東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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狼、辞表を出す

牙狼GARO>』感想・第17-18話

◆第17話「水槽」◆ (監督:金田龍 脚本:小林雄次梶研吾
 前回は急遽3日で撮影したという金田監督が三連投で、モノクロームに近い画面をピアノのメロディで彩りつつ、漠とした空間が不安を誘う映像で描かれるのは、自らの血を熱帯魚に与える男。
 「俺さ……嫌いなんだ……人間ってやつが……」
 水槽の中には巨大な魚が浮かび上がり……
 「最近、ホラー達の動きが活発になっています」
 「餌を有効に使うべきでは?」
 「あの女の事です」
 その頃主人公は、超にこやかに、厭味を言われていた。
 「どうやらあの女は」 「もはやおまえにとって、ホラー狩りの餌ではない」 「護るべき存在になってしまったようですね」
 「魔戒騎士は護りし者だ。違うか?」
 「おまえが護ろうとしているのは、人間ではない」 「あの女です」 「そうでしょう?」
 「くっ……」
 舌戦では、勝ち目がありません!
 鋼牙が追うのは魚に擬態する変化球のホラーで、熱帯魚だと思い込んで持ち帰った為にそれに取り憑かれ、自分の血ばかりか次々と生け贄を捧げる孤独な男を笠原紳司さんが怪演。
 「ザルバ……」
 「ん?」
 「……あんな人間も、護るに値すると思うか?」
 ホラーの残り香から男をホラー本体と誤認した鋼牙は指輪に止められるが、男の行動に犯罪の臭いを感じ、100体を越えるホラーを狩っている魔戒騎士としては、今回、鋼牙が直面する“魔戒騎士としての在り方――人間の捉え方――”はやや青臭すぎるようには思えますが、カオルとの触れ合いを通して、本当の意味で“人間”と向き合いつつある、とはいえましょうか。
 少し意地の悪い言い方をすると、鋼牙にとっての“魔戒騎士”とは、やはり“父親の継承”であって、その志を真っ直ぐに受け継いではいるものの、その意味にまでは考えが及んでいなかった面があるのかもしれません。
 生け贄を捧げるごとにホラーの姿は魚から人間に近付いていき(男の目にはそう映り)、気配を捕まえきれない鋼牙は、指輪の進言によりやむなくカオルを囮に使う事に。まんまと餌に食いつくホラーだが、後を追う鋼牙は流しのホラーに遭遇してしまう。
 「鋼牙……餌が効きすぎたようだな」
 ゆ……指輪! 先日の総集編ではもう少しカオル寄りだったのに指輪……!
 「魔戒騎士の使命は、ホラーを狩る事」
 「人間を救う事じゃない」
 「立場をわきまえる事ね」
 ギルドでは三神官が甲高い笑い声をあげて嫌がらせの黒幕の可能性が仄めかされ、情と正義と使命の狭間で藻掻く事になる鋼牙。本日も変態を呼んでしまったカオルは男の家に誘い込まれ、思い切り顔面ダイブするわカッターで切りつけられるわで、散々な目に。
 なんとか駆け付けた鋼牙が水槽を砕くと、中から転がり出たのは、人間とは似ても似つかぬ醜い魚人で、人間に見えているのは取り込まれた男だけ、というのは想定内でしたが、容赦なくグロテスクなデザインと見せ方は秀逸。陸に上がってピチピチ跳ねるホラーをそれでもかばおうとして抱きしめる男だが、鋼牙は男を突き飛ばしてホラーを調伏。
 怒りの冷めやらぬまま男に剣を向けるもカオルに止められた鋼牙は、とりあえず一発殴って気絶させるが、意外としぶとかった人魚ホラーが、鋼牙がカオルを撒き餌にした事を暴露して消滅し……そこで、背中を向けて無言で歩み去ろうとするのが、とことんダメだぞ鋼牙。
 それから、絵描きの指なのだから、まずは問答無用で応急処置ぐらいしてほしいです王子。
 「護ってくれるって……護ってくれるって約束したじゃない」
 カオルに問い詰められた鋼牙は観念して真実を告げ、泣き崩れるカオルに求められるまま、ザルバ印の探知リングを外してしまい……よし! そこだ! 平手打ちだ!
 と思いましたが、カオルは涙を浮かべて走り去るに留まり……ここまでの信頼関係の積み重ね、数々の救助イベント、直前の出来事によるショック症状、など諸々を踏まえたのかとは思いますが、鋼牙に対するカオルの、すがりつくような物言いは“受け身のヒロイン”になりすぎたというか、どうにも糖分過多。
 絵描きとして成り上がると口にしている一方で、冴島邸への居着き方などを見るに本質的には独立独歩の性格ではない、というのがカオル像なのかもですが、全体的に“甘え”のニュアンスが強すぎて、個人的には、(特撮ヒロインとしては)回転とスナップの利いた一撃を見舞ってくれた方が好みなのだな、と(笑)
 あと、ホラージャンルのヒロインとしてそういう役割だと受け止めるところなのかもですが、今回は鋼牙に誘導された部分もあるとはいえ、総じてカオルのぼんやり具合が成人女性としてはお人好しを通り越えてしまっており、絶対に、大金を、持たせてはいけない……!
 浄化への希望を前に、鋼牙とカオルの間に亀裂が生じる大きな転機だけに、カオルの動きが如何にも物語の駒になってしまったのは残念な部分でした。

◆第18話「界符」◆ (監督:雨宮慶太 脚本:小林雄次林壮太郎梶研吾
 「諦めろ鋼牙。自分で蒔いた種だろう」
 カオルを失い、闇雲に剣を振るう鋼牙の元に届く、「阿門法師が殺された」の凶報。しかもその犯人は、阿門の弟子、邪美?!
 赤酒の回で名前と顔がチラリと出ていた邪美が本格登場し……副隊長! 副隊長じゃないですか!! 邪美を演じる佐藤康恵さんは、今作前年の『ウルトラマンネクサス』では、闇の凪こと般若の表情でお馴染み副隊長役でレギュラー出演しており、今年前半に色々あった『ネクサス』のキャストと、こんなところで再会するとは思いもよらず(笑)
 容疑者・邪美は何故かギルドに潜り込むと、浄化の短剣の収められた箱を奪い、番犬所の番犬・コダマと激突。体術と呪術の飛び交う激しい戦いの末に逃走に成功する邪美だが、今度は鋼牙に、その始末が命じられる。
 だが鋼牙は、指令書が無い事を理由にこれを突っぱねると、ギルド退会を宣言。ひとり法師の庵に向かうと、そこで邪美と再会を果たす。
 「へぇー、男前になったな、あの洟垂れ小僧が」
 「……相変わらず口が悪いな、おまえは」
 口を開いた邪美は、女海賊とか山賊のノリで、『ネクサス』の際は役柄とか演出とか脚本の問題で判断がつきにくかったですが、改めて、演技は基本、一本調子。
 一方、度重なるショックの連続で、とうとうホラー恐怖症とでもいうべき恐慌状態に見舞われたカオルは龍崎先生に拾われており、先生、凄い逆光。
 カオルはこれまでの出来事について先生に全てを話し、それを受け止めた先生は、鋼牙にはもう会わない方がいい、とアドバイス
 「なんなら、ずっとここにいたっていいんだよ」
 「先生……」
 「大丈夫。何があっても、僕は君の味方だ」
 心が弱っているところを信頼する龍崎に暖かい言葉をかけられた、という状況ではあるのですが……積み重ねが積み重ねだけにカオルはどうも緩いというか、あのガツガツしていた前半の姿はどこに行ってしまったのか(好意的に解釈すれば、無理が重なっていたからこそ、冴島邸に本人が思っている以上の安らぎを見出していたのでしょうが……ゴンザも居ますし)。
 先生サイドからすると、あくまでカウンセリングの一貫、とは取れますが、京本政樹京本政樹だけに、いよいよ雰囲気が怪しくなって参りました(笑)
 魔戒騎士ギルドは退会した鋼牙に変わって零を呼び出すと、邪美抹殺のミッションに成功すれば「ある御方」に計って恋人を生き返らせない事もない、と囁き、更に恋人の仇は間違いなく鋼牙、と吹き込む完全な悪の組織ムーヴ。
 憤怒の形相でギルドを出た零は、龍崎の不在時に再び恐慌に襲われ、街をフラフラと彷徨っていたカオルを発見すると、愛する者の為、心を鬼にする覚悟を決める……。
 一方、魔界に封印される筈の短剣がギルドに保管されていた事に疑義を抱く邪美は、法師が死に際に「騎士」を示すバルチャスの駒を握りしめていた事を告げ、例え旧知の鋼牙でも、魔戒騎士は誰一人として信用しない、と衝突。
 「覚えてるか? 一緒にバルチャスの腕を競った時のこと」
 「ああ! それがどうした」
 「……おまえ! あたしに気ぃ遣ってわざと負けてただろ!」
 ……ハイ、冴島鋼牙くん、貴方が優しさと思っているものが他人を傷付けた時、俺にはそういう生き方しか出来ない、と開き直るのは人類悪ですからねー。ここ、次の補習に出るので、よーく覚えておいて下さい!
 他人事みたいな顔しているそこの指輪さんも、保護者責任で、後で職員室まで来るように。
 「気付いてないとでも思ったか? そういうさりげない優しさが……おまえの弱点なんだよ!」
 至近距離からの頭突きが二発叩き込まれた後、雷撃の術が鋼牙の土手っ腹に直撃し、前回のカオルの分も邪美がケジメをつけてくれています!
 「なんならその女、あたしが殺ってやろうか?」
 とうとう抜刀した鋼牙に対して邪美は真紅の旗を振り回し、魔戒騎士と差別化を図る工夫をしつつ、香港とか中国映画系のアクション。鋼牙を翻弄するかと思われた邪美だが、剣を抜いた鋼牙は歴戦の強者であり、雷撃を刀で弾いて間合いに入り込むと、ビンタを一発。地面に倒れた邪美の武器を打ち払って戦闘力を奪う鋼牙だが、結果として物凄く押し倒しているところを、カオル&零に目撃されてしまう。
 慌てて戦闘を中断した鋼牙&邪美に、零はカオルを人質として箱との交換を要求。
 「おまえ馬鹿か?」
 「は?」
 「その女もうすぐ死ぬんだろ? 人質になんか使えるかよ!」
 「ふふっ……そうだった。あと何日だっけ?」
 「ちょっと待って。なんの話……?」
 「ホラーの返り血を浴びた人間は、100日目に死ぬんだよ。地獄の苦しみを味わいながらね」
 大変愉しげに囁く零がここに来てまた非常に嫌らしく、己が人類悪の辿る顛末をまざまざと見せつけられる事になる鋼牙だが、間隙を突いて箱を奪うと、カオルと交換する、と見せかけて共に取り返すファインプレー。
 「どうやら決着をつける時が来たようだな」
 「最初からそのつもりだけどね」
 鋼牙はカオルを邪美に任せ、零とお互いの剣を打ち合わせて同時に鎧を装着。金と銀の狼が激しくぶつかり合い、実力伯仲の激闘の末に深傷を負ったガロに頭上から迫るゼロの刃の行方は?! で、つづく。
 新たなキャラクターの登場を引き金に物語が一気に動き出し、法師殺しの真犯人は? 何かと怪しげなギルドの真意は? ホラー喰いの魔戒騎士は実在するのか? と、様々な謎を孕みながら、終章へ向けて急加速。工夫を凝らした二つの肉弾アクションから満を持してのガロvsゼロ! とバトルも盛り上げ、次回――漆黒の騎士が牙を剥く!