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揺るがないシューティングスター

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第26話

◆エピソード26「アローな武器にしてくれ」◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久
 前回に続いて、キラメイジャーは戦闘員を相手に大苦戦中。
 「そうだ。トンネルが出来たら、ボクも笑ってみるか」
 「あぁ?!」
 「願いがかなったら人間は、嬉しくって、笑うんだろ?」
 前回の振りを、冒頭で大変嫌な感じに使ってくれて、素晴らしい。
  ……ところで本筋とは全く関係ないのですが、画面右手の爆弾邪面がヨドンナより手前(ヨドンナから見て左方向)に立っているものとばかり思っていたら、ヨドンナが右方向(画面奥側)に視線をやりながら喋って少々混乱したのですが、爆弾邪面の頭が大きすぎて遠近感が狂っていただけだったのが個人的にちょっと面白い体験でした(笑)
 ヨドンナに爆破を指示されてストライクへのこだわりを見せようとする爆弾邪面だが、鞭でお仕置き。
 「ボウリングはいらない」
 最っ高にクールだね君って!
 クランチュラが与えた美学を完全否定したヨドンナが鞭を振るうと、そこからパワーを注ぎ込まれた爆弾邪面は、なんと5体に分裂。
 「美学なんかなくても、燃えるでしょ?」
 「「「「「イエス・ヨドンナ!」」」」」
 爆弾邪面は「イエス・アイマム!」とばかりにヨドンナに忠誠を誓い、サディスティック女王様&海兵隊鬼教官路線を確立するヨドンナ……美学・芸能・遊戯、の人達とは凄く相性が悪そうです!
 「邪面師を完全に手なずけた」
 本日も覗き見に精を出すガルザ、楽しい侵略ライフが大ピンチだ……!
 「行け、バクダンファイブ」
 ヨドンナは邪面師を街へと放ち、それを止めようとするも戦闘員に阻まれて追いかける事さえできないキラメイジャー。戦闘員を物量(今回はタフネスですが)で足止めに使う戦術は非常に有効ですが、ヨドンナの軍人路線は、戦術系という点でタメくんと対応しているように思われるので、今後の絡みにまだまだ期待を持っても良さそうでしょうか……?
 「力が欲しい……! 強い、力がぁ!」
 足掻くキラメイジャーだが、戦闘員相手に手も足も出ないまま、とうとう変身解除。戦闘員史に残る大金星まであと僅か、キラメイジャー全滅寸前、のその時、急に動きを止めた戦闘員は苦しみもがきだすと、強化の副作用により自壊。
 ヒーロー絶体絶命のタイミングで敵が突然撤収する腹痛早退パターンなのですが、自壊したペチャットが泥の塊と一枚の仮面になってしまう映像が極めて鮮烈で、このインパクトで十分なプラス。
 思えば前回、ヨドンナが土をこねてチェンジャーを造り出していましたが、ペチャットの本質が泥と仮面なのだとすると、ヒーロー側が「お絵描き」から新たな力を生み出しているのに対し、ヨドン側が「泥(砂)遊び」を基盤にしていたというのは、面白い対比。
 ヨドンナが自壊を承知で戦闘員を強化していた事に驚く充瑠らだが、ヨドンナはそれを平然と切り捨てる。
 「兵隊は使い捨てだもん。当然だろ?」
 「そんな……!」
 これはままある錯誤ですが、普段その兵隊を一片の慈悲無く抹殺しているヒーローが、そこ怒るのは少し違うような気は。これが同じ人類だとまた少し話は変わりますが、基本的にペチャットに人権を見ているとは思えないですし。
 「君たちと遊ぶのは、今日はここまで」
 「待て!」
 あっさりと身を翻して立ち去ろうとしたヨドンナを止めた声の主は――ひとり立ち上がった為朝。
 「……トドメ刺しとかねぇと、後悔するぞ」
 許せぬ悪に向け、敢えて啖呵を切るに際して、屈せぬ魂を示すがごとく二本の足で立ってみせるのが、為朝めちゃくちゃ格好いい。
 「誰が? ボクは現場のリーダーとして判断した。君たちにこれ以上、構っている価値は無いってね」
 「仲間使い捨てて何がリーダーだ。俺たちには、頼りになるリーダーがいる」
 そして充瑠の背中に手を置き、決して「一人で戦う」のではなく、「信頼するリーダーの元に仲間と戦う」、を面と向かって宣言してみせるのが、為朝、実に為朝。
 「この仲間達と一緒に、とんでもない大逆転勝利を見せつけてやるよ!」
 「仲間? ……くっだらな。でも見られるもんなら見たいなぁー、その、大逆転勝利ってやつ。……どうせ無理だろうけど」
 その頃、誰にも心配されないまま強化モンストーンに追い詰められていたドリ巨神は、モンストーンがエネルゲンから供給されるエネルギーのオーバードーズにより動きを止めた隙に、人生はワンツーパンチを叩き込んで一足先に大逆転勝利を収め、世界よ、これが昭和の男だ!!
 ……ところで結局、前回の宝探し組のやたらなハイテンションに関してこれといった言及は無かったのですが、やはり、土地に蓄積していたエネルギーストーンの効能とキラメンタルが過剰反応を起こしており、あと1時間ぐらい宝探ししていたら、全身の穴という穴から血を噴き出して再起不能になっていたのでは。
 一方、九死に一生を得た充瑠たちは、怪人どころか戦闘員ポジションに手も足も出なかった完敗に意気消沈。魔石たちがキラメンタルを感じ取れないほどに戦意を失うが、爆弾邪面が行動を準備中だろうと示唆されると、「……備えなくては」とそれでも立ち上がる時雨が、ザ・アニキのハードボイルドな格好良さで、為朝とはまた違ったならではの格好良さが描かれているのが良かったです。
 そこへ叶えまストーンを取り戻した宝路がワンダーリターンし、そのパワーに活路を見出すキラメイジャー。
 「こいつのエネルギーでパワーアップすれば、おれたちは、もう一度、羽ばたけるんじゃねぇか?! 充瑠の描いた、あの絵の不死鳥のように」
 「駄目だよ! 絶対駄目!」
 ところが充瑠はそれを強く拒否して、器を越える無理な強化は肉体に必ず負担を与え、最悪ペチャットのように自壊してしまうかもしれないと危険性を説き(ここで無惨な戦闘員のビジュアルが効果的に機能)、モンストーンの様子から、宝路もそれに同意。
 「……たとえそうだとしても、奴らの手で地球を蹂躙されるよりマシだ」
 「……そうね。私も。たくさんの人達の命を救えるなら」
 「俺は嫌だ! ここに居るみんなが、未来を捨てるなんて」
 「じゃあ地球が滅ぼされたっていいのかよ?!」
 「それも嫌だ! 俺は、地球の平和も、みんなの未来も、どっちも守りたいんだ!」


 「……一人一人が輝く為に、支え合うから五人必要なんです。そして、そんな五人なら、居場所がバラバラだって、いつだってチームとして一つなんです!」

 守るために戦うが、その「守る」には戦う者自身を含み、戦う為に誰かを犠牲にはしない――第2話で示されたキラメイジャーのチームコンセプトに繋げられ、切羽詰まった局面で方針を更新する事なく充瑠はあくまでそれを貫こうとし、為朝からパスを受けた充瑠の「リーダーとして」の決断になっているのが、綺麗な流れ。
 実際にこの後、邪面師により街に多重の被害が出るように、第2話の時点で気にした“のっぴきならない事態”に直面したといえますが、あくまでも、英雄の犠牲を良しとしない事がキラメイジャーの在り方であると、2クール目の締めで改めて宣言される事に。
 エネルギーストーンを手に充瑠が基地を飛び出していった直後、爆弾邪面が各地で活動を開始。
 「自信ないけど……やるしかないよね」
 「なんとか食い止めよう」
 一度は戦意を失いかけるも、それでも地球を守ろうと出撃してゆく5人の姿でストレートなヒーロー像も描かれ、ヨドンヘイムでは、ガルザとクランチュラが ヨドン皇帝の趣味嗜好はいかがなものか ヨドンナについて協議中。
 「あの女は何かを隠してる気がする。もしかすると、我々にとっても危険な存在かもしれない」
 とりあえず、仕事中の間食は不許可になりそうな気がしますね……。
 一方、あてもなく飛び出した充瑠は気がつくと不死鳥の神社に辿り着いており、再会した神主に事情を語ると、もしかしたらヒントになるかも、と聞かされたのは、かつてこの神社を訪れたキラキラの宇宙人――オラディン――の話。
 不死鳥伝説に強く興味を示し、地球の武士とやらの力を見せて貰おうか、と弓の勝負を神主に挑むオラディンだが、結果は引き分け。それに納得のいかない武闘派組長は、二つの的を同時に射貫いたら俺の勝ち、と自分ルールを発動するが、限界を超えて引き絞りすぎて、弓そのものを破壊してしまう。
 そこで一案をひらめキングしたオラディン。弓が駄目なら剣で斬ればいいじゃない、じゃなかった、「限界を超えずに、これならどうだ。回転を加える」事で的の二枚抜きに成功し……つまり、「今の剣を忘れるな。今の剣こそ、竜巻剣だ。最大のエネルギーを発揮するのは、渦だ」(夢野久太郎)という事ですね!
 「限界は超えない為にある。それがわかって良かった」
 オラディンが口にしたという言葉に充瑠はひらめキーングし……キラメイジャー最大の危機に際して、パイロット版で組み立てたチームのスタイルを再び取り上げ、「仲間」「リーダー」という要素を組み込みながら、全体絶命の状況を“キラメイジャーのまま”でどう乗りきるか、と充瑠にパスを回す前半の流れは良かったのですが、最後の一歩が相変わらず外宇宙からのメッセージみたいになってしまうのが、集約としての弱さを感じる点。
 まあ、ひらめキングの前に入るワンカットがどうしても不穏に感じる私のバイアスがだいぶかかっていますし、オラディン王を実質的な長官ポジションだと捉えれば、戦隊のセオリーに則っているとはいえますが、なにぶん博多南さん一人でも結構なトンデモなので、2人体制だとトンデモが度を超えている感じは漂います(笑)
 ただそう考えると、
 博多南〔莫大な資金力・各方面へのコネクション・脅威の科学力・軽い狂気〕
 オラディン〔高い戦闘能力・謎のカリスマ・強引な説得力・軽い狂気〕
 で、鉄山将軍とか鬼の伊吹とか三浦参謀長とか、昭和スーパー長官の系譜を二つに分けた存在なのだな、と納得できるところ。博多南がサイエンス寄りで、オラディンがオカルト寄りですし、キラメンタルを信じるんだ!!
 街へ向かった5人は爆弾邪面を止められずに蹂躙を許し、涙をこぼすマブシーナだが、そこに充瑠が帰還。
 緊急事態ではあるのですが、机の上にブルーダイヤが散らばっている(=姫が泣いていた)、点に全く頓着せず、丁度いいや、とかき集めるのはどうかと思うぞ、充瑠!
 そして、エネルギーストーンとブルーダイヤをひらめキングする事で、新装備が誕生。
 一方、ヨドンナの元には五つのゴールデン爆弾が揃い、満身創痍で集まったキラメイジャーの前で高笑い。
 「なにがおかしい?!」
 「別に。君が教えてくれた笑うとこかと思って。真似しただけ」
 イエローが声を荒げると一瞬で無表情に戻る事が、本当に真似をしていただけである事を裏書きし、これはやはり、最後の最後に、本当に「笑う」ところが見たくなりますが、ガッツだ為くん!
 「ふざけやがって……まだ願いかなってねぇだろ!」
 為朝の説明により「嬉しい」「笑う」と「願い」が紐付けされているのは使えそうな要素ですし、当方は、ブコメに対する荒川さんの情熱を信じています!
 「でもボロボロの君たちに……もう出来ることはないだろ?」
 「――俺たちは不死鳥のように、甦るよ!」
 「は?」
 そこへ赤が駆け付けると、新装備、不死鳥の弓矢――キラフルゴーアローを召喚し、凄く、語呂が、悪いです。
 充瑠が閃いたのは、ストーンの力を引き出して強化はするが肉体の限界を超えない為の、100秒限定のパワーアップ。新装備のアイデアが(前振りはあったとはいえ)集約としては微妙に物足りなかったものの、「地球の平和もみんなの未来もどっちに守る」為に、強化はするが時間制限があるのを仲間の力で乗り越えようとするのは、キラメイジャーらしさの十分な良い落としどころとなりました。
 再び5体に分裂した爆弾ファイブがトンネル開通の為に所定の地点へ向けて走り出し、銀が強化戦闘員を食い止めている間に、キラメイジャーは弓矢の力でキラフルチェンジすると、「眩しすぎるぜ!」と不死鳥アーマーをその身に纏う。
 「「「「「ゴーキラメイジャーゴー!!」」」」」
 不死鳥の陣から走り出す5人、弓矢は一つしかないので、戦闘員を蹴散らしながらアローをパスして、爆弾邪面を次々と射殺(笑)
 ここで爆弾邪面とキラメイジャー、どちらも「走る」にポイントを置いたのは、今作のスタイルを確立した第2話を意識した構成だと思われますが、青が飛ばした弓矢を、緑がダッシュしながらバトンタッチの要領で後ろ手に掴むのは、まさにラグビー邪面戦を思わせる見せ方で痺れました。
 そして、射撃の下手な緑、乱射して山林を破壊しまくる。
 赤はチャージショットで邪面師を焼き尽くし、残り15秒でイエローにパス。なんか誰かのせいで持ち時間が少ない気がする! と残8秒で不死鳥アローを構える黄だが、ヨドンナの横槍を受けて時間切れでフィーバータイム終了。高笑いをあげて爆弾ツーを走らせるヨドンナだが、イエローは悔しさを見せるどころか余裕で立ち上がる。
 「残念なのはおまえさ。ヨドンナ」
 「なに?」
 「俺には仲間が居る」
 木と木の間でワンダー通せんぼした銀が、さよなら三角また来てシルバーで最後の爆弾邪面を消し飛ばし、昭和の男はちょっとネタがくどくなった気はしますが、これは荒川さんから脚本陣への、宝路の昭和感は今後こういう路線でねじ込んで下さい、というメッセージだったりするのでしょうかワンダー!
 「見たか。これが仲間だ! おまえの企みは潰えた。おまえが笑うことは、もうない」
 最後の最後まで仲間を信じ抜くのは、表の顔でも常日頃からチームプレイを大切にしているであろう為朝らしく綺麗にまとまり、キラメイジャーは宣言通りの大逆転勝利。
 「……人間どもめ!」
 撤収したヨドンナに近付いたガルザは、ヨドンナを持ち上げると手を組まないかと持ちかけ、クランチュラとヨドンナ、この先でどちらを裏切っても違和感が無いのがガルザの便利なところですが、両者は背中合わせで協力関係を結ぶ……。
 ココナッツベースでは祝勝会が行われ、感極まるマブシーナへ向けて「マブシーナ、もうブルーダイヤはいいから」と宣う充瑠、今回は全般的にデリカシーを燃えるゴミの日に出してしまった感満載なのですが、返す刀で為朝もばっさり袈裟懸け。
 「大丈夫。今回の恋は破れたけど、きっとまたいい子が現れるよ」
 念入りに失恋を宣告し……違う! 違うよ! 私が求めているのは、そうじゃないよ!!
 ……まあ今回もかなりがっつり絡んだので、どう転がるかはさておき、強い因縁として為朝×ヨドンナは継続してほしい要素です。
 「おまえに言われたくないわ!!」
 絶叫する為朝がケーキをやけ食いして、つづく。
 期待通りに概ね面白かったですが、キラフル時の残時間表示は少々微妙で、画面上に別の情報が載ってしまうと肝心のニューウェポンのアクションに集中しきれない面はあり。まあそこで、イエローの持ち時間、短くない? から、まさかのタイムオーバー、そして……に繋げてきたのは、アイデアを次の展開をより劇的にする為の仕掛けとして機能させていて、面白くはありましたが。
 また、「時間内の射殺」をミッションとして重視した結果、「弓矢が凄い」のはわかったけれど、「キラフルが凄い」点についてはわかり辛くなってしまい、アロー・キラフルモード・タイムリミットミッション、の三つ全てを印象的に見せようとするのは、難しくなってしまったなと。
 この点は次回以降、弓矢とは別に、不死鳥モードの強さを、見せてきてほしいところです。
 音楽祭は為朝のターンで……歌詞にしろ曲にしろ完全に「割と歌える人」向けで、オチが無い……! オチが無いよタメくん……!(スタッフ的にも、あまりにも格好良すぎると思ったのか、背後で流れる名場面集はネタっぽい映像が多い感じでしたが)
 次回――うーん……小ネタレベルならともかく、ダイレクトな作品コラボ(作品世界を接続してしまう行為)はあまり好きではないのですが、塚田プロデューサーが今作をもって制作現場を離れる可能性が高いそうなので、それもあっての『ゲキレン』コラボでありましょうか。