと、パワーを失ったらブレスの通信機能も使えなくなってしまったのですが、ブレスまるごと妖精パワーで動いていたのでしょうか……博士は、家から電話でブレスと連絡取っているのに……(笑)
 自分たちがシーロンとコンタクトできたのは、過去に妖精の光を浴びたからに違いないと考えた5人は、妖精パワーを取り戻す為、豊かな自然の残るラキアの森へ。しかしその前に弓矢を構えたヤミマルが立ちはだかり、ヤミマルの複数武器路線は、2万年間修行していた設定とも噛み合いますし、立ち回りにバラエティが出て良い感じ(槍アクションが格好いい)。
 掟破りのヤミマルショットガン! に意志をくじかれそうになる5人だが、懸命に生身で戦いを挑み、死中に活あり白刃取り。
 「この地球を守るのは、俺たちしかいないんだ!」
 まるでその叫びに応えるかのように大地と森が鳴動し、溢れ出した妖精の聖なる光を浴びた5人は、再び力を取り戻しターボレンジャー
 5人の勝利を信じ続けた太宰博士は超速で作り直したエンジンを組み込んで新兵器・Vターボバズーカを完成させており、それは試運転しなくていいのでしょうか……まあ「今……私に、出来る事といえば……」と覚悟を決めた太宰博士がスポーツカーに試作エネルギー炉を積み込んで飛び込んできて太宰ダイナマイトを決めるよりマシか……と思いは色々ありますが、ここで流れるBGMが大変格好良い。
 ターボレンジャーの元にバズーカが転送され、車戦隊という事でかエンジン部分が強調されハンドル操作でシュート! 発射と共に3Dグリッド表示の地面のイメージが入るのが格好良く、対抗しようとしたヤミマルの流星剣を打ち破り、コブボーマを完全粉砕。
 「見たか! Vターボバズーカの威力を!」
 現代文明の火力の前に敗れ去ったヤミマルはコブボーマを巨大化して撤収。ターボロボは突然剣を振りかざしてきたコブボーマを投げ飛ばすと銃撃、そしてパンチ、から奪った剣を突き刺してトドメの銃弾を叩き込み、引き続き必殺剣にこだわらないスタイルで色々とやってきます。
 シーロンは5人によって精霊の光の元へ運ばれると回復し、そのまま、バイストン・ウェルに旅立たなくて良かったですね……。
 ナレーション「ターボレンジャーは、今始めて、自分たちの力の秘密を知った。この大自然を、一番愛する子供達に、妖精たちは、未来の戦士となるべく、素晴らしい力を与え、いつまでも美しく、清らかな自然を守るように、願いを託したのだ」
 第2話時点ではぼんやりと、この星の美しいもの――「妖精」が象徴――を守りたいと思う気持ちが妖精と同調したエネルギーを生んだ、ぐらいだったターボレンジャーのパワーに説明が付加されたのですが、ナレーションの内容に「比喩表現」と「劇中のバトル」が入り交じった結果、「未来の戦士」という言葉が、大変殺伐とした響きをともなう事に。
 そして5人がターボレンジャーに選ばれたのが、「見出された素養」というよりも「仕組まれた資格」だった事が判明してみると、


 (あなた達こそ、暴魔百族と戦う戦士なんです)
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 「ずーっとずーっと、君達のような若者を探していたんだ」

 第2話におけるシーロンと博士の言葉がまた違った意味を帯びてくるわけですが、妖精エネルギーをずっとサーチしていたのか……。
 正直、ふわふわした偶発的な正義感でも良かったような気はするのですが、そんなターボレンジャーの力の源と強い意志が、特に新兵器と関係しないのでヤミマル撃破ともパズルが噛み合わず、とりあえず、明日から学校で気まずい!!