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ゼロワン超特急

仮面ライダーゼロワン』感想・第39-41話

◆第39話「ソノ結論、予測不能」◆ (監督:作野良輔 脚本:高橋悠也
 アークの殺人魔球を、代打サウザーが場外ホームラン。
 「飛電インテリジェンスを守るのが、社長の努めだからな」
 マスクの下では憑き物の落ちたような微笑を浮かべていそうな柔らかい台詞回しそのものは良かったのですが、アルトはそれに微笑で応えて友情パワーを供給されて本当にいいのか。
 「まさか、お前達が組むとはな」
 そして、前回の今回で、早くも因果が読み切れなくなっているアークの扱いは、本当にそれでいいのか(むしろ前回、急に飛躍した事を言わせなければ良かったと思うわけですが……)。
 立ち上がったアルトはサウザーと並んで変身し、間の犬は悪ふざけの類だと思うし、サウザーのお供の犬がゼロワンの変身に同調してもそこには何も劇的に乗らないしで、前回今回と、VIPゲストが残り少ない作品のHPを小躍りしながら削り殺していきます。
 未来予測の不能になったアークはダブルライダーの必殺攻撃を受けて迅を解放するが、アークうねうねは瞬間移動でその場を飛び去り、そうなりそうな気はしていましたが、もはやすっかり、エボル遺伝子の焼き直し状態。
 飛電製作所に戻り、これまでの行為を謝罪する天津に対して先程までノリノリでコンビ攻撃とかしていたアルトが一応は怒りを見せる横で、「誠意を見せろや、誠意を。おまえの誠意の角度は、30度かぁ?」と煽りまくる秘書が物凄い感じの悪さ。
 アルトが強く言えない部分を秘書として指摘している、みたいなニュアンスなのかもしれませんが、悪事の報いとしての軽重が合っているわけではないので、どんなに量を費やしてもそのギャップが埋まる事はなく、では何のために一連の感じの悪い映像を繰り返し視聴者に見せているのかといえば、天津を味方サイドに置く為の作り手側の言い訳でしかないのが、極めて残念。
 せめて、アークを倒したらこれまでの犯罪行為を自白して出頭する、ぐらい約束させた方がまだ帳尻の納得がいったような……(それはそれで、味方サイドに置いたキャラの逮捕エンドに問題があるという判断だったのかもですが)。
 ここから先は、
 突然、一切の出番が無くなるアイちゃん
 目を覚ますと、思想的対立を全く無視してアルトと行動を共にする迅
 そんな素養を見せた事は一度も無いのに、一から自分で新ゼロワンを設計し始めるアルト
 犬を抱えて謝罪回りする天津
 超速でシンギュラリティに達して自我を取り戻す雷
 と、目眩がするほど雑な展開が続き、「ゼアを守る」使命を取り戻したと語る雷を信じたアルトは、迅・雷と共にデイブレイクタウンへと向かい……雷を信じるのはまだともかく、不破・唯阿・天津に声をかけて戦力を揃えないのがあまりにも頭が悪すぎで、話の都合丸出しにも程があります。
 案の定、亡ウルフにあっさり拘束された迅は役立たず、雷のシンギュラリティはアークによる偽装で、一人で雷アークと戦う事になったゼロワンは完敗。
 アークはゼロワンドライバーそのものをラーニングし、そもそも、各種キーとゼアとアークの関係がさっぱりわからない(設定的には筋が通っているのかもしれませんが、物語の中では全く劇的に示されていない)ので、今になってデータがどうの言われても作り手の脳内設定が空回りしていくばかりなのですが(『ビルド』の時も同じような失敗をしていましたね……)、とにもかくにも、アークはゼアに直接アクセス。
 「ようやく出会えたなゼア。ここは、私がいただく」
 ゼロワンドライバーは破壊され、アルト何度目かの瀕死で、つづく。

◆第40話「オレとワタシの夢に向かって」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 イズの耳の中からゼアが出てきた。
 なんかもう、なにもかも開き直ったかのように話の繋がりが無茶苦茶なのですが、冒頭から迅が普通に飛電製作所で座り込んでいて笑えます。
 「何もかも終わりだ」
 すっかり諦めの早い子になった迅、別にアークが器とするのにこだわっているわけでもないらしく、物語の中の立ち位置が完全に行方不明。迅としては、当座の敵としての打倒アークの為に人間と手を結んでいるつもりなのかもしれず、「ヒューマギアの自由」の為の戦いとしてはそれで矛盾はないのですが、やむを得ず手を組んでいる心情とか、その先のビジョンを考えている様子とか、そういった細かい掘り下げが皆無なので話の都合でフラフラしているようにしか見えず、この最終局面においてキャラクターとしてすっかり迷子。
 そしてこれまでになく凄絶に負傷したアルトは、前回の迅そっくりの格好で、テーブルの上に転がされていた(笑)
 アーク打倒を諦めないアルトは新ゼロワンの資料をイズに託し、イズが協力を求めて飛電インテリジェンスに向かった直後、製作所を雷アークが強襲。
 「おまえを滅ぼす事で、人類滅亡は確実なものとなる」
 ……そうですが、前回ラストから今回までの間に、また前提条件が入れ替わったのでしょうか。フェニックス迅の奮闘むなしくアーク指鉄砲(この見せ方は格好良かった)でアルトは死亡し、死体を前に涙をこぼすイズがようやくフォーカスされるのですが、下手すると半年ぐらい泥人形のようだったイズを今更ヒロインとして取り上げられても感情の針がピクリとも動かず、何もかも遅きに失した感。
 「社長」を示すアイコンとしては非常に機能的であり、今作ならではのヒロイン候補として高いポテンシャルを感じさせ、開幕当初は今作のストロングポイントかと思われたイズですが……
 ●第2部以降は概ねただの便利なイエスマン
 ●常にアルトの側に居る事でアルトと他の人間との間の障壁になってしまう
 ●早い段階でアルトのギャグに理解を示した事により、アルトにとってただ気持ちのいい存在になってしまった
 と、むしろ各所で作劇の問題を引き起こす最大級のウィークポイントと化してしまった上、早期にアルトのギャグに積極的に参加するようになった事でその「変化」も曖昧になってしまい、イズを魅力的に見せるにあたって必要だったのは、アルトとのパートナー関係(それにともなう「変化」)を段階的かつ丁寧に積み重ねていくか、逆にギリギリまで「変化」のカードを開かないかの、どちらかであったように思えます。
 「イズに俺の夢を伝えて、今までになかった感情がイズに芽生えた時、ゼアが起動したんだ」
 アルトらの死亡はイズによるシミュレーションだったと明かされ、アルトと夢を共有する事により、イズに起きた「変化」が大きな鍵となったと称するのですが、どういうわけか第30話で大雑把に「イズがシンギュラリティに達しました! ちゃっらーん!」をやってしまった為に、さっぱり劇的にならず(映像的には、イズの涙がアルトメモの「シンギュラリティ」の辺りにこぼれる表現になってはいるのですが)。
 1年物の特撮作品なので、想定通りに行かない事は色々とあるでしょうが、それならそれで、どうして、既に使ったボロボロのカードの再利用で通せると判断してしまったのか。クライマックスを控えたタイミングでの撮影中断という悪条件はあったにしても、あまりにもやり方が粗雑ですし、それ以前の段階の組み立てが酷すぎます。
 そんなこんなで耳から出てきたゼロツーキーを、アルトとイズが繋いだ手から生まれたゼロツードライバーに接続し、物語的には「人とヒューマギアの共存の象徴」のつもりなのかもですが、これまでの積み重ねからすると、それは「二人の世界」なのではないでしょうか。
 後、一応ツッコんでおくと、シミュレーションの中で流していた「涙」と、夢のファイルを見せられて流していた「涙」とは、同じ「涙」でも全く別の感情に起因すると思うのですが、もうしっちゃかめっちゃか。
 仮面ライダーゼロツー! それが俺の名だ!」
 蛍光イエローのボディに、赤いアクセントが各所に入ったゼロツーのデザインそのものは割と格好良く、アークと戦闘開始。シャイニングホッパーの発展系という事なのでしょうが、戦闘予測を戦闘予測で上書きするのは、目の前の映像の信頼性を損ねてしまうので、個人的にはあまり面白く感じず(作品全体がそういうトリッキー路線ならまた別ですが)。
 「馬鹿な……私の予測を超えていく。何故だ」
 「俺とイズ……人間とヒューマギアが、同じ夢を見ているからさ!」
 ゼロツーは雷から引きはがしたアークをビッグバンキックで撃破し、めでたしめでたし、みたいに顔を出す不破さんと唯阿さんの雑な扱いが目を覆わんばかりですが、カップル感だけ妙に出ていて困ります。
 だがアークは衛星を破壊しない限り不滅、と告げた滅が倒れた雷を拾っていき、一同それをぽかんと見送るもはや恒例の『ゼロワン』作劇で、つづく。
 次回――なんだか、滅さんと、共闘するようですね(遠い目)。それよりも、先日あれだけにこやかに宣言したのに、製作所の社屋が吹っ飛んだので飛電インテリジェンスに戻るの??

◆第41話「ナンジ、隣人と手をとれ!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 「でも……飛電或人なら。あいつに影響を受けたヒューマギアは、アークにハッキングされない心を持ってる! あいつなら、アークを越えられる!」
 モデル回の「夢を持ったらハッキングされない!」という無根拠な妄説に続き、「アルトに影響されたヒューマギアはハッキングされない心を持つ!」という謎の理屈が生えてきて、「人とヒューマギアの共存する未来」の為には「特別な個人」の介在を必要とする物凄い逆行がまたも発生しているのですが、アルトに与えた「特別性」と、ヒューマギアがいずれシンギュラリティに到達するこの世界の「普遍性」が正面衝突を引き起こしていて、焼け野原を掘り返して地下茎まで全て燃やそうとする勢い。
 ……まあこれは、物語の序盤から私が読み取った世界観と、実際に「作り手が想定していた世界観」とが大きくズレていたという事なのかもしれませんが、一本目に「お笑い芸人ヒューマギア」を持ってきた事の意味が、“広くヒューマギアが浸透した社会の表現”ではなく、“ただのインパクト勝負”だったのだとしたら、どう転んでも最初からボタンの掛け違えが発生していたという事なのでしょう。
 「アークはヒューマギアを利用してるだけだ。僕たちは、自由であるべきだ」
 「自由の先に、何があるというのですか」
 「夢を持つんだよ。自分の意志で生きるんだ」
 とにかく、夢=ポジティブ=善、で乗りきろうとするスタイルの中、亡の質問は今作が目を逸らしている部分にクリティカルなのですが、ひとまず完全スルー。
 アークの意志に背く迅を粛正する為に変身するも、迅を破壊できない自分に気付く滅パパ……ですが、息子さんの方は、「アーク破壊の為に滅を生け贄にする気満々だった」と自白しているので、なんか色々、なんだかな。アーク復活の際にさらっと口にしていて、え? そこそんなあっさり言わせるんだ……と驚いていたら今回改めて口にさせ、“片方で自由な意志を謳いながら、片方で父親の愛情を強制される”滅の姿は、今作の不誠実な作劇を煮詰めた象徴のようになっていて、もはや痛々しさすら漂います。
 ゼアークはインフラを大規模にハッキングして人間社会に多大な混乱を引き起こし、警察・消防・医療など、様々な分野で深刻な人手不足が起こる中、アルトはイズを通して、飛電インテリジェンスにヒューマギア事業の再開を提案。
 これを受けた天津が、自ら辞任すると正統後継者であるアルトに社長の座を譲り、ヒューマギア事業再開の花を持たせる、のは天津の引き際として悪くなかったのですが……緊急事態とはいえ、3話前に「一から作った俺の会社」と胸を張った飛電製作所が、もうゼロツーを生み出したので役割を果たした、と言わんばかりにポイ捨てされるのは、心底、雑(アイちゃんが今頃、社長ラボのゴミ箱の中で人類への悪意を蓄積していそうで心配になりますが、どこへ行ってしまったのでしょうね……)。
 そして、各方面にヒューマギアが派遣されるのは、(個々人における前進はあったとしても)第1話と同じ状況に世界が戻っただけであり、その理由は、元来ヒューマギアを管理しているマザーコンピューターの暴走なので、巡り巡って物凄いマッチポンプ
 そして今作名物、記者会見による「悪いのは全部○○だ!」が炸裂。
 ……まあこの辺りは、作風を貫いた、という見方でもいいといえばいいですが。
 あと、基本的にヒューマギアはサーバーと接続していないと機能を発揮できなかった覚えがあるのですが……現在稼働しているヒューマギアは、一体どうやって動いているのか。
 五千歩ぐらい譲って、「夢を持ったヒューマギアはサーバー接続せずに独立運用可能」「アルトに影響を受けたヒューマギアは、アークにハッキングされない心を持ってる」をこの世界のルールと規定して、だからゼアがシャットダウン中でも稼働していると考えるとしても、「夢」は当然、個人の希望や目標であり、「アルトに影響」はヒューマギア個々の“体験”であり、どちらにせよ複数のヒューマギアに反映される類のものではない筈で、仮にそれがキーに記録されており全ての同型ヒューマギアに継承されたとするならば、ヒューマギアにおける「個性」「自我」「心」とはコピー可能なものであり、コピーされればそれはもはや「個性」や「自我」とは呼べないという、繰り返し触れてきた地獄の袋小路に突き当たるわけですが、結局、そこを突破する解を見つける事が出来ないまま、頬被りを決め込む事にしたようにしか見えないのは改めて極めて残念です。
 「ヒューマギアこそがこの星の主。滅ぶのはおまえだ、アーク」
 「なに?」
 「それが滅亡迅雷ネット。それが――俺の意志だ!」
 一度はアークに憑依された滅だが、迅の破壊に抵抗。人類滅亡の為にはもはやヒューマギアも不要、と断定したアークへと牙を剥き、それを聞いたアルトは、打倒アークの為に手を組めるぞ、と意気揚々と変身。迅に憑依したアークをコンビ攻撃で撃破して迅を救い、宇宙では雷が衛星ゼアを破壊する事によって、アークは今度こそ滅びた……?!
 「おまえのおかげで……俺にも夢ができた」
 「……だったら、うちの会社に来るか?」
 「俺の夢は――人類滅亡だ」
 何故か口をぽかんと開けて固まるアルトですが、いや、ついさっき「ヒューマギアこそがこの星の主」って言っているのを耳にしたばかりだと思うのですが。
 伝達内容が長くなると、最後の部分しか記憶に残らない人、というのはまあ、現実にまま居ますが、「滅ぶのはおまえだ、アーク」の前段は、すっぱりメモリから消去されていたのか、アルト。
 「人間に悪意がある限り、いつかまたアークは生まれるかもしれない。人類が存在する限り、我らヒューマギアに安息はない」
 迅を背負って滅は姿を消し、アルトがこれまで目を逸らし続けていたものに滅が向き合う姿を見せ、ラッパーギア問題も無かった事にして逃げ切るつもりではないのかもしれない、とほんの僅かの希望の光を物語に灯して、つづく。
 ……ところで、第38話で唯阿さんに向けて「アークは俺が倒してやる」と格好良く宣言した後、全く関わっていないところでアークが3(4)回倒されている不破さんですが、形だけでも「アークを倒す」集いに参加できる日は来るのでしょうか。