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我が青春のアカデミア

超獣戦隊ライブマン』感想・第16話

◆第16話「キョンシーの手紙」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 丈と勇介はパトロール中、科学アカデミアの制服を着たキョンシーの集団に遭遇……!
 サブタイトルから本編まで、ごく当たり前のように「キョンシー」が用いられるのですが、大々的に登場してそのイメージを決定づけた映画『霊幻道士』の日本公開が1986年、ヒット作となって立て続けに続編が公開された時期であり、子供世代なら知っていて当然、の扱いだったのかと推測されます。
 ぴょんぴょん飛び跳ね見た目は軽妙だが、第1話で大量殺戮された同期生の霊魂、という戦隊史上でも希に見るレベルの鬼畜な敵は、勇介と丈をしばらく痛めつけると姿を消し、キョンシーの額に貼り付いていた御札の一枚を手にした勇介は、その裏側に、とんでもないものを発見してしまう。
 それは、科学アカデミア入学当初の勇介が、ある人物に宛てて出したラブレター!
 「あれは、俺の一世一代の恥」
 訝しむめぐみと丈から慌てて逃げ出した勇介は証拠隠滅の為にラブレターを焼却すると、全てのページをこの世から抹殺するべくアカデミア島へと向かい……かつての仲間達が亡霊となって敵に回る深刻な展開と復讐と虐殺の始まりの地への帰還が、どうして、勇介のラブレター回収大作戦になりましたか?!
 「それにしても何故、4年前の手紙が出てきたんだろう。何故なんだ」
 アカデミア島に上陸した勇介は、入学式の日に女子寮の靴箱にラブレターを入れた事を思い出し、初日から何してるんだ勇介……。視聴者は今、毒島嵐に共感を強めているぞ勇介……。
 海上に浮かぶ静謐で巨大な棺――一面の廃墟と物言わぬ墓碑の行列と化した島を調べる勇介は、墓地に立つオブラーと、死者の魂を吸い込んでいくプラズマヅノーを発見。
 「プラズマズノーは、吸い込んだ死者の魂を幽体プラズマに変えて吐き出します。それが、キョンシーとなるのです」
 どうやら今回の作戦は、新参のアシュラに対抗心を燃やす3天才の共同プロジェクトだったらしく、指を立ててビアス様にプレゼンするケンプ……君ら先週レンタルビデオで、『霊幻道士』鑑賞会したな……?
 キョンシー誕生の秘密を目撃した勇介は、キョンシーを操る為に額に貼り付けられる札が、設計図やテスト用紙など、廃墟と化したアカデミアで適当に現地調達されているのに気付き、その中にかつて書いたラブレターが混ざっていた事を知る。
 自分たちで生産した死者を今また戦力として利用しようとする、シリーズ史に残る悪逆無道の作戦が目の前で展開しているのですが、恥ずかしい過去の行方が気になって仕方が無い勇介は、一枚のラブレターが御札になった事に気付くと慌てて飛び出してしまい、劇中の空気から感じられる体感温度がエクストリームすぎる急上昇・急降下。
 勇介の不審な行動に気付いたオブラーはラブレターを発見した上、連絡の取れない勇介を探して島までやってきた丈とめぐみの前で、とうとうラブレターを朗読(笑) 残酷すぎる公開処刑により、勇介が「女神」と讃えたラブレターの宛先は仙田ルイ(現ドクター・マゼンダ)である事が白日の下に暴露され……それは……命を懸けても、葬り去ろうとするわけです。
 「あははははは! そういう事もあったわねえ。軽薄な、馬鹿な男」
 4年前、花束を手にドキドキしていた勇介は仙田ルイに情け容赦なくフられ、言い方はともかく、科学アカデミアに入学しておいて初日からラブレター送ってくるとか勘違い甚だしいけど頭の中にヒマワリでも咲いているのか、という仙田ルイの言い分は極めて正論であり、全国の毒島嵐もそうだそうだと言っています。
 あまりにも正論すぎるので、入試首席の私が下から二番目の男(最下位は丈なのか、はたまた月形が、ギリギリ合格点を出す遊びとかしていたのか)と付き合うとかあり得ないでしょ、と余計な事を言う仙田ルイの傲慢さを付け加えて強調し、その際に捨てられて側溝に落ちたラブレターが、4年後の今、雄々しく再生を遂げたのであった……もはや、キョンシーの列に加わりそうな勢いで。
 「こともあろうにマゼンダにラブレター出しちゃうなんて……」
 「偉そうなこと言ってたくせに」
 奇行を繰り広げた果てのミッション失敗と公開処刑で失意の勇介に対し、今からでもボルトに入ればマゼンダとの仲を取り持ってやるぜ、と嘲弄するオブラーだが、
 「誰にでも青春の間違いってものがあらぁな」
 という丈の一言で、空気一変。
 仲間達に受け入れ励まされた勇介は、人は過ちを犯すものであり、それもまた、若さだ……! と立ち直ると、性格のねじくれ曲がったオブラーへと怒りの視線を向ける。
 「オブラー! たくさんの仲間を殺した上に、その死者の魂まで利用するとは、絶対に許さん!」
 ここでようやく、本来真っ先に怒りをぶつけるべき部分へ視点が合うのですが、なにぶん、ラブレターを送った相手が相手だけに、錯乱してもそれは仕方ない、とも思わされます。
 変身したライブマンキョンシー軍団に苦戦するが、キョンシーなりきり作戦で攪乱すると隙を突いてプラズマヅノーを攻撃し、シリアスとコミカルのめくるめくカオスが生み出す温度差の波が激しすぎて、大変消化しにくいエピソード(笑) あまりにもレールを見失いすぎて、もう、これはこれでアリという事にして受け入れてしまった方が楽なのではないか、と脳髄が囁きます。
 巨大化するやキョンシーアタックを繰り出してきたプラズマヅノーを打ち破った勇介たちは、改めて、アカデミア島に並ぶ墓碑に追悼の祈りを捧げる――。
 「青春の間違いか……。仙田ルイ、月形剣史、尾村豪……。…………あいつらも間違ったのかな」
 だから、温度差が!