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バナナの騎士、ミッチの謎

仮面ライダー鎧武』感想・第3-4話

◆第3話「衝撃!ライバルがバナナ変身?!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄
 インベスゲームとは?


 異世界の扉を開くロックシードで、小動物インベスを呼び出し、戦い合わせるゲームだ。
 この勝敗により、ダンスチームのランキングが決まるぜ!

 ダ、ダンス、は?
 ダンスステージの使用権を巡って「デュエルしようぜ!」と行われるインベスゲームの勝敗でダンスチームのランキングが決まるという卵と鶏はもう親子丼になっているぜ、みたいなビートライダーズ戦国時代、アーマードライダー鎧武はインベスゲームで連戦連勝していた! …………え、アリなの? リモコン操作なの?!
 という疑問にはDJが「自らバトルに参加する、新たなインベスゲームのスタイル」と強弁して突破し、第3話にして早くも、『遊○王』で突然、使用者しか特殊効果を知らないトラップカードが出てきて戦況をひっくり返すみたいな事に。
 「まー、たまたま変なベルト拾ったってだけでさ」
 表の顔は名門校の優等生らしい、ぺったり6:4分けのミッチに持ち上げられた紘汰は、やーそれほどでも、と笑みを浮かべ……違うよ! それは! 総長が買ったけど森で落としたものだよ!!
 押し入れの奥から昔のトップクを引っ張り出した紘汰はチームに復帰するが、皆が歓迎ムードに湧く中で舞からの詰問を受け、あくまで総長が戻ってくるまでの代理……とリーダー失踪の件を忘れていなくて良かったですが、今回を通して「調子に乗っているように見えるけど本当は色々考えているけどやはり調子に乗っているのでは……?」と(第3話という事もあるでしょうが)紘汰のリアクションと言行が不安定。
 「でも俺は、むしろ嬉しいぜ。こうしてまたお前たちの役に立てるってのが、なんつーか、居場所がある、て感じがしてさ」
 バイトまで辞めてしまった紘汰が、仲間の為に自分を犠牲にしているのではないかと心配する舞は自らの弱さを嘆くが、紘汰はそんな舞を励まし、妙に浮かれた様子なのは仲間に心配をかけない為のポーズが入っているのかな……と思っていると、インベースゲームでは弱者をいたぶり聴衆を煽る嫌らしいスタイルで力を誇示。
 バトルで稼いだ賞金を家に入れようとするも、「それは真っ当な仕事とはいえない」とお姉さんにばっさり断られるとショックを受け、「年少者からは慕われ頼られる兄貴分」だが「年長者からは未熟で危なっかしい若者」という、“大人”と“子供”の間で社会にコミットしようと藻掻くの青年を通して物事の二面性を描こうとする意識は見えるのですが、主人公の立ち上がりとしては非常に掴みづらくなってしまい、初動はもう少し単純化しても良かったような。
 またパイロット版に続いて、キャラクター性の確立する前に“語り”モードに入ってしまう為に、キャラクターというよりも「“語り”の出力装置」化してしまい、紘汰姉が今作現状における大人ポジションの扱いなのはわかるものの、結果として“語り”が押しつけがましくなってしまうのは、引き続き問題点。……この調子で、沢芽市民は誰もが語らずには居られない……としてしまえば、それはそれで作風にはなるかもですが。
 仲間達は紘汰と舞をお似合いのカップルと見つめるが、ひとりミッチは(俺の紘汰さんに近付きやがってぇこの泥棒猫!)とハンカチを噛みながら昏い視線を舞に向け、チームバロンのリーダー・戒斗は、投げトランプでTVを破壊していた。
 「あいつはあのベルトの使い方がなっていない。――見苦しいだけだ」
 パフェ屋で黄昏れる紘汰の元へ乗り込んだ戒斗は、何故その力を使って強い者に挑戦し、勝利の栄光を奪い取ろうとしないのか、と糾弾。
 「奪い取り、踏みにじる。それが本当の勝利の形。力とは、強さの証を立てるもの。貴様に足りないのはその覚悟だ!」
 あくまで守るために力を使う(でも弱い相手はいたぶる)紘汰と、力とは欲しいものを手に入れる為にこそ使うべき、と考える戒斗の相容れぬ姿勢は再びの激突を呼び、何匹出そうがけちょんけちょんにしてやるぜ、と受けて立つ紘汰に対し戒斗が繰り出したのは、スピニングトルネード分身海老反り炎のインベスL字投法ぐぁぁーーっ、じゃなかった、死の商人を地で行く錠前ディーラー・シドから入手した、新たなベルト。
 力には力! 力とはすなわち課金! おまえが引くなら俺も引く!
 と、明らかに運営の思惑に乗せられて、終わりの無いマラソンという名のPUガチャに手を出してしまった戒斗は、ベルトを起動。観客の反応を入れる都合で、凄く長いファンファーレの後に異次元の扉の向こうから降ってきたのは――バナナ!
 「バロンだ!」
 モブの反応を入れるのは良い一方で、モブの反応を入れてテンポが崩れるのは本末転倒だと思うわけなのですが、この辺り、「フルーツ」というお題を面白く(格好良く)見せるにはどうするかへの試行錯誤と煩悶が感じられます。予告や煽りも含めて、今回に関しては「ほーら、こういうの面白いでしょ!」と突飛な部分を作り手の側から強調してくるスタイルなのですが、一番おかしいのは、「フルーツが降ってくる」事よりも「インベスゲームとダンスの関係」なので、そこから目を逸らしている限り、効果半減しているのが残念。
 一方で、フルーツ×アーマー、という難題を、一定の見栄えのするデザインに落とし込んだのはお見事で、ランスを構えた西洋騎士風のアーマードライダー・バロンが誕生。
 ミカンvsバナナの直接対決が始まろうとしたその時、介入したディーラーがバイクに変身する錠前・ロックビークルを両者に提供し、薔、薔薇……。
 個人的には、変身すると割と埋没してしまうバナナ要素よりも、フロントに思い切り真紅の薔薇の意匠が入ったバイクの方がインパクト大だったのですが(一方、鎧武のバイクはいまいちモチーフが不明瞭)、バロンは平然とそれにまたがり、シドに促されるままに、バイクレースがスタート。
 「さぞや楽しい事になるだろうさ」
 挿入歌とともに決着条件不明の謎レースがスタートするが、勢い余って“スピードの向こう側”へ到達した二人はバイクに秘められた機能により異世界への扉を開いてしまい、再び森の中へ。
 そこで羽を生やしたインベスに襲われ、本当の強さを見せてやると殴りかかったバロンは空振りを繰り返し、仕方ないのでバイクを降りた鎧武も翻弄され、今回の要件は「バロンを出す」と「立ち上がりに恒例のバイクアクションを入れる」だったのでしょうが、バロンとの対決は水入り → 物語の乗っていないバイクアクションは異世界突入の前振りに過ぎない → 異世界で戦うのは雑魚インベス、と焦点がスライドする度に盛り上がりが減じていく暗黒仕様で、カタルシスが行方不明。
 「俺は俺の道を選ぶだけ。運命など知った事か!」
 白い女の接触を受けたバロンだが、意に介さずにバナナランス二段突きでインベスを撃破し、つづく。
 手に入れた力は振り回しルールも決めずに走り出す、今作の登場人物たちの「浅慮」と言える部分は、意図的な描写だとは思う(思いたい)のですが、それを視聴者が(ヒーロー作品として)共感しやすい要素に繋げる事もしないのはストレスの溜まりやすい作劇になっていて、巧く転換点が来る事を期待したいです。

◆第4話「誕生!3人目のぶどうライダー!」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:虚淵玄
 「余計な事に気を取られるな。無駄なものを切り捨てる事で、おまえの人生は完成されるんだ」
 「わかってるよ。…………僕の人生は、無駄だらけだからね」
 ミッチはとんでもない大邸宅に帰還し、京本政樹っぽい髪型のお兄さんが登場。
 一方、ひとまず変身解除した紘汰と戒斗は喧嘩別れして別々に森を彷徨い、紘汰の言葉通りに森に生える果実がロックシードに姿を変える事を確認した戒斗は、インベスを蹴散らして適度にブツを収穫すると手早くバイクで帰還し、木の蔦で自前の錠前ホルダーを作成するなど、割と器用。
 防護服の集団に出会った紘汰は突如現れた武者メロンに襲われ、格上の謎の敵が緑色は、かなり斬新でしょうか。
 「戦いに意味を求めてどうする? 答を探し出すより先に、死が訪れるだけの事。……この世界には、理由のない悪意など幾らでも転がっている。そんな事さえ気付かずに、今日まで生きてきたのなら、貴様の命にも意味はない。今、この場で消えるがいい」
 たぶん学生アルバイトに初日から「社会人としての心構えが足りない! やる気が無いなら帰れ!」とか説教してくるタイプのパワハラメロンに圧倒された紘汰はへっぴり腰で逃げ出し、それを見下ろして変身を解除したメロン武者の正体は、ミッチ兄。
 拾ってきた錠前を取引材料に戒斗がチンピラ&陰湿メガネの2チームを傘下に加える一方、メロンに完敗した紘汰は、他者から向けられた本物の殺意の恐怖に震え、部屋の片隅で体育座りをしていた。
 「……おかしいよな。俺はただインベスゲームに参加してただけだ。バロンとの勝負だって、ルールの中で勝ち負けを競ってた」
 ……ルールの間隙を突いて圧倒的優位の立場で好き放題に暴れていたような記憶しかないのですが、勝ち負けを競う、とは。
 「でも気付いたんだ。そのベルトの力は、そんな生やさしいもんじゃない。遊び半分なんかじゃなく、生きるか死ぬかを決める為のものなんだって。……わかるんだ。そのベルトを使い続ければ、いつかまたあいつが俺の前に現れる。次はもう逃げ切れない。だから俺は……俺はもう、変身できない」
 脅えて恐怖から目を逸らす主人公の姿が正面切って描かれ、生身の人間の殺意に触れたら怖い、というのはリアルなのですが、大きな嘘の中でそこをリアルにすると、今後の色々なハードルが上がりそうな不安はあり、果たしてこの一手がどう転がりますか……。
 器の大きい舞はベルトを引き取って帰るが、一度放たれた炎が燃え広がるのを止める事は難しく……誰かの為に傷つく事を厭わない紘汰の生き方(を主張するのが舞だけなのも、立ち上がりに主人公が不安定な原因の一つ)を否定したくないミッチは、自分に出来る事を探して、錠前ディーラーと接触
 沢芽市で影に陽に大きな力を持つ企業ユグドラシル――父はその重役、兄は若くして主任研究員、というエリート一家の御曹司である事が明らかになったミッチは、ユグドラシルとの関係を考えるなら今の内に自分に恩を売っておいた方がいい、と強気の交渉に成功する。
 「さすが呉島家の男だな! 気に入ったよ。……なあ、お行儀のいい呉島の坊ちゃんなら、もし俺が忘れもんしても、もちろん届けてくれるよな」
 「お行儀のいいお坊ちゃんなら、ね」
 ミッチは、シドが“忘れていった”戦国ドライバーを入手し、全く悪びれずに若者達を課金地獄に追い込んでいく波岡一善さんのヤクザぶりは非常に好演で、色々と隙間の多い今作の立ち上がりを、演技力で引き締めてくれています。
 チーム鎧武のステージに、戒斗からイチゴキーを譲り受けた陰険メガネがカチコミをかけてくるが、不在の戒斗に代わりそれを受けて立ったのは、ドライバーを手にしたミッチ。
 (辛い事も……哀しい事も……決して消えて無くなったりしない。大切な人が傷つくよりも、自分が傷ついた方がいい。そうだよね……紘汰さん)
 「変身!」
 ミッチは中華テイストの武者ブドウへと姿を変え……
 「名付けて、アーマードライダー龍玄といこうじゃないか」
 イチゴインベス、DJコーナーで処理される。
 遊び気分で力を振り回していた紘汰が本物の戦いを肌で感じて恐怖し、大切な人と居場所を守るために自らが傷つく事を厭わずに立ち上がるミッチがヒーロー性を見せ、3話までに蓄積された澱みに踏み込んで道を切り拓いていくのは計算通りでしょうが、そこで時間切れしてバトルは省略、というまさかの展開で、どうしてそうなった。
 次回がちょっとした一山になりそうな予告ですが、リアルタイム×週一ペースで第1話以降も見続けていたとしたら、たぶん私、ここで改めてリタイアした自信があります(笑)
 初期構想では不良同士の抗争劇の予定だったという事もあってなのか、チームバロンのサブリーダー気取りとか、バロンと取引した2チームのリーダーとか、チンピラ属性の高いキャラの方が全般的にいい味出していて、後々跳ねたら面白いかも、というポテンシャルを感じさせるなどあるのですが、「ヒーローが怪人を倒す」という基本構造から敢えて外した作りが、今のところ完全に空回りしていて、群像劇を描く為に削っている部分が一番肝心なところなのでは……? と脳内を疑問符が駆け巡ります。
 後、あれだけネット中継が入りまくっている環境で、家族も同級生もミッチがチーム鎧武に加わっている事を知らないのは無理がありすぎると思うのですが(メロン兄さんは本当は気付いているかもですが)、ミッチの顔には自動的にモザイクがかかる仕様なの?! それとも、ミッチは忍者?! 忍者なの?!