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邪剣、落日に散る

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第48話

◆第48話「宿命の対決」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久

 ――戦うだけではない、子供達と一緒に夢を追うのだ!

 「バスコが……ガレオンを乗っ取ったって事か」
 完全バスコに完膚なきまでに叩き伏せられ、なんとか意識を取り戻す海賊戦隊だが、レンジャーキーを失い、ガレオンとも連絡が付かず、ナビィは縄でふん縛られて床に転がっており、ここに来て、ヒロイン度が爆上げだ!
 バスコは入手した五つの“大いなる力”をレンジャーキーに移し、“宇宙最大のお宝”を入手する為の準備に取りかかるが、ナビィはテーブルの下に落ちていた果物ナイフを発見するとロープを切り裂いて脱出を図り、前夜のサリーの行動(前回しっかりと演出で強調)が逆転のチャンスに繋がるのが鮮やか。またこれが“意図せざる偶然の産物である”のが、クライマックスで大きな意味を持つ仕掛けになっています。
 バスコはガレオンの出入り口を完全封鎖すると、海賊ゴーカイジャーをラッパで召喚して鳥捜索に放ち、海賊達は打ち捨てられた教会の中で嵐をしのいでいた。
 「そういえば……マーベラスさんは、“宇宙最大のお宝”を手に入れて、どうなさるおつもりだったのですか?」
 「確かに、ちゃんと聞いたことなかったかも」
 「……さぁな」
 「「え?」」
 「大体そのお宝がなんだかもわかんねぇ」
 今更ながら、お宝談義となり……実はこのパーティ、普通に金目の物欲しがっているの、ルカだけなのでは(笑) まあハカセは俗っぽいので、それはそれで喜ぶでしょうけど。
 「……中身はなんでもいいのかもしんねぇ。この宇宙を旅する海賊達、誰もが欲しいと望みながら、誰も手にしたことのない伝説の宝物……それを手にした者は、宇宙の全てを手にしたのと同じ……そんなもんが存在するなら、手に入れるしかねぇじゃねぇか。夢は、手に入れられないと思った時に、無くなっちまうんだから」
 今更ながらのお宝談義と共に、今更ながら確認されるのは、海賊戦隊って「チームとして一つの“夢(宇宙最大のお宝)”を追う一体感」と「個人個人の目標や欲望」が別々に存在している事で、それはそれで当たり前ではあるのですが、ヒーロー物の作劇としては、〔公-公/私-私〕の三段構造になっていて、いってみれば「公」と「私」それぞれ別々の円が接している部分に「“宇宙最大のお宝”」という要素が置かれている、海賊戦隊とは何か? の種明かしみたいな事がマベの語りでされているのが、面白いポイント。
 で、マベちゃんは基本、“ここではないどこかへ”の気質の人なのですが、実はすでにその“どこか”に辿り着いていた――マーベラスにとっての本当の「お宝」とは何か――をグレート殿下編などを踏まえて、この時点では既に自覚しているのが窺え、終局に近付く物語の中で、マーベラスにとってのこの旅の意味の判明が重ねられているのは、美しい流れ。
 ガレオン内部を逃走中の鳥から連絡が届いてガレオンの現在地が判明し、反撃に繋がる鳥の役立ち方が巧みなバランス。怪我を押して起き上がろうとするマベの肩をジョーが掴むと、しばらく無言の後にマベが元の体勢に戻り、前回に続き、ここまで積み重ねられてきたこの二人ならではの関係が描かれ、マーベラス-仲間達の関係が、マーベラス×バスコの因縁に押し潰されない見せ方になっているのも上手い。
 「俺たちに任せろ」
 「わたくし達の夢は同じ。必ず取り戻してきます」
 「今度は、絶対に負けません」
 気がつけば雨は止んで窓からは光が射し込み……
 「……頼む」
 もう、「おまえらや、おまえらの夢は、俺に守られるほどやわじゃねぇ」事を知っているキャプテン・マーベラスは、力強く、仲間達を送り出す。



マーベラス、それが海賊ってものじゃなかったのか」
「……そうだな。それが海賊ってもんだ」

 「ハカセ、大丈夫?」
 「行く! 行くなって言われても行く!」
 ガレオンの停泊ポイントに辿り着いた5人は生身で崖ダイブする事になり、しっかりとハカセに一度話題を振るのが細かくおいしく、物語全体への目配りが実に冴え渡ります。
 勇躍、ガレオンのデッキに飛び降りるとそのまま突き破って内部へ突入した五人は、ジョーアイと姐御&下っ端ーズの二手に分かれて居住区を目指すが、鳥を探して船内を探索中の海賊版ゴーカイジャー接触
 「ボクはそんなおっしこの後にズボンで手を拭くようなポーズはしないぞ!」
 「してるしてる」
 「え?」
 「あれって無意識だったんですか」
 今明かされる、衝撃の事実(笑)
 「レンジャーキーを取り戻せば、変身できる!」
 「サンキュー、ナビィ!」
 5人は生身で偽ゴーカイジャーに立ち向かい、偽ゴーカイジャーに勝利する――過去の自分を乗り越える――事で、変身能力を取り戻す――夢(未来)に向かって変わっていく――のは、宇都宮P好みの「変身」テーゼへの思いを感じるところでありますが……変わるんだっ!!
 そして、ゴーカイジャーにおける「夢」は非常に私的なものではあるのですが、その「夢」の本質とは何か……といえば、「手に入れられないと思った時に、無くなっちまう」ものとはすなわち今作において、人が人として生きてゆく「明日」なのであり、〔公-明日/夢-私〕の関係が綺麗に接続された時、そこには極めて根源的なスーパー戦隊の“在り方”が浮かんでくるように思えます。

 「これは、地球の未来なんだ! 未来を育てていくのは、僕らだから!」

 「人々はこんなに平和に、楽しそうに暮らしてる……それを破壊する事は、許さんぞ!」

 「涙は人に、見せるまい。怒りの力にすればいい。笑顔溢れる明日の日を! ひとえに願い、変わります。――成敗」

 「――プレシャスとは人の夢。俺はそれを守るんだ!」

 「……けど未来は変えられなくたって、自分たちの明日ぐらい変えようぜ」

 こころのタマゴは鳥にもなれて雲にもなれて、夢見る君がときめく君が明日のヒーローなのだから。
 …………あ、『ゴーカイジャー』感想からは脱線するのですが、物凄く今更閃いたというか気付いたのですが、『星獣戦隊ギンガマン』における「アース」(戦士の力の根源)って、基本的には「地球」から来ているのでしょうが、もしかして、「明日(あす)」もかかっていた……?!
 そう捉えると、物語を通して炎の兄弟のやり取り(特に後半のヒュウガの行動)がまた一段と重いニュアンスを孕む事になりますが……見ていた時にチラリとも思い浮かばなかったとは、不覚。
 あと、改めて抜き出すと、『忍風戦隊ハリケンジャー』七海アイドル回の口上はそのまんま仮面のヒーロー論になっていて、そういう事に気付かされるのも『ゴーカイ』の魅力の一つといえるでしょうか。
  明日を再び掴む為に身を起こすもダメージが深く、自らの無力さに歯噛みするマーベラスは、手の中に無意識に握りしめていた金属の欠片に気付く。それは、サリーが身につけていた首飾りの破片であり、あの爆発の寸前、サリーが首飾り爆弾を腹の四次元ポケットに収納していた事で、至近距離の爆発にも拘わらずマベは一命を取り留め、代わりにサルは内部から粉微塵に吹き飛んだのだった……と、仕掛けに比べるとマベのダメージが少なかった事をしっかり理由付け。
 「俺はあいつにも助けられたって事か……」
 その頃、ガレオンでは鳥が偽赤に捕まってしまい、バスコの元へ。
 「ナビィちゃんには、だいじなだいっじな役割があるからねぇ~」
 「やくわり?」
 「なんのエネルギーの供給もなく動き続ける永久機関。宇宙の物理法則を無視したイレギュラーな存在。ナビィちゃん、君が宇宙最大のお宝への、扉なんだよ」
 「なんですとーー?!」
 なんですとーーー?!
 ……度々「今作の真ヒロインは鳥」説を主張してきた当感想記事ですが、ナビィ、まさかの、“古代遺跡で発見された謎の美少女”枠だった。
 確かにまあ、思えば精度のあやふやな占いで皆をナビゲートする役割はいかにもでありましたが……つまり、「おまえが、おまえが、可愛かったからだ!!」という事なんですね、アカレッ……ド……?
 遠い昔の野球もといギャグ回の、「俺は電池なんか替えた事ねぇぞ」が奇跡の回収をされ、鳥のヒロイン度が数え役満に到達したその時、居住区に戻ってきたゴーカイジャーはバスコへと銃を向け、レンジャーキー取り戻した本物の海賊達が、不意打ちで鳥の救出に成功。
 「海賊版の海賊なんかに、本当の海賊が負けるわけありません」
 「……まったく、生きてるだけでも驚きだけど、ここまで乗り込んでくるとはね」
 バスコはちゃんと仕留めたつもりだったけど、海賊達が予想以上にしぶとかった、というのは気の利いた台詞で、レンジャーキーを回収するも海賊たちの脳幹を二度撃っておかなかったのはバスコのミスですが、さすがのバスコも“宇宙最大のお宝”を目前に舞い上がっていた、とはいえるでしょうか。
 5人は完全バスコによって船外へ叩き出され、甲板の大穴に続いて居住区の壁が吹き飛び、地味にガレオンの被害が大きい(笑)
 けしかけられたゴーカイレッドにゴーカイジャーはオールレッド(デンジ・ギンガ・デカ・マジ・ゴセイ)で対抗。銃撃・火炎放射、そして渾身のデンジパンチを叩き込んでノックアウトする事でキーを回収し、マーベラス不在の状況でも、きちっとゴーカイチェンジをねじ込んでくるのが、抜かりありません。
 だが、ガレオンバスターは片手で受け止められた上に跳ね返されてしまい、再びキーを奪われてしまった5人に今度こそバスコがトドメを刺そうとしたその時――銃弾をバカスカ撃ちながら、満を持してのキャプテン・マーベラス復活。
 「わりぃ。遅くなった。後は俺に任せろ」
 「マベちゃん、ホントにしつこいね」
 銃を乱射しながら悠然と歩いてくる海賊のスタイルが踏襲される一方で、カメラが背後に回るとその背中は傷だらけなのが、劇的な好演出。
 「おまえの顔を見るのも、これが最後だ。……絶対にケリを付ける!」
 「フッ……最後か。じゃあ、最後にいいこと教えてあげる。マベちゃんが懐いてたアカレッド、実は、この星の奴だったんだよ」
 アカレッドがレンジャーキーを集めていたのはスーパー戦隊に返却する為であり、マーベラスもバスコもその手駒として利用されてたにすぎなかった、とバスコは暴露(あくまでバスコの言葉ですが)。
 「いいかいマベちゃん? 俺が裏切ったんじゃない。あのおっさんが、最初っから俺たちを裏切ってたんだよ」
 …………まあ、マベとバスコからすれば、35歳(?)はおっさんかもですが、アカレッド……おっさん…………ま、まあ、それはさておき、最後の戦いを前にあくまで言を弄するバスコに対し、マーベラスは一切の動揺を見せないままその刃を突きつける――!
 「今の俺は赤き海賊団じゃない。この星に宇宙最大のお宝があり、それを手に入れる為のものが揃ってる。それだけで十分だ。俺たちゴーカイジャーの夢を邪魔するもんは――誰であろうとぶっ潰す! てめぇだろうが、ザンギャックだろうが……アカレッドだろうがな!」
 既にその萌芽は描かれていましたが、遂にマーベラス自らの口から、赤き海賊団の一員だった自分――青春の残照――を乗り越え、ゴーカイジャーとして進む道が宣言され、借り物でない自らの場所に辿り着くキャプテン・マーベラス
 一方で、あくまでも「私」を貫こうとするその言葉ゆえに、海賊戦隊の求める「夢/明日」が、もし他の誰かの「夢/明日」を虐げる事になるならば(現に今、バスコと衝突しているわけですが、ここではバスコが「他者を裏切り虐げる」側と描かれているので問題はない)、やりたい事をやる海賊たちはそこで何を選ぶのか、という疑問を孕むわけですが……残り数話でそこまで踏み込めるのかどうか。
 「ふぅん……言うようになったじゃん。なんか嬉しくなってきたよ。じゃあ決着つけようかマベちゃん。いや――マーベラス
 対するバスコが一人の“敵”として認めたマーベラスへの呼びかけを変えるのが実に格好良く、ただの嘲弄ばかりではなく、なんだかんだとバスコがマーベラスの本質を見抜いていたのが痺れますが、そんな本質からマーベラスが最終的に脱皮したのが、「俺たちに任せろ」「……頼む」であったというのが、チームヒーローとして美しい到達点。
 そして、昨日の自分を乗り越えたものは、明日に向かって変わっていき、ジョーからキー受け取ったマーベラスはゴーカイチェンジ。
 横たわる海賊達の見つめる中、ワイヤーアクションを駆使した激しい一騎打ちとなり、必殺攻撃の撃ち合いで互いに武器が吹き飛ぶと、レッド二刀流とバスコ二丁拳銃が激突するのは、今作らしいアイデア。最凶の敵バスコと接戦を演じるも、バスコの超スピードに追い詰められる赤だが、互いの足を地面に剣に縫い止める、一か八かのゴーカイデスマッチ。
 「正気? 滅茶苦茶やるね、マーベラス
 「……言ったろ。これが最後だ。絶対にケリを付ける!」
 赤とバスコは互いに必殺の間合いで、剣を振り、銃を撃ち、爆炎に包まれて地面に倒れるダブルノックアウトとなると、いち早く体を起こしたのは……額から緑の血を流したバスコ。
 「まさか……相討ちになるとはねぇ。……もっと早く殺っときゃよかったな」
 “大いなる力”を揃える為の狙いも込みで、マーベラス(たち)を育ててしまったといえるバスコは口元を歪め、その視線の先で、心臓を撃ち貫いた筈のマーベラスが目を覚ます姿に驚愕する。
 バスコの放った死の弾丸は、マーベラスが懐に収めていたサリーの形見に受け止められており、嘘でサリーに渡した“お守り”が、マーベラスの“お守り”として真実となる運命の皮肉は、陰湿な策謀が巡り巡って自らの落とし穴となる因果応報であると同時に、惨い最期を遂げたサリーがバスコに一矢を報いる形になって、定番ながら納得。
 「……成る程ね。そういうことか」
 そして、逆転の転機となったナビィ逃走のチャンスを作った果物ナイフ自体が、サリーをガレオンに潜り込ませた事で起こった偶然の産物である――それと知らずに最初のドミノを倒したのはバスコ自身である――事が非常に効いており、「最後の最後に大逆転ってとこだな。人を裏切り続けてきたてめぇが悪いんだよ!」の真の帰着として、誰に裏切られたのではなく、運命そのものに裏切られた事を悟ったバスコは己の敗北を受け入れると苦笑めいたものを浮かべながら倒れ……ゴーカイジャーが自分たちの流儀を貫き続けたように、「何かを得るために何かを捨て、人を裏切り続ける」事は、バスコにとっては曲げ様のない、おのが生き様だったのではないか……と妄想強めに思うところでありますが、いい悪役でした。
 バスコの消滅後、レンジャーキーを回収したマーベラスは精根尽き果ててその場に倒れ込み、駆け寄る仲間達。
 「……ばーか。今くたばるわけねぇだろ。いよいよ宇宙最大のお宝が拝めるってのに」
 「……そうだな」
 「いよいよ、なのですね」
 「なんかドキドキしてきた」
 「じゃあ、早くガレオンに戻ろう」
 「まずは、腹ごしらえしましょう!」
 “夢を掴む力”として、5人がマーベラスからレンジャーキーを受け取り直して握りしめるのが一つの完成地点に到達した海賊戦隊の在り方として象徴的な姿となり、次回、いよいよ、“宇宙最大のお宝”発見?!
 なお、料理の手伝いを申し出たルカは、ハカセから真剣に拒否されました。
 初登場からおよそ半年にわたって海賊戦隊を翻弄してきた宿敵バスコとの決着にともない、夢に向かって飛翔する海賊たち、青春の残照を乗り越えるマーベラス、と盛り沢山の内容が綺麗に落着。個人的には、「海賊戦隊とは」と「スーパー戦隊である事」が「夢・明日」というキーワードを通してストンと繋がって腑に落ちたので、だいぶ満足です。