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たった一つ自分だけの宝物誰も探してる

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第21話

 ※今回、案の定、思い入れ過剰気味の内容になっており、拙『ボウケンジャー』感想記事を未読の場合、いつも以上に意味不明の妄言が飛び交う内容になっておりますが、わけのわからない事を叫んでいたら大体、感想記事の勢いで生まれた言葉だな、と思っておいて下さい。

◆第21話「冒険者の心」◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)

 ――「誰にでも自分だけの宝がある。それは誰にも与える事はできない。自分で見つけるしかない」

 バスコ編・シルバー編と立て続いた影響もあってか、珍しく過去ヒーロー登場回が連続し、第10話以来となる下山さんが、レジェンド回を初担当。また、劇場版『199ヒーロー大決戦』を担当した竹本監督が本編初参戦。
 バスコのラッパに隠された力を知ったマーベラスは、真面目にクエストを攻略している間に裏技で“大いなる力”を集められてしまう、という焦りから暴力的に鳥を小突き回し、わかりやすい占い、を要求。その、いつになく苛立った姿から、前回は純然たるお邪魔虫扱いだったバスコの存在感 両者の間に横たわる因縁が強調されたのが、まず良かったです。
 乱暴狼藉を見かねたルカがナビィを取り上げ、ティーセットを運んでくるアイム。
 「マーベラスさん、お茶でも飲んで、一息つきませんか?」
 「すまんが、俺にも一つくれないか」
 そこにいきなり声をかける、最初から割と傍若無人な男……なんかもう、ここだけでもかなり面白かったです(笑)
 「俺はボウケンジャーのボウケンレッドだった明石暁だ。以前おまえたちに“大いなる力”を託しただろう」
 丁寧に名乗った闖入者――不滅の牙こと明石暁は、劇場版とも親切に接続してくれるオトナの仕事。
 「どうやってここに入ってきた」
 「俺にしてみれば、この船に侵入するなど朝飯前だ」
 「まさか、レンジャーキーを取り戻しにきたのか?!」
 「それはおまえ達が宇宙を冒険して集めたものだろう。他の戦隊は知らないが、俺たちボウケンジャーは手を出さない」
 海賊たちの疑問に答えながら、大興奮の鎧に求められたサインをさらさらと書く不滅の牙、さすが、ファン心のわかる男。
 そんな不滅の牙がガレオンを訪れた目的は、死者を蘇らせるプレシャス――<黄泉の心臓>(『ボウケン』第1話の<ゴードムの心臓>を意識した名称か)回収への協力要請。
 「悪いが今、そんな暇はないな」
 すげなく断るマーベラスだが、不滅の牙はそういう反応には慣れている!
 「……そうか。海賊だというから、この程度の事は、朝飯前と思ったが……自信が無いなら仕方がない」
 「なにぃ?」
 「違うのか?」
 柾木、キョウコ……俺は挑発が大好きだ!
 特に、青臭いが負けん気が強く、常にでっかい何かを求めている、面白い奴を挑発するのが大好きだ!
 ……練達の煽りにまんまと乗せられたマベは剣呑な表情で明石を睨みながら立ち上がり、物凄い勢いでジョーに抱きつくハカセ(笑) 後にも先にも、これだけ他人に抱きつく戦隊メンバーもいなさそうというか、臆病さの表現として、身近ですがりつける身内なら誰でもいい、というスタンスが一貫していて凄い(笑)
 「自信無いわけないじゃん。ね、マーベラス? ここまで言われたら、やるっきゃないでしょ」
 笑顔のルカが軽い調子で間に入り、一行はプレシャスの眠る山へ。
 「私も結構乗り気だなー。秘宝だなんて、なんかそそらない?」
 苛立つマベにそれとなく気遣いを見せるルカですが、お金大好きなのでお宝探しに興味あり、と表面上の動機付けにも違和感が無いのが、巧い使い方。
 「そんな事はどうでもいい。さっさと終わらせるぞ」
 「そう慌てるな」
 常に輪を掛けてぶっきらぼうなマベを制する不滅の牙だが、一同はそこで、宇宙レベルで名を知られる秘宝であった<黄泉の心臓>を求め、地表に派遣されていたザンギャックの部隊と遭遇し、インサーンと初めて…………えー……ではなくて、『カーレン』回以来の顔合わせ。
 マベ・ルカ・不滅の牙を先行させて、ザンギャックの相手を引き受けたジョー・ハカセ・アイム・鎧がカクレンジャーシュリケンジャーにゴーカイチェンジし……水色、似合わないな、ジョー(笑)
 ビックリするほど水色が不自然なジョー、ゴーカイチェンジ史上屈指かもしれない違和感はともかく、擬音で手裏剣が炸裂し、その間にプレシャスの眠る洞窟へと近付いていく赤黄牙。
 「まだか、プレシャスってのは」
 「慌てるなと言ってるだろ。急ぐのと慌てるのは違うぞ」
 《俺は既にいい事を言った! この明石(びしっ)暁が!》
 「悠長なこと言ってられるか」
 戦隊界の名言メーカーとして知られるチーフの助言を無視したマベだが、先走ってトラップに引っかかりかけたところを明石に助けられる事に。
 「気をつけろ。こういう冒険には、この手のトラップがよく仕掛けてあるからな」
 ボウケンスピリットを示して先達モードを発動した明石の言葉と行動に、マーベラスはかつてアカレッドと共に行った洞窟探検を思い出し……あ、なんか、心の隙間に『冒険王者』を置かれた(笑)
 なお、不滅の牙は直後に同種のトラップに引っかかりかけたところをルカに助けられ、斜面を登るルカに手を貸そうとしてはぺしっと叩かれ、「明石くん。今のはちょっと、オヤジくさいです」……じゃなかった、完璧超人系リーダーになりきれず気がつくと愛され系上司にクラスチェンジした不滅の牙らしさと、自分の宝は自分で見つける系女子であるルカらしさが細かいところに盛り込まれていてお見事。
 特に、ピンポイント出演ではなく、がっつりゴーカイジャーと絡む事で役に入りやすい部分もあったのでしょうが、チーフを演じる高橋光臣さんが非常に安定した芝居で、不滅の牙らしさが細部にまで行き届いていたのは、今回の大変良かった点……ただしここには、今作の“変化”として諸刃の剣が潜んでいるのも感じられるのですが、それに関しては後述。
 洞窟の入り口に辿り着いた3人は、背中に剣の突き立てられたスゴーミン他、ザンギャック兵の死体を大量に発見。
 「この先に何かが待っているのは間違いないようだ」
 「ふん、おもしれぇじゃねぇか」
 「ああ、ちょっとした冒険だな」
 赤いとの赤いのはなんだか意気投合し始め、洞穴内部にあった扉の仕掛けを攻略するが、既に最奥ではジャリュウ一族が<黄泉の心臓>を手に入れており、自らを犠牲に復活させたのは――かつて不滅の牙との戦いに敗れたジャリュウ一族の長、リュウオーン!
 過去ヒーローどころか過去悪役が再臨する大サービスで、虚無の底から舞い戻った竜王陛下は3人を洞窟の奥へ閉じ込めると、外へ。そこでは雑魚を殲滅したゴーカイジャー相手にいよいよインサーンの秘めた力が火を噴くかと思われたが、代わりに炸裂するジャリュウ剣・夢の翼ドリームギャラクシー。
 「おお、なんと素晴らしい力」
 直接戦闘力の披露はお預けとなったものの、咄嗟に攻撃の気配を察知してのアクロバット回避を見せたインサーンは、陛下が既に<黄泉の心臓>の力を手に入れたのを知ると撤収し、ゴーカイ4人は成り行きで再生リュウオーンと戦う事に。
 「しかしプレシャスは奪われた上に、ここに足止めじゃ、おまえの言う冒険ってのも意味ねぇな」
 その頃、ミッション失敗して落盤でぺしゃんこになりかけ、我に返ったマーベラス、ちょ、ちょっと楽しくなってなんかねぇぞ?! と、今更ながら精神判定で抵抗を試みる。
 「……意味がない? 本当にそう思うのか?」
 だが、不滅の牙の自己肯定力は揺るがない!!
 「なにが言いたい?」
 「おまえ達は今まで、数々の冒険をしてきたんだろう? その冒険は宝以外に、大事な何かをもたらしてきた筈だ。おまえ達自身にな」
 「俺たち自身に……」
 たとえ、求めたお宝が手に入らなくても、今、おまえの手には、本当に何も残っていないのか?
 冒険者は目の前に困難が立ちはだかった時こそ、心が奮い立つ。冒険をする喜びこそ、かけがえのない宝なんだ。おまえもそうじゃないのか?」
 見えるもの、手に入るものだけが宝ではない、そして、数多の夢、限界を超えて、未知の世界に挑む想い――その全てが冒険であり、守るべき宝……そう、《俺は既にいい事を言った! この明石(びしっ)暁が!》
 「……冒険する……喜び」
 不滅の牙の必殺技がクリティカルヒットしたマーベラスは再びアカレッドとの冒険行を思い出す。互いに助け助けられ、数多の罠を越えた先で見つけたのは、(よりによって)ボウケンレッドのレンジャーキー。……ええっと、このダンジョン、レンジャーキーから漏れ出した力が試練として自動生成したやつなのでは。
 余計な疑念はさておき、果たしてその時、冒険の価値は、手に入れた宝だけにあるのか? それとも……
 マーベラスは手の中にキーを幻視し、“スーパー戦隊の力”の象徴であるレンジャーキーが、“冒険で手に入れたもの”の象徴として機能する事で、あくまでキー(お宝)は象徴であり、本質はその過程にある事が示されるのは、今作独自のギミックを活かして秀逸。
 そしてバスコの登場により、“宇宙最大のお宝”を求める事にのみ気がせいていたマーベラスは、これまでの旅の中で確かに手にしてきた、大事なものをその手に掴み直す――。
 「……ったく、説教くせぇ奴だ」
 まあ、その人はその人で、極端に過程重視な上、仮にお宝を手に入れても、結果が一瞬で通過点になる人なので、あまり鵜呑みにしない方が良いとは思います(笑)
 プレシャスはもはや破壊するしかない、と告げる明石に対し、海賊の流儀を見せてやるとマベが宣言し、3人は洞窟を脱出すると、再生陛下に苦戦する仲間達の元へ。
 「生きていたのか。大人しく死んでいればよいものを。吾に勝つことが如何に困難であるか、教えてやる必要があるようだな」
 「目の前に困難が立ちはだかった時こそ、心は奮い立つらしいぜ!」
 《俺は今いい事を言った! このキャプテン(びしっ)マーベラスが!》
 不滅の牙は満足そうに微笑み、かくして受け継がれていく果てなきボウケンスピリッツ。それはまた、いつかどこかで誰かのプレシャスになるかもしれず――そう、宇宙の果てまでだって物語は続いていく。
 「アタック!」
 ゴーカイスクランブルさえ弾き返す再生陛下に対し、ゴーカイジャーはスタートアップ。個人装備で連続攻撃を仕掛け、赤がジャベリンで一突き、から不意打ちのマジックハンドで陛下の動きを封じると、残り5人がコンクリートを浴びせて足を硬化。
 「おのれ冒険者どもめ……!」
 「わりぃな。俺たちはただの冒険者じゃない。海賊だ。欲しいものはこの手で、必ず掴み取る!」
 ここまで、冒険魂にじわじわと感化されそれをなぞる形だった赤が、ここで“海賊の流儀”を高らかに宣言してゴーカイジャーらしさを打ち出し、俺たちのものにならないプレシャスは邪魔なんだよ、の人達とは、ひと味違います!
 ゴーカイレッドは身動きできない陛下の胸に手を突き立てて<黄泉の心臓>を強引に引き抜くと、一連の戦闘を見守っていた明石に投げ渡し、雑(笑)
 「グッジョブだ!」
 だが、倒れたと思われた再生陛下は体内に残っていたエネルギーで再生し、ヒトデもといゴールドモードのレジェンドリームでやられ……ず、再生能力の暴走で自力巨大化。もはや理性を失いただの怪物と化した陛下の姿は、本編で求めていたものを考えると大変もの悲しいのですが、さすがに、陛下の背景までは盛り込みきれず、終始ただのエネミー扱いだったのは残念といえば残念ですが、これ以上は明らかにやり過ぎだったので、線引きの難しいところではあり。
 フルブラストを全弾撃ち落とし、マジドラゴンの結界さえ内部から破壊する凄まじい力を見せつける暴走陛下を前に(ただし、ドリルは有効(笑))、ゴーカイレッドが取り出したのは、熱き冒険者のレンジャーキー。
 「よし、ボウケンジャーの“大いなる力”を使う」
 「そんな~、いけるかな?」
 「ちょっとした冒険ってやつだ」
 悪影響を受けまくるマベの元には2日後、香川慈門先生ベストセレクション(選:明石暁)が宅配便で届きます。
 そして光は! 闇に打ち勝つ!
 ボウケンジャーの“大いなる力”を発動するとダイボウケンのエネルギー体が発生して天敵効果で巨大陛下を切り裂き、弱ったところにゴーカイアドベンチャードライブで一刀両断。締めはかなり強引な寄り切りになりましたが、基本、原作になぞらえた巨大ロボの必殺攻撃として割と即物的に作用する“大いなる力”は、幾つかのメインギミック以外はお茶を濁す感じになるのは致し方ないところでしょうか。
 これは今作設計上の小さなウィークポイントではありますが、作劇のメリハリ的に、メインギミックを幾つかに絞って運用する、というのは妥当な方向性ではあったかな、と。
 かくして、自分ルールで不法侵入を自慢げに語る押しの強いOBの要請による、ちょっとした冒険を無事に終えた海賊達がガレオンに帰還すると、そこではナビィがうんうん唸っていた。
 「具体的で結果につながる占いを出そうと頑張ってるんだよー。う~~ん……」
 「あんま結果を急ぐな。ショートして焼き鳥になるぞ」
 お出かけ前とは一転、“いつもの”笑みを浮かべて、どかっと椅子に座るマベ。
 「え?! ひどいよ? マーベラスが出せって言ったんじゃん」
 「そうだよマーベラス、ちゃんとあやまんな」
 そこを、ぐさっと刺しにいくルカ(今回の陰のキーパーソン)。
 「そうだー!」
 「なんで俺が、こんな鳥に」
 「あやまれ、あやまれ、ちゃんとあやまれー」
 「ぜってぇ謝るか」
 鳥とマベはひたすらいちゃいちゃし、“いつもの”海賊戦隊の空気が戻ってきた事に微笑む仲間たち。
 「ね? マーベラス、いつもの感じに戻ったでしょ?」
 「……のようだな」
 バスコの暗躍に荒れていたマーベラスが、「冒険」を通して海賊らしさを取り戻すというのは、レジェンド回との巧い組み合わせでした。
 そして……
 「これでいいんだろ? アカレッド
 回収したプレシャスを抱えた不滅の牙は飛び去ってゆくガレオンを見て呟き、基本、俺が俺がのチーフがわざわざ海賊戦隊の元を訪れたのは、どうやらアカレッドに夢を託された後輩の事を気にしてだった模様(『ボウケン』冬の劇場版が、アカレッド登場作品だったとか)。
 またチーフ理論では「夢に挑む者は皆、冒険者なので、自分にとっても冒険者としての後輩たちを気に懸けた節も伺え、本編ではメンタルケアとデンタルクリーニングの区別がついていない疑惑のあったチーフが、5年が経って“ちょっぴり”大人になった姿は役者さんの加齢も巧い具合にはまって嬉しい見せ方でした。
 そのままガレオンを見送るのではなく、すぐに背を向けて歩き出すのが、結果が一瞬で通過点になる男らしくて格好良く、冒険者と海賊たちは、たった一つ自分だけの宝物を探す無限の冒険へと再びそれぞれの道を進み出すのであった……。
 「冒険」「お宝(プレシャス)」「継承」「夢」「自分たちがルール」などなど、並ぶキーワードがシリーズ過去作でも屈指の親和性を誇る『ボウケンジャー』から、「冒険」を中心に共通点を拾い上げる形のレジェンド回で、互いの想いが重なったところからクライマックスに“海賊らしさ”を打ち出す構成も綺麗にはまり、面白かったです。
 後の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』でも感じましたが、下山さんは、劇中及び脚本で扱いに配慮すべきキャストが入っている方が、まとまりのあるものを出してくる印象(では『ジオウ』は……? という話になると、序盤早々にリタイアしているのでなんともいえず)。
 最初から最後まで過去ヒーローゲストが出ずっぱりで話に絡み、エピソードの軸も原典要素(プレシャス)、原典の悪役も登場し、全編に原典の要素が散りばめられた上で、原典のテーゼも丁寧に織り込まれ――『ボウケン』も『ゴーカイ』も「継承」の物語である事がしっかり踏まえられ、アカレッドの回想登場によりそれが示されているのは特に目配りの良かった点――、『ボウケン』(&不滅の牙)好きとしては満足度が高かったです。またその中に海賊戦隊の古株組の一人であるルカの気遣いを盛り込んだのも、良いアクセント。
 一方で、これまでの『ゴーカイ』のバランスからするとかなり原典寄りの作りになっているのは、過去作未見の視聴者を振り落としかねないデメリットを生んでいるといえますが、海賊戦隊のキャラクター強度が安定期に入ったのは大前提として、海賊と過去戦隊の橋渡し役になりうる鎧の登場後にある程度想定されていた流れなのか、或いは、立ち上がりの反応を見てそういう舵取りになったのか、前回-今回は、明確に作劇の“変化”が見えただけに(この傾向が続くのかはわかりませんが)、今後の針路は一つ興味深いところです。
 次回――「地球の子供は悪ガキだ」。
 ……これは、ジョーが、投石を受ける流れ?!