『ウルトラマン80』感想・第10話
◆第10話「宇宙からの訪問者」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:土筆勉)
空前のスピードで地球に降下した未確認物体――その正体は、ウルトラマン80の幼なじみ、アルマ。矢的の家に上がり込んだアルマは周囲に騒動を引き起こし、学校で妻帯疑惑の持ち上がったストーカー矢的は、独身を証明する為に京子先生を強引に家に引きずっていき……
「もう逃げないって約束してくれますね」
台詞が既に、犯罪者です。
ところが矢的の部屋にはまるで愛妻が手を掛けて作ったような料理が並んでおり、「僕の奥さんは、京子先生に決まっているじゃないですか。いや~、感激だなぁ。僕の為に、こんなにおいしそうな料理を用意してくれるなんて」と現実を見失った笑顔を浮かべる矢的、じゃなかった、前回に続いて女のプライドをいたく傷付けられたマドンナ先生、大激怒。
……普通に、最低ですね。
アルマは地球人の心を次々弄ぶとなにやらそれをメモにつけ、矢的先生の女性観が色々と歪んでしまったのは、この女のせいなのか……?
教室では、アルマが持ち込んだ魔法の鉛筆を巡って喧嘩騒ぎになり、さすがに見過ごせなくなった矢的に問い質されたアルマは、銀河共和同盟の惑星調査員の任務として地球を訪れた事を告白。
「各惑星の生物の存在価値を調査し、不必要とされた場合は強制的に消滅させる権利を持っている。そうだったね」
とんでもない発言が飛び出し、いわゆる「愚かな地球人、しかし……」テーマなのですが、矢的先生の普段の言行が言行だけに、地球人で駄目なら、ウルトラ人も駄目なのでは……? という気がしてなりません(笑)
まあ、銀河共和同盟に問われているのは倫理観ではなく「存在価値」なので、ウルトラ人は宇宙の用心棒として存在価値を認められているのかもしれませんが……というか、「強制的に消滅」って、“闇の文明”の烙印を押されて、ウルトラ戦士を送り込まれることを指すのでは……?
アルマの監査も、わざと不和を煽っておいて「やっぱり駄目。地球人はなんて醜いの!」とノルマを稼ぐ為のマッチポンプ感が甚だしく、一体どことどこが癒着しているのか……。
アルマがもっと超然として、ウルトラ人さえ理解できないような倫理観で動いている種族などであればもう少し飲み込みやすかったのですが、なにぶん根っこの倫理観や思考の土壌が矢的と同族の筈なので、銀河共和同盟の超越感が大きく薄れてしまい、「地球人に存在価値はあるのか?」と、「80の幼なじみがやってきた!」が相性最悪の組み合わせ。
先進文明種族が、後進文明を宇宙的規模で保護ないし監視しているというのはSF的には定番のテーゼなのですが、あまりにもカジュアルに文明を消滅させていそうで、今作ここまでの世界観からすると、むしろ光の国の敵なのでは……? 感も凄い事に。
「地球人は反省を繰り返しながら、闘争心を克服しようとしているんだ」
「よくわからないわ」
そしてこの女、「反省」という言葉を知らないぞ……も、そんな必要がないほど完成された種族、と捉えるには、同族の矢的先生がアレなので、アルマ及び所属機関の凄く駄目な感じが増す事に。
……いや或いは、矢的先生(80)がウルトラ人として特別駄目な可能性もありますが。
矢的先生は授業を通して生徒が反省する姿をアルマに示し、正直、ここの理屈はさっぱりわからなかったのですが(魔法の鉛筆が効果を発揮した事実への反証がまるで出来ていない上、実は鉛筆は先生のものでした、のいったい何が生徒達の心を動かしたのか……)、アルマは納得。ところが、アルマの連れ歩いていた空飛ぶサザエ状の宇宙生物ジャッキーが、地球人のマイナスエネルギーを吸収した状態で動物園のゾウと融合した事で、ゾウが巨大な怪獣ズルズラーへと変貌してしまう。
……つまりこれは、銀河共和同盟の怪獣兵器。
UGMは怪獣に攻撃を仕掛け、今回の特撮監督である川北紘一さんのアイデアだったのか、今までにない眩しい弾着。同じく派手になった気がするエフェクトで変身した80は、小型化すると怪獣の体内に飛び込む定番のミクロネタで、血管の中でジャッキーと戦うと外に追い出す事に成功し、怪獣は元のゾウに戻って一件落着。
「反省」を学んだアルマは地球を80に託してジャッキーと共に星の世界へと帰っていき、後日、怪獣となったゾウを見学する矢的たち。そして本気になったマドンナ先生は、お弁当にサザエの壺焼きを詰める女で、オチ。
……たぶん本来の意図とは違う気がするのですが、「登場人物ほとんど駄目人間」系のエピソードだと思うと、面白かった気はします(笑) ……いや、まあ、80そのものは地球に来た志といい命がけで戦う姿といい元来は高潔な人物な気はするのですが、仮想地球人としての矢的猛人格に問題があるのか、色々なしがらみを離れてやってきた遠くの星で素が出てしまっているのか。