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伝説、風になれ

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・最終話

◆最終巻「風と水と大地」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
 「行くぞ、アレの向こうへ!」
 サブタイトルを三人で分担して読み上げる趣向は格好良く、虚空の大穴に突入する旋風神ハリアー。内部の異空間で怒りの矢を発見するも邪悪なる意思の妨害を受けるが、ハリアーモードの解除寸前に矢を掴み取って放つことに成功し、ジャカンジャが500年かけて誕生させたアレ、開始3分で崩壊(笑)
 ……まあ、500年の内の5分の4ぐらい、スカウトと称してムカデ様がキャバクラを梯子してげふんげふん。
 天変地異は収まり、巻き込まれていた七海のマネージャーと鷹介の社長も意識を取り戻すが、巨大ムカデ様と融合した邪悪なる意思がこの世界に出現。
 旋風神で立ち向かうハリケンジャーは、体が同じムカデ様なら弱点はやはり眉間なのでは、とあたりをつけ(俵藤太の百足退治伝説からか)、前回のサメによる突然の刺殺が、ハリケンジャーの気付きに繋がるのは良い膨らませ方でした。
 「忘れるな……俺たちには、みんなから託された思いがある!」
 最後まで諦めない赤・青・黄色は、くじけそうになる気持ちを今、笑顔に変えて、トドメを刺そうと迫る邪悪ムカデに至近距離からカウンターパンチとしてカラクリボールをぶつけると、ひるんだ隙にカラクリ魔剣で額をぐさっとな。
 ハリーアップに始まり、最終回にして思わぬ切り札となるカラクリボール、初期武装のカラクリ魔剣でフィニッシュ、とロボ関係の基本要素を使い切ってくれたのは嬉しいところ。
 致命傷を負わせたかに思った邪悪ムカデだったが、執念のムカデガッツで邪悪なるセキュリティを発動。ハリケンジャーは旋風神から緊急脱出し、ラスト3話で、巨大戦力が一体ずつ敵と一緒に吹き飛んでいく事に(笑)
 前回-前々回と、特攻・自爆・生死不明が続いたのはあまり好きでは無かったのですが、3回続ける事で、変な統一感が出てちょっと面白くなりました。この最終回、怒濤の最終章で引っかかっていた部分の幾つかを、納得できる着地点に誘導してみせたのは、全体的に良かったところ。
 「邪悪なる意思を……倒したんだ!」
 ところが……かき消えるかと思われた闇は七つの人型に分裂し、倒した筈の暗黒七本槍が復活! ……という事は、ウェンディーヌとフラビージョは前回のあれで本当に死んでいたらしいのは扱いがあっさりしすぎて残念でしたが、ここで暗黒七本槍が揃うのは、サプライズに加えて、今作の魅力を活かすという点で、深く納得。
 木「我らの間の全ての因縁は消え」
 日「貴様等を倒す為に、今」
 土「七つの力を合わせちゃうんだもんね~」
 月「行くぞ、ジャカンジャ七重連
 火「スクラーム!」
 水「ターゲット」
 金「ロックオン」
 火「暗黒ボンバー!!」
 掟破りの合体バズーカが放たれ、落ちこぼれ3人組、伝説を目前にして遂に退学?! のその時、飛び込んできた二つの影が暗黒ボンバーを跳ね返し、3人の窮地を救ったのは勿論、霞兄弟! 逆光は正義!
 そして、七海が、七海が、「一鍬!」って叫んでくれたよ!
 「あの時…………いかずちが我らを守ってくれたのだ。二度と影にはならない。一緒に戦い続けるという、おまえ達との誓いを果たすためにも」
 「今我らは帰ってきた」
 お約束通りといえるゴウライジャー復活ですが、暗黒七本槍の復活直後というタイミングが絶妙だったのに加え、雪解けと自傷行為を繰り返す事で有名な兄者が最終回にしてようやく心から「二度と影にはならない」に辿り着いたように聞こえ、何よりテーマ曲が格好良くてお得。
 「許さんぞ、ガキ共!」
 「ガキってのは、俺たちの事か?」
 「今までのあたしたちと思ったら、大間違いよ」
 「俺たちは……へっ、伝説の後継者なんだぜ!」
 臆することなく不敵な笑みを浮かべた鷹介たちは、ジャケットを脱ぎ捨てると力強く生身名乗りを決め、ゴウライ側は派手な口上とポーズが無いので、とりあえず、腕組みしながら振り返りました(笑)
 「今こそ、決着の時だ」
 「忍風!」
 「迅雷!」
 「「「「「シノビチェンジ!!」」」」」
 文句なしの盛り上がりで挿入歌に乗せて7体5の対決となり、再生怪人(厳密には、邪悪なる意思が手駒の姿を借りた分身体)ではあるのですが、劇中では基本的に格上の相手だった七本槍を改めて正面から打ち破る姿で、若者たちの成長を描くのが今作の物語構造とベストマッチ。
 「邪悪なる意思! これが地球を守る、忍者の力だ!」
 「「「暗黒七本槍!」」
 「「見切ったり!」」
 も、その1年分の物語が乗った言葉となって、大変格好良かったです。
 また、消化不良気味だったサタラクラ・ウェンディーヌ・フラビージョに関しては、ラストバトルを一つ加えた事で悪役としての良い補強になりました。
 地球ニンジャーは怒濤の必殺5連発で再生七本槍を撃破するが、爆炎と噴出した闇が再び一つに戻ると、そこに現れたのは人間大の姿となった暗黒ムカデ様。
 「許さん、許さん!」
 その力は勢いづくハリライジャーを軽々と薙ぎ倒し、追い詰められる5人。そろそろ天空忍者が出てきても良い空気になった時――通信機から聞こえてきたのは、瓦礫の下でなんとか無事だったおぼろさんと、おぼろさんの危機に正しい変化の術を思い出し、人間に戻った元ハムスター館長。
 「よっしゃぁ! おぼろさん! 館長! 元気貰ったぜ!」
 二人のエールを受けた5人は活力を取り戻して主題歌が鳴り響き、最後の一押しはおぼろさんで良かったのか感はなくもないのですが、今作の真ヒロインはやはりおぼろさんであった事が、力強く証明されました(笑)
 「俺たちはくじけない! 風のように!」
 「それが未来。疾風の心!」
 「過去からの絆、それが迅雷の心!」
 「二つの心、合わさる今こそ!」
 「宇宙統一忍者流の名の下に!」
 道中今ひとつしっくり来なかった宇宙統一忍者流ですが、これもようやく、示された道に対して5人が自分たちで咀嚼をして辿り着いた感じが出て、納得できる形に。
 今、この星を守る為に受け継がれてきた秘密の力と心が一つになって、果てしない明日を目指して巻き起これ勇気のハリケーン
 立ち上がった五人は、超忍法・五人影の舞から宇宙統一ビクトリーガジェットを叩き込み――成・敗・バイ!(最後に使ってくれて感涙)
 忍風館(と迅雷の里)の仇じゃぁぁぁぁぁ!!
 …………ちなみに実は、第1話における忍風館の壊滅時、チューズー坊配下の使った忍術が、吸い込んで封印する?系に見えたので、てっきりジャカンジャ壊滅の暁には両派の学友たちは戻ってきて学校が再興されるとばかり思っていたら、この後全くそんな描写はなく、割と凄惨な被害が出っぱなしで完結したのは驚きました。
 そうなると、新しい家族の為に抜け忍となった事で結果的に九死に一生を得た焼き鳥屋の大将回は、凄く重いし、あの回で歌われる忍風館の校歌も別の意味を持ってきて、あれ、今作の下敷きとして意識の見える『超獣戦隊ライブマン』におけるキョンシー回だったのか、という……。
 御前様、天空忍者(?)、多くの見習い達と教員……疾風流と迅雷流を壊滅同然に追いやり地球忍者に数多くの犠牲を出した宇宙忍者大戦は終結。一つの宇宙を無に還し、新世界の神になろうとした邪悪なる意思は滅び、二ヶ月後――疾風・迅雷両派合同卒業式の日を迎え、神棚に置かれた守り刀と天空ボールと共に5人を待つ館長とおぼろであったが……
 「せやのに……なんで肝心のあの子らがおらんのよ!」
 「ったく、あいつら、最後の最後まで」
 別れの時に感慨深く、珍しくしんみりした3人と霞兄弟は、物語の始まりの場所といえる滝の前で手を重ね、忍者としての本当の戦いは卒業してから、と納得して手を重ね、そこに姿を見せる館長。
 「こんな日にまで遅刻するような奴らに、卒業証書は渡せん。欲しければ、実力で奪ってみよ」
 かくして主題歌とスタッフロールに乗せて、巻物を手に山野を駆ける館長から卒業証書を奪う様子とその後の姿(表の顔をそのまま継続)がメンバーそれぞれ交互に描かれていき、無事に卒業を果たした5人が蕎麦屋に入ると、そこには歴代シュリケンジャー人間体が、というのは凄いサービスシーン。
 果たして本物のシュリケンジャーは? というのは濁されたまま終わりましたが、英語で叫んだ事で追いかけられる蕎麦屋店員は、声を務めた松野さん、或いは、スーツアクターの方でしょうか?
 シュリケンジャーに関しては、EDパートでそれらしい人物が通りすがり、神棚に飾られた天空ボールがいつの間にか消えている……みたいな見せ方になるのかな、と想像していたのですが、この特別出演メンバーを集められたなら、そちら優先のシーンになったのは、まあ納得(笑)
 ラストは改めて、宇宙統一忍者流の免許皆伝(卒業証書)授与が描かれ……忍風館と迅雷の里の壊滅事件が、宇宙統一忍者流旗揚げの為の発展的解消だった事に歴史が捏造されている疑惑が膨れあがり、忍者の闇は深い。
 から、スーツでの砂浜ダッシュ、素顔の5人が並んで、Say bye bye でエンド。
 そして最後の最後に、ナレーションさんがおまけコーナー最終回で下忍マゲラッパの中には「虫がいっぱい入っていた」と、知りたくなかった事を教えてくれて、完。
 ……今作で一番闇が深いのはやはり、おまけコーナー。
 感情の起伏が激しくあまり頭を使わない陽性のメンバーが体当たりで物事を解決していく作風は決して好みというわけではありませんでしたが、アレにまつわる要素を手早く解決した上で、今作の魅力を存分に押し出した、大変いい最終回でした。
 特に、道中で微妙に整理しきれなかった「霞兄弟の贖罪意識」「宇宙統一忍者流」を改めて物語の中に落とし込んだ事と、ロボ戦そして半分以上が内ゲバとドサクサ紛れに倒れた暗黒七本槍と正面から激突する中で基本ギミックを使い切り、それによって落ちこぼれの若者達の成長を象徴する、という見せ方は非常に良かったです。
 基本的に、物語における各種ピースの作りが粗っぽく、精度の甘い作品だったのですが(それはそれで魅力にもなり得るので、好みの問題ですが)、「流派の対立と統一」「未熟者たちの成長」「くじけぬ意思」といった『ハリケンジャー』として物語のコアになる要素を最後にしっかり一枚の絵にまとめあげ、「過去から未来へ」の物語として飛翔させたのは、お見事でした。
 全体のストーリーに関してざっくり触れると、中盤~後半にかけてのシュリケンジャー周りの集約ミス(商業展開の対応にともなうイベント順のちぐはぐさ)と、最終盤に要素を残しすぎて駆け込み乗車みたいになったのが難でしたが、御前様が前作におけるガオゴッド案件になるのを防げたのは大きかったな、と。
 また、中盤の単発的なキャラ掘り下げエピソードが粒ぞろいだった事で、キャラを含めて物語全体への印象が悪くならなかったのは、見る上で助かりました。
 商業展開におけるシリーズのニュースタンダードを作ってヒット作となった『ガオレンジャー』の次という事で、コレクションアイテムをどう処理していくのか、が大きな課題だったと思われますが、これは改めて、3+2+1という複雑化したメンバーの出入りと合わせて、確認できればと思います(一度、全体の構成を分析してみる必要があるので)。
 キャラでいうと、霞兄弟がどうしてもセット扱いを脱却できなかったのは惜しまれるところで、そういったキャラクター性といえばそれはそれで良かったのでしょうが、私個人の趣味としては出来れば、ご近所でも現場でも大人気の霞兄弟日常回もう一本と、七海×一鍬の本格的コンビ回は見たかったな、と。
 それを入れるとバランス的に吼太の不憫度が上昇してしまうので、吼太回をもう一つ補完するとすれば削るのはシュリケンジャーしかない、という事にはなってしまいますが……コンセプトアイデアは悪くなかったと思うものの、御前様と合わせて終盤までフリーなカードにしておきたい必要から一定以上の歩み寄りが出来ず、その一方で御前-緑ラインの存在感を強める為に新装備の供給元になる必要がある、のは重ねて難しいキャラであったなと。
 御前様同様、劇中における役割が決定する事で、最後にしっくりと収まったのは、良かったですが。
 「スイッチを押すのはお前達だ!」は、それまでの負債をだいぶ減らせるぐらいに、好き。
 感想スタート時に書いたように、リアルタイム時に序盤脱落した際の印象があまり良くなく、長らく食わず嫌いの状態になっていた作品だったのですが、改めて見た事で印象が変わる部分も多々あり、思い切って見てみて良かったです。
 同時期の視聴本数もあって簡易気味の文章を心がけたので、感想としては掘り下げきれなかった部分も多いですが、以上ひとまず、『忍風戦隊ハリケンジャー』感想でした。