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角は最後の武器だ

超獣戦隊ライブマン』感想・第43話

◆第43話「怪!?ギルドス最期の姿」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「最後の一個……急がねばならん。それも、最高の頭脳を。……千点頭脳を」
 急激な老化のような症状を呈したビアスは、ギガブレインウェーブを浴びる事で再び元の姿を取り戻すと、生徒たちの点数を中間発表。それぞれ800点前後の点数が何やら意味深になっていく中、突如ギルドスが、ビアスはただの人間じゃないか、と反発を示し、台詞の用い方からすると、前回のめぐみの台詞も含め、「人間」=「地球人」の意味で取ればいい模様。
 俺たち宇宙の天才だぜ、と粋がるギルドスに対してビアス様は慇懃な口調で挑発し、ギルドスは自らギルドカオスを放つと、ギルド星人の不滅の生命力を持つギルードヅノーを作り出す。
 ビアス様がしてやったりとほくそ笑む中、ギルドスの最初のターゲットは――相川純一。
 その純一は、足を怪我した少年・翔に過去の自分を重ね、その姉・由紀と共にリハビリを手伝っていたが、そこに頭脳獣が強襲。お姫様抱っこからスローイングされるも、サイカッター電柱崩しから大逆転勝利を収め、観戦中のヅノーベースに並ぶ呆れと嘲笑。
 「おいおいブッチーくん! どこが宇宙の天才なんだか!」
 ライブマンとしての勝利で少年にリハビリへ向けた勇気を与える純一であったが、ギルドスから不滅の生命エネルギーを供給された頭脳獣が蘇り、ぎゅいーんと急低下する姉弟からの好感度。
 特にお姉さんの、視線が、厳しい!
 「はははははは! 宇宙の天才、ギルド星人・ギルドスの科学力と生命力は、おまえごときの常識を遙かに超えているのだ」
 今作ではあまりやっていなかった気がする土管カットで再戦となり、サイカッターを弾き返されてピンチに陥る緑。駆け付けた赤黒の飛び蹴りさえ弾き返すギルードヅノー、だが……
 「クーガーバルカン!!」
 ライブマンには、6人目の戦士が居るぜ!!
 展開としてはだいぶ都合がいい助っ人なのですが、ライブマンの危機にクーガーできゅきゅっと走り込んできて、問答無用でぶっぱなすコロンさんが格好良すぎて、格好いいは正義。
 我らがコロンさんの一撃でギルドスと頭脳獣はまとめて吹き飛ぶが、格好つけて適当なこと言いやがってこのグリーンチキン! と姉弟から純一に突き刺さる零下180度の視線。
 純一から距離を取り、去って行こうとする姉弟だが、またも再生したギルードヅノーが弟を拉致。ヒーローとしての信頼を取り戻し、少年がリハビリに立ち向かう勇気を与えたいと願う純一は、ギルドスの誘いに応じて単身でギルードヅノーに立ち向かい、掘り下げの時間がどうしても不足した純一と鉄也は、「復讐」に囚われすぎる事なく、誰かの為に戦える姿を重ねて示す事で、ヒーロー性を確立。
 「翔くん! 見ていてくれ。これがグリーンサイだ!」
 渾身のジャンピング頭突きで頭脳獣を一撃粉砕する緑だが、またも再生。激しい一騎打ちが続き、人質の少年の目前で、緑による破壊とギルドスによる再生が繰り返される事で、純一が粋がって吹かしていたわけでない事が証明されるのが手堅い。
 徐々に追い詰められていく緑だが、諦めずに戦い続けるその姿が自分へのメッセージだと気付いた少年は、勇気を出して立ち上がるとサイに向かって走り寄り……あ、これ、某JPさんなら、人間が自力で立ち上がるまでやられたフリしているやつだ、と思いましたが、ヒーローが子供に立ち上がる勇気を与えるスタンダードな作劇と比べると、改めてJPさんの歪みぶりが際立ちます。
 純一の気持ちを慮り戦いの様子を窺っていた勇介たちは、少年が立ち上がった姿を見て飛び出すとライブマン。5人揃ってバイモーションバスターを叩き込んで頭脳獣を木っ葉微塵にすると、頭脳獣の残骸はギルドスの再生エネルギーに反応せず、逆に、ギルドスの体が火花をあげる!
 「ああ、どうなっているんだ? ……私の体は、どうなってるんだ」
 混乱するギルドスの体は小爆発を繰り返し、次々と剥き出しになっていく金属のパイプやパーツ……。
 「ギルドスはロボットだったんだ」
 ライブマンも呆然と見つめる中、あちこちから動力チューブが飛び出し、半ば崩壊したギルドスの表皮の下から姿を見せたのは、鋼鉄の頭蓋骨(この時期、スタッフの中で、『ターミネーター』が流行っていたのでしょうか)。
 「ロボット?! ギルドスが……? ビアス様! ビアス様、どういう事ダスか、ビアス様!?」
 困惑するブッチーの問いに答えず背を向けたビアス様は邪悪な笑いを噛み殺し……元々、急な宇宙人の登場によるやや強引な世界観拡張でしたが、なんか凄い所からひっくり返してきました。
 「私が……私がロボットだなんて……宇宙人ではなかったのか……」
 そもそも、この作品世界に高度な異星文明など存在していたのか(先日、藤井先生が補強してしまいましたけど)、足下から大きく揺らぎ、己の存在を見失ったギルドスがライブマンも目に入らずフラフラとその場を離れていくと、残ったギルードヅノーの残骸を、ガッシュがギガファントム。
 ライブボクサー……はもはやあまり役に立たないので前座扱いでスーパーライブディメンションし、ギルドブーメランを空中でキャッチして投げ返すと、ビッグバースト。
 「知らなかった……私の体の中がこんなになっていたとは。なぜ、なぜだ……? 私は宇宙一の天才、不滅の生命力を持つギルド星人、ギルドスではなかったのか? どういう事なのか……」
 ギルドスは体の各部から煙を噴き上げながら亡霊のように彷徨い歩き、己のアイデンティティが消え失せた混乱を抱えたまま、よろけて崖から転落し、退・学。
 ビアス、教えてくれーーー!!」
 ギルドスにとっての世界が崩壊する混乱の極みの中で、真っ逆さまに転げ落ちていく半壊した体に痛切な叫び声が重なり、迫真の断末魔とド派手な爆発の合わせ技で、つい前回まで余り物感があったのが嘘のような、大変印象深い最期になりました。
 実は○○でした……とキャラクターのアイデンティティを破壊する手法自体は珍しくありませんが、ボルト側の共通要素として丁寧に積み重ねてきた「傲慢な悪の天才」が、その傲慢さの根拠を失うのが強烈な大外刈りの一撃となり、凶悪なインパクト。
 今作でいうとオブラー退場編の諸々など、苛烈な描写も割と真っ向から見せてくる東條監督ですが、肉体的にも精神的にも自己崩壊したギルドスの転落シーンの無惨さが、その劇的さを強く引き立てました。
 果たしてギルドスは最初から、ケンプたちの競争相手としてビアスに造られた人形に過ぎなかったのか……? ヅノーベースではブッチーが泣き崩れ、配下の競走を加熱させる為に如何なる手段も講じるビアスの底知れぬ恐ろしさを感じる勇介たち、でつづく。
 オブラーと入れ替わるように派手に登場するも直後にブッチーとセットにされるパッとしない扱いに加え、ライブマン側との因縁の薄さや実際の出番の少なさなど、ケンプらと同格の退場劇を描こうとするには無理があったギルドスですが、どうするのかと思ったら、いっそ“同格と描かない”事で、最終章への大きな布石を打つ、という使い方は成る程。
 正体そのものは唐突ではありましたが、弟子たちの競走意識を煽るビアス様の行動としては一貫している事と、ロボットの側近であるガッシュの存在により説得力はありますし、前回ちょっと落ちかけたビアス様の株価を回復すると共に、何がビアスをそこまでさせるのか、とビアスの真の目的への意識をより強く誘導する造りになっているのも巧妙。
 映像だけでも十分なインパクトを生みつつ、ギルドス退場に二重三重の機能を持たせた他、「ロボット」要素がライブマン側と化学反応を起こさせる事も期待させ、「ギルドス」というキャラクターは消化不良に終わった面はあるものの、そのギミックのしての使い切り方は、見事でした。
 次回――めぐみさんのショルキーが再び火を噴く! スパーク!!