『ウルトラマン80』感想・第33-34話
◆第33話「少年が作ってしまった怪獣」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
OP映像が大幅に変更されて、花の咲き誇る公園を駆けたり花を見つめてニヤニヤする矢的先生の姿にえらく尺を割き、いったいどこを目指して……と思ったら、後半はひたすら、津波、爆発、暴風、の怪獣災害が大写しにされ、『80』のウリといえばウリですが、肝心の80の姿が見当たりません。
……あ、ラストは、光線銃を構える矢的先生3連発で、僕が! モテモテの! 主人公です! と、なんかそれらしく締めました。
病院近くの夜空に巨大な怪獣が浮かび上がるが、UGMのレーダーなどには全くその存在は検知されない。城野と共に病院を訪れた矢的は、難手術を控えるも健気に振る舞う少年が、内に抱えた強い恐怖心から怪獣騒ぎを起こして手術日を引き延ばしている事に気付くと、その病室を訪れる。
「怖くないものに向かっていく。それは当然のことじゃないかな。怖いものに向かっていく。それが本当に勇気のある事じゃないかな」
「ウルトラマン80なんかも、怪獣が怖いのかな? 怖くても、向かっていくのかな?」
「そうだと思うよ」
大変心配していたのですが、美人ナースに鼻の下を伸ばす事もなく、矢的先生にしては極めて真っ当な説諭が飛び出し、何故、学園で、それが出来なかったのか。
本当の勇気を諭され、手術に立ち向かう事を決意した少年だが、病室で手慰みに作っていた自作の怪獣に謎の光が入り込むと巨大化してしまい、ぼくのかんがえたさいきょうのかいじゅうは、設定通りに攻撃を受けるほどに強化されていく!
防衛軍の戦闘機が次々と撃墜され、火炎放射を浴びた矢的は、海中に転落から80へと変身。
設定通りの倍返しを受けまくって危機に陥る80だが、胸のパーツが外れやすい、と自作ゆえの作りの甘さも怪獣にそのまま継承されており、少年のアドバイスで胸部を攻撃する事で、逆転勝利。少年の手術も、無事に成功するのであった。
……なにぶん阿井脚本なので、80がぱーっと奇跡を起こして少年を救ったらどうしようかと身構えていたのですが、それが無くて一安心。
ただ、怪獣撃破→手術開始→謎の光の正体は「怪獣の魂」だったと説明される→手術成功! は物凄くリズムが悪く、怪獣の原因となった謎の光が正体不明のままなのも確かに据わりが悪いのですが、何故そこに説明を挟んでしまったのか。
時々出現しては物などに入り込んで怪獣化する「怪獣の魂」とやらも強引にひねり出した感が凄いのですが、『80』初期設定ならば、手術を控えた少年の脅えやストレスがマイナスエネルギーを生んで玩具に乗り移った、で成立しそうなところを、その設定は消滅したので……と、途中から強引に軌道修正したような印象。
そんなわけで、どうも最後まで締まりきらないのはいつものパターンながら、自作系怪獣のグロテスクな造形は印象的で、悪くないエピソードでした。
お花畑回はノーブレーキで岸壁からダイブしましたが、第31話以降の基本構造(子供ゲストと矢的が関わる事から話が広がっていく)は、特に矢的先生の好感度という部分で、物語に入りやすくなっているのは嬉しい改善点。
そしてそんな矢的の行動を、黙って頷いて認めるだけでぐんぐんカリスマ性の上がっていくキャップに痺れます(笑)
次回――またも予告でほとんど喋っている系ですが、今作に、予告40秒は真剣に長すぎるのでは。
◆第34話「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:石堂淑朗)
「おい、離せ! 竿を離すんだ!」
「一万円もしたんだい!」
「おまえの命は一万円か! 離せ!」
ちょっと困った感じもありつつ、手応えを見て危険を察知するや子供を助ける釣りおじさんが、いい味を出しているエピソードでした。
ナレーション「この少年の釣った、あの魚は、果たして怪獣なのだろうか。――まさかそんな事は」
物語の方は、前回今回と妙にナレーションさんがスリラーを煽り、少年の釣った魚はアンコウ怪獣の子供であり、それを探して沿岸に巨大アンコウ怪獣が出現するが、てんやわんやの末に子供怪獣を返して大団円となる、最初から最後まで次回予告から想像される通りの内容。
まあ、てんやわんやの部分こそが作品の見所とはいえますが、そこに至るまでのサスペンスも楽しみの一つですし、あまりにも予告から想像された展開そのまますぎて、てんやわんやに辿り着くまで氷点下の気温が続き、幾ら何でも次回予告が真っ正直に過ぎます……。
「よし、怪獣を釣り上げるんだ!」
「「え?!」」
「釣り上げるんだ!」
「……了解」
突拍子もないキャップの命令にさすがのチーフも不満そうな表情を見せるが、巨大アンコウ怪獣が重すぎて、釣り上げ作戦は失敗。怪獣親子の事情が判明する中、子供を守る為に海に飛び込んだ矢的は80へと変身。
「エイティー!」
「き、君! 君の気持ちは、ウルトラマンに通じたんだよ!」
全然そんな事はないのですが、綺麗な解釈を投げ込んで、釣りおじさんが非常に効果的な存在になっています(笑)
80の1.5倍はあろうかというアンコウ怪獣との海面での取っ組み合いは大迫力で、80が時間稼ぎをしている内に子供怪獣が到着し、妙に重々しいBGMで怪獣親子は再会。BGMからはこのまま人類への報復が始まりそうでしたが、80のハンドサインに従って怪獣は深海へと帰っていき、ラストは皆で釣竿を並べて大団円。
珍しく80のカラータイマーが鳴らないまま事態が解決するなど、最初から変化球を意図した内容だったのか、或いは『帰ってきたウルトラマン』などに参加していた石堂淑朗さんの作風なのか、
・ホームドラマ風の家庭のやり取り
・善良な一般市民(釣りおじさん)がいい味を出して活躍
・子供の無神経な残酷さと衝突が描かれる
・キャップが愚痴をこぼす
・UGM隊員のコミカルな描写が増加
と、全体的にこれまでとかなり違ったテイスト。面白いか面白くないかで言うと、全体の7割ほどが刺激の無い状態で進むので評価不能になってしまい、もう少し、次回予告を手加減してほしい……。
ところで、矢的×子供ゲスト構造の長所は、「UGMへの憧れのまなざし」をスムーズに組み込める事で、これにより、怪獣電話相談室の激務の結果、一般市民に対する態度の悪い事には定評のあるUGMのヒーロー性も無理なく確保されるのですが、つくづく、学園編で矢的のUGM参加を秘密にしてしまったのは失策でありました。
次回――なんだかまた東映特撮風味で、快傑する人とかが出てきそう。