東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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勇気という名の魔法

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・補遺1

 毎度の感想もそうでしたが、切り口が多すぎて、どこから切ればいいのか悩む作品なのですが、脳内をもう少し整理しておきたいので、思いつくままにつらつらと。
 まずは、この、外したくない企画を見事に成功に導いた約10年前、本当にお見事でありました。
 私自身は、そもそもジャンルを問わず続編ものがそれほど好きではない&一つの「物語」を終えたキャラクターの“その後”は視聴者それぞれの心の中にあればいいという考え方なので(近年はだいぶ事情が変わってきましたが、私が東映ヒーロー作品を好きな理由の一つに、基本的に「一年で終わる」というのがあります)、過去ヒーローの登場や過去作品との接続にはあまり付加価値を感じない性質の為、今作には当初、見たらむしろガッカリしそうだなぁ……と距離を取っていたのですが、宍戸勝さん(星野吾郎隊長)登場なら地雷覚悟で見るしかない、とチャレンジしてみたところ、印象が大幅好転。
 そのまま、まんまとはまってしまうわけですが……何より今作が素晴らしかったのは、ただ過去キャストを出演させるだけではなく、原典である過去作品と向き合い、そのエッセンスの幾つかを抽出し、ゴーカイジャーの視点から煮込み直すという物凄く手間のかかる作業を、毎回毎回、丁寧に行っていた事。
 例えば、わかりやすい所だと「メガレン」回で、あの健太が先生に、は月並みなのですが、そこから『メガレン』のエッセンスとして「学園生活」を抽出し、それが『ゴーカイジャー』世界において何を象徴するのか? 海賊たちにとってどんな意味を持つのか? と組み立て直す事で、『ゴーカイ』の一編としての意味を描きつつ、『メガレン』と接続した意味を強くする、とこういった再構成による旧作要素の掘り下げが実に巧みで、特に香村純子さんのセンスには目を瞠るものがありました。
 これにより、原典を知っていれば二重三重の面白さがあるし、原典を知らなくても『ゴーカイジャー』として十分に楽しめる(エピソードによっては前提要素多めの時もありますが)――レジェンドと原典作品を大事にするが、同時に寄りかかり過ぎもしない、絶妙なバランスが形成。
 また、多少わからない原典要素があっても、シリーズを貫く様式美の格好良さは毎回確実に見せられるのが、作品としてレジェンド客演と相性の良い部分となり、今作全体を貫く“アクション重視”の舵取りは、非常に上手く行ったと思います。
 合わせてそれが、戦隊の元型的な魅力を引き出す事にもなったな、と。
 ……ちょっと横道に逸れますが、これが多分、白倉プロデューサーの言うところの「戦隊には型があるが(平成)ライダーには未だ型がない(大意)」の一つであって、『ゴーカイジャー』で成功した文法を《平成ライダー》にそのまま持ち込めない要因の一つであったのかな、と思うところ(私が、今作に関してはあまり過去作要素に引っかからずに見ることが出来た理由の一つも多分これかなと)。
 そしてゴーカイチェンジに象徴・集約される戦いにおいて、ただ“力”を用いるのではなく、筋は通すが正義は唱えない海賊達が、過去ヒーローとの交流や衝突を経て認められるに至る、という基本設計が巧みでありました。
 その点で、如何にもスーパー戦隊代表な優等生集団ではなく、とんでもない不良軍団だった、のも、インパクトのみではない作劇の見事なピースになったなと。仁義を通すアウトロー、というのはスーパー戦隊から更に遡る東映の遺伝子ではありますし。
 またその不良集団(一部例外あり)が、何かと雑な対応の一方で、身内への気配り・目配りはしっかり持っていて適切な距離感を保ち、友情の名の下に他人のデリケートな部分へ土足で踏み込む性質で無かった事は、個人的に大変見やすい部分でした。これを第4話で確立できたのは、作品的として大きかったと思います。
 今回、通しで見て一番印象が変わったのがジョーだったのですが、リアルタイム当時はジョーの格好いい回があらかた終わった後だった事が判明し、それはそうなるな、と(笑)
 第4話を皮切りに、色々と納得の格好良さでした(そしてこの時点で、既にパティシエネタを自ら投入しているのが見事)。
 今作、基本の成長ポジションにはハカセ、後に鎧を加え、ハカセが「なんの為に勇気を出すのか?」であり、鎧が「なんの為のヒーローなのか?」と、今作の主要なテーゼを丹念に掘り下げていくと共に、中盤からアカレッド・バスコとの過去が描かれる事により、実は弟分気質のヤンキー属性だったマーベラスの真の自立までが描かれていく事になるのは、唸らされた構成。
 目標意識とそれに基づいた強い行動理念の持ち主で、なんだかんだ面倒見が良く責任感も強い(ただし色々と雑)、登場当初から人間的完成度が高めだと思われたマーベラスが、「キャプテン」の看板を背負って虚勢を張っている部分があった事と、そこから本当の「仲間」を得ていく事で、“宇宙最大のお宝”とは別に、マーベラスにとっての「自分だけの宝物」を得る物語が完成しており、その結実がラスト1話前の「少年」との対話であり、最終回における園児へのサインであり、マーベラスが“道を示す側”に辿り着くのもまた、美しい帰結でありました。
 『VSギャバン』見ていなくても、ちょっとキザな別れの挨拶で通じる上で、『VSギャバン』見ていたら、“今の自分を認めてくれた男”から受け継いだ魂を、今度は渡す側に回ったマーベラスの姿が見て取れて、あれもこれも好きな最終回の中でも、好きなシーンです。
 個別のキャラ話をやりだすと、感想をチェックしながら迷宮にはまりそうなのでひとまず避けますが、道中色々と言ってきましたが、改めて、マベ×鳥派です!!(笑)
 鳥の本質は超便利導入ギミックなのですが、日常風景においてマーベラスのあれこれ雑なところを示す役割を担いつつ、機械の体とめげない性格でそれを嫌な感じにせずに互いの愛嬌に変換する点において、ジョーとはまた別の唯一無二の相棒関係であり、占いの凄まじい都合の良さをキャラクターとしての存在感でカバーしているのは、今作の設計の中でも非常に上手い点の一つ。
 たまにマベが鳥を雑に扱いすぎて、女性陣からお叱りを受けるシーンとか、好きです(笑)
 要するにマベは、鳥相手だと油断するよね、という。
 …………なので総合的に鳥に一番きついのは、ジョーかもしれない(笑)
 ジョーは基本シリアス畑の住人で崩しの少ないキャラですが、その崩しの少なさゆえに、時々放つストレートなツッコミが、一周回って面白くなってしまうのは、天の配剤というか絶妙なキャラ配置というか。
 アイムも時々、ぐさっと来ますが。
 ルカは一番安定しているのですが、それだけに、その足下を揺らしに来た幼なじみエピソードが、本編ワーストクラスの出来だったのは、つくづく惜しまれます。
 その他、スタッフワークや特に好きなエピソードに関しては、日記タイトル&エピグラフ元ネタ集を作る際にチェックしてからにしようと思いますが、とにもかくにも、結果的にはまったのかもしれない部分も含めて、立ち上がり段階の設計図が良く出来ていた作品でありました(勿論、その先の舵取りや収束も非常に見事だったのですが)。
 後、精査していない思いつきの段階のメモみたいなものですが、最初から考えていたのか、作っていく内にそこにピントが合っていったのか、今作がある程度《スーパー戦隊》シリーズを統合可能な要素を探して辿り着いたのが多分「勇気」・「夢」・「明日(未来)」の3点セットで、そう考えると、初のレジェンド回が「マジレン」編だったのは、狙い澄ましたのか、はたまた偶然の産物なのか、面白いところです。
 個人的には劇中のロジックが肌に合わなかった『マジレン』ですが、裏を返すと、日笠Pからバトンを受け取った塚田Pの意気込みだったのか、“戦隊シリーズのコア”的な要素をストレートにテーマにしすぎていたのかもしれず、それが結果として「無限の勇気がある」=何故なら「スーパー戦隊だから」、と切り離せないループを生んでいたのかもしれません。
 『マジレン』視聴時、「勇気とは何か?」という命題から“逃げている”印象だったのですが、作り手の視点としては“逃げている”のではなく、それそのものが“スーパー戦隊だから”を解とする自明の理だったのかもな、と今になって思ってみたり。
 そして今作には、第3話に始まり、“臆病なアウトロー”という距離感を持ったハカセに導かれてラスト前の山崎さんへと繋がっていく、『マジレン』の語り直しという面があるように思えるのですが、そこには、日笠P・塚田P・宇都宮Pの間で受け渡されてきたバトンの存在が見えるような気もするところです。
 ひとまずここまでにして、日記タイトル&エピグラフ元ネタ集の後に、構成分析等も兼ねつつ、補遺2につづく予定。