『ウルトラマン80』感想・第29話
◆第29話「怪獣帝王の怒り」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:若槻文三)
「矢的」
「はい?」
「勤務中にユリちゃんはよせ」
お・こ・ら・れ・た。
「全くその通りだわ。ちょっと親しすぎるのよ」
城野隊員からは肘鉄が入り、矢的先生が調子に乗るからやめて下さい!
山中の寂れた小村・鬼矢谷村で、300年に一度甦るという怪獣伝説を利用して村おこしを行おうとする村長たちの思惑がコミカルに描かれ、中盤の怪獣捕獲騒ぎなどから恐らく、映画『キングコング』(1976年にリメイク版が日本公開)を下敷きにしているのかと思われます。
鬼矢谷で頻発する小さな地震についてUGMが念の為に警戒する中、村を怪獣ツアーの参加者が訪れ、ツアーで一儲けを企む旅行会社の社員・怪獣伝説を熱狂的に信じるオカルトかぶれの女子大講師・小説家を目指す青年とその弟、からなる一行のピントのズレたやり取りもコメディとして統一性があり、ここまでの作風からの突き抜け具合がちょっと面白い事に。
偽の怪獣の鳴き声によるペテンにツアー客が大騒ぎし、しめしめとほくそ笑む村長だが、地震で崩れた崖の中から伝説通りに怪獣が甦ってしまい、ナレーションさんによると、「太陽の光を浴びて長い眠りから目を覚ました」そうなので、本当に、純粋に、寝ていたのか。
そして、怪獣キャッシーとテロップ出たけど、それ(観光用に村長が命名)が正式名称でいいのですか(笑)
……いやまあ、どこからともなく湧いて出てくる名前よりも、むしろ合理的な名付けではありますが。
極度に商業化された名称とは裏腹に、怪獣はレッドキングの胴体とギガスの顔を合わせたような凶悪な見た目で……そもそもレッドキングが、キングコングをモチーフにしているんでしたっけ……?
劇中では「ゴーストロン」に似ていると言及されるのですが、こちらは『帰ってきたウルトラマン』に登場する怪獣名の模様(同じ「ゴーストロン」を差しているのかは不明)。
人間たちの見苦しい欲望が交錯する中、UGMが到着して攻撃を開始するが、強力怪獣は全く怯まない。本部の分析でも弱点が見つからず、旺盛な食欲を誇り燃費の悪い肉食怪獣のエネルギー切れを狙う事に。
「間違っても人間の味を覚えさせるな!」
ここから急激にシリアスなトーンになるのですが、怪獣に追われる村長&観光会社社員の描写は引き続きドタバタ要素が続き、狙った面白さの性質はわかるものの、少々くどくてちょっと胸焼け。
二人を救おうとして墜落した矢的は爆炎の中で80に変身し、空腹でエネルギーの切れてきた怪獣に颯爽と飛び蹴りを決めるも噛みつきを受け、盛り上げるナレーションさん。なんとか距離を取った80は、尻尾を掴んで振り回すと、疲れ果てた怪獣をなだめて誰も知らない場所で眠りにつかせ、人間の身勝手さもあって目覚めてしまった怪獣の扱いは、円満解決(まあ、問題を先送りした感は凄いですが……)。
村長たちを探す一同に矢的は合流し……
チーフ「矢的、どこ行ってたんだ?」
「え? ええ……」
いや、思い切り、撃墜されてたじゃないですか。
矢的のみならず視聴者も困惑させながら、つづく。