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『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第30話

◆エピソード30「誇り高き超戦士」◆ (監督:加藤弘之 脚本:下亜友美)
 「次ヨドン軍が来たら、王様を呼んで、助けてもらお!」
 「そうだね」
 「おいおい。下々の俺たちが、気軽に王様を呼べるわけないだろ」
 うわ、なんかいきなり、滅んだ国のヒエラルキーぶつけてきたぞ(笑)
 「それに、王様の居る聖地アタマルドは特殊な場所だ。この世界から直接連絡する事はできない。謁見を望むなら、魔進ハコブーに乗って会いにいくしかねぇ」
 言うに事欠いて「謁見」と来ましたが、その王様の身内を保護して、元身内が陣頭に立っている侵略勢力と戦う運命共同体に対して、何それ……。
 「気軽に会えないなんて……シーナちゃんも、さみしいよね」
 「そうですね。ですが、わたくしは、お父様が生きているとわかっただけで、十分嬉しいですから」
 一方の姫様はひたすら健気で、実の娘なのかどうか疑わしくなってきました。
 「いよいよ……私の出番か」
 ヨドンナ参戦により脅威度を高めるヨドン軍に対し、戦力強化に悩むキラメイジャーがヨドン反応に出撃後、博多南はキラッと眼鏡を輝かせ、キラメイジャーは人々をマネキンのように固めてしまうマネキン邪面と遭遇。
 マネキンをどう表現するのかと思えば、上半身を頭部に据えて身につけた服の模様を顔に見立てる事で、「マネキンとは何か?」の命題に一発解答を与えており、邪面使いクランチュラの匠のこだわりを見ます。
 触れる者を硬直させるマネキン邪面に不意を突かれ、「せめて可愛く」とポーズを取った瀬奈が早々に脱落し、不死鳥モードで逆転を狙うキラメイジャーだが、何故か召喚が不発。
 姫様から、「これは、もっとピンチを想定しての改良だ。オラディン王との、約束なんでね」とアローを持った博多南が研究室に篭もってしまった事が伝えられ、困惑している内に値札爆弾を投げつけられてマネキン邪面の逃亡を許してしまう。
 「……無鈴は、7人目の、キラメイジャーになろうとしているのかもしれない」
 「え?」「ぅえ?」「は?」「え?!」
 「「「「えぇーーーーーっ?!」」」」
 マネキン瀬奈の美を讃えるマッハに対し、「こいつ病んでるよ!」とジェッタからの容赦ない罵声が突き刺さる一幕を挟み、宝路は博多南の言行に思い当たる節について、30数年前、クリスタリアに運ばれる際に途切れ途切れの意識の中で聞いたオラディンの言葉を語る。
 ――「無鈴くん、君こそが真の戦士だ。ピンチの時は頼んだよ。約束だ」
 無鈴にこそ、あのオラディン王が認めるキラメイジャーになる素質があったに違いない……そう信じる宝路は、兄として愛する弟が戦士になる事を応援したいと義理だけどクリスタリア王族の血を騒がせ、同じブラコンとしてもっと宝路をシェアするべきだったと反省する姫様もそれに追随。
 「名付けて、キラメイゴールドだ!」
 クリスタリア兄妹はやんやと盛り上がり、充瑠たちは微妙な空気を漂わせ、魔石たちは大興奮する中、宝路のイメージシーンで博多南さんが変身を決め、この為に、造ったのか、スーツ……(笑)
 「遅咲きクリエイティブ・キラメイゴールド!」
 この時点で、宝路が王様の言葉の真の意味を取り違えているのは予想されますが、ヒヨコ顔の妄想キラメイゴールドのキャッチコピーが絶妙な嵌まり方で面白かったです(笑)
 やりそうでやっていなかった衣装チェンジでドレス姿を見せたヨドンナがお尻を叩いてマネキン邪面を強化している頃、研究室でアローを構えて熱心に作業中の博多南を見つめる充瑠と為朝。
 「やっぱり、邪面師が出てくる前に返してもらおう」
 と判断するのが実に為朝ですが、それを止める宝路とマブシーナ。
 「よく考えろ。おっさんには悪いが、今必要なのは七人目のキラメイジャーじゃなくて、あの邪面師を倒す力だ」
 「見損なったぞ為朝。実は熱い奴だと思ってたのに!」
 「冷静だけど、情熱があるのが為朝さんでしょ!」
 「俺は冷静と情熱の間の男なんだよ!」
 「博多南さんの邪魔はさせませんから!」
 勢い余った姫様のヘッドバットが為朝の鼻っ柱に炸裂!
 ……身長の関係で、額よりもむしろダメージの大きそうな所に入りましたね……。
 「博多南さん、キラキラしてる……」
 「充瑠もそう思うか。やっぱりあいつはキラメイジャーの素質があるんだよ!」
 満面の笑みの宝路に対して、うーん、何か違うんだよなぁ……という表情を見せる充瑠が後半の真相への道案内となっており、宝路や柿原さんらにも発揮された充瑠の「物事の本質を見抜く眼」は、「個物のイデアを見極めて具象化するひらめキング」と繋がっているのでしょうが、どうしても「レッドだけが真実(正解)に辿り着ける」作劇に傾きかねないのが、悩ましいところ。
 今作の場合、そこは割と気を配っている様子はあるのですが、結果として充瑠の押し出し方が難しくなっている感もあり。とはいえ、そこを突き抜けると面白いかといえば、個人的な好みからは外れそうなので、今ぐらいの見せ方がギリギリといった印象ですが。
 「仕方ねぇ、行くぞ」
 研究室前でドタバタしている内に邪面師が再出現し、アローの回収を諦めて現場に向かう際、頭突きの件を平謝りするマブシーナのおでこをポンポンと叩いて、もう気にしてないからを示すタメくんが実にタメくん……!
 位相がちょっとズレたら、ナチュラルに女子の頭を撫でて逮捕されるやつだこれ……!
 出撃した5人が目にしたのは強化マネキン邪面によって造られたマネキンの群れで、その見事なマネキンぶりに動揺した隙を突かれ、小夜が脱落。……どちらかというと、はまった時のギャグ怪人系ですが、能力が割と一撃必殺なので、強い(笑)
 強化戦闘員と、マネキンタッチの連携に苦戦している内に闇エナジーが溜まってマネキン邪面獣が出現し、小夜マネキンを退避させた黄がキラメイジンザビューンで立ち向かうが、ふわふわした動きに苦戦。地上の3人もじわじわと追い詰められていくが、銀はあくまで、戦士・博多南無鈴を待つ事にこだわる。
 その博多南はココナッツタワーでアローを構えて引き絞り……
 「私こそが真の戦士だ。オラディン王。私は今こそ、あなたとの約束を果たします!」
 果たしてその射る的は何か、放たれた矢の行き先を知らぬまま、銀は思いの丈を打ち明ける。
 「無鈴はいつも、俺を輝かせてくれた。今度は俺が、あいつを輝かせるんだ」
 「いや……宝路! 博多南さんが輝く時って、自分が戦士になる時じゃないと思う! そういうタイプじゃないよ!」
 「おまえ、無鈴のこと、馬鹿にしてんのか?」
 思わず腹を立てる銀、いい感情の込め方でした。後、充瑠、言い方(笑)
 「そうじゃない! でも、俺には確信がある。だから呼ぶよ」
 銀の制止を聞かずに赤が博多南に連絡を取ると、博多南は既にアローを送り届けた事を告げる。
 「おい無鈴、キラメイゴールドは?!」
 「ん……何それ? 誰?」
 第七の戦士・キラメイゴールドは完全に宝路の思い込みと思い違いであり、博多南がアローに施していたのは、聖地と連絡を取る為の改良であった!
 「これで王を呼べば、すぐに助けに来てくれる筈だ」
 「父上を呼ぶ為?」
 「でも、王様は立場上、簡単に呼ぶ事は出来ないんじゃ」
 「大丈夫。俺と王様の間には、約束があるから」
 ここで笑顔の博多南に下からカメラを寄せていく見せ方が格好良く、博多南の口から語られる、30数年前の真実――博多南は、意識不明となった宝路を抱えて帰還しようとするオラディンに……手土産を渡していた。
 「にぃにを、お願いします」
 王様には日本酒、王妃様にはチョコレート、お城の人達には煎餅、そして、宝路がクリスタリアに残ると言った時の為に大好きなマンガを袋に詰め、身内が瀕死で宇宙人に連れ去られていくという状況で心付けを忘れない姿に、後の経営者としての片鱗が窺えます(笑)
 「君たち兄弟は、輝く戦士の素質があるな」
 兄の性格をよく理解した上で、周囲の人間への気遣いも忘れない博多南の姿に、オラディンは感嘆。
 「にぃにだけですよ。俺はいつもにぃにの後ろについて、サポートしてるだけ」
 「後ろを任せられるから、戦士は安心して、前に出られる。君のような最高のサポーターなくして、戦士は務まらん」
 「……王様」
 「私は君が気に入ったよ。いざとなったら、私の力を貸そう。遠慮なく言いなさい」
 「俺なんかが、王様の力を借りられるんですか?」
 「うむ。君は素晴らしいキラメンタルの持ち主。無鈴くん、君こそが真の戦士だ。ピンチの時は頼んだよ。約束だ」
 ここから弾むようなテンポのBGMが入るのが鮮やかに決まり――
 「わかりました。オラディン王」
 ――ちょっと野暮ったいその日の少年は、いつでもアロハな実業家へと成長する。
 「真の戦士って、そういう意味だったのか」
 「やっぱり! 博多南さんは、いつも俺たちのサポートをして、ピンチを救ってくれてる。その姿が、誰よりも輝いていたから!」
 勿論、博多南博多南で一廉の人物なわけですが、そのスポット回で改めて、「人には色々な輝き方がある」事を描いてくれたのは、作品全体のテーマとして良かったですし、肉親の愛情から「無鈴の輝きはこれだ!」と盲目的になっている宝路と「いや俺はこれがいいんだよ」と通す博多南の対比も良かったところ(まあ双方ともに、人格形成を終えた立派な大人ではありますが)。
 「オラディン王! 聞こえますか! あなたの力が、必要です!」
 「無鈴くん、わかった!」
 博多南の呼びかけに応えてはばたく王様フェニックスの図も格好良く決まり、戦士ではなくサポート役として輝く博多南、は予想通りでしたが、そこから一歩進めて、「博多南だからこそ、二人の友情と信頼の証としてオラディンを動かせるんだ」と描いてきたのが鮮やかで、“予想させて予想通り”の部分と“予想させて予想を超えてくる”部分の案配が気持ち良かったです。
 そして、「いざとなったら、私の力を貸そう」を、「自分自身が王様の力に甘える」のではなく「誰かを助けるためにオラディンを動かせる」形で使える男として、博多南さんの株が大きく上昇。
 更にはそんな博多南無鈴という男の器量を見極めたオラディンの株も上がり、前回だいぶアレだった王様のフォローとしても下さんが良い仕事でした。
 また、サポーターとしての博多南の輝きと、それを見出したオラディン、が肯定的に描かれた事を受けて、オラディン-博多南結託暗黒説は取り下げざるを得なくなった事をここにご報告いたします(笑)
 これはヒーロー作品としてかなり根幹的な要素なので、そこを崩してほしくはないので。
 で、オラディンの存在を素直に受け止めると、性格や今の立場からして声さえ届けばオラディンはまず間違いなく助けにきてくれるわけで(そこで博多南が「約束」を持ち出す事で互いに動きやすくなっているわけですが)、どちらかというと、この期に及んで旧来の価値観を引きずっているキラメイストーンの方に驚きだったのですが、タイムスケールの違う石ゆえに、という面が意識されているのかどうなのか……封印状態だったザビューンはまだともかく、王家に仕えている意識が強いにしても率先して「下々の俺たち」とか言ってしまうファイヤ、君のそれはどうなんだファイヤ。
 地球人の相棒を得た魔石たちの「変化」を描くなら中心になるのはファイヤかと思っていたのですが、使いやすいネタ度が高いとはいえ、現状一番それが描かれているのはマッハで、今作このままの調子で終盤まで進んだとすると、何かと便利使いの危惧されるオラディンを飛び越えて、ファイアこそが最大の落とし穴になりそうなのは、今後に向けた一抹の不安点。
 博多南が送り込んだアローが到着し、ゴーキラメイジャー!(せっかく盛り上がった流れなのに、強化変身が二人だけなのは絵的にちょっと寂しい(笑))
 マネキン怪獣に上空から落とされたキラメイジンはハコブーにキャッチされ、前回に続き、名実ともに“お荷物”。
 「ハコブー、来てくれたのか!」
 「吾輩はオラディン王の頼みとあらば、いつでも来るぞ!」
 こっちはこっちで、オラディン王に頼まれないと動かない宣言にも取れて、ちょっと面倒くさい不法滞在石ですが、どのみち地球人の戦力だけだとヨドン軍に抵抗できないので、持ちつ持たれつの関係ではあり。
 マネキン邪面は青&銀が撃破し、マネキンになった人々は解放。
 赤が王様フェニックスに乗り込んで魔進合体を発動するとハコブーから投げ捨てられ、限りなくハンバーグの下に敷かれたスパゲティのような存在になっていく魔石たちは、お手玉攻撃のボール代わりに使われて、最後は魔球グレイトフル炎のツーシームが邪面獣の弱点を破壊してフィニッシュ。
 ……うん、いっそもう、5体直列グレイトフルキラメイブレードとかひらめキングした方が、存在感を発揮できるのでは?!
 オラディンはようやく友と娘と会話をかわし、出入りについてはとりあえず、普段は聖地に引っ込んでいるという形で理由付けしましたが、都合の良いジョーカーである事に代わりはないので、出来れば早めに“普段は聖地に居なくてはいけない理由”が欲しいところです。
 その辺りをつつくのは、前回の宣言通りにヨドン軍を離れ、今回は完全にお休みとなったガルザの暗躍に期待(ここで沼女妹さんとか絡んでこないものか)。
 「無鈴。おまえは最高の戦士で、最高の弟だ!」
 「にぃに!」
 昭和の男達は暑苦しく抱擁し合い、それを微笑ましく見つめるキラメイジャー。
 「博多南さんが居るから、俺たちは全力で戦える」
 持つべき友は、経済力!
 「……ま、キラメイゴールドも見たかった気もするけど」
 と、今回はいいとこなしだった女帝が呟いて、つづく(ところで以前から気になっていたのですが、女帝は白衣を羽織る時は必ず私服、なのはどういうこだわりなのでしょうか……)。
 目の前の人的被害を無視して改良を優先とか、割と追い詰められた状況だったのにさすがに無警戒&棒立ちで会話が長すぎ(演出が工夫を諦めてしまった感で勿体ない)とか、幾つか引っかかる部分はありましたが、博多南へのスポットを通して「輝き方は一つではない」事を示すと共に、博多南回を利用してオラディンの好感度を上げる二点を鮮やかに組み合わせて、なかなか面白かったです。
 特に後者は、前回のフォローも含めて意味が大きく、これでようやく、オラディンへ向ける視線の温度を上げられるなと。
 また、宝路の方も弟大好きだったのはキャラの補強として良かったです。
 その一方で、10代前半にして、ある種の諦めと共に優秀な兄の補佐が自分の役目と割り切っていた無鈴を、それは君の素晴らしい長所なんだ、と光に導いてみせたオラディン(第1話における充瑠とファイヤの関係性ともいえます)が、実の弟のメンタルケアは全く出来ていなかったのは、だいぶ皮肉な構図になってしまいましたが、この点についてはオラディンには本格的に反省してほしい。
 音楽祭は、なんと作詞・作曲・編曲も役者さん自らによる博多南ソングで、さすがに登場時間的に素材が少ないので今回分からがかなり多かったですが、相変わらず凝った編集によりバックで流れる名場面集の出来の良さが、音楽祭における思わぬ拾いものでありました。
 次回――冬服。