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アバレプリンセス七変化

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第29話

◆第29話「アバレ七変化で新合体」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久

 ――「そうよ! このブレスは幸人さんを選んだ。悔しいけど……だから私は、貴方のダイノガッツを信じてます」

 もはやすっかりコメディの人になりつつある殿下が風邪を引き、その特効薬は「地球の女から集めた幸せエナジー」って、それはもう、インサーンの個人的嗜好に基づく地球人類への嫌がらせなのでは……?
 というわけで、1ジャンルを成すといっても過言では無さそうな結婚式襲撃アイデアに発展し、実際のところ、シリーズ作品から集めたら、1クール分ぐらいはあるのでは。
 そしてOPから炸裂する、三条笑里のクレジット(本編その後における“関係性の変化”を明示している点で、やはり今作初期とは明らかに作品のスタイルが変化しているのですが、荒川さん的には『アバレ』最終回で既に結婚しているつもりだったとかなんとか……そして、荒川さん以外の誰にもそのニュアンスが伝わっていなかったとか)。
 「ねぇ……アイムさんって、ぜんぜん海賊っぽくないですよね?」
 「は?」
 「どういうところが良かったんですか? やっぱりあの、守ってあげたくなっちゃうような、可憐な雰囲気ですか?」
 「おまえはまだまだわかってねぇなぁ。アイムの事を」
 そうですね、鎧はもう少し、仲間の戦闘シーンをよく観察するべきですね!
 それはそれとして、マベの発言は「船長」としてのものなのでしょうが、表面上の印象に引きずられる鎧をへらっと笑い飛ばして余裕を見せつけ、アイムが絡むと妙に亭主関白モード発動するのは、なんなのマベちゃん(笑)
 本日は外食ランチだった海賊一行は帰路に結婚式を目にして、
 「綺麗だねぇ……」
 と感想をもらすルカがハカセの肩に手を置き、前々回の流れから一瞬、お? と思わせてからの
 「花嫁の指輪」
 は絶妙でした(笑)
 ところがそこに、幸せエナジーを集める為に派遣されたダイヤル隊長(声を務めるのは、現在『魔進戦隊キラメイジャー』のクランチュラ役で大活躍中の高戸靖広)が姿を現すと幸せの絶頂にある花嫁のエナジーを吸収してしまい、市民をかばって逃がす海賊達。
 「しょうがねぇ。腹ごなしにやるか!」
 もはや躊躇せずに前に立ちつつ、表向きの理論武装するのが、海賊らしさとして貫かれます。
 ダイヤル隊長は、ベルトについたダイヤルを操作していきなり巨大化するも二大ロボに苦戦すると、今度はダイヤルを逆に操作して虫のような大きさまで小型化し、ドリル神のコックピットに侵入。
 「おっきくもちっちゃくも、なれるんでありまーす!」
 ノリの軽さもあって、どうしてもケロロ軍曹を彷彿とさせる口調ですが、2020年現在ではこれにクランチュラも思い出してしまう合わせ技で、2割増しぐらいで楽しい(笑)
 ドリル神の攻撃を受けたゴーカイオーは、乗っ取りを知ると、一切の躊躇無く至近距離からスターバースト(笑)
 目を覚ました銀に組み付かれたダイヤルは再び小型化すると今度はゴーカイオーのコックピットに侵入するが、赤青黄は狭い室内をいとわずに銃をぶっ放し、しばらくドタバタ追走劇。ブリッジに入り込むもナビィの攻撃を受け、海賊たちにも追い詰められたダイヤル隊長は、今度は大型化するとゴーカイオーに大穴を空けて逃走に成功し……ここまででも屈指のダメージをゴーカイオーに与えているのですが、使い方次第では海賊たちを葬り去れたのでは、これ。
 「あいつら、ひょっとして気付いてないのか?」
 「え? なんに?」
 この戦いを、ビルの屋上から見つめる、男女の2人組。
 「決まってるだろ。アバレンジャーの“大いなる力”には、まだ使い方があるってことだ」
 「うそ。知らなかった……あたしもアバレンジャーなのに」
 「違うだろ」
 容赦ないツッコミにブタの鳴き声のようなSEが入って、その気で躍進、心はアバレピンクです、ブヒっ。
 ガレオン内部は主に味方による銃の乱射により損傷し、メカニック関係を丸投げしているハカセから、罰として天井修理をおおせつかる事になるマベルカジョー。余った鎧はアイムから結婚を申し込まれ……超速で始まる、ダイヤル隊長を誘き出す為の偽装結婚式。
 女装したハカセがしれっとオルガン弾いていたら抱腹絶倒でしたがさすがにそんな事はなく、びしっとタキシードを決めた鎧にウェディングドレス姿のアイムがしずしずと歩み寄り……
 「だっこしてキスして、ダーリン」
 「ええーっ?!」
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 「この後どんな展開になるのか、TVの前の君はわかるかな?」
 「その答は……」
 「「CMの後で!」」
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 EDを挟んでからその回のオチを見せる懐かしの『アバレ』フォーマット変則版(話の流れが否応なく断線されるので、その後に継承されなくて本当に良かった……)で、Aパートを締めて、Bパート。
 相手役として誰からも求められていなかったといっても過言ではない(いや、さすがに過言か?)鎧は渾身のお姫様抱っこを披露し、まんまと教会に飛び込んできたダイヤル隊長のベルトをアイムが破壊。これによって巨大化・縮小は出来なくなったダイヤル隊長だが、反撃で鎧がダメージを受け、奪われたエナジーを取り戻すために、アイムが一人でその後を追う事に。
 場面変わって無差別にエナジーを奪おうとするダイヤル隊長に、近付いてきたのは、自転車+セーラー服の女子高生アイム。
 「かわいー……地球の女子高生ちゃーん!」
 は一応、幸人さん伝説の女装と「そいつらは女子高生といって、何も怖いものがない、いわば、地上最強の生物だ」で名高い、『アバレンジャー』第24話「アバレ女子高生!ありえな~い」(監督:渡辺勝也 脚本:會川昇)ネタなのでしょうか(笑)
 ダイヤル隊長を油断させ、エナジーの蓄積された杖を首尾良く奪うも再び取り替えされてしまうアイムだが、一蹴り入れると怪人は何故か病院の手術室に転がり、今度は看護士アイムとして登場。
 もはや、コスプレの為には前後の脈絡を完全無視というか、翻弄されるのがヒーローではなく怪人、という構図の逆転を取り込んだ、魔空空間回とコスプレ回の高度な融合が誕生しています(笑)
 ……つまり、後の『vsギャバン』への巧妙な伏線である(嘘)
 「凄いですアイムさん。いつもの自分を捨てて、そんな事まで」
 そして鎧は、そんなアイムの盗撮を繰り返していた。
 手術室を飛び出したダイヤル隊長は路上に転がり……
 「今度はなんだ?!」
 「警察です! 行きます!」
 婦警アイムのパトカーダイレクトアタックが炸裂してダイヤル怪人は吹き飛び、取り落とした杖を蹴り砕く事で幸せエナジーは解放され、ガレオン組がそこに合流。
 「俺わかりました! やる時はやるっていうその豪快な潔さを、マーベラスさんは気に入ったんですね?」
 「は?」
 「それは……どうだかわかりませんが」
 眉を寄せるマベに対し、アイムは目を伏せてはにかみ、そこに突然出てくるスーツの男女。
 「いや。今のアバレぶりは天晴だ」
 「あーーーっ! アバレンジャーのアバレブルー! 三条幸人さんと…………知らない人ー!」
 「……あの、妻で、秘書の、三条笑里です」
 この後の展開をスムーズにする都合でか、スーパー戦隊マニアの鎧がエミポンを知らない事には若干の違和感はありますが、直接のメンバーはともかく、市井の協力者などは日常生活に支障が及ばないように情報が秘匿されているのでしょうか。
 そして定期的に“自称関係者”によるスキャンダラスな告白記事(「本紙独占激白! 獣○戦隊パワハラの記録!!」)が週刊誌などに出ては、参謀長とか介さんとか某財団とか、その筋を動かせる人達によって闇に葬り去られていくのでしょう。
 「やはりおまえらは、アバレンジャーの“大いなる力”を持つにふさわしいな。仲代壬琴がちゃんと教えなかったことを教えてやる」
 そして髪型のアバレている幸人さんは、相変わらず、いい人だった。
 幸人はゴーカイオーでもアバレンジャーのキーを使用しろとアドバイスするが、キーの数が足りない事に首をひねるアイム。
 「そう言うと思って、ちゃんと持ってきてあげたよ。アバレピンクのレンジャーキー!」
 「あ、あああアバレピンクがいたんですか……?」
 マニア、大ショック(笑)
 「そうよ~、私こそ、スーパー戦隊200番目のヒーロー、アバレピンクだったのよ」
 なんか、どさくさ紛れに凄い事を言い出したぞ。
 エミポンがブタの鳴き声のSEと共に取り出した微妙にうさんくさげなキーを手にし、ひきつった笑いをアイムが浮かべた時、ダイヤル隊長が復活。海賊たちが6人並んでゴーカイチェンジから即座に爆竜チェンジを決め、
 「「「「「「爆竜戦隊・アバレンジャー!!」」」」」」
 と格好良く名乗りを決めるが、どう見ても一人だけ、お手製の爆豚戦士のコスプレ衣装だった。
 「アイム……なんだそりゃ?!」
 一同愕然とし、アバレピンクが妄想ヒーローだった事に安堵する鎧ですが、エミポンの精神的戦士性は原典初期から積み重ねられているので第38話に登場したアバレピンクはただの一発ネタというわけではなく、レジェンド回と海賊戦隊における色々なパズルを積み重ねている内に、とんでもない所に辿り着いてしまった、気がつけばアバレピンク回(笑)
 3人揃ってだったハリケンジャーを特例とすると、今回、TV本編において「青」が登場していると共にいわゆる「サポートキャラ」が出てくる事で、今作年間におけるスーパー戦隊要素がより充実しているのですが、エミポンは印象的なキャラだったので、良い再フォーカスになりました。
 もう一つ、掘り下げていくとキリが無いのでやめたのでしょうが、素質はあったが戦士になるには至らず、けれど戦士を支え、精神的には戦士であろうとしたエミポンは、“伊狩鎧の欠片”であって、そんな伊狩鎧がアバレキラー/仲代壬琴から力を受け取って戦士になったというのは、意図したというよりはパズルの産物ではありましょうが、なかなか面白く繋がりました。
 そして、なんだかんだモバイレーツに対応し一応変身の発動しているアパレピンクのレンジャーキーと、幸人さんが仲代壬琴の関与を知っている事を考え合わせると、このキー作ったの多分、みこ様ですよね……?(笑) で、みこ様に頼まれて、力について教える為に数億の仕事を蹴って二人で来日したんですよね……?!(泣くほどいい人)
 「これでは派手に行けません」
 とてとてと歩いたアイムはレッドの後ろに回り、姫はこういうところ、割とあざといですよね……(個人的に、天然:8・意識:2ぐらいの印象です)。
 「こっからは俺たちに任せろ。派手に行くぜ!」
 『アバレ』主題歌インストに乗せてアイムを除く5人がダイヤル隊長に斬り掛かり、4+1の変則構成であるアバレンジャー海賊版揃い踏みを実現するにあたって、〔アイムの一人舞台を作る→揃い踏みの為にアバレピンクを取り込む→戦闘には参加しないが前半の見せ場でバランスを取る〕というのは、原典要素の取り上げ方が見事な解答でした。
 その都合で、早々にリタイアから盗撮魔に転身した鎧が前回に続いて少々割を食いましたが、基本的に場を食いに来るキャラクターなので、初登場から一連の大アバレが一段落して、君は少しそこで座って待っていなさい、という時期ではあったでしょうか。
 アバレは色の関係で圧倒的強キャラ(黒)の担当がハカセ……から、ゲストが幸人さんという事もあってか、高い場所でポーズを決めて挑発、光線技をバンカーを軽々と跳ね返し、高度のある飛び蹴りを決める青が非常に格好良く、それぞれの個人武器・必殺技をたっぷり見せて――ときめくぜ。
 荒川さんの戦隊での初メインライター作品にあたる事を演出陣が汲んだのか、バトルシーンはかなりサービス満点。
 トドメはピンクが復帰してのファイナルウェーブ発動で、巨大ダイヤル隊長に対してアバレンジャーの“大いなる力”をダブル発動(なお、アバレピンクキー不要でした(笑))。
 ゴーカイオーと豪獣神がバロムクロスすると、右腕にドリル、左腕に恐竜ハンドのついた豪獣ゴーカイオーへと合体し、コックピットに銀が転移。やりそうでやらなかった合体がここで発動し、電動ドリルスピンから、ドリルで突き刺し牙で噛みつく、レックスドリルで大勝利。
 「アバレた数だけ強くなる。これからも、アバレまくれ」
 戦い終わり、アイムのアバレぶりをレポートした鎧、皆の興味に応えて盗撮写真の数々を披露し、興味無さそうに距離を取ったかと思ったら、結局、人垣の後ろから凄いしかめっ面で写真を見ているジョー……(笑)
 「も~、生きていけません」
 アイムはソファに転がり、ある時は亡国のプリンセス、ある時はゴーカイピンク、またある時は……の七変化を画面に並べてオチとなり…………好き勝手やりやがって!(笑)
 渡辺監督との黄金コンビにより、メインライターが煩悩の限りを尽くしたアイムコスプレ回でしたが、アイドルになって歌い出さなかっただけまだ自制したのでしょーか。煩悩の赴くがままのようでいて、上述したように、アバレ揃い踏みを無理なく実現する為の原典要素の取り込み方はさすがの技巧で、考えてみると怪人撃退にナビィが一役買った描写もあって、戦士を支える者達にスポットを当てた回だったようなそうでもないような。
 後は、男性陣の誰かが大いなる女装の犠牲になれば、完璧だったのですが(笑)
 ところで、鎧のアイムに対する問いかけに対し、結局語らず仕舞いだったマベですが……
 「いいか、よく聞け! 俺が、俺がおまえを仲間にしたのは――おまえが、おまえが、可愛かったからだ!!」
 だったらどうしよう(笑)
 鎧への宿題にされた雰囲気もあるので、後々、改めて拾ってくれるなら期待したいところです。