『ウルトラマン80』感想・第19話
◆第19話「はぐれ星爆破命令」◆ (監督:野長瀬三摩地 脚本:若槻文三)
本来の軌道を外れ、地球との衝突コースを取る巨大なはぐれ星・レッドローズ。地球滅亡回避の為に残された手段は、レッドローズの破壊であり、全地球の総力を結集した命がけの作戦遂行を課せられた日本支部。だが、爆破作戦に巻き込まれる事になる4つの惑星の一つに、生物が存在する事を、矢的猛/ウルトラマン80は知っているのだった……。
ナレーション「ガウス星には、生物が居る事を、矢的は知っていた。しかしその事を話せば、自分が、ウルトラマン80である事が、わかってしまうのだ」
矢的は、他の手段がないかとイトウに訴え(キャップは、対策会議に出席するため本部に出張中の名目でお休み)、ウルトラマンゆえの葛藤がならではの面白さとはなりましたが、矢的の場合、「生徒を守る」事にはこだわっても「地球(人)を守る」事にはいまひとつ強い動機付けが感じられなかった為(部分的にイコールではあるのですが、前者の要素が現在、物語から切除されてしまっているので……)、「地球も救う、ガウス星の生命も救う」という選択肢の可能性を広げる事よりも、「正体判明を防ぐ」方が重要な扱いになってしまったのは、なにやら本末転倒の感。
ここで、「地球(人)を守る」「地球に居続けたい」事への強いこだわりが物語の積み重ねで明示されていれば、葛藤しながらも地球優先の行動を取る事にスムーズに繋がるのですが、学園要素+初期の動機付けが物語に反映されないのが、つくづく辛い。
別に劇中に直接登場しなくても、(僕はそれでも生徒達を守りたい……)と独白させるぐらいはあって良かったのでは? と思うのですが、学園要素を匂わせもしたくない様子に、1クール目への強烈な反動は感じます。
「我々の任務は地球を守る事だ。その為の犠牲はやむを得ない」
イトウ・ハラダ・タジマがこの任務に向かう事になるが、思いあぐねた矢的はハラダを気絶させてメンバーに加わり、ここまでシリアスな雰囲気で展開していたのに、急な貧血扱いからミッション直前にかるーいノリでメンバー交代が発生するのが凄く『80』。
レッドローズは破壊されるが、その余波で消滅したガウス星から飛来した未確認物体が地球に到達し、ここまで約19分、振り返れば予告のあらすじがエピソードの8割を説明していました!
撃墜された矢的はやむなく80に変身、怪獣ガウスの動きを止めると、ウルトラテレポーテーションにより惑星ガウスとよく似た環境の星へと連れて行く事で新た住処を与え、地球に帰還。人類の叡知が、同じような悲劇を繰り返さない事を祈るのであった……。
予告から、『ウルトラセブン』第6話「ダーク・ゾーン」(監督:満田かずほ 脚本:若槻文三)のオマージュ? と思っていたら、オリジナルの脚本である若槻さんの登板に加えて『セブン』に参加していた野長瀬監督が入り、「ダーク・ゾーン」+同26話「超兵器R1号」(監督:鈴木俊継 脚本:若槻文三)+『80』風シロップがけといった内容。
良く言えば再演、悪く言えば焼き直し、10年の時を経て、テーマの再利用そのものには一定の意味を感じるものの(今のように気軽に過去の作品を見られる時代でもないですし)、あまりにもプロットがそのままなので、「ダーク・ゾーン」大好き人間としては、どうにも落ち着かないエピソードでした。
80は神様ではないのですが、ではヒーローとして何をしたかというと、どちらも選びきれないまま課題を自分ではなく地球人に放り投げて終わり、80の持つ能力の大きさと未成熟な部分も、悪い形で出てしまった印象。