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鋼鉄の新ヒロイン

超獣戦隊ライブマン』感想・第23話

◆第23話「コンマ1秒に賭けた命」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「なんでしょう、お嬢さん」
 「あは、お嬢様ですってー、うふふ」
 「コロン?!」
 冒頭から、コロンさん@白いワンピースの避暑地のお嬢様概念が炸裂し、この時点でだいぶ満足度が高かったのですが、前後を見回してもひたすら予想外の角度から攻めてきますコロンさん。
 おめかしモードでバイクの後部座席にまたがり、パトロールを手伝いたいとアピールしてくるコロンさんを勇介がすげなく拒否していた頃、ヅノーベースではビアス様からそれぞれ課題を与えられた5天才が実験に勤しみ、ケンプがいち早く、新合金を完成させていた。
 「これでみんなもよーくわかっただろう。誰が真の天才か。大教授ビアス様一番の弟子は誰か!」
 ここのところ存在感の薄くなっていたケンプ、久しぶりに心置きなく他者を見下せるモードに入り、大変、ノリノリです。
 「皆もケンプに負けずに宿題をやり遂げるのだ。おまえたち5人の宿題が揃った時こそ、我が念願のギガ計画が完成するのだ」
 「「「「「ギガ計画?」」」」」
 ビアス様は拳を握り、アシュラin・ギルドスin・オブラーout・ブッチーin、で開始当初からの因縁は減ったのに人数は増え、いかにも幹部クラスの持て余しが生まれそうな状況下で、人数の意味をすかさず作ってくるのは、実に手堅い作劇。
 とりあえず試し切りだぜ、と新合金製の刀を手にしたケンヅノーが勇介に躍りかかると、バイク、そして、ファルコンソードさえ軽々と両断し、これが俺の科学力、と勝ち誇りに現れるドクターケンプ。
 「レッドファルコン! 今おまえは初めて、死の恐怖を覚えたはずだ。青ざめた貴様の面が見たいぜ。ふふふふはははははは……」
 ボルト幹部陣は、その能力(頭脳)と人格(傲慢さ)に密接な関係があるので、毎度“勝ち誇らずにはいられない”事が悪の幹部としての面白さと、説得力を伴うキャラの掘り下げになっているのは、改めて巧い設定。
 格好いいモーションで強化装備のファルコンセイバーを取り出す赤だが、頭脳獣の猛攻に防戦一方となり、コロンのアドバイスも虚しく連続攻撃を受け、とうとう変身解除。
 名前の響きは少々間抜けなケンヅノーですが(恐らく「ケンプ」に掛けたのでしょうが)、アクション主体の回という事もあってか鎧武者風のデザインはシンプルに格好良く、見応えのある戦闘が続くのは、今回の長所。
 「ドクターケンプの才能、思い知ったか! 貴様ら科学アカデミアの落ちこぼれが、太刀打ちできる相手ではない事が!」
 ここしばらく、ろくな活躍シーンの無かったケンプですが、他人の上に立ったと思うや本当に活き活きとして素晴らしい(笑)
 「これで俺が偉大なるギガ計画の第一歩を、切り拓く事になるのだ!」
 「ギガ計画……なんだギガ計画とは?!」
 「誰もわからぬ」
 自信満々すぎて、もはや格好いい(笑)
 往年の伊上勝脚本も思わせるやり取りですが、広瀬さんのハッタリ力が70年代ヒーローに繋がるものがある事を再確認しつつ、流れる滝を画面の真ん中に勇介とケンプを両サイドに置き、画面右手(上手)のケンプが極めて芝居がかった仕草で高らかに勝利に酔い痴れる姿を描く舞台的な見せ方が、ケンプの衣装やキャラクター性と噛み合って印象的なシーンになりました。
 「ビアス様の胸の内に秘められているだけで、誰もその実態は知らぬ。まあ、貴様も知る事はあるまい。何故なら、今、ここで! ――死ぬからだ」
 振り下ろされる剣ヅノーの斬撃を必死にかわした勇介は、自ら滝壺に身を躍らせる事で、なんとか死地を抜け出す事に成功。
 「……逃げた。……俺は生まれて初めて敵に背を見せてしまった」
 だいぶ怪しげな自己申告ですが、君は科学者なのに、どうして前作の主人公(裏稼業の喧嘩屋出身(推定))みたいな事を言い出しているんだ(笑)
 丈・めぐみと合流した勇介は、ケンプ剣を打ち破る為のより強力な剣を作る時間が無い事から、技をもってそれを打ち破ろうと、倒木を無為に振り回す。
 「技を……技を! 新しい技を!」
 「違うわ勇介。勇介が負けたのは、スピードの差よ」
 だがそれをコロンさんが止め、頭部のお団子部分は超小型パソコンみたいな装置である事が判明(緊急時にはきっと爆弾になります)。
 「勇介、技じゃないのよ。0コンマ1秒早く動けばいいのよ。0コンマ1秒だけ、早い瞬発力を生み出す訓練が必要なのよ」
 その場で戦闘の映像を再生したコロンは常に0.1秒、剣ヅノーの攻撃がファルコンよりも早かった事を指摘する。
 「コロン! 君は数字ばかり……もう数字はたくさんだ!」
 おい科学者(笑)
 「そんな! 信じて。本当に、0コンマ1秒を克服しないと、あなたは負けてしまうのよ」
 「戦いというものは、数字だけで計りきれるものではないんだ。立ち向かった者にしかわからないものがあるんだ」
 「勇介……」
 「戦うのは俺だ! ……人間なんだ! 君のような鋼鉄の体とは違うんだ!」
 完敗に荒む勇介はサポートロボに戦いの何がわかるのかと心ない言葉をぶつけてしまい、第13話における「俺たちはもう、コロンの事はロボットだとは思わない」は、あの場の勢い、甘い言葉はしょせん遊びだったのね、と鋼鉄の乙女心に大ショックを受けて走り去るコロンの後を、すぐにめぐみさんが追いかけてくれるのがおいしい。
 「ごめんね。勇介、気が立ってるのよ」
 「いいの。勇介の言う通りかもしれない」
 自分はあくまでも鋼鉄のロボットであり、真の意味でライブマンの仲間にはなれないのだ、と自らに言い聞かせようとするコロンだが、めぐみが言葉をかけるよりも早く、ケンプが襲来。ケンプ剣を振り回すケンプは、ジャンプしためぐみの足を掴んで地面に叩きつける荒技を放つと、めぐみを助けようと飛びかかってきたコロンを一蹴。
 めぐみを人質に呼び出され、単身赴くレッドファルコン、スーツの損傷がそのままなのが格好いい表現で、再び剣ヅノーとの戦いに。正統派の格好いい怪人と剣と剣でぶつかり合う見栄えのする殺陣が再び続き――地面を転がる赤が、思ったより斜面を転がってしまった感じでちょっと心配になるシーンとかありましたが――なんとか助けになろうと回り込み、躊躇無く海に飛び込むコロンさーん!(一緒に居た丈は、コロンさんの後から遅れて飛び込みました)
 そもそも先輩達なら最初からこうしていた筈、と飛び道具を取り出した赤だがそれも弾き返され、変身解除。そして眼前の剣ヅノーに意識を集中する勇介の背後には、トドメは自分で刺したい派の美獣ケンプの凶刃が忍び寄る。
 「死ねぇ! 勇介ぇ!!」
 不意打ちを受けて袈裟懸けに切って落とされる寸前、海中から飛び出したコロンさんが、身を挺して勇介をカバーリング。剣ヅノーと違って剣の達人というわけではなかったケンプは即座に勇介の飛び蹴りを受けて物凄い勢いで斜面を転がり、コロンに駆け寄った勇介が、鋼鉄のボディに入った痛々しい傷跡を指先でなぞるのは、大変いい芝居でした。
 「コロン! 君は戦いに臨んで何が大切かを今教えててくれたんだ。……この体で。戦いで大切なのは捨て身で戦う事なんだ!」
 え(笑)
 「今なら0コンマ1の壁を破れるような気がするぜ。見ていてくれ、コロン」
 生身も、鋼鉄も、その身と心に追う傷はきっと同じ――コロンをそっと地面に横たえた勇介は、怒りを秘めて再び変身。
 (捨て身でぶつかる事さ、あの剣を恐れぬ事だ)
 跳び上がった両者の斬撃が空中で交錯し、捨て身全肯定による死中に活ありメディテーション言い出した時はどうしようかと思いましたが、戦いの最初に見せつけられた豪剣の威力を恐れるあまりの、ほんの僅かな躊躇が無意識に踏み込みを浅くしてコンマ1秒の遅れを生んでいたのであり、相討ち覚悟の踏み込みによってそれを克服してみせる、というのは納得のいく着地点。
 赤の剣は頭脳獣を上回り、めぐみは丈が救出。剣の達人ではなかったケンプは黄と青にダブルで切りつけられると無様な悲鳴をあげて撤収し、バイモーションバスターで吹き飛んだ剣ヅノーはギガファントム。
 巨大戦はいつもながらのざっくりスーパーライブクラッシュながら、先の一騎打ちを踏まえ、自らの傷をいとわない躊躇のない踏み込みで達人の剣を上回る構図を重ねる事で、いつもと同じ映像に、いつもと違う意味を乗せたのは、大変お見事でした。
 普通に考えると、強敵・剣ヅノーを倒す為に開発する形で新装備のファルコンセイバー投入、となりそうなところを、前回唐突に登場、今回ソードが折れたのでおもむろにセイバー使用、の辺りはさっぱり意味がわからない事になっていましたが、「ビアス様に出された宿題に応えててケンプが作り出した新合金」より「強い剣をその回の内にライブマンが作ってしまう」と「ボルトが集めた天才が皆タコ焼き屋に転職待ったなし」になってしまうので、“悪魔の科学”を“心”で上回る構図になったのは、結果的には納得度が上がったなと。
 ……まあ、筋道を付ける都合で若干、勇介に前作主人公が憑依するみたいな事になっていましたが、もともと筋肉寄りには描かれているので、ギリギリ許容範囲ではありましょうか。
 「……パトロール行こうか」
 最後は、修復されたコロンを勇介がバイクの後部座席に乗せて走り出し、照れまくりながらもタンデムするコロンさんのヒロイン力が急・上・昇!
 初登場がOPのムーンウォークで当初はどうなる事かと思いましたが、出番は多くないながら要所で強烈なインパクトを残し、ここまでいいキャラになるとは……。
 それはそれとしてギガ計画ってなんだろうねとナレーションで戦闘の激化を暗示しつつ、冒頭では勇介が振り払った、後部座席から腰に回されたコロンさんの手のアップを入れるのが、実に長石監督らしい気の利いた演出
 筋の粗い部分もあったものの、コロンさん回&ケンプジェットコースター回としては、非常に満足の出来でした。
 ちょっと気になるのは、前回に続き、丈が筋の中から消え気味なところ。丈メインだったツインヅノー回が傑作だったので、しばらくは放置していても大丈夫といえば大丈夫そうですが……次回も、勇介のターン。