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狙われたシティ

仮面ライダー鎧武』感想・第5-6話

◆第5話「復活!友情のイチゴアームズ!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄
 前回省略されたブドウのバトルは今回のアバンタイトルに使われ、ブドウスカッシュもぎたてガトリングによりイチゴインベスは消滅。そんなミッチの前にも謎の白い女が現れ、この先はもうリセマラは出来ない……と警告するが、ミッチは戦極ドライバーを手放す気はないと宣言。
 「これは僕にとって、宝物なんですよ」
 ミッチは紘汰の説得にも耳を貸さず、誰かに決められたレールではない自分の道を切り拓く為の力としてベルトへの執着を覗かせ、ドライバーが象徴する「力」に何を求めるのか? どう扱うのか? を、キャラクターそれぞれの立場から描いていくアプローチ。
 フルーツ柄のトランプを器用に操る戒斗は、「力」とは支配・序列・整理であると持論をメガネ城之内に語り、弱者の居場所から、はみ出す可能性を秘めていると見なすチーム鎧武へとその矛先を向ける。
 多数登場するキャラクターの立ち位置を明確にしたい事もあってか、全般的にキャラクターの口数がやたら多く自己説明的で、いってしまえばテキストアドベンチャーなのですが、これは虚淵さんがゲームライターでもある事が影響していそうでしょうか(虚淵さんシナリオ作品に触れた事がないので、印象論になりますが)。
 実写作品としては、演出サイドからも、もっと刈り込んで欲しかったところでありますが、トランプ戒斗はメガネ城乃内とワイルド初瀬を引き連れてチーム鎧武の事務所にカチコミを仕掛け、バロン&その操るインベス2体vs龍玄のバトルがスタート。
 「今更のこのこやってきたか、葛葉紘汰! 力に背を向けたおまえに用は無い」
 3対1で龍玄を袋だたきにするバロンは連絡を受けて駆け付けた紘汰に視線を向け、戒斗が紘汰をフルネーム呼びなのは、らしくて面白い(笑)
 紘汰と舞の見つめる中、一方的に嬲り者(なんか、2話ぐらい前に主人公が似たような事をしていましたね……)にされながらも龍玄は膝を屈せず、誰かに憧れ、自分の居場所を守る為だからミッチは強くなれるんだ……と、受け手の共感を狙った要素を配置してくるのですが、やっている事は(アーマー纏った)人間同士の喧嘩なので仮面ライダー』の看板とは大変相性が悪く(敢えて言えば『ファイズ』が慎重に計算してギリギリを攻めたところを、凄く大雑把にはみ出してしまったというか……)、コンセプトとコンセプトが剥き出しのまま全く溶け合わず、成分無調整ヤンキーマンガのロジックで突き進んでくるので大変困惑します。
 出してくる方は「牛丼です!」と言って出してくるけど、実際は味付けした牛肉の上に、皮も剥いていない生の玉ねぎがそのまま乗っている、みたいな。
 「……ベルトだ。舞、ベルトをくれ!」
 「……紘汰、それは!」
 「違うんだ舞! 今度こそ俺の為だ」
 「……紘汰」
 「俺は俺自身の為に戦う。その為の力が欲しい」
 「駄目だ紘汰さん! あなたにはもう、戦う理由なんてない!
 「あのベルトは俺しか使えない。俺にしか出来ない事をやり遂げる為の力! 俺はそいつを引き受ける! そいつがきっと、大人がよく言う責任ってやつだろ」
 今作の通奏低音となっている「子供」と「大人」について紘汰がキザな口調で触れるのですが……それで殴り合いする時点で、大人とは言いがたいけどな……(ここではあくまで「力」は象徴的なものであってアーマードライダーそのものを指すわけではないとはいえ)。
 舞からベルトを受け取り、再び鎧武に変身した紘汰は、バトルフィールドに突入。
 「ここからは俺のステージだ」
 「やはりな。弱さの枠には収まらないやつ」
 武器を打ち合わせる鎧武とバロンが互いの信念をまた長い台詞でぶつけ合うのですが、どう言いつくろっても今回ずっと無軌道な青少年が殴り合っているだけなので、“本物の強さ”とは何かを語られてもヒーロー物としては極めてノリにくく、漂う月刊『少年チャンピオン』感(イメージ)。
 ……念のために付け加えておきますと、ヤンキーマンガ(というのも便宜的で雑なジャンル区分ですが、ご容赦)の論法が問題という話ではなく、ヤンキーマンガとしての文脈やロジックでこそ成立する論法をそのまま《仮面ライダー》に持ち込んでいるので、論法が効果を発揮しない上に、ヒーロー作品だからこそ成立する論法が惨殺されてしまっているのが問題、という話。
 せめて戒斗を理不尽な暴力を押しつける悪役として徹底できればまた違ったのでしょうが、一方の雄として描きたい都合もあってか、戒斗の売ってくる喧嘩はエクスキューズとしての「インベスゲームの枠内」という扱いでホビーアニメの文法で処理され、それもまた上辺を借りてきているだけで物語への落とし込みが雑な為、ヒーロー×ヤンキー×ホビー、が一つの鍋の中で踏みつけ合っているみたいな事に。
 物語的にはまだ「ヒーロー未満」という意識なのかもしれませんが、看板を掲げている以上は、そこは表向きのカモフラージュをする工夫が欲しかったところです。
 鎧武は新たにイチゴフォームを発動し、クナイで攻撃。
 散々言われ尽くしている事かとは思いますが、とにかく、雑魚インベスのデザインが戦闘シーンで致命的に映えないのが辛く、インベスゲームの説得力を欠く、戦闘は盛り上がらない、といいことが一つもありません。
 イチゴとブドウのダブルアタックでインベスを撃破するもバロンは健在だが……そこに飛び込んでくる、メガネとワイルド。
 「二対一はさすがにまずいっしょ、リーダー」
 「……貴様等」
 「見損なってもらっちゃ困るね。俺たちもそうそう捨てたもんじゃないんだよ」
 ずっと物陰で下っ端ムーヴしていて、機会と見るや画面の外からそそくさと走り込んできた城乃内と初瀬が取り出したのは、第4・第5の戦極ドライバー。
 「男子三日あわざれば刮目せよってな!」
 「「変身!」」
 ハンマー持ったドングリ邪面と、長槍持った松ぼっくり邪面が誕生し、如何にもやられ役な二人が、何故か今週の一番美味しいところを持っていくのは、ちょっと面白かったです(笑)
 一方、メロン兄さんとシドが密談中で、「データの収集」「テスト」「モルモット」「時空間転移」「ヘルヘイムの森の謎」といった不穏な言葉を交わし合い、沢芽市にばらまかれていく戦極ドライバーは果たして何を実らせるのか? そして、ユグドラシルの狙いとは……? で、つづく。
 なお兄さん、シドがわざとらしく提出したライダーリストを突き返し、些事は下の者に任せる、というスタンスで、ミッチの件を知らないままの理由付けにされるのですが、プロジェクトリーダー(?)としてそれでいいのでしょうか……(笑)

◆第6話「ドリアンライダー、参戦!」◆ (監督:諸田敏 脚本:虚淵玄
 「俺は、アーマードライダー、黒影」
 あ、なんか、松ぼっくりが自分で格好いい名前を付けたぞ。
 「そしてこいつは、グリドン」
 「え? え? えーーーーっ?!」
 足軽の薫り漂う二人の名乗りからコミカルなBGMも流れ出して一気にお笑いの雰囲気になりそうになったところをテーマ曲で吹き飛ばし、仕切り直しと槍を向けるバロンだが……背後から、黒影が鈍器で一撃!
 ……ですよね(笑)
 城乃内と初瀬の変身と裏切りはわかった上で面白い流れだったのですが、そのまま木の実コンビに完敗するバロンと、それをぼんやりと見つめるイチゴとブドウの姿は凄く冴えない展開で、変身解除した戒斗が地べたに這いつくばる所まで傍観していた上で「おまえらの事情は知らないが、ここまで卑怯な連中の片棒を担ぐのは御免だね!」とか割って入られてもな……。
 イチゴvs松ぼっくり、ブドウvsドングリのマッチアップとなり、もはやただの場外乱闘に声援を送るチーム鎧武のダンサーズ。
 ……スポーツ観戦感覚、と捉えてほしいのでしょうが、既にインベスゲームからは脱線していますし、明らかにルール無用のストリートファイトなので、この連中の良識はどこ……みたいな状況になっており、紘汰がメロンに本物の殺意を感じて脅えていたのがやはり、刃物と銃器と鈍器の入り乱れるバトルに関する見る側のリアリティレベルを引き上げていて、段々、沢芽市民が集団で洗脳されているみたいな感じに(都市規模の物語だと、実際にそうでしたとかなりかねませんが)。
 「今回は、たまたま調子悪かっただけだからな!」
 「覚えてやがれ!」
 ドングリは派手な階段落ちを披露して撤収し、松ぼっくりは輪切りにされて逃走し、共に芸術点の高い捨て台詞。
 「なあ、友達は選んだ方がいいぞ」
 「……あんな奴らはただの手駒だ」
 紘汰に手を差し伸べられるも自力で立ち上がる戒斗さん、凄く情けない状況なのに、強引に! テーマ曲で! 立て直した!(笑)
 「窮屈な生き方してんな、あんた」
 「黙れ!! 強さとは、奪う為の力。ただ一人、誰が頂点に立つか決めるためのものだ! 貴様の腑抜けた綺麗事など、俺は断じて認めない!」
 「……あの男とは、とことんまでやり合うしかないのかもな」
 去りゆく戒斗の背中に向けて紘汰は呟き、あまりにも脈絡なく、それっぽい事を言ってみただけなのが、もはや面白いのレベル。
 かくしてアーマードライダー5人が入り乱れた戦いには決着が付き、溜まり場で現状を整理するミッチは、ドライバーを手に自信を得た事で、副長・舞を守る親衛隊長としてチームの中での存在感を増していく事に。
 「いよいよ僕たち鎧武は、バロンと並んで同率1位に!」
 「「「「「いえーーーい!!」」」」」
 ……大興奮して歓声をあげるメンバーですが、君ら、それ、喧嘩の成果だからな。
 沢芽市内の水道水にはメト○ン印の赤い結晶体でも溶かされているのか、或いは夜な夜なパンドラ光線が市内に投射されているのか……。
 「喜んでばかりはいられないわよ! トップ争いに加わったからには、それ相応のダンスを見せないと」
 すかさず舞がチームを引き締め、脳内でどういう接続処理をされているのかいっそ面白い事になっていますが、『プリパラ』(ダンス)か『カードファイト!!ヴァンガード』(インベスゲーム)かどちらかに絞ればまだ良かったものを、『プリパラ』と『カードファイト!!ヴァンガード』を同時に行いながら、都合良くホビーアニメの摂理(ある特定のホビーが世界の法則に干渉し支配する)を持ち込もうとしている為に、作品世界の支配法則が戦国乱世。
 その頃、新たなバイトを探す紘汰はファンシーなケーキ屋に辿り着き、とんでもなく濃いパティシエにあっさり不採用にされていた。
 「本物を知りたいのなら、もっと男を磨いてから出直していらっしゃい。アデュー」
 ……ところで君は何故、ケーキ屋に? から、店についてほとんど知らないまま面接に向かった事が明かされ、紘汰とパティシエを接触させておきたい都合で、条件だけ見て雑に選んだ紘汰の適当感がまた上がってしまっていて、それでいいのか。
 パティシエ関係ではこの時期の諸田さんらしいクドめの演出が続き……まあ、第5話までと少し空気を変えるのが狙いだったと思われるので、今回に関してはこれはこれで、ではありますが。
 一方、連合が完全に解体したバロンの戒斗は、毎度の長い台詞の間を埋める為にか器用にトランプマジックを繰り返しながら王様ムーヴで強引に格を保ちつつ、端々で鎧武(紘汰)を持ち上げて、ライバルの座を死守しようと頑張っていた。
 シドは連合を抜けた赤帽に、6人目としてドライバーとロックシードを渡し、メガネとワイルドは膨らみ続ける課金額に悩んでいた。
 「ねえ初瀬ちゃん、俺たちに足りないのって、チームワークだと思うわけよ」
 「……成る程。よし。そうと決まれば特訓だ!」
 ……君らは、この作品の、オアシスだな……(笑)
 兄のカバンの中に戦極ドライバーがあるのを目にしたミッチは、カバンの中からこっそりとスイカキーを拝借し、各々の思惑が交錯する中、ビートライダーズのバトルを“お遊び”と切って捨てる一人の男が、そこに更なる嵐を巻き起こそうとしていた――
 「このままでは世間が本物の、パッション! を忘れてしまうわ! ……放っておけないわね。誰かが本物の戦場、本物のバトルというものを、見せつけてあげないと」
 足軽コンビが橋の下でコミカルに訓練中、そこにギャラリーを呼び集め、インベスゲームを宣言したのは、噂の天才パティシエ、鳳蓮・ピエール・アルフォンゾ。
 「変・身」
 店で騒いでいた赤帽を叩きのめしてドライバーとロックシードを入手していたピエールは、その力により、ドリアン邪面に華麗に変身!
 「さあ、始めますわよ。破壊と暴力の、パテントを!」
 ギャラリーにぼんやり加わってモブと同じリアクションをしていたダサおくんもとい紘汰は、主人公だった事を思い出して一応止めに入ってはみるが、見世物としての戦いを積極的に肯定するドリアンがグリドン&黒影とバトルを始めて、つづく。
 ここまでの『鎧武』では一番面白かったのですが、私の笑いどころが、作品として全く狙っていない部分のような気がして、戸惑います(笑)
 2年前の『フォーゼ』は、概ね狂気で乗りきろうとしつつ、ときどき正気に戻って「あ、こんな背景がありまして……」とか出してくるのが作品として中途半端な感触になっていたのですが、今作は装飾は明らかに狂気なのに、ここまで紘汰のキャラ付けを中心に根っこのところでなるべく正気寄りのアプローチだったのに対して、諸田監督が「いやこれ、狂ってるでしょ」と思い切りぶつけてきたのが、果たして物語に楔を打ち込むのか否か……次回――大玉スイカ邪面、登場。