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アイドルほど素敵な商売はない

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第23話

◆エピソード23「マブシーナの母」◆ (監督:竹本昇 脚本:下亜友美)
 「王妃様は、自分の魂を他の石に移す秘儀を持っておられた」
 そもそも呪い無効化スキルを持っていた王妃様、自らの魂をヘッドドレスの守り石に移しており、出鱈目に復活。
 だが宝路は、クリスタリアの現状と、ヨドン軍とキラメイジャーの戦いに関しては、口を噤んでいてほしいと皆に頼み込む。
 「母上が今の状況に耐えられるかわからないからだ」
 ……ああ、王妃様、一人でヨドンヘイムへカチコミかけそう……ではなく、母上は、ガチガチの武闘派の一方でメンタルが非常に不安定で「家族の事になると特に心配性」、マブシーナがちょっと怪我しただけで寝込んでしまう一面を持っていたのだった。
 「最愛のオラディン王が、ヨドン軍にやられた、と知ったら……」
 「ショックのあまり、 地球一つぐらい砕いちゃうかも この守り石が砕けちゃうかも」
 かくして、地球の平和と王妃の魂を守るべく、オラディンの死に関する事は秘密にする話し合いをしようとした矢先、ヨドン反応が感知されてキラメイジャーが出撃。そのタイミングで王妃の魂が覚醒してしまい、王妃様(頭飾り状態)を誤魔化そうとその場凌ぎの言い訳を重ねている内に、モニターに映った戦いを“芝居の稽古”だと言い張る羽目になり……あ、お芝居、繋がった(笑)
 一方、人間を金貨に変えて自らの金庫の中に収納する金庫邪面と戦うキラメイジャーは、キラメイソードもバスターも弾き返す堅固な金庫ヘッドに大苦戦。
 「無駄無駄。金の光は阿弥陀ほどショーック!」
 ……何を言っているのだろうと思って、一旦巻き戻して、字幕を出して確認してしまいました(笑)
 「もっと金を蓄えてから挑むがいい。まあ、ない袖は振れぬだろうがな。ははははははははっはっ!」
 お金に絡んだ言い回しを口にする、という小ネタだったようですが、一瞬、博多南さんを繰り出せば勝てるのではと考えてしまいました。
 範囲攻撃で吹き飛ばされ、撤収を許したキラメイジャーに、色々あって君たちは博多南劇団のメンバーとなりました、と宝路から連絡が入り、大変テンションの上がるアニキだが、色の都合で残念枠を当てはめられてしまい、大ショック。
 アニキはどうも、崩し方が過剰になりがちなきらいがやや引っかかる事はあるのですが、万力回に始まって、役者さんが積極的に崩しの芝居をやりたがっているらしいので、現場のフィードバックが積極的に取り込まれるのは、東映特撮らしくはありますでしょうか。
 キラメイジャーは再び出現した金庫邪面に立ち向かい、偽装演劇の設定で、アフレコでいつもと違うタッチの芝居をやらせるのは、現在の状況下におけるバリエーションのアイデアとして、成る程。
 宝路・マブシーナ・王妃・魔石たち、がかぶりつきで見つめる中、華麗な連携で金庫の解錠に成功……したかと思われたキラメイジャーだが、金庫を開けるには同時に二つのVSビークル、じゃなかった、ダイヤルだけではなく暗証番号の解除も必要であり、緑が適当にキーを連打した結果、MAY DAY! MAY DAY!
 「セキュリティシステムLV5発動により、あと10分で金庫の中身は、自動的に爆発する」
 自爆は宇宙最強のセキュリティ!
 東映特撮名物・あなたの隣のレスキューポリス時空が口を開け、カジュアルな大量虐殺がヨドン怪人らしい一方、中身が爆発した場合の金庫邪面の運命が気になりますが、ヨドン怪人の目的は闇エナジーを集めて怪獣召喚のゲートを開く事なので、爆発→闇エナジー大量確保なら、死して屍拾う者無し、なのか。
 「色男金と力はなかりけりスパーーク!!」
 かくなる上は物理で解決しようとするキラメイジャーだが、度重なる筋書きの変更や激しい戦闘を目の当たりにして王妃様が徐々に芝居への疑問を強め、必死に誤魔化す宝路とマブシーナの努力空しく、攻防一体の金の力にキラメイジャーが大苦戦。
 「もしかして、これはお芝居じゃなくて現実……?」
 地球が狙われている、という事は、クリスタリアとオラディンはもう……と悲劇的運命に守り石を震わせる王妃がショックのあまり砕け散りそうになった時、「わたくしが、お母様を、守ってみせる」と強い決意で進み出たマブシーナが、これはあくまで芝居である、とショータイムを演じ始め、いつかやりそう、と思ってはいましたが、姫様、遂に歌う。
 荒川×渡辺で、姫様を地球人化して、声優さんに直接歌ってもらうぐらいやりかねないと考えていたので、その予想に比べると、だいぶ、マイルド(?)になりました。
 ……まあ、キャラソンに合わせて姫様がキラキラ輝いて、正面突破の鉱物生命体アイドル誕生、の方が凄い事やっているのでは感もありますが、乙女の涙は宝石・クリスタルです。
 歌って踊れるマブシーナのヒロイン力に後押しされたキラメイジャーは、金庫邪面にフルパワーを叩き込んで大逆転。だが一方で、内気なマブシーナが人前で懸命に歌う姿を見た王妃は目の前の戦いが芝居ではない事を確信し、母親の為に過去の自分を乗り越えるマブシーナ、そんな娘の姿を見て真実を悟る王妃、の母子愛は綺麗に収まって良かったです。
 娘の想いに応える為、ショックを乗り越えて自らを保った王妃は、宝路に指示を出すとお母様ビームで金庫の蓋を灼き切り、極道の妻の面目躍如。
 桃緑が構えたヘッドドレスに銀がドリルビームを撃ち込み、増幅された光線をトーチの要領で用いて金庫の蓋を切り裂く、という一歩間違えると大変間の抜けた映像を、一切ブレーキがない派手な演出と、今回コメディ担当だった銀の活躍&お母様のみならずキラメイジャーの力を結集した姿に見せる事で、一周回ってクライマックスにふさわしいシーンに仕立て上げたのは、お見事。
 どこでネジを締めるか、でガラリと印象の変わる好例になりました。
 結局、力には力、と大宇宙の掟がまざまざと見せつけられ、金庫の中からこぼれ出した金貨が地球人に戻ると、空っぽになった金庫頭の内部に零むしろマイナス距離のヘッドショットが叩き込まれ、史上最もえげつないキラメイバスターでチェックメイト
 今回はガルザとクランチュラがお休みしてヨドン軍の様子は描かれないも、とりあえず闇エナジーは溜まっっていたようで怪獣が出現し、魔進の姿を王妃様にお披露目する魔石達だが、怪獣の金粉ビームを受け、キックオフ直後に退場処分。
 てっきり「この子に、陛下と同じ力が?!」から、王妃様の思わせぶりな発言に繋がりでもするのかと思ったらそんな事もなく、現在、カラットでは、キラメイジンのキラキラ輝く方法をお便りで募集中です!
 もちろん今回もキングサメのターンなので、マブシーナ&王妃を搭乗させたキングサメ(コックピットの場所は、右腕以外にひらめいた方が良かったのではないだろうか、充瑠よ……)は金粉ビームを華麗に交わし、この風、この肌触りこそ戦争よ、と盛り上がる王妃様に特等席で地球人類の闘争本能を見せつけ、キングサメは怪獣を軽々に粉砕するのであった。
 血湧き肉躍る火薬の匂いに興奮しすぎた王妃様は力を消耗して再び眠りにつき、そもそも甦らせて良かったのかはさておき、終始ヘッドドレス状態なのは、コミカルさを増しつつ画面をスッキリしたまま進行できて、良いアイデアでした。
 王妃の蘇生(石ですが)に関しては、前回の「呪いを解く手段を入手してマブシーナを救うが王妃に関しては諦める」というさらりと盛り込まれたシビアな選択に対して、時勢も鑑みて物語全体のラインを軟着陸に寄せていく方向のバランスが取られたのかな、といった印象。まあメタ的には、桑島法子さんをキャスティングしておいて、台詞が「やぁ!」とか「とう!」だけは無いだろう……みたいなのはありましたが(笑) (それこそ、劇場版ゲストで予定していたキャストがスライドした、と言われると納得しやすいところではあり)
 軟着陸ラインを想定すると、王妃復活にともなってオラディン王の存命確率が再び上昇すると共に、クリスタリア復興に関しても、叶えまストーンを4つ揃えた際の願いの選択肢として上がってきましたが、“奇跡”をどう持ち込むのかについては、終盤の大転倒にならないのを祈りたいところです。
 「わたくしも、お父様とお母様から貰った強さを、倍にして返せるように、もっと、強くなります……」
 マブシーナは眠りについた王妃へと誓い、充瑠よりもむしろマブシーナの成長ステップが丁寧に描かれているのは今作の面白いところですが、亡国のプリセンスが流れ着いた地球で仲間を得て一歩ずつ自分に出来る事を見つけていく過程は好感度も高く、なんだか姫様が、表ヒロイン通り越して真主人公の風格を漂わせ始めてきたところで、つづく。
 前半、出鱈目な復活&素っ頓狂な性格の王妃様、それに振り回される感情移入しにくいドタバタ劇、前回の今回で身内を優先せざるをえない宝路(まあダイレクトに生死に関わるので仕方ないですが)、と並んでどうなる事かと思いましたが、後半に入って芝居のアイデアが噛み合ってきてからは面白かったです。
 プロットとしては「田舎から親が上京してきた!」のアレンジだと思うと、王妃様の性格が素っ頓狂な事にも一定の納得(笑) そこから(アイドル回を挟みつつ)母娘の愛情を茶番にする事なく真っ当に描いてきたのは、一山越えた後の姫様エピソードとして秀逸でした。
 今回からEDが、キャラソンCD合わせ?のキラメイ音楽祭と銘打たれ、トップバッターは劇中でも歌唱を披露した姫様。ボーカル曲に合わせて名場面集が流れ、頭突きと、押さえ込みと、平手打ちを放つ姫様であった。
 次回――磯野、バンドやろうぜ。