東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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武装頭脳学園、終わりの始まり

超獣戦隊ライブマン』感想・第41-42話

◆第41話「透明人間、豪の告白!!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 パトロール中、車椅子に乗った尾村豪と再会する丈だが、かつての記憶を失ったたままの豪は、透明ヅノーの光線を浴びて、突然の全裸!
 ……およそ10年後、今回と同じ曽田脚本で、とある悪の幹部は言いました。
 「ZZゼリの、怒りのジャケット作戦も、惜しくもしっぱーい。甚だ遺憾でしたので、今週は逆に、服を脱がせる作戦を、ぶちかましたいと思います」
 ケンプーーー!!(風評被害
 監督も監督で、なぜ、そろそろ秋も深まる時期に、連続で脱がしにかかりましたか(笑)
 「ふふふふふふ、はははははは! 尾村豪! 貴様が実験第1号だったとはな! こいつはいい」
 光線を浴びたところを丈に助けられたショックで記憶を取り戻す豪だが、その体はみるみる内に透明になってしまい、帽子と靴・ギブスだけが豪の存在を示す、なるほど車椅子はこの為だったのか、と納得の透明人間演出。
 「なぜ殺さなかった……! ただちに尾村豪を抹殺せよ」
 この成果を報告しに帰ったケンプは、激怒したビアス様にグラスの中身を浴びせられ、弟子一同が困惑するほど声を荒げるビアス様は、総動員による豪抹殺を指令。
 「丈、俺は君なんかに助けて貰えるような人間じゃないんだ」
 記憶を取り戻した事で深い罪の意識を抱える豪は、うら寂しい倉庫の中に身を隠し、寒さに震える体に毛布を巻き付ける透明人間の表現が、なかなか凝った映像。
 豪を探す丈の元に勇介たちも合流するが、一方でボルト組も姿を見せ、朝になって脱出を図る豪は、ケンプに見つかってしまう。
 「やっと見つけたぜ。透明人間ごっこは終わりだ」
 透明にしたの、君だけどな……。
 「まあもっとも、おまえがこの世から消えてしまう事に……変わりはないがな」
 ケンプが透明な豪に向けて割れたガラス瓶を振るうと、飛び散った鮮血が派手に壁を染めるショッキングな演出で、物語としては終章への布石の内容の為か、映像面での工夫がかなり目立ちます。
 「見納めに貴様の恐怖にひきつった顔が見たくなったぞ」
 ケンプはわざわざ恐獣化を見せつけると、その力により豪の透明状態を解除するが、すんでのところでライブマンが到着。4人が足止めをしている間に黄は車椅子の豪を連れて逃げ出すが、続けてマゼンダとアシュラが立ちはだかって、ボルト総動員を強調。
 マゼンダの攻撃から豪をかばった黄は変身が解けるも、青の援護が入って再び逃走し、だが今度は流行り物のローラースケートモードでブッチーが追いすがる!
 しばらく、車椅子の豪を押す丈と、それを追うブッチーの追走劇となり、一歩間違えると『シャンゼリオン』になりそうなコミカル寄りの画面なのですが、個人の戦闘能力に関しては劇中最強クラスだからなブッチー……。
 「もう構わないでくれ。俺なんか死んだっていいんだ」
 「馬鹿な事言うな! 豪、生きるんだ。おまえを死なせはしないぞ!」
 丈は豪を守って必死に逃げ続け、トリッキーな透明人間の映像からスピード感のあるチェイスシーン、殺意の漂うやり取りからコミカルな追跡者、そして再び命がけのシリアスな逃走へ、と緩急のついた演出がお見事。
 追い詰められる2人だが、ギルドスとブッチーが正面衝突している内に、その場から逃走、そして仲間達との合流に成功。
 「豪、思い出すな……」
 廃屋に身を潜めた6人は焚き火を燃やして豪の体を暖め、丈は、科学アカデミア入学当初、溺れる子犬を助ける為に豪と海に飛び込み、同じように2人で焚き火に当たった日の事を思い出す……。
 焚き火一つから、第3話において丈と豪の訣別を決定づけた思い出が導き出され、なぜ脱がす?! なぜ透明人間?!は、ここに至る為だったという、曽田×長石の巧妙な作劇に戦慄。
 科学アカデミアにおける飽くなき競走とエリート意識の醸成の中で歪んでいったかつての豪にとって、コンプレックスがやがて殺意へと膨らんでいった、消し去るべき青臭い青春の汚点が、今再び友情の証として甦り、人の温もりを豪に示すのがヘビー級の一撃で、豪と見る者の臓腑を深くえぐってきます……!
 「やめてくれ! 丈、みんな……俺は君たちに、こんなにしてもらえるような人間じゃないんだ!」
 「……豪さん。俺、豪さんを見てて、ちょっぴり救われた気持ちになったんですよ」
 打ちひしがれ地面に拳を叩きつける豪に、(直接の仇ではないとはいえ)肉親を殺された憎悪を抱く鉄也が柔らかく語りかけ、ここはどうしても若干の強引さはありますが、先輩3人と後輩2人の間にある、豪に対する温度差もしっかりとフォロー。
 「……遅いんだ、今更……もう取り返しはつかない!」
 どんな罪を犯した者も、過ちに気付き、人間の心を取り戻す事ができる……鉄也の言葉にも豪の失意と慚愧が薄れる事はないが、そんな廃屋の様子を窺うマゼンダの姿がガラスに映り、それを反転するようにして外に立つマゼンダの姿にピントが合う、実に凝ったカメラワーク。
 改めて、どうしてボルトに追われているのか心当たりは、と問われた豪は重い口を開き、ボルト入学当初の記憶を語り出す。
 「……実は、俺は、ビアスの恐ろしい光景を見た事があるんだ」
 まだヅノー学園の構造に慣れていない頃、学園の奥に迷い込んだ豪は、通気口越しに秘密の学長室を発見。壁には、卒業式を思わせる、学帽に制服姿のいかめしいビアスの白黒写真が飾られ、何やら怪しげな装置の中心に据わったビアスに周囲から激しいエネルギーの奔流が注ぎ込まれ……装置の中に収められているのは、人間の脳?!
 「それだ、それこそビアスの秘密に違いない!」
 ケンプとマゼンダもこれを立ち聞きし、情報を聞き出す前に飛び出そうとしたケンプを抑えたり、終始マゼンダの方がビアス様の態度に対して敏感な反応を示し、ケンプの方が心酔して周りが見えなくなるのは、地道に積み重ねられてきた対比として面白いポイント。
 豪を連れて逃走を図る勇介たちだが、ケンプ・マゼンダ・アシュラ・頭脳獣の包囲を受け、赤青黒緑が足止めをしている間に包囲を抜けた丈が、背負った豪を木の根元に横たえるのが、まるっきり第3話に重ねられているのがまたも突き刺さってきて、こういった濃い統一感は、演出陣の出入りが激しい近作では再現されづらい魅力かもと思わされるところです(勿論、これはこれでデメリットもあり、良い悪いとはまた違った話になりますが)。
 「豪、ここで待っててくれ。必ず迎えに来るからな。動くなよ」
 仲間の元へと駆け戻っていく丈を見送る豪の帽子の中には、何かのメモ……?
 4人で苦戦していたライブマンだがイエローが駆け付け、更に、透明ヅノーの透明化能力が、ボルトの身内に次々と誤爆。話の内容が重い分、空気を壊さない程度のコミカルな映像を意図的に挟んでいるようですが、結局、これといって活用される事なく散る事になる透明ヅノー、とことん困った奴……。
 実働の暁には、迷路ヅノー的に人間社会を困らせたであろう事は予想されますが。
 そんな透明ヅノーは、ジャンピングトリプルバズーカからバイモーションバスターで始末され、ボクサー召喚。巨大透明ヅノーの自己透明化に苦戦するが、スーパーライブディメンションするとスーパーライブセンサーで透明化を見破り、超獣大団円。
 ひとまず総動員を打破したライブマンは豪の元へと急ぐが既にその姿は消えており、丈は残されていたマフラーに挟まれていた写真(豪の帽子の中に隠されていたメモに見えたもの)を拾う。
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親友の大原君と
科学アカデミアにて
1984年春
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 そこには、制服姿の丈と豪が笑顔で肩を組む姿が写っており、以前にコメント欄で尚さんが指摘されたように、ここでもまた、制服が「二度と戻れない青春」の象徴として美しくも残酷に機能。
 「豪……」
 その育った環境から、不器用にしか示せずやがて悪意にすり替わってしまう事になるも、豪の中に確かに丈への友情が存在していた事が違和感なく補強され、更にそこに込められた言外のメッセージに気付くめぐみ。
 「……写真。…………ビアスは、人間だった……?」
 ……まあそもそも、視聴者には人間に見える上、ライブマン自体がほとんどビアスについて認識していない筈なので、「人間ではない」と考えていたのか前提が微妙なところなのですが、ケンプ達の口から語られる伝聞情報が積み重なった末に、ヨドン皇帝シルエット、みたいなイメージ映像が膨れあがっていたのでしょうか。
 それなら、え、ビアスって、お洒落して写真とか撮っちゃうの?! と衝撃を受けても、不思議ではありません。
 なおこの謎の写真のビアス様が、卒業式の記念写真めいているのに、視線が正面ではなく“上”に向けられているのが実にビアス様らしく、学生らしからぬいかめしさも出来る男のオーラへと繋がり、素晴らしい一葉でした。
 「おのれ豪め……よくもヅノールームの、秘密を……!」
 ぽんこつな弟子たちのぽんこつなミッション失敗に、かつてない怒りの形相を浮かべるビアスは、突然もがき苦しむと床に倒れ…………急な血圧の上昇による脳溢血?
 果たして、大教授ビアスとは何者なのか?! 激動の急展開で、つづく。
 中盤、衝撃的な退場を遂げた尾村豪の再登場という事で、余韻が台無しになる・罪と罰の問題が曖昧になってコースアウトする・便利な助っ人のような扱いになってしまう、など幾つか危惧されたのですが、終章に向けた情報提供の役割は少々都合がいいながら、記憶を取り戻し罪に押し潰されそうになる豪に対して何よりも「生きるんだ」と告げる事で、ライブマンが「罰する」のではなく「赦す」事を選ぶのは、生きとし生ける全ての命を尊ぼうとするヒーローの、40数話を経た到達点として、納得のいくものになりました。
 その点では、豪の「救済」に至るのが、新参の2人を含めたライブマンの「成長」として描かれたのが、視点を外さず、呑み込みやすかった部分。
 また、全体に第3話のシチュエーションを重ねる事により、丈と豪の友情と、「悪魔に変身した」尾村豪が「人間の心を取り戻した」事を強調してみせるのが、実に巧妙な作劇。
 重い内容を、緩急をつけた映像の工夫でテンポ良く見せていくのも、お見事でした。
 この流れだと、豪がもう一度出てくる可能性もありそうですが……次回――ビアス様、直接出馬?!

◆第42話「ビアス宇宙からの挑戦」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 激しい動悸息切れで卒倒した大教授ビアスガッシュに助け起こされてヅノールームへと運び込まれ、ここまで巨大化担当要員以上でも以下でもなかったガッシュが、ビアス様の「弱った姿を見せてもOK」で「ヅノールームの存在を知っている」かなり特殊な立ち位置に。
 「ガッシュ……誰も近付けてはならぬ」
 ガッシュの頬に手を添えたビアスはヅノールームの中へと入っていき、弟子に飴を与える時と同じ仕草ですが……ガッシュの存在感も急上昇。
 室内で椅子に座り込んだビアスは、周囲の装置からエネルギーの放射を受けると恍惚とした表情で復活し、脳と思われるものが入ったカプセルの一つにかけられたプレートに、「Dr.SMITH」と刻まれているのが、大変不穏。
 「私はまだ死なん。……この12個のカプセルが全て満たされた時、ギガブレインウェーブを使って、全人類を私の意のままに操る事が、できるのだ。あと一つ……」
 ビアスは唯一、空のカプセルへと手を伸ばし、愛おしげに表面を撫でる指の動きで、「Dr.  」というプレートの空欄が強調されるのが、底知れぬ恐ろしさを感じさせる実に素晴らしい演出で、ボルト(ビアス)の秘めた目的が明かされる瞬間の、いい盛り上がり。
 「だが、これ以上待つことは出来ない。今すぐなんとかしなければ」
 ボンバーヅノーを召喚して地球へと放ったビアスは、パトロール中だった鉄也にチップを埋め込ませると、ギガブレインウェーブによって精神波を送り込み、鉄也を洗脳。
 「おまえは私の奴隷になるのだ」
 鉄也に呼び出された4人はギルドスとブッチーの爆破トラップを受け、戦闘に突入。宇宙兄弟ビームを受けたサイが負傷したところに黒が駆け付けてライブマンは撤収し、ビアスの計画通りに、洗脳鉄也はグラントータスに潜り込む事に成功する。
 「鉄也よ……グラントータスの死の準備に取りかかるのだ」
 首尾良く頭脳獣を招き入れた洗脳鉄也は機関室に爆弾を仕掛けるが、治療を終えた純一が目を覚まして鉄也の不在に気付き、爆弾を仕掛けているところを勇介に見咎められて狼狽えているのは……ビアス様なんですか(笑)
 慌てて逃げる洗脳鉄也は、勇介たちに追い詰められると光線銃を構え、謎の電波を感知して鉄也の洗脳に気付くコロンさん、超有能。ビアスに操られるまま、引き金を引く鉄也の凶弾からコロンさんは身を挺して4人をかばい、コロンさーーーん!
 危うくリタイアばりに撃たれましたが、久々に出番多めの大活躍で、スタッフからコロンさんへの確かな目配りを感じます。
 今回はグラントータス内部という狭い空間での追いかけっこが、映像のバリエーションとして面白みを出し、鉄也の心を取り戻そうとするライブマン
 「鉄也……君は、卓二兄さんを忘れたのか? 君の自慢の兄さんの卓二だ。兄さんはな、そうやって撃ち殺されてしまったんだ」
 ……前回に続いて、序盤の要素がえげつない形で盛り込まれ、洗脳を解除しようとする手段が、優しさに訴えかける、とかではなく、トラウマをドリルで掘り返すなのが、凄い、凄いぜ昭和……!
 亡き兄への想いから命を尊ぶ気持ちを取り戻しかける鉄也だが、そうはさせじとビアスはギガブレインウェーブを強め、大量の脳に囲まれて鬼気迫る表情で精神波を送るビアスと、脂汗を流しながら爆弾の起爆に抵抗する鉄也の心が激しいせめぎ合い。
 「卓二はな、そうやって、虫けらのように命を奪われてしまったんだぞ」
 「スイッチを、押せ……押すんだ」
 見えざる戦いが繰り返された末に遂に鉄也は洗脳を打ち破り、トータス内部で自爆を図ったボンバーヅノーをすんでのところで外に蹴り出したライブマンは地上に緊急放出し、頭脳獣は哀れ壮絶に木っ葉微塵(爆発が凄いんですが……)。
 はい仕事仕事、とガッシュが巨大化し、手榴弾を投げられて苦しむとスーパーライブディメンション。ここから挿入歌が入る珍しい演出で、爆弾をものともせずに前進すると、スーパービッグバースト!
 反省する鉄也(コロンさんの事にも触れてくれました)を4人は慰め、ビアスの恐ろしさを改めて感じるライブマンであった。
 一方、ウェーブが逆流して苦悶した末、老人のような姿に変貌したビアスは、空のカプセルを見つめ……
 「あと一つ揃えば……誰にも負けはしない。見ておれ……必ずや、あと一つを揃え、全人類を、支配してみせる……」
 妄執をたぎらせる老ビアスの不気味なアップで、つづく。
 結末へ向けて加速を始めた物語が重く凄惨になっていく中、映像面でもしっかり楽しませようと一本調子にならない工夫が凝らされているのが見応え抜群で、前回今回と、長石監督の演出が冴え渡ります。
 いよいよ焦点の当たったビアス様の大暴れも堪能できて、満足の一本でした。
 次回――退学第2号は、ギルドス?!