東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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君には聞こえないのか

超獣戦隊ライブマン』感想・第19-20話

◆第19話「ガリ勉坊や オブラー」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「甘い! どれもこれもみな甘い! こんな計画で、 私が面白がる 地球を征服できると思っているのか! おまえ達を天才中の天才と見込み、ボルトに呼び寄せたというのに。何が天才だ! お前達の才能はこの程度か?!」
 そろそろ2クール目も中盤に入るというのに、緒戦のアカデミア島殲滅以後、さしたる成果を出せない弟子達にお怒りのビアス様は、左右に忙しく動き回って苛立ちを露わにすると、指先から電気針を射出。
 「脳細胞を活性化してやる!」
 余裕の着座スタイルだったビアス様がだいぶ感情を出すようになってきましたが、自分の“選んだ”天才達が、“選ばなかった”ライブマンにことごとく邪魔をされているのが、不快感を増している面はありそう。
 怒りヅノー回ではケンプが余計な人間的感情を不要と断じていましたが、ビアス様自身、怒りや嫉妬から生じる競争心を煽るなど感情を捨てようとしていない面が見られ、第一に作劇の都合ではありましょうが、ビアス様が超然とした超越者として描かれていない部分は先々で跳ねるのかどうか、興味深い点です。
 (怒りヅノー回では「感情を操ることのできぬ、愚かな人間」と言っていたので、大教授ビアスにとってはこれも、弟子たちをコントロールする為の偽りの感情なのかもですが)
 「良い知恵を絞り出せ」
 ビアス様の叱責に対し、自ら電気針を引き抜いていち早く立ち直ったオブラーは、己の分身を生み出す事を宣言……一方、夜道で飛び出してきた少年を轢きそうになった勇介は、塾が楽しくないと涙を流す少年を草野球に誘い、大人げなくホームランをかっとばす、めぐみさん。
 勉強ばかりしないで子供らしく遊ぼうぜ! と口にする勇介たちが、“選ばれた”優秀な人間であるのがちょっと面白い構図ですが、とんだ地雷にならないかはヒヤヒヤ。
 「遊んでいる奴は大嫌いだ!」
 楽しく遊んでいた勇介と少年たちだが、めぐみの飛ばした打球を探しに行った子供達の前に、肥大した頭部・手にはペン・背中にランドセル・蝶ネクタイとブレザーの意匠を取り込んだボディ、という、“名門私立に通う小学生”の歪んだ戯画化めいたベンキョウヅノー(今日わかりやすく例えると『名探偵コナン』怪人)が出現。背中のランドセルから書物を放つと、それが次々と子供達の手に貼り付いてしまう。
 「勉強しないと、その本は手から離れないのだ」
 「今日も勉強、明日も勉強……」
 「おーい!遊んでる時ぐらい勉強忘れろよ!」
 戻ってきた子供達がいずれも下を向いて本を読んでいる姿に苦笑とともに声をかける勇介だが、少年達は書物の朗読を止めない。
 「愚かな人間に、生きる資格なし」
 「この世は天才だけのもの」
 「天才の中の天才は、大教授ビアス
 「この世を治めるのは、ビアス様」
 ビアスを讃えるその書物は、悪魔の教えが書かれたボルトバイブル!
 街中の人達が強制的にボルトバイブルを読まされる悪夢的な世界が現出し、その光景のもたらす気持ち悪さが示される事が、正しく“寓話の効果”であり、尺の短さゆえの劇作という面もありますが、近年『ビルド』や『ゼロワン』が見失っている部分のように思えるのです。
 遊園地に出現した勉強ヅノーを止めようとするライブマンだが、遊園地のアトラクションに乗り込んだオブラーが高笑いしながら登場(笑) 勉強ヅノーがオブラーの命を削って誕生した分身ともいえる頭脳獣である事を告げ、強力なダブル攻撃にライブマンは苦戦。子供達の苦しみを胸に懸命に立ち向かう赤が決死の一撃を浴びせると、吹き飛んだ勉強ヅノーはジェットコースターに乗り込んでしまい……「世の中にこんなものがあったとは!」と、未知の娯楽に目覚める(笑)
 全体主義への風刺的な画から一転、次々とアトラクションに乗り込む頭脳獣の姿がコミカルに描かれ、昭和の演劇青年のごとくすっかり道を踏み外してしまった勉強ヅノーは、市内を彷徨う内に公園でラグビーを目撃。バイブル入りのカバンを放り捨ててそれに参加しようとし、人々が逃げ去った後に残されたボールを手にして、泥水の中をはしゃぎ回る。
 「わかったぜ……ベンキョウヅノーは遊びたいんだ」
 「なに?!」
 「オブラー、ベンキョウヅノーはおまえの分身だと言ったな」
 「そうだ」
 「その分身が、まるで子供のように遊び出したという事は、おまえ自身の心のどこかにも遊びたいという気持ちがあったからだ」
 「何を馬鹿な!」
 ……きつい!
 「ベンキョウヅノーは、おまえの幼い時の素直な心に戻ってるんだよ」
 スローアレンジの主題歌インストをBGMに勉強ヅノーはボールと無邪気に戯れ、勇介たちとオブラーのやり取りが重なるとコミカルな映像がガラリとその意味を変え、キョンシー回が何かのスイッチを入れたのか、曽田さんのエンジンが回転数を上げてまいりました!
 「オブラー、いや、尾村豪。俺は今おまえという人間が見えてきたような気がするぜ」
 獣面の奥で人の瞳が揺れ動き、少年時代、母親から机に縛り付けるかのように勉強を強いられていた事を思い出すオブラー。
 皆が楽しげに笑い遊ぶ外の世界へと向けて、豪少年が投じた玩具の飛行機は母親の声と共に地面に墜ち、長石監督の演出もノっています。
 ――「豪、あなたは他の子と違うんですよ!」
 「むぉぉぉぉ、黙れ、黙れ!」
 カバンを拾って勉強ヅノーへと放り投げ、自らの分身に、かつての自分が親から受けた仕打ちを行うオブラーだが、不意に倒れ込むと地面をのたうち回り、その姿は、藻掻き苦しむ尾村豪に。
 「豪が! 豪が人間に戻った!」
 躊躇わずに笑顔で駆け寄って助け起こし、前回今回でぐいぐいといい奴ポジションとしての株を上げていく丈だが、それを振り払った豪は人間に戻った事を執拗に否定し、近付こうとした3人に突き刺さる光弾。
 「無様な姿をさらしおって……おまえの科学はその程度だったのか!」
 横合いから勇介たちを攻撃し、木の上に姿を見せるドクターアシュラが、今回も良いポジション。
 「ベンキョウヅノーには俺たちが根性入れてやるぜ」
 「「「やるぜ」」」
 サイバー分身を繰り出すと木の上で気取ったポーズを取るのが大変格好良く、この時期のスタッフは、どれだけ岡本美登さんを好きなのか(笑)
 「そうはさせん!」
 頭脳獣をアシュラ分身から守るライブマン、という錯綜とした展開になり、ファルコンを吹き飛ばすアシュラの超格好いい回し蹴り。ライブマンを蹴散らしたアシュラは頭脳獣の四方を囲んでアシュラ根性焼きを入れるが、その時突然、謎の鳥形宇宙人めいた存在が出現。衝撃波で分身もろともアシュラを吹き飛ばすと、手にした短剣のようなものから光線が放たれ、それを浴びた尾村はオブラーの姿へ戻り、勉強ヅノーも凶悪化。
 もにょもにょした地球以外の言語を操るとそのまま姿を消し、ケンプとマゼンダもこの存在に困惑する中、ビアス様は無言で宇宙空間を見つめ……これまで、ビアス様の出自を始め、宇宙規模なのか地球規模なのか判然としなかった今作ですが、見るからに宇宙生物めいた存在が登場し、問いかけると返答はするが何を言っているかわからない、のはなかなか面白い掴みのインパクト。
 ライブマンはやむなく勉強ヅノーを撃破し、イエロー捨て身の突撃作戦で倒すなど通常時は割と強かった勉強ヅノーですが、巨大戦では特に何をする間も与えず奪ったペンで突き刺してからの超獣剣で完封勝利。
 3人は、弱りながらも独りで去って行くオブラーの背を見送り、豪が人間の心を取り戻して元の姿に戻るかもしれない、と一度は捨てた希望を再び抱く丈。……今のところ、丈-マゼンダ&オブラー、勇介-アシュラ、とが情の面で繋がっているのですが……が、頑張れケンプ。
 もういっそ、めぐみさんにラブレターを送った過去が発覚してもいいぞ、ケンプ。
 怒りのビアス様に始まって、オブラー決意の作戦による風刺的悪夢がコミカルな頭脳獣の描写へスライドしたと思ったら、オブラーの秘めた悲しみへとスムーズに繋がり、劇中の空気ごと二転三転するような展開が一つの流れとしてテンポよく綺麗にまとまった、長石×曽田コンビの力量を感じさせる一本で、面白かったです。
 前回はマゼンダ、今回はオブラー、秘めた内心の部分が頭脳獣として具現化した事でボルト幹部が捨てたはずの人間の心を揺さぶられる展開が続いたのは、完全にたまたまだったのか、或いは3天才の描き方として方向性の統一があったのかはわかりませんが、前回は自発的に捨てた愛情への未練に翻弄されながらも一度は罠として使ってみせるマゼンダの屈折と煩悶、今回は押し殺していた過去の恥辱を暴露されるオブラー、とアプローチの違いがキャラクター性の違いと繋がり、その点はあまり気になりませんでした。
 一見コミカルながら確かに異形にして、どこか哀愁を漂わせる勉強ヅノーは、ここまでの頭脳獣でも屈指の好デザイン。
 難を言えば、終盤を次回以降の布石にしてしまった為に、勉強ヅノーがあっさり撃破された事と、なんだかんだエリートであるところの勇介たちが「勉強」をどう捉えているかの掘り下げが無かった事ですが、取捨選択としては仕方ないところでしょうか。

◆第20話「落第オブラーの逆襲!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「もはやおまえなど私の弟子ではない」
 這々の体でヅノーベースに戻ったオブラーはビアス様に足蹴にされ、画面変わるといきなり、戦闘員一体に攻撃を受けているライブマン
 科学アカデミア時代に既に軽度の宇宙開発用改造実験手術を受けていたのではないかと疑念の湧いてくる丈はモヒカン兵をジャイアントスイングで軽々と投げ殺すが、そこに現れたサイセイヅノーの再生ビームを浴びると、砕けた破片からモヒカン兵が再生増殖。
 ぱっと見ミュータント系の再生ヅノーは、頭部がぱかっと開くと中のメカニックが顔を出すのが面白いデザイン。
 戦闘員は倒せば倒すほど再生増殖し、頭脳獣にダイレクトアタックする赤と青だが、攻撃を受けた再生ヅノーはなんと、脱皮(笑)
 これまでにない難敵に対し、ままよとばかり放たれるバイモーションバスターだが、前回登場した謎の宇宙人が作り出したシールドに、あっさりと阻まれてしまう……。
 「俺が造った頭脳獣は無敵だ。ギルド星人の科学の凄さを思い知らせてやるぞ」
 宇宙人の正体は、ヘルメットを脱ぐと凄くつぶらな瞳だったギルド星人ギルドス。ケンプ達が困惑する中ビアス様は愉悦の表情を浮かべ、再生を繰り返す頭脳獣とモヒカン兵の軍団に大苦戦するライブマンだが、そこにランドライオンが駆け付け、コックピットに居るのは勿論、我らがコロンさん。
 「ライオンカノン、発射!」
 とうとう巨大メカを操縦したコロンさんは、圧倒的火力と巨体で再生ヅノー軍団を追い払い、我々に出来る事はただ、コロンさんのレンジャーキーが宇宙のどこかで無事発見される日を待つのみです。
 ヅノーベースを訪れたギルドスの目的は、宇宙全土に鳴り響く大教授ビアスの名声に憧れての弟子入りと明かされ、物語は一気に宇宙規模へ拡大。
 「よかろう。弟子入り試験は合格だ。ケンプ、マゼンダ、アシュラ。これからは、地球人の天才と宇宙人の天才が競い合うのだ」
 「……わたしは……見捨てないで下さい、ビアス様」
 「まだ居たのか」
 吐き捨てるように告げながらオブラーを見下ろす際の表情が大変素敵で、今回はビアス様の魅力が溢れんばかり。
 ビアスに見限られ、弱ったオブラーは尾村の姿に戻り、自らの科学と生命エネルギーの限界に周章狼狽
 「これが地球人の天才か」
 「違う。こんな奴、仲間ではないわ」
 「見苦しい姿をさらしおって」
 「とっとと失せろ」
 学友たちにも見限られた尾村は、一時的にオブラーとしての力を回復させたギルドスの短剣に目をつけるとそれを奪って地球へ逃走し、モヒカン兵の追跡を振り切って、母親の暮らす実家へと逃亡する。
 「実験室は昔のままだろうね」
 「豪、もう勉強するのかい?」
 「誰が訪ねてきても、僕の事は知らないというんだ。いいね。これはとても大切な実験なんだからね」
 「よぉくわかってるよ。偉いわおまえは。いつもいつも、頭の中は勉強の事で一杯なんだね」
 どうやら行方不明扱いにされていたらしい息子の帰還を喜ぶ母親に対して尾村は徹底して無感情に接し、泥だらけの姿で着の身着のまま地下室に篭もろうという息子の行動を肯定する、前回を踏まえたこのやり取りに、歪んだ母子関係が濃縮されていて、強烈。
 ……まあ、見ようによっては、悪の組織の追っ手を逃れた天才科学者が、残された時間を使って秘密兵器を作り出そうとするの図に見えない事もないのですが(笑)
 「……やっぱり豪は天才。普通の子とは違うんだわ」
 豪を地下室に送り出した後、母親にカメラを寄せるので内心の心配や不安が吐露されるのかと思いきや、駄目押しが入るのが、またえぐい。
 「こいつの不思議なエネルギーがあれば……」
 豪は短剣のエネルギーを引き出す事で自らの更なる強化改造を試み、その行方を追っていた勇介たちは尾村の家へと辿り着く。
 「豪のやる事に、間違いがある筈ありません。豪は世界的な発明をしようとしてるんです」
 「違う! 違うんだ……」
 「どう違うんですか!」
 (……言えない……どうして豪の実態がいえよう)
 地下室から豪の絶叫が響く中、自慢げに息子の天才ぶりを語る豪母の妄信的な愛情に勇介たちは言葉を失うが、遂に地下室から、異形を半ば取り戻した豪が飛び出し、人間と怪物の中間的な異形の姿で地上に現れる豪 → 背後の吠え声に振り返る豪母 → それを止めようと豪母に飛びつくめぐみ → 母親を一顧だにせず飛び出してくる豪、の交錯が実に鮮烈なシーン。
 「俺は誰にも負けない! 完全なドクターオブラーとなるのだ!」
 「おめえってやつは……おふくろさんの目の前で、なんて惨い事を!」
 尾村豪は再びオブラーの姿へと変わり、丈が第3話の台詞回しを拾っているのが秀逸。
 「こうしなければ、俺はもうボルトに戻れんのだ。貴様等を倒し、ビアス様に見直していただくのだ!」
 オブラーに追われる勇介たちは、前方をギルドスに塞がれると変身し、主題歌バトルに突入。
 「俺の十字架剣でどれくらい強くなったか。地球の天才とやらの力、見させてもらうか」
 再生ヅノーと戦闘員をともない余裕のギルドスが見つめる中(弟子入り初仕事として尾村豪を葬りに来た?)、斧から火炎放射するも、一斉キックを受けて吹っ飛ぶオブラー。戦いの最中、マジックアイテムの存在に気付いた赤がそれを奪って突き刺す事で再生ヅノーの特殊能力が失われ、それを見たギルドスは撤収。
 再生ヅノーはバイモーションバスターで派手に吹き飛び、捨て台詞を残して逃走しようとしたオブラー、そこ邪魔、とガッシュに殴り飛ばされて悲惨すぎる扱い……。
 巨大再生ヅノーは、必殺剣のモーション中にビームで反撃してくるしぶとさを見せるが、ものともしないライブロボにより、スーパライブロボクラッシュ
 変わり果てた息子の姿に尾村母は岸壁に泣き崩れ、その姿を見つめる事しかできない勇介たちは、果たしてオブラー/尾村豪とどんな決着を迎えるのか?!
 尾村母子の描き方が強烈だったので、そのまま一気にオブラーとの決着を見たかったところがありましたが、ギルドスの力を見せる為に出てきた再生ヅノーを始末する都合があった為、次回に持ち越し。
 あまり真っ当とは思えない尾村母ですが、ライブマンの視点がだいぶ同情的なので、扱いによっては大事故になりそうなのが少々不安なものの、流れとしては非常に盛り上がっているので、巧く着地してほしいです(愛情が歪むに至った事情などが描かれてくれればなと)。
 ギルドスに関しては時期的に2号ロボの踏み台の予感がしますが、その登場により世界観が大きく広がり、物語の今後に幅を持たせてくれる事を期待。あと、頑張れ、ケンプ。