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消えた学園と歪む時空

ウルトラマン80』感想・第25話

◆第25話「美しきチャレンジャー」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:阿井文瓶)
 ナレーション「彼女たちは皆、明日の城野エミを目指して懸命なのだ」
 UGM入りを目指して日々汗を流す地球防衛軍女性隊員たちがフォーカスされ、訓練を見学しに来た城野が憧れの先輩として描かれるのはわかるとして、矢的は何をしに一緒に来ましたか。
 シナリオ的にも困ったのか、特にこの後の伏線でもなんでもないUGM制服の説明を滔々と始めるのですが、前回に続いて城野と連れだって歩いているところに通りがかったユリ子にからかわれると、「ユリちゃん僕のことそんなに気になるとかまいっちゃうな~」といった調子でデレデレやに下がって城野に冷たい視線を向けられ、相変わらず、女性関係で好感度を下げていく事に余念がありません。
 何かと城野に敵愾心を燃やす訓練生の一人・ジュン(演じているのは恐らく、『超人バロム・1』でミス港南小の須崎くんを演じていた、斉藤浩子さん)は、怪獣に殺された兄の仇討ちの為にUGM入りを目指していたが、親と約束した期限まであと20日……その時、2機のUFOが突然UGM基地を強襲し、ジュンはこのチャンスに一発逆転の手柄を挙げようと、周囲を顧みず身勝手な行動を取ってしまう……。
 女性隊員へのクローズアップ、操縦技術やレーダーの分析などでただのコネ入社ではない力量を見せる城野、城野先輩とゲストヒロイン後輩の関係性というこれまでにない切り口、とアプローチは面白かったのですが、いくら手柄が欲しいあまり視野狭窄になっているとはいえ、「見つけた敵性宇宙人をそのまま通報」すれば十分な手柄になるのに、「見つけた敵性宇宙人を籠絡して情報を入手しようとする」のはあまりにも発想が飛躍しすぎて、台無しになってしまいました。
 追い詰められてそこまで愚かな行動を取ってしまう動機付けである「兄の仇を取りたい」「親との約束」が背景説明以上に掘り下げられないので、物語の中でキャラクターの情念が繋がらず、選抜メンバーに入っている事自体の説得力から揺らいでしまったのが、痛恨。
 ……どうやらチーフの過去の武勇伝に影響を受けてのようなので、悪いのはチーフか。
 そんなわけで相変わらず物語が今ひとつ噛み合わない一方で、城野とジュンの訓練からUFOとの空中戦に続く戦闘機を中心とした特撮は見応え抜群。後半ではUGM基地の地上砲台が激しく火を噴き、それに対してUFOと怪獣が共闘を仕掛けるのを俯瞰で見せるのは面白い映像。
 ところで、以前もどこかの回で思ったのですが、UGM隊員の光線銃、怪獣に着弾した際の爆発規模が物凄くてシリーズ歴代最強クラスの破壊力なのでは(笑)
 功に焦った挙げ句、基地内部での怪獣出現を許してしまったジュンは矢的や城野に詫びながら特攻を仕掛けるが、敢えなく撃墜。屋上からダイビング変身を決めた矢的がそれを拾ってさくっとUFOを撃墜すると、怪獣には高高度からのウルトラジャンピングニードロップ! そこからモンゴリアンチョップ、低い位置の回し蹴り、そしてジャイアントスイングに光線技で怪獣を粉砕し、UGM基地を直接狙った宇宙人の作戦は、失敗に終わるのであった。
 「一日も早くUGM隊員になりたくて、一人で怪獣をやっつけようとして大失敗」
 「まったく、城野にはヒヤヒヤさせられたもんだ」
 隊を辞めようとするジュンに対し、過去の失敗談を語った城野は「ここで引き下がっては駄目だ」と激励し、
 「ジュン、勢いがあまってやりすぎちゃうのは、若さの特権だぜ」
 と矢的もエールを贈るのですが、「若さの特権」で許すには余りにも被害規模が大きすぎで、この後、キャップがスーパーダンディ交渉力で上層部を丸め込むのでしょうか。
 後、序盤のあれこれを考えると城野隊員が5年前からの生き残りだと考えるのはだいぶ苦しいと思われるのですが、5年の間、怪獣が出ていない設定は、学園生活と共に亜空間に呑み込まれてしまったのか。
 話の切り口は悪くなかっただけに、ドラマ面での諸々の『80』クオリティが勿体ないエピソードでした。
 次回――鎧武者と異次元エイリアン! ……予告だけ聞くと、完全に東映特撮(笑)