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海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第15話

◆第15話「私掠船現る」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)

 ――「正義は勝つとか言って、恥ずかしくありませんか」

 地球に近付く真っ赤な船……それは、帝国の認めた私掠船。
 ……以前にデカレン回で、「ゴーカイジャーは宇宙警察の私掠船扱いになったのでは」と書きましたが、公式に帝国サイドの私掠船が出てきてしまいました(笑)
 鳥占いに出た「みんなに危険が迫ってる」をヒントに、危ないものを探し回る海賊達は、ハカセがバナナの皮に滑って転んだのきっかけに、シンバル持って鎧を着た人間大の猿と遭遇。
 「よおマべちゃん」
 「「「「マベちゃん?」」」」
 「久しぶり。元気そうじゃん」
 「「「「猿?」」」」
 色々な宇宙人が出てくる世界観とはいえ、マーベラスにやたら気さくに話しかけてくる(?)巨大猿人、にさしもの海賊達も驚愕し、呼称「マベちゃん」が衝撃のデビュー。
 「相変わらずふざけてんな……バスコ!」
 「あ、バレちゃった?」
 呼びかけられたマーベラスが怒声をあげると、猿の背後から現れたのは、ふさふさ付きの真っ赤なストールを巻いて三角帽子を被った、マベに負けず劣らず暑そうな衣装に身を包む笑顔の男。
 “宇宙最大のお宝”が目的、と堂々宣言する、なにやら旧知らしい男に向けていきなり銃をぶっぱなすマベだが猿にあっさりガードされ、割と強いぞ、猿!
 更にそこに、いきなり巨大スゴーミンが出現して、海賊たちを砲撃。
 「ダマラス様、なぜここでスゴーミンを?」
 「ああ、そういう事か」
 宇宙と地上で何やら思惑が交錯する中、ゴーカイジャーは海賊合体。心ここにあらずで反応の鈍い赤だが、皆に促されてマジドラゴンを発動し、それを高みの見物と洒落込むのはバスコ&猿のサリー。
 「なーるへそ~。あれが“大いなる力”ねー。わざわざ見せてくれるなんて、ダマラスのおっさんてば親切~」
 もう一人の“赤”・やたら軽いノリ・猿付き・「マベちゃん」・宇宙最大のお宝狙い・ダマラスを「おっさん」呼ばわり、と盛りに盛りまくって嵐を巻き起こす男の正体は――
 「バスコ・ダ・ジョロキア……“赤き海賊団”を裏切って、壊滅に追い込んだ男だ」
 これまで、宝探しの邪魔vs何かと鬱陶しい反抗勢力、として互いに敵視はしているものの、ザンギャックの幹部クラスとの個人的な因縁は特に無かったマーベラスですが、第15話にして、元同僚で前所属組織の裏切り者、という極めて強固な因縁を持ったキャラクターが登場し、バスコよ、君は何故、悪魔に魂を売ったのか?!
 マーベラスはバスコとの因縁、自らの過去を、仲間達に語りだし……
 「この船で一緒に旅をしていた仲間は3人。俺と、バスコと、そして……船長の、アカレッド
 「おいらも居たよ」
 海賊“団”というぐらいなので、てっきりもっと大人数でワイワイガヤガヤやっていたのかとばかり考えていたのですが、思わぬ少人数……というのは映像的都合もあるのでしょうが、どちらかといえば、既に古典としての『スター・ウォーズ』(更にそのインスパイア元である『隠し砦の三悪人』)――東映的には宇宙帆船なので『宇宙からのメッセージ-銀河大戦-』――を土台としたイメージでありましょうか。
 そう考えると、鳥はR2-D2(&C-3PO)ポジションという事で大変納得。
 ブリッジの床を磨く当時下っ端のマベ、厨房から大皿にスパゲティを乗せてくるバスコ、ひとり真紅のスーツに身を包んだアカレッド、と在りし日の海賊団が描かれ、アカレッド船長、胸の35Vを激しくアピール。マスクのサイドに炎めいた意匠が入っているのは、太陽(プロミネンス)のイメージでしょうか。
 “宇宙最大のお宝”を手に入れる為、レンジャーキーを探して星から星へと渡り歩き、その途中でしばしばザンギャックとも争った熱く激しき楽しい冒険の日々は――ある日突然、終わりを告げる。
 「何かを得るためには、何かを捨てなきゃ。俺、あんた達を捨てるよ」
 バスコは宇宙最大のお宝を手に入れる為に海賊団を裏切ってザンギャックを呼び込み、奪われるレンジャーキー。
 「おまえとの旅はここまでだ」
 「え?」
 「俺の分まで生きろ。そして、宇宙最大の宝を必ず手に入れろ!」
 アカレッドは取り戻したレンジャーキーをマーベラスに託して炎の中に消え……かつての回想シーンと接続。
 「……それが……命の恩人との約束、だったのですね」
 これまで断片情報だけだった“赤の海賊団”とは何か、そしてマーベラスがその意志と行動を引き継いでいた事が明らかになり…………これは、ガレオン船内のどこかに、アカレッドのビデオメッセージが仕込まれていないか今すぐ全員で捜索した方がいい案件なのでは?! ……まあ、一番怪しいのは鳥の中ですが。
 マーベラスの強い意志と行動力の源泉が“死人と約束した”事にあると判明した一方で、“約束に呪われている”印象が薄いのは、既に目的を共有する仲間を得ている(&元々同じ夢を持っていた)からなのかなと思われますが……つくづく、ジョー・ギブケンとは運命の出会いでありました(後まあ、マーベラス視点がどうかはともかく、アカレッドの死がだいぶ不確定ではあり)。
 一方、バスコの船をダマラスが訪れており、ダマラス様、初めての船外活動。普段より照明の明るい場所で全身が映ってみると、ちょっと(アーマード)バットマンぽい。
 「宇宙最大の宝、レンジャーキー、地球、大いなる力。やっと繋がったよ」
 「そうか、それは良かった」
 口数の少ない堅物ポジションだったダマラスが意外や私掠船の船長と通じており、かたや如何にも金剛不壊、かたや如何にも軽佻浮薄、好対照な二人の腹の探り合いが新しい味付けとなり、新キャラを出すと共に、新たな人間関係を両サイドで構築して見せてくるのは、実に手堅い作り。
 「明日暇なら、もいっかいお話しない?」
 「暇じゃ無いが空けてやる。さしでケリつけようぜ」
 バスコはマベに連絡を取り、マベは仲間達に「あいつに関しては手出し無用」を宣言し、翌日、相対する二人と猿――。
 「やあやあマベちゃん、よく来たね~」
 「その舐めた口、今すぐふさいでやるよ」
 いつも以上に殺意高めのマベですが、裏切り以降はじめての再会が「「「「猿?」」」」では、殺意も高まろうというものです。
 「出来るかな~。……マベちゃんてばさー、相当アカレッドに懐いてたけど、どこまで聞いてんの?」
 あくまで軽薄な調子を崩さないバスコは、アカレッドが身内にも黙っていた事の一つとして、5つのレンジャーキーを取り出し、マーベラスへと見せつける。
 「あの頃3人で集めたのは、全部じゃなかったって事」
 更にそれをラッパにはめて吹き鳴らすと、なんとレンジャーキーが5人の戦士に具現化してマーベラスを攻撃し、いきなりのトランペットは、悪のあるところ必ず現れ、悪の行われるところ必ずゆく、正義の戦士、キカイダー01なのでしょうか。
 「俺さ、正々堂々戦うの、苦手なんだよ」
 正義の戦士とは真逆の発言をするバスコによる、レンジャーキー→エネミーヒーロー出現、は『199ヒーロー大決戦』の黒十字王と意識的に重ねられたと思われますが、これによりマーベラスの前に、タイムファイヤー・ドラゴンレンジャー・キングレンジャー・シュリケンジャー・デカブレイクの追加戦士クインテットが立ち並び、追加戦士のシーズンに一足先に顔を見せた悪玉サイドの新戦力が、悪の追加戦士軍団を投入してくる趣向。
 「わかっりやすい悪役だなー」
 さすがに形勢不利となるマーベラスだったが、そこに、デンジャーでデンジャラスなものを探していたらたまたまばったり偶然出会うそんな日もあるよねとルカ達が合流。
 「安心して。マーベラスの邪魔はしないからさ」
 「……ふん。勝手にしろ」
 「はい、勝手にします」
 バスコが捨て、マーベラスが失ったものの代わりに得たものと共にゴーカイチェンジし、ここであくまで「一緒に戦うぞ!」ではなく、各々が「やりたい事を勝手にする」結果として共に居るのが海賊戦隊の絆である、というのはゴーカイジャーらしいところ。
 ゴーカイジャーとラッパヒーローズは5vs5でマッチアップし、『199ヒーロー大決戦』の際はいくら魂の宿らない抜け殻の力とはいえ、次から次へと見た目ヒーローを殴り倒していく時間が長すぎて、お祭りとしてのボリューム感はともかくゴセイゴーカイ共闘クライマックスバトルとしての爽快感が弱まってしまった面があったのですが、今回は数を絞って1vs1×5でそれぞれのバトルを特徴づけて見せた事と、背後で力を弄ぶバスコからの解放、のニュアンスが強く入った事により、『199ヒーロー大決戦』よりは受け止めやすい激突に。
 「これが……レンジャーキーの……力」
 「ザンギャック相手より、厳しいかも」
 ラッパヒーローズに苦戦を強いられるゴーカイジャーだが徐々に形成を逆転していき、普段は雑魚戦での駄目押しに使われる事が主の武器交換を、反撃のきっかけとして取り込むのは、面白い工夫。
 そして、ピンクの足がなんか凄い位置まで上がった!
 それぞれの技が飛び交う贅沢なバトルの中で一番面白かったのは、星拳アクセルブローが役に立ったと思ったのも束の間、二発目の正拳突きを片手で受け止められ、桃に零距離二丁拳銃を叩き込まれるラッパブレイク。
 獣拳は、正義の拳!
 テ○、強く生きて……。
 そして赤のワイヤーソバットがラッパファイヤーに炸裂し、揃ってファイナルウェーブで撃破すると、ラッパヒーローズはキーへと戻る。
 「バスコ! これで終わりだ」
 「……残念! 惜しい~」
 バスコに剣を向けた赤の背後で大爆発が起こり、そこに居たのは、白とか銀色の人達……あ、金も居た。
 「俺が持ってたレンジャーキー、五つじゃなかったんだな~、これが」
 ラッパヒーローズおかわり、の奇襲と包囲を受けたゴーカイジャーは次々と変身解除レベルのダメージに倒れた上、生身にも攻撃を加えられる痛々しい映像で、操るバスコの悪辣さを超強調。
 過去ヒーローと現役ヒーローのバトル自体はVS作品などで類例があるだろうとして、いくら“力だけの存在”とはいえ、見た目過去ヒーローが生身の人間をいたぶるのは、かなり思い切った感ですが、レンジャーキーの力を“利用している”点においてはゴーカイジャーもバスコも同質ゆえに、その差異を重ねて強調している……というよりも、バスコの存在を通して、「レンジャーキーを用いるとは何か」を物語として再確認していると、考えられそうでしょうか。
 「よーし、撤収! ……さっきのレンジャーキーは、マベちゃんにあげるよ」
 ラッパ寿司屋とラッパ先生の攻撃を受けたゴーカイレッドが倒れると、バスコは海賊達にその場でトドメを刺さずに、ジョーら4人を捕虜にして引き上げを宣言。
 「はじめっから……俺の仲間を!」
 「ピンポーン! 前に言ったろ。何かを得るには、何かを捨てなきゃって」
 前半の「何かを得る」と後半の「何かを捨て」で声音を変えるのがものすっごくいやらしいバスコは痛め付けた4人をさらっていき、取り残されたマーベラスの足下に転がる、5つのレンジャーキー。
 4人の仲間の代替え品として五つのレンジャーキーを故意に置き捨てていく事で、マーベラスの精神に、より深いダメージを与えるやり口が極めてえげつなく、ゴーカイジャー完敗。果たして、再び独り(と鳥)になってしまったマーベラスはこの危機をどう乗り越えるのか?! でつづく。
 前回、ギガロリウム級の爆弾が投下されて1クール分が焼け野原になりかねかった今作ですが、明かされるマーベラスの過去・因縁の仇敵登場・ダマラス動く・レンジャーキーの隠された力・海賊戦隊完敗、と前回の事を忘却の海の彼方に流し去る勢いの怒濤に次ぐ怒濤の展開で、これを見越してカーレン編を前回に持ってきていたのだとしたら、凄い(笑)
 新登場のバスコは、余裕たっぷりの表情と口調から繰り出される「マベちゃん」がとにかく破壊力抜群のトリックスターですが、単身でも食えない美形悪役として十分の存在感を放ちながら、何故かずっと猿を横に連れている事により、底知れない雰囲気が増しているのは、見事なキャラ造形。
 そして妙にデカブレイクが印象に残るエピソードでした(笑)
 「特凶秘伝の必殺拳法、星拳アクセルブローを、見せてやる!」