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ガルザは見た

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第25話

◆エピソード25「可愛いあの巫女」◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久
 冒頭からクランチュラさんがスキップスキップらんらんるーをキめ、完全にスタッフの術中にはまっておりますが、なんだこの可愛い生き物?!
 「やけに浮かれているな、クランチュラ」
 「実はな、今までで、一番、自信作の邪面師が出来たんだよー! 能力は爆弾というシンプルなものだが、そこに――美学を持たせた」
 ここの言い回しが仕草含めて大変素晴らしく、思わず笑ってしまう格好良さ。
 「クランチュラ……つまらん事ばかりにかまけていると、今度こそヨドン様の逆鱗に触れるぞ」
 「……皇帝の、逆鱗」
 物語もそろそろ折り返し地点を過ぎ、長いこと保険のおじさん扱いだったヨドン皇帝にようやくそれ以外で言及され、勿論、この後の大きな布石となる事に。
 一方、宝路は充瑠と為朝を連れてお宝探しへと向かっており、4つの叶えまストーンを集めてクリスタリアを再興する、新たな願いをマブシーナに告げた事が語られる。
 「その時は……おまえが女王だ」
 「……支えて下さい。お兄様も」
 宝路は力強く頷き、当然想定された流れなので新展開合わせにしようと取っておいたのでしょうが、少し間を開けた事により、「私」を優先し、結果的に一度は「国」に背を向ける事になった宝路が、改めて「国」に向かい直す決意を固めるまでに多少の時間が必要だったのだろう、と心情の奥行きが増すことになりました。
 「この神社には、不死鳥伝説があるんだ!」
 手帳に記された発掘ポイントの目印は、充瑠が小学生の時によく訪れていた思い出の神社であり、充瑠に過去の記憶と、それを証明してくれる人物が居た事に、改めてホッとしました。
 3人は充瑠と旧知の神主から地域に伝わる不死鳥伝説について話を聞き、腰の前で両手を重ね合わせながら年長者の話に耳を傾けるタメくん、ほんとタメくん。
 「こんな田舎の目立たない神社に何度も来てくれた、熱烈なファン第2号だからな、充瑠くんは」
 「第2号? 俺の前に、誰か居たんですか?」
 「うん。誰も信じてはくれないが…………宇宙人だった」
 ……どう考えてもあの人、の情報を持ち出す会話の流れが実に上手く、更に一同がそこに思い当たる前に注意を引く、新たな人物の登場タイミングも絶妙。
 「僕は、大いなる力を感じて、ここに来たんだ」
 いつの間にやら、社殿の裏手にある射場に短髪の巫女が立っており、それを目にした為朝……一目惚れ?
 「僕、人間が大好きだ。沢山の人から、パワーを貰いたいんだ」
 斜めに首をかしげたどこか不安定さを感じさせる仕草で、無表情かつ淡々と喋る謎の巫女に、熱烈に迫る為朝は巫女アイドルデビューしちゃおうか、と事務所を紹介しようとし、そういう方面のコネクションは山ほど持っていそうなので、本気度がちょっと怖い(笑)
 「ちょちょちょちょちょちょ、タメくん。どうしたの急に?! もしかして、ボクっこ巫女さんが、どストライク?!」
 「んな軽薄なんじゃねぇよ!」
 「ビビッと来たんだろ? うん、わかるわかる。一目あったその日から、恋の花咲く事もある」
 充瑠に引きはがされた為朝に、宝路はにこやかに語りかけ、これが、昭和の男だ(笑)
 荒川さんの筆にかかると宝路の昭和度がワンダーライジングするのですが、裏を返すとやはり、下さんや金子さんには使いにくい設定になっていそうなのはのは窺えます。
 そこにヨドン反応の連絡が入り、宝探しを中断して神社を走り去る3人だが、奇妙な叫び声のようなものを聞いた気がした為朝が振り返ると、謎の巫女は姿を消しており……ワンダーミステリー。
 街では、人間をピンに見立てた邪面師が、地獄ボウリングの真っ最中。
 「ちっ! 7人じゃ駄目だ。10人倒れなきゃ爆発は無し!」
 「……はぁ。なんだそれは」
 「スペアも無し! 一度に10人倒してこそストライク! そこでドカーンが、俺の美学だ」
 爆発の条件にこだわる邪面師に物陰でガルザは呆れかえり、友達の自信作が気になって仕方ありませんでしたが、これで心おきなく、罵倒レビューで星一つ付けられます。
 「俺は美しくなきチャレンジャー。人呼んで、爽やかバクダンじゃめーん!」
 集合したキラメイジャーに対して、邪面師が両手を上げてポーズを取ると背後で爆発が巻き起こり、第10話以来となる山口監督が、戻ってきた早々、実に楽しそう。
 邪面師が次々と投げ込む爆弾ボールをかわしながら戦闘員を蹴散らすキラメイジャーだが、本気の一投・ヨドンダイナマイトミラクルネビュラハリケーンスローが炸裂し、複雑な変化をした爆弾ボールはキラメイジャーを薙ぎ倒す!
 「ほぅ……」
 「ストライーク! 爆発いただきー!」
 …………………………
 「爆発……しないけど?!」
 そもそもキラメイジャーは6人なので、どんなに頑張ってもストライクが成立しない事が判明し、史上空前のお馬鹿ぶりを見せた爆弾邪面は、霧を吐いて一時撤収。
 尋常ならざる張り切りようを見せる為朝は、宝路と充瑠を引きずるようにお宝探しに戻り、捜索中にまたもいきなり現れる謎の巫女。大興奮の為朝は宝路を押しのけて巫女さんに走りより、怒りをぶつけようとした宝路はどんぴしゃでお宝を発見し、部外者の存在お構いなしでドリルを召喚すると地面を掘り始め、普段より3割増しぐらいテンション高めでお送りいたします。
 挙動不審の為朝が巫女さんをチラチラと窺う中、ワンダービンゴで第三の叶えまストーンがあっさりと発見され、喜びの歓声をあげる充瑠たちのテンションがビックリするほど高いのですが、この後で判明する叶えまストーン・エネルギア(強力化)の作用で、マジカルな粉薬のキめすぎみたいな事になっているのか、山口監督の中ではキラメイメンバーのテンションはこのぐらいが仕様なのか、なにぶん監督の間が開いたので、ちょっと悩ましいところ。
 巫女さんと一緒にもう一つのお宝地点に向かう道すがら、地中に埋まっている内に、エネルギアのパワーが周辺に蓄積され、不死鳥伝説はそれが原因で生まれたのでは、と博多南が推測し、同行している一般人に会話が全て筒抜けなのですが、それでいいのか(笑)
 正直、いくら隠さない路線とはいえ、一般市民を宝探しにそのまま同行させているのはやや不自然なのですが(まあ、どうせこの巫女さんはどこからともなく現れるので、その過程を省略したともいえますが)、いざとなったら 口封じ 「穏便な話し合い」が行われる予定で持つべきものは大富豪の身内です。
 「嬉しい……。人間は願いがかなったら、笑うんだ」
 「……変わってるな君は。でも嫌いじゃなぁい!」
 3人の喜びように首をひねる巫女とお近づきになりたい為朝は、無表情で首をかしげる巫女に、「嬉しい」を懸命に説明。
 「嬉しいって、こうなればいいなぁと思った事が実現して、満足な気持ちだよ」
 「……なるほど。そういう時に笑うのか。覚えておく」
 「最っ高にクールだね君って」
 恋愛シミュレーションなら三択の貴公子と呼ばれているのにっ?! と、現実はなかなか上手く攻略できないeスポーツチャンプだが、気合の漲る一行は、第二のポイントに到着。さすがに二回連続の大当たりとはいかず、忘れた頃のモンストーンが掘り出されて戦闘になり、思わぬパワーに苦戦した銀は、なんと取り落とした叶えまストーンを取り込まれてしまう大失態。
 「……この場所で、決まり」
 ドリルを召喚するギンギラギンの男、地中から掘り出される石の怪物、その怪物の巨大化、それに対抗して重機と合体する銀色の男……これら一連の光景に全く動ぜず平板な視線で見つめていた巫女は、やおら足下の土をこね始めるとキラメイサーチャーのコピーを作り出し、それを使ってクランチュラへと通信。
 「君はいったい?!」
 困惑する為朝が肩にかけた手を振り払うと膝蹴りを叩き込み、不穏な雰囲気を醸し出す不安定な斜めの姿勢やカット割りで暗示されていた本性の一端を垣間見せる謎の巫女。
 「僕に気安く、近付くな」
 クランチュラと通信を繋げた巫女は、爆弾邪面の作戦をグレードアップしてやる、と宣言。
 「とっととバクダン邪面の居場所を、教えな」
 「偉そうな口を聞くなぁ! ポッと出の新入りの癖にぃ!」
 「僕が誰だか、わかってるよねぇ……? 僕の命令は、ヨドン皇帝の命令だ、ボケぇ!」
 瞳を紫に輝かせた巫女は反抗的な態度のクランチュラに遠隔お仕置きビームを放つと、情報を聞き出して瞬間転移。性格が違う感じなものの、沼女妹さん人間体? にちょっと期待していたのですが、ここでそれは無さそうな感じに。
 「バクダン邪面、控えろ」
 緑青桃と戦闘中だった爆弾邪面の元に巫女が姿を現し、自由極まりない邪面師が即座に命令に従って膝を付くのが、力関係をすぱっとわかりやすく見せて、いい絵でした。
 「可愛い顔して蹴飛ばしやがって、おまえなにもんだ?!」
 「――見てれば?」
 充瑠と為朝が合流し、為朝の詰問に対し、キラメイサーチャーをコピーして作り出したヨドンチェンジャーを構える巫女。
 「ヨドンチェンジ」
 てっきり、中村悠一声を入れてプレミアムバンダイで売り出す為の一発ネタだとばかり思っていた(心の歪んだ物の見方)ヨドンチェンジャーが再び用いられ、謎の巫女は、真っ青な軍服風衣装を身に纏った銀髪の姿へと、変貌する。
 「僕はヨドンナ。ヨドン皇帝直属の、秘書官だよ」
 つまり、保険の書類をファイリングするお仕事……!
 はさておき、チェンジに際して被り物になるのかと思いきや、頭飾りと化粧のみで、まさかの顔出し女性幹部が投入され……『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012)のエスケイプ以来……?(キャンデリラ人間体はカウント外)
 これまでにない方向性を模索した結果か、中性的でサディスティックな小悪魔、といった風貌は男装の麗人というか一人称もあっていっそ女装めいてさえいる実に妖しげなキャラクターとなり、ヨドミヒメに続いてどことなく地下アイドル(?)路線なのは、スタッフのどなたかの趣味が反映されているのでしょーか。
 「ヨドン、皇帝?」
 「ヨドンヘイムの支配者。絶対的存在。ついにその方が、動き出そうとしてるんだよ」
 もう、来る日も来る日も保険の申請書類にハンコを押すのは、飽き飽きだ!
 「何かあるとは思ったが……あんな小娘がヨドン様に近い存在だったとは」
 ……ガルザ、デザインと声の格好良さに積み重ねの妙味が加わって、一話丸々、物陰から様子を窺ってはブツブツ言っているだけなのに面白くて凄い(笑)
 「今までの戦いは、ほんのお遊び。真の恐怖におののくのは、ここからだよ。人間ども」
 「てめぇ……人間が好きとかほざきやがって。あれはなんだったんだ?!」
 「好きだよ。恐怖に打ちのめされ、ぼくらに闇エナジーを与えてくれるんだもん。人間ども、だーいすき」
 正体を現したヨドンナは、人間をエナジードリンクとして好き、とその嗜虐的な本性を剥き出しにし、舌を大きく出した凶悪な表情をアップで見せつけてくるのですが……両肩から突き出したカラス?の意匠が、豆を咥えたハトに見えてしまうのは、私だけでしょうか……?!
 そんなわけでどうもいまいち、邪悪を感じきれずにいるヨドンナですが、激高して殴りかかってきた黄を近接格闘で一蹴すると、鞭の一振りで戦闘員を強化し、斬っても撃っても何度でも立ち上がってくる、不屈のヨドンガッツに覚醒した戦闘員に、キラメイジャーは大苦戦。
 「おい無量、これちゃんと整備してんのか?!」
 一方、存在を忘れられかけていたドリ巨神は、とうとう、他人に責任を押しつけていた。
 これまで、スピードタイプには相性が悪いぜ! と主張していたのですが、とうとう同じパワータイプに正面から力負けしてしまい、不憫……。
 「倒しても倒してもキリが無い! どうすればいいんだ?!」
 キラメイジャーはまとめてビルから投げ落とされ、1エピソード通してかつてなく何もしていない爆弾邪面が、ヨドンナの背後で何故か偉そう(笑)
 ヨドンナは地球にあるエネルギーの溜まり場を調査していた事を明かし、闇エナジーから作り出した爆弾による大規模な同時爆破を行う事でヨドンヘイムと地球を繋ぐ巨大なワープトンネルを開通させ、邪面獣を一気に送り込もう、というその作戦を余裕たっぷりに語る。
 「これが……ヨドン皇帝が動き出したって事?」
 新幹部登場の急展開、戦闘員にいいように苦戦するキラメイジャー絶体絶命のまま、つづく。
 およそ4ヶ月ぶりとなる、山口×荒川のパイロット版コンビで遂にヨドン軍に新幹部が登場! ここで顔出しの女性幹部は全く予想外の投入でしたが、半年に渡って楽しい侵略活動の続いていたガルザ-クランチュラ体制に投じられる波乱の一石に十分なインパクト。
 最初、傲慢な物言いからヨドンのプリンセス? かと思ったら「秘書官」というのは微妙な立ち位置に感じましたが、大ボスとの血縁関係はままある要素ですし、プリンセスにして秘書官、という可能性も無くはないでしょうか。
 叱る人不在だった侵略組織に上官登場で殺伐さが増しそうな気配が漂いますが、どんな化学反応を起こす事になるか、楽しみです。あと、長らく放置状態のモンストーンに、ヨドンナが目を付けると、ヨドン側の強化展開も自然になりそうなのは、期待。
 作品の構造としては、巨大戦をドリ巨神に振る事で、ロボ戦を冒頭に配置する手法無しでキラメイジャー大ピンチの空気を維持したまま次回へ繋げられたのは、鮮やか。
 一方、為朝の奇行の数々を「一目惚れ(?)」で強行突破し、謎の巫女を宝探しに同行させる理由付けにしてしまうのは強引さが否めませんでしたが、多少の荒っぽさを作品のパワーで押し切れる土台とスタイルが出来上がっており、ここまでの積み重ね、台詞や見せ方の妙味により、「○○が○○しているだけで面白い」――
 ・“邪面師が爆発を背負っているだけで面白い”
 ・“クランチュラがスキップしているだけで面白い”
 ・“ガルザが覗き見しているだけで面白い”
 が成立しているのが、圧倒的強み。
 宝探し組がやたらテンション高めだったので、為朝の奇行については一目惚れ以外の要因があったと補強される可能性があるかもしれず、そこは次回を待とうと思います。
 ……とか言いつつ、台詞起こしの為に二周目を見ていたら、一目惚れは一目惚れでありか……みたいな気分になってきたのですが、それならそれで、「階段を滑り落ちた乳母車を助けようと同時に手を伸ばす!」とか、もっとベタな出会いでも良かったかなとか(笑)
 惚れた腫れたは理屈を越え、理由付けとしては何でもありの飛び道具になってしまうので、今回限りのギミックにされるとズルさが前面に出てしまう為、折角の絡み、出来れば今後の展開にも活かしてほしいところです。
 とはいえ、ヨドン軍の幹部ともなるとラブコメの成立はなかなか難しそうですが……顔出し女性幹部という、ここまでのヨドン軍や近年の戦隊シリーズとの方向性の違いを考えると、地球人が取り憑かれている、という可能性もゼロではなさそうでしょうか。そうすると前回が伏線として機能しますし、わざわざ「ヨドンチェンジ」しているのも、怪しいといえば怪しい。
 仮にそうだった場合は、今回派手に空転した為朝にいずれ超格好いい見せ場が回ってくる事が約束されますが、期待しすぎない程度に期待しておきたいと思います。
 キラメイ音楽祭は充瑠のターンで…………大変、若者らしい伸びやかな歌声でした。主人公なので素材に事欠かないというのはありますが、歌に合わせた名場面集が大変凝った作りで、1話限りにするには勿体ないぐらいの出来。……ところで、音楽祭のタイトル画面にしれっと博多南さんの顔も見えますが……歌うの?
 新たな疑問が急浮上する中、次回――不死鳥伝説は宇宙人の到来を告げていたんだよ! つまり、セントパ(以下略)。