『牙狼<GARO>』感想・第19話
◆第19話「黒炎」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:小林雄次/林壮太郎/梶研吾)
前編ラストでピンチが強調された時は、後編の冒頭で大した事にならず解決するのはパターンですが、ガロも頭上からの強襲をかわして反撃を叩き込み、二匹の狼の壮絶な戦いは続行。
互いに衝撃波をぶつけ合った後、バルチャスを踏まえたイメージか、念を込められた両者の剣が空中で刃を合わせ、その間に主は拳と拳で肉弾戦を演じるのが、工夫もあって格好いいバトル。
「なぜだ?! なぜ静香を殺した?!」
「なんの話だ!?」
死闘の末にゼロの心臓を貫く隙を見出すも、寸前で踏みとどまったガロは剣を持ち替えて柄を叩き込み、それを契機にゼロ渾身の反撃を受けて装着解除に追い込まれるが、トドメの一撃の寸前、ゼロもまた装着が解けた隙を突いて邪美が介入し、倒れた鋼牙を回収。邪美はカオルの傷も術法で癒やすと、目を覚ましたカオルに、鋼牙がカオルの呪いを浄化しようとしていた事を語る。
「なんで今まで話してくれなかったの?」
「そういう男なんだよ」
それで! 済ませていたのが! 良くなかったと思います!!
……まあ実際のところ、「おまえは余命○○日だ」は伝える側も伝えられる側も大変厄介な問題ではあるのですが、指輪の頼みでゴンザが召喚され、冴島家の別荘に落ち着くカオルだが、その表情は冴えない。
「大丈夫ですよ。鋼牙様が、きっと」
「もうあいつは信用できない! あいつ、一度も本当の事を言ってくれなかった!」
「……あなたは、今まで何を見てこられたのです」
ここで、常に柔和だったゴンザがカオルの背後で表情を変えるのが、お見事。
「……え?」
「鋼牙様の、何を見てこられたのかと聞いているのです!」
劇中初めてゴンザが声を荒げ、これまでとの落差も含めて大変格好いいのですが、ゴンザはゴンザで鋼牙への愛が強いので、「察しろ」系昭和の男に育てすぎた件に関しては少し反省して、二人でカルチャースクールに通ったりするといいと思います!
……真面目な話としては、季節感を無視した白いロングコートにラバースーツで街中を練り歩く姿に象徴されるように、鋼牙の纏う日常からの異質感こそが現代バトルファンタジーとしての今作の肝であり、この性格もその一貫であるのですが、一方のカオルがこの数話は特に「普通の女性」である事が強調された上で、その「普通の女性」である部分に鋼牙は惹かれたという見せ方になっている為、いや「普通の女性」にそれを「察しろ」、「黙って俺を信じてくれ」と求めるのは無理では感が出ていて、物語がカオルに対して少々理不尽。
その歪さに鋼牙の格好良さの一面があるのは確かなので、これがカオルの側も「ヤクザに恋する一般人」的な、いわゆる“危険な魅力”に惹かれた成分が入っていればまた話は違うのですが、非日常における「命を助ける」イベントが繰り返されているとはいえ、カオルから鋼牙への感情にあまりそういった成分は見えないので、恋愛要素の流れと物語の構造がちょっと噛み合っていない印象。
で、結局、周辺キャラが全てフォローするのは、ちょっとどうかと思うわけです(笑)
カオルがそういう、ダメなところ含めてOK、なタイプならまた違いますが、あまりそうは見えないですし、今作の構造上の難が出てしまいました。
浄化の実のなる紅蓮の森に入る為、鋼牙は邪美に協力を求め、鋼牙の態度にその決意の強さを感じ取る邪美。
「頼む……俺に力を貸してくれ」
「…………しょうがないね。力になってるよ」
鉄面王子の過去を知る女という基本的においしいポジションではありますが、はすっぱな物言いとは裏腹に鋼牙に対する気遣いを端々に感じさせ、魔戒の戦士として認めてほしい気持ちとなんだかんだ人間的には甘やかし気味の部分を併せ持ち、カオルに対して鋼牙を挟む女としての機能も果たし、邪美は非常にいいスパイス。
ぶっきらぼうな物言いが、気心の知れた男友達ポジションのニュアンスを短時間で表現した上で、その先の感情も漂わせる幼なじみ以上男女未満の距離感を佐藤康恵さんが好演でした。
鋼牙と邪美はひとまず、ギルドから強奪した短剣セットを魔界へ返す為の儀式を始め、鋼牙は邪美に、「あいつはいい魔戒法師に育った」という阿門の言葉を伝える。
「……いい魔戒法師にはなれたけど、いい女にはなり損ねた。……鋼牙、私には見えないよ。護るべきものが。でもあんたには見えてんだろ?」
「ああ」
「……羨ましいよ。……いいか、絶対に守りき」
鋼牙の行く道を後押ししようとしたその時、三神官の送り込んだコダマの攻撃を背後から受けて邪美は無惨に消し飛び、キャラとして味の出てきたところで衝撃の退場。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
鋼牙の振る剣を素手で受け止め、コダマは遂にその圧倒的な戦闘力を爆発させ、鎧召喚さえ許さない猛攻に鋼牙は襲われる。喉に蹴りを入れて潰し、呪術の発動を防ぐ鋼牙だが、魔界に送ろうとした短剣を取り戻されて激しい争奪合戦となり、鋼牙に飛び回し蹴りを決めた後に、乱れた髪をなでつけるコダマが格好いい(笑)
番犬所で厭味を言われてきた零はこの戦いを目撃して短剣詰め合わせを拾い、魔戒騎士として正しいのはどちらなのか……判断に悩む零を鋼牙が突き動かす
「俺たちは! 俺たちは魔戒騎士じゃないのかぁ!!」
は、表情のアップも決まって会心の叫びでした。
コダマの妨害をくぐり抜け、短剣セットを魔界へ繋がる穴へと投じる零だが、僅かに遅く、12体が融合した巨大ホラーが現世に出現。二人の魔戒騎士の攻撃に小揺るぎもしない巨大ホラーに零も鋼牙も装着解除に追い込まれたその時、三神官より手ずからハルバードを受け取った新たな魔戒騎士が現れると、巨大ホラーを軽々と調伏し、その呪力を喰らって飛び去っていく……。
「ホラー喰いの魔戒騎士……」
「あいつが……」
果たしてその魔戒騎士こそが、1000体のホラーを食った時、最強の存在になるという伝説の暗黒魔戒騎士なのか?! 零はそのシルエットから真の仇の正体を知り、次回――掴み取れ! 永遠の愛を!
指輪が、滅茶苦茶、煽った!
満を持して登場した暗黒の騎士は、夜の森での戦闘だった為に配信画質ではディテールが掴みづらく、次回出てくる時は、もう少し明るいシーンを期待(笑)