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地球がアレをする日

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第49-50話

◆巻之四十九「使命と天空忍者」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
 「どうすればいいんだ……これから我らは!」
 「腕を磨き、技を高める。それしかない! 振り向くな! BOYたち」
 御前様を失って打ちひしがれる地球ニンジャーは、緑の指導の下で激しい特訓に打ち込み、今日のシュリケンジャーはやたら強いのですが、これ、中身が入れ替わっているのか、練習に強い(本番に弱い)タイプなのか。
 「悲しんでいる暇はないぞ! 忍者は、命令に従い、生きてこそ忍者! 迷うな、振り向くな、前を見よ!」
 感情を殺したシビアな物言いは良くも悪くも青臭い面々の反発を買い、名前と顔、そして命を御前様に預けた時の事を思い出す緑……その正体は、10年前に失踪した疾風流の幻のホープ?!
 の割には戦績が悪い緑ですが、装備か、装備品が悪いのか?! どんなにダメージを受けても、変身解除されないスーツに、リソースを注ぎすぎてしまったのでしょうか。なお、ダメージが一定値を越えると、自爆装置が作動します。多分。
 御前様という支柱を失い、地球ニンジャに不協和音が生じる中、アレの正体は、全てを呑み込み無に還す巨大な穴と判明。邪悪なる意思から最後のメッセージを受け取ったムカデ様の指令により、ムカデ様が弓矢を射るにふさわしい力を得る為に人間の生体エネルギーを集めるサタラクラだが、エネルギー集めの道具としてムカデ様にあっさりと切り捨てられた末、サンダールにより一刀両断。
 怒りの緑は猛然とサメに斬り掛かり、やっぱりシュリケンジャーは御前様の消滅を悲しんでいたんだ! と、納得するハリケンジャー。……感情の裏表が無いし他人のそれも読まないので、あらゆる反応が単純で思ったままの事を口にするのはハリケン3人のいいところといえばいいところなのですが、よくもここまで、貫き通したものではあります(笑)
 江戸っ子モードで執念の一撃を浴びせるも宇宙サメに轢かれた緑は、千本ノックでタンクにボールを叩き込むが、サメの一刀に真っ向から切り下ろされてしまう。
 「忍者は、名を捨て、顔を捨て、命令に従い、生きてこそ、忍者。……だが、花の名を忘れても……」
 ――「花の名を忘れても、花の美しさを……人は知っている」
 「御前様……」
 ――「私も忘れん。……未来永劫。だから迷うな。振り向くな。前を見よ、シュリケンジャー」
 サメはタンクを手に姿を消し、重傷を追った緑は皆に囲まれながら御前様との出会いを思い出し……しんみりとシュリケンジャーの背景が明かされるシーンなのですが……なのですが……今回出てきた御前様から緑に与えられた忍者の心得が、ちょっとした思い入れのあるアニメ『飛べ!イサミ』劇中劇「バーチャル戦隊ガンバマン」の決め口上「振り返るな、前を見ろ、希望はそこにあるものさ」を思い出してしまい、脳内に「ガンバマンキーーング!」(CV:石井康嗣)が領空侵犯してきて、目の前の事象に全く集中できず(おぃ)
 なお『飛べ!イサミ』は、“正道ご町内ジュブナイルアドベンチャー(特撮ヒーロー風味)”というか、少年少女×先祖の秘密道具×悪の秘密結社が乱れ飛ぶ快作で特撮ファンには親和性高めの作品かと思われます(なんと長谷川裕一がコミカライズしていたり)。
 そういえば、カラクリ天狗とヨロイ天狗を合わせると、なんかサーガインぽくなり……とすると銀天狗はサンダールポジションで、ゴールデン天狗がサタラクラ……?(気付かなくて良かったのでは、という顔)
 黒天狗党とジャカンジャの関係はさておき……サンダールによって仮面を断ち割られ、三つ目の不気味な素顔を曝したサタラクラが狂奔の末に自ら巨大化すると、その相手を請け負った緑はムカデ要塞への道を開く天空ボールをハリライジャーに預け、
 「スイッチを押すのはお前達だ!」
 は、後進に道を託す忍道の先輩らしさが出て、大変格好いい台詞でした。
 満身創痍のシュリケンジャーは天空神に乗り込むと、巨大サタラクラを道連れにして、壮絶なセキュリティを発動。……まあ正直、作風としてもキャラクターとしても、死にそうな気が全くしなくて感情移入しにくいのですが、本当に死んでいたら申し訳ない気持ち。
 「遂に……遂に時は来た!」
 ムカデ様はサメからタンクを受け取り、ハリライジャーは、シュリケンジャーの思いを背に、いざムカデ要塞へ!
 「「「「忍風・シノビチェンジ!」」」
 「「迅雷・シノビチェンジ!」」

◆巻之五十「暗黒と新世界」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:宮下隼一)
 ムカデ様は、普通に野球ボールがめりこんだままのタンクから怒りと嘆きのエネルギーを吸収するが、そのボールこそがシュリケンジャー最後の一矢であり、ボールをビーコンとしたハリライジャーが次元シールドを破ってムカデ要塞への突入に成功する、のはシュリケンジャーらしい搦め手と技術の融合で、成る程。
 霞兄弟の案内でムカデ様の元に向かう途上、下忍相手に刀を振るって生身での立ち回りは迫力満点で、ラバースーツの背中に刀の斜め差しは、モダン忍者感があって格好いい。
 邪悪なる意思の目的とは、アレによる新世界の創世と支配であると語られ……500年の間、邪悪なる意思と協調してアレを探し、スペース渋谷で宇宙コギャルのスカウトとかしていたムカデ様…………やはり、節穴寄りの人なのでは。
 校長室に突入したハリライジャーの前でエネルギーを満たしたムカデ様は変形・巨大化し、ムカデ要塞、やっと突入した3分後に崩壊(笑)
 長らく置物だったムカデ様が遂に人型となってくるくる回りましたが、特徴的だった頭部のデザインを残す事を優先した結果、頭でっかちでフォルムのバランスが悪く……あまり格好良くは無い。
 「遂に時は来たれり……アレよ、今こそ!」
 弓矢を射るにふさわしい力・姿を得たムカデ様が矢を放つとそれは海底に突き刺さるが、直後、方針の違いからムカデ様を裏切り、その額を突き刺したのは食わせ物のサンダール!
 「所詮タウ・ザントにとって我らは捨て駒。だったらこちらも。アレの力で高みに登るのは、このサンダールだ! タウ・ザントでもサタラクラでも……ましてサーガインでもない」
 「……やっぱりあんたがサーガインを」
 サメが余計な一言でサーガイン殺しの真相に気付いたウェンディーヌと一触即発となり、なんであいつら内輪もめしてんの……? と地球忍者が困惑する中、ムカデ様は倒れ、海には巨大な渦巻きが発生し、ひとまず邪魔者を倒してから話を付けよう、と水金日は一時休戦し、ハリライジャーに迫る三本の槍。
 「負ける……もんかぁ……俺たちは!」
 「あの人たちから……受け継いだのよ!」
 「想いを!」
 「力を!」
 「絶対に……負けて、たまるかぁぁぁ!!」
 「「「「「シノビチェンジ!!」」」」」
 変身した5人は宇宙統一流影の舞からビクトリー! で三本の槍を押し切り、ウェンディーヌとフラビージョ、消滅? とは思えませんが……辛うじて耐えたサンダールは自ら巨大化し、シノビマシン発進。
 「見せて貰おうか。地球忍者のカラクリ巨人の性能とやらを」
 ……う、むむむむむ……もとより、妙に『Zガンダム』を意識したようなジャカンジャ側のキャスティングであり、その点について触れもしましたが……私、池田秀一にシャアの物真似をさせる(シャアっぽい台詞を喋らせる)のが物凄く苦手でして、パロディというかそのまんまの「当たらなければどうという事はない」含め、退場回にして、とうとうやってしまった感で、これは凄くガックリ(いわゆる中の人ネタとしても、大ボス級の敵に最終回直前でやらせるのはどうかと思いますし)。
 忘れられそうになっていたマンモスを繰り出すが巨大サメとの激突に敗れ、そうこうしている内にアレも生まれそうで大ピンチ。
 アレ誕生を悠然と見守り、新世界の支配者になろうと高笑いするサンダールだが、ここにきて悪い癖が出たゴウライジャー、カラクリ魔剣を取り出すと単身突撃し、豪雷神ごとサメの体に剣を突き立て、壮絶な相討ち。
 一応、七海が真っ先に飛び出してくれて、良かったな一鍬……(別に名前とかは呼ばれないけど)。
 恐らくこれで退場と思われるサンダール……協調性も忠誠心もなく、そもそもどうしてジャカンジャに入ったのか疑問の湧くキャラクターでしたが、登場が遅かった事もありそういった背景の掘り下げがあるわけではなく、終始、物語の都合に従って動くのを、デザイン&アクション&声の格好良さで押し切るタイプ。
 終盤の物語を動かすギミックとして、それはそれで納得はできるのですが、せめてサンダール自身の「欲望」(どうして表向きはムカデ様に従っているのか)を登場当初に匂わせておいてくれれば、もう少し立ち回りに説得力が付いたと思われるのが、勿体なかった点。合わせて、その時その時の都合で戦闘力があまりに激しく上下すぎるので(特に対御前様ではリアクション要員扱い)、地球ニンジャ終盤の宿敵としては成立しにくかったのも、残念でした。
 ゴウライジャーの犠牲によりサメは葬り去るも、いよいよ出現したアレにより世界は未曾有の大爆発に呑み込まれ……解析を進めていたおぼろが見出した逆転の一手は、アレ誕生の逆を行う――すなわち、アレの向こう側で、再び弓矢を射る事!
 最終回寸前まで超有能ぶりを見せつけるおぼろさんだが忍風館も瓦礫の下に呑み込まれて基地崩壊のノルマを達成し、孤立無援となったハリケンジャーは立ち上がる事が出来るのか?! そして、館長はハムスターのままなのか?!(崩落寸前に元に戻って娘を救っていそうな雰囲気ですが)
 「七海、吼太、俺たち弱音吐いてる場合じゃねぇよな!」
 「うん。この星を、宇宙を救えるのは、私たちしか居ないんだもんね!」
 「ああ。こんなところでくじけてたら、仲間に、笑われるよな!」
 「……よーーーし! みんな! 気合入れていこうぜ!」
 先達を失い落第生の弱気の虫が顔を出した鷹介・七海・吼太が、これまで出会ってきた人々の思い出に励まされてそれを振り切るのは、積み重ねと成長が描かれると同時にあくまでハリケンジャーらしくて良かったです。
 「空忍! ハリケンレッド!」
 「水忍! ハリケンブルー!
 「陸忍! ハリケンイエロー!」
 「「「忍風戦隊! ハリケンジャー!!!」」」
 気合の叫びと共に顔出しのままシノビマシンに乗り込むと、地面に落ちていた嘆きの弓を拾い、いざアレの向こうへ、でつづく。
 ジャカンジャ幹部陣の魅力は今作の大きな武器でしたが、少し頼りすぎたというか可愛がりすぎたというか、ラスト3話時点で〔黒幕-首領-幹部4人〕&アレの秘密、を処理するのはどうにも忙しなく、
 ・突入後3分で崩壊するムカデ要塞
 ・巨大化後2分で刺されるムカデ様
 ・余裕で高笑いしていたら不意打ちを受けて絶命するサメ
 と、急展開が続く事に。
 ウェンディーヌとフラビージョに関しては、あれで終わりだとあまりにも酷いですが(そもそも、ビクトリーガジェットで幹部を撃破できる説得力がない……)、明らかな邪悪なので、サンダールを囮にしてまんまと逃げ延びていました、だとそれはそれで具合が悪く、うまく処理ほしいところです。
 サタラクラは、おちゃらけた賑やかしと見せかけて……本当に賑やかしでした、は中盤の追加キャラだっただけに物足りなく、構成上の足し引きは色々あったのかと思われますが、ポテンシャルを生かし切れないままの印象になってしまいました。
 一方で、ハリケンジャー側の真っ直ぐな気持ちよさは出たラスト前であり、次回――落ちこぼれは伝説になれるのか?!