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熱中症

仮面ライダーゼロワン』感想・第43話

◆第43話「ソレが心」◆ (監督:田崎竜太 脚本:高橋悠也
 「飛電或人と滅の争いが、いずれは人類と、ヒューマギアとの全面的な争いに発展する」
 ZAIAジャパンの新社長(本社の開発部に居た人らしい)が深刻そうに呟くのですが……これまで散々、主人公を中心に軽い扱いで適当な対応を繰り返して半年以上にわたって見て見ぬ振りをし続けてきた世界の状況に対して急に目を向けて、「このままでは大変な事になってしまう! 衝撃の展開だ!!」とやり出すので、目眩がしてきます。
 かつてバルカン半島を「ヨーロッパの火薬庫」と呼ぶ表現がありましたが、今作の世界におけるヒューマギアはずっと「人間社会の火薬庫」だったわけで、今頃、「うわ、こんなところに大量のニトログリセリンが!」と初めて気付いた風にやられても、物語への視線は平板になっていくばかり。
 ヒューマギアネットワーク(共有情報?)におけるアルトの存在が大きくなっているからこそ、アルトと滅の全面対決が火薬庫の導火線になりうる、みたいなニュアンスなのかもしれませんが、そもそもゼアの無い状態でヒューマギアの情報が共有されているのか? とか、どうしてヒューマギアの危険性が大きくアピールされて一度は全面廃棄に近い状態になったのに、またしれっと街のあちこちにヒューマギア居るの? とか(仮に第41話と第42話の間で数ヶ月経過しているとしても、劇中で明確に触れなければいけなかった極めて重要な事項の筈)、それらに対する「人間」の反応の不在とか、肝心な部分が脱落を繰り返し、世界観という背骨がぐちゃぐちゃに崩壊しているので、物語の立ちようがありません。
 また、劇中で悪意感染理論を唱えているのが天津だけなので、それを根拠にこのままだとみんな悪意の虜になっちゃうよ! とか言われても、説得力皆無。
 2クール目の山場ぐらいだったらまだ盛り上がりがあったかもしれませんが(その場合、イズの退場は早くなりすぎますが……)、クライマックスで衝撃の展開! とやるには、何もかもがあまりにも空疎。
 ……いっそ、2クール目の山でイズ退場、女優さんは3クール目からアズとして登場、亡きイズと、アズの誘惑の間で揺れ動きながら共存の道を見出そうとするアルト、みたいな方が納得度は戦ったかもですが。
 「悪意があるのは……ホントに人間だけなのか?」
 滅がイズを破壊したのは個人的感情(悪意)なのではと迅が指摘すると、滅がそれを“正義”で糊塗しようとするのも、普遍的なテーゼではありますが、或いは、そうであるだけに、長すぎた回り道。
 とにかく様々な要素が、積み重ねに積み重ねを重ねて、今ついに爆発! ではなく、早い内から目に付く場所に置いてあったものを延々と無視し続けた末になんの掘り下げもしないまま「うわ、大発見だ!」とやるので、朦朧としてきます(そしてそれが、主人公の“気付き”として表現されるわけでもない)。
 「俺の秘書はおまえじゃない!! ……イズだ」
 喪失と欠落の大きさはわかるものの、この絶叫にはアルトのイズへの依存加減の駄目さが濃縮されていてちょっと面白かったですが、“私憤で大義を見失う主人公”を描けているならまだしも、アルトの場合、“本人は大義だと思っている事が全部私情”なので、それを認めないまま執着Aが執着Bにすり替わっただけなのも、劇的にも魅力的にも感じにくい部分。
 「人類の悪意を滅ぼすまで、俺は戦う。それが――仮面ライダー滅だ」
 そして、常々触れてきたように、アルトの思想性を突き詰めていくと、アルトが本当に向き合うべきものは“人間の悪意”だったと思っているので、アルトの側がここまで達していればもう少し面白みもあったのですが……アークワンの器になった、といっても、やっている事は「個人単位の復讐」でしかないので、いっそ、執着Aが執着Bにすり替わった結果、執着Bに基づく破滅的な大義Bを掲げるぐらいまで描いてほしかったなぁと(それによって、アルト自身がネガアルトとして成立する)。
 かつてヒューマギアの庇護者たらんとした青年が、イズを喪失した事でヒューマギアの破壊者になる……とはいっても、1クール目は普通に暴走マギアを破壊しまくっていましたし(それをヒロイックに見せるのが立ち上がりのポイントだったわけでもあり)、ヒーローフィクションを楽しみたい人間としては、ヒーロー性を捨てた復讐鬼アークアルトが滅とマギア軍団を嬲り殺しにしていく戦闘シーンに一切の面白みを感じられない、辛い時間。
 滅をかばった迅が爆死し、迅の復元はZAIA新社長によるものだと明らかになるのですが、そのZAIAに迅が従っていた理由はさっぱり不明(忠誠回路でも埋め込まれていた?)なので、フェニックス以後の、あっちにふらふら、こっちにふらふらする迅の行動原理は、結局よくわからないままに。……一応、「アーク破壊」が最大の目的で、その為にその場その場で利用できるものは何でも利用していた――最終的な夢の為に――という事なのでしょうが、復活後は1から10まで話の都合だけで動かされて可哀想なキャラクターでした。
 後なんか、前回完全に存在を無視されていた雷と亡がしれっと登場しましたが、「大変だ!」と言いに来てそれっきりで、なんだろう、この余り物感。
 残り2話なので最後まで見ようと思いますが、最終回ラストシーンで「……というのは全て、ゼアの高速シミュレーションでしたー。真実の物語は、劇場でね」となっても、それはそれで流せるぐらいな氷点下の心持ち。