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狼、飛ぶ

牙狼GARO>』感想・第20話

◆第20話「生命」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:小林雄次林壮太郎梶研吾
 「俺はもう誰も死なせない!」
 いよいよタイムリミットの迫るカオルの症状が悪化し、紅蓮の森へと向かった鋼牙は、樹木と一体化したような不気味な番人と接触。全編通して幻想的な異界行を、舞台装飾的な要素で彩って雰囲気作りに成功しており、美術センスで画面のクオリティを引き上げるのは、雨宮監督の強みの出るところ。
 「命を投げ打ってでも、行く覚悟があるっていうのかい?」
 「俺の気持ちに揺らぎはない!」
 魔戒法師ではない鋼牙に特例として通行を認める代わりに、一番大事なものを差し出せと言われた鋼牙は左手を突き出し……ザ、ザルバ?! ……ではなく、たぶん握りしめている騎士の剣の方だとは思うのですが、映像的にはザルバに見えない事もない上にザルバも凄く大事だしな……とちょっと悩ましい(笑)
 なおザルバ、この後、森の移動中に鋼牙の独り言を回避しつつ適度に説明を入れられる役として大活躍を見せるので、取られなくて良かったザルバ。
 鋼牙の覚悟が知りたかった、と試していた番人は何も奪いはせず、更に鋼牙が阿門そして邪美の形見となった法師の筆を持っていた事から、剣に鎧の力を与えた上での持ち込みを許可し、生身で黄金騎士の剣を背負っていると、物凄いRPG感(笑)
 鋼牙は法師の筆に導かれながら森の中を進んでいき……
 「紅蓮の森では、決して走らない事。決して振り向かない事。その二つの教えだけは、必ず守る事」
 なので、木の上を飛んでいく事にしました!
 ……番人のこの助言、神話的要素として終盤の布石になるのかと思ったら全くそんな事はなく、雰囲気作りのフレーバーだけだったのは、ちょっと残念。
 森に巣くうホラーや謎掛けを突破して突き進んでいく鋼牙だが、黄泉路へと彷徨うカオルの霊体を目撃し、生命を諦めようとするカオルに思わず平手打ち(鋼牙の方がはたく側になるとは……)。
 「すまない。こうなる前におまえを救ってやれなくて」
 鋼牙、基本的に勇者属性なので、真実を知る前に解決できればそれが一番いい、というタイプなのはまあ、わかるのですが。大体、傷口を広げるタイプでもあり。
 「鋼牙……」
 「カオル……おまえにはまだ時間がある。……俺はおまえの描く絵がもっと見たい。だから……生きる望みを捨てないでくれ」
 そして鋼牙の心情はオープンにしにくいカードなのでやむを得ない面もあったのですが、ここで「おまえの描く絵」というエースを切るならば、もう少し端々での積み重ねは欲しかったところ。
 鋼牙は生きる意志を取り戻したカオルに、帰路の道しるべとしてザルバを預け、更に森の奥へ。
 「行け。俺は必ず戻る。信じて待ってろ」
 そして森を抜けた平野で出会ったのは、ホラーをビーム一撃で消し飛ばす、突然の、カラクリ防衛装置。
 一方、鋼牙を信じる心を取り戻したカオルには、存在を忘れられかけていた熊のぬいぐるみが凶悪な怪物となって襲いかかるが、ザルバファイヤー! そして、カオル、遂に飛ぶ。
 魔戒騎士としての鋼牙、そして鋼牙とカオルの関係性にとっても大きな転機のエピソードなのですが、割とザルバ回なのがおいしい(笑) この後の展開を考えると、鋼牙の元に筆と繋がりを残した阿門と邪美を含めて、“鋼牙の周りに集まった人々”のエピソードともいえ――それ故にこそ、鋼牙が見出した道に説得力が増すのは鮮やかな作り。
 「私は、ホラーを狩るために作られた、ただそれだけの存在だ。人を救う為に作られたものではない」
 体内に浄化の実を宿した無機質なカラクリドラゴンとの交渉は物理に移行するが、機械独特の動きに鋼牙は苦戦。
 「何故そこまで戦う?」
 「……つまらない奴だ」
 「なぜ私がつまらない」
 「……まるで昔の誰かと同じだからだ! かつてそいつも貴様と同じように、感情を捨て戦ってきた。ホラー狩りを義務と感じて!」
 台詞の中身からカラクリドラゴンが鋼牙の鏡像なのは明らかでしたが、それを視聴者への仄めかしに留めず鋼牙自身に認めさせる事により、鋼牙の「変化」が明確になったのは、上手いマッチアップ。
 「それはおまえの事か」
 「そうだ! しかし今の俺は貴様とは違う!」
 「私もおまえもホラーを狩るもの。どこが違うというのだ」
 「俺には護りたいものがある!」
 機械の騎士ではなく、命を持った魔戒騎士として吠える鋼牙に、カラクリドラゴンは敢えて鎧装着を承認すると、第二形態を発動。
 「おまえの強さの先にあるものが、知りたくなった」
 立方体のボディを回転させながら格納しているアームなどを伸ばすカラクリドラゴンは面白いデザインで、CGによる人外の兵器vs黄金騎士+馬、は実に『牙狼』らしく、かつ見栄えのするバトル。
 今作の場合、「基本夜戦」「今回も異界という設定で画面にフィルターをかけている」など、画面からCGが浮かない工夫を作品コンセプトとも非常に上手く結びつけているのですが、《平成ライダー》が『龍騎』辺りから取り組んでいた巨大モンスター戦が00年代を通してもう一つ画面と馴染ませられない場面が目立つのに対して、15年前のTVシリーズでこのクオリティを実現しているのは、本当に驚かされます。
 ガロとカラクリの激突と、カオル&ザルバの逃走劇が交互に描かれ、迫り来る伸縮自在のアーム攻撃を馬上で凌ぐガロ。
 「何故おまえは人を護る?」
 「護るに値する輝きを秘めた、無限の存在! それが人だ!」
 「それはおまえにとって大切なものなのか」
 「そうだ!」
 「それはおまえにとって必要なものなのか」
 「そうだ! 俺には――」
 一瞬、瞼を閉じた鋼牙の脳裏に浮かぶのは、キャンパスに向かうカオル@夏の麦わら帽子概念で、話としては大変いい流れなのですが……なのですが……多少の、ええっ?! 感が湧き起こるのは抑えきる事が出来ず、それならカオルには冷たい態度を取るけど絵は思わず大事に扱ってしまうような前振りがもうちょっとあっても良かったと思うんですよ王子!!(笑)
 とはいえ、身命を賭して邪悪と戦う英雄にとっての世界との繋がりの意味が描かれるのは好きなテーゼなので、鋼牙がそこに辿り着いてくれたのは、感慨深いシーンでした。
 「必要なんだ!!」
 ガロは地形を利用してダメージを与えると浄化の実を確保するも落下ダメージで装着解除。だが、カラクリ最終フォームの頭突きの餌食になろうしたその時、窮地を救ったのは敵対していた筈の鈴邑零(なお零は、かつては持っていた世界との繋がりを失った事で敢えて閉ざしている人物なのが上手い対比になっていますが、名を捨てて復讐に邁進するその心の行き先も、気になるところです)。
 「ったく、危なっかしくて見てらんねぇよ」
 仇である暗黒騎士を討つべく鋼牙の戦力を必要とする零は鋼牙を助け、「私は言った。おまえの持てる力の全てをぶつけろと。その者がおまえに力を貸したのであれば、それもおまえの力の一部であろう」と鋼牙の勝利を認めたカラクリは消滅(壊していいの……? と思ったら、自動復活機能付きとフォロー有り)。
 零は倒れた鋼牙に肩を貸す大サービス(まあ、誤解で殺そうとしたので、借りを返したといいましょうか)で共に人間界に帰還し、実から精製された液体を飲んでカオルは目を覚まし……目覚めたカオルを笑顔で見つめる鋼牙たちの中にしれっと加わっているのがちょっと面白いぞ零!(笑)
 第1話から、物語の大きな縦軸であったカオルの返り血問題が(多分)解決、それに合わせて周囲の人間関係を含めた鋼牙の「変化」が描かれてヒーローとしての在り方が宣言されたのが綺麗にはまり、最終章を前の一山として、満足の面白さでした。
 ところが次回――思わぬ悪意が鋼牙を襲う?!