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ここからは、スーパー戦隊のターンだ!

タイトル長い大決戦感想

(※ちょっとタイミング早かったかもですが、諸事情により配信『ゴーカイジャー』第12話までを見終えた時点で視聴)
◆『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久

 ――「諦めないよ、僕。これは、地球の未来なんだ! 未来を育てていくのは、僕らだから!」

 「強すぎる。恐らく史上最強の敵だ」
 開始早々、あのゴセイナイトまで膝を付く事を余儀なくされる、ザンギャックの大攻勢に苦しむゴセイジャー。そこにアカレンジャー、ビッグワンが次々と現れ、デカ夫婦やマジ夫婦ら番外戦士カテゴリーの戦士達が足止めを担ってスーパー戦隊の合流を支援し、見ていないところで追っ手を蹴散らすリン夫婦、おいしい。
 そして本編冒頭のスーパー戦隊大集合トライアングルの図に繋がるのが冒頭から引きつけられる展開で、『ゴセイジャー』OPに乗せて、総勢???名のヒーロー達(タイトルからすると、この時点で199人居たのでしょうか?)が、地平線まで埋め尽くすザンギャックの大兵団に突撃していく……!


愛する星を 護るため生まれた さだめさ
夢見る事を 誰も邪魔できない いつでも
羽ばたけ 覚悟は出来てる
一つになるのさ 地球の平和を目指して

 『ゴセイジャー』OPの歌詞がシチュエーションに大変はまり、『ゴセイジャー』的な視点の高さが、1年後にこんな形で跳ねるとは、夢にも思わず(笑)
 本編第1話冒頭でも使われた大がかりな集団戦でザンギャックを蹴散らしていく34のスーパー戦隊だが、そこに迫る大艦隊の嵐のような爆撃……あ、これ、戦艦破壊大好きお姉さんが出てくるところだ、と思いましたが、ここはMCUでは無かった!
 「行くぞみんな! スーパー戦隊全ての力を結集して、地球を守るんだ!」
 アカレンジャーが先頭に立ち、光となったスーパー戦隊は、空を埋め尽くす大艦隊へと突撃。
 「我々も力を捧げよう。この星の、全ての家族の未来を護る為に」
 番外枠の戦士達もそれに続き、本編の立ち位置を汲んだ、超魔法 狂戦士 勇者ウルザードファイヤーの言葉が大変格好いい(ここに加わっているシグナルマンも家族持ち戦士ですし)。
 スーパー戦隊の全エネルギーを結集した攻撃により宇宙帝国ザンギャックの侵略艦隊は殲滅されるが、その代償としてスーパー戦隊の力は宇宙各地へと散っていき……それを宇宙空間で見つめる変な赤いマスクが、ちょっと悪役ぽい映り方(笑)
 目を覚ましたアラタ達は、戦いは終わったが参加した全てのスーパー戦隊が変身能力を失った事を、不滅の牙、早輝、千明、寿司屋、の特別出演メンバーから教えられる。
 「でも……良かったんですよね、これで。……この星を、護る事が出来たんだから」
 ナレーション「しかし――数年後、再び悪夢が訪れた」
 それは、ザンギャック艦隊の地球再来、そしてそこに現れる、34のスーパー戦隊の力を受け継いだとんでもない奴ら!
 「大・爆発!」
 バリゾーグとインサーンの率いる部隊を前にダイナマンにゴーカイチェンジしたゴーカイジャーは、揃い踏みのバックファイアでゴーミン部隊を消し飛ばす派手な開幕戦(笑)
 続けてゴセイキーを取り出すゴーカイジャーだが、横から飛び込んできた護星天使たちにそれを掠め取られ、キーを手にした本来の持ち主が胸に納めると、その力が回復。変身能力を取り戻したゴセイジャーが天装術でゴーミンらを消し飛ばすとインサーン&バリゾーグは撤収し、キーの返却を求める海賊達だが、天使達はそれを拒否。
 「こんなやり方して……ごめん」
 下手に出て謝りつつ、天使達はゴセイナイトキーの返却も求め、力を失ったナイトはどうなっているのかと思ったら、小型のライオンヘッドになっておりました。ところが海賊たちはナイトのキーに覚えがなく、「しらばっくれてんじゃねぇぞこらぁ」と互いの譲れないものの為に衝突する海賊と天使は本格的なバトルに突入。
 立て続けに他の戦隊と戦う事になったゴセイジャーですが、護星天使としてのアイデンティティがかかっている事もあり、先に合体武器を持ち出したり、かなり殺意高め(笑)
 両戦隊は必殺技の撃ち合いの末に相討ちとなり、海賊達はガレオンに帰還。
 「話せば……わかってくれると思ってた」
 ……いや、アラタさん、あなた、先制攻撃を仕掛けた上で「素直に出してくれない?」って、脅迫する時の台詞ですよ??
 ランディック兄妹が突っかかるのを止めていっけん平和的解決を試みているように見せていますが、一方的に自分たちの主張を正義として押しつけた上で、交渉決裂とみるや天罰執行とばかりに先に殴りかかっていますし……そもそも、ランディック兄弟が暴力の気配を見せる→「まあまあ」となだめて「いやぁ、うちの若い衆は気が荒いのが多くてすみません。後でよぉく言い聞かせときますんで、話し合いで解決したいもんですなぁ」って完全にその筋の交渉術では。
 すっかり地上の(一部の)流儀に染まった天使たちがゴセイナイトキー奪還の作戦を考えている頃、宇宙では本日も大荒れの殿下の前に、虚無の宇宙空間をまたぎ越える死と闇の存在が姿を見せる。
 「殿下……ここは次期皇帝にふさわしき威厳をお見せ下さい」
 「わかっている。……何者だ?」
 「私は、秘密結社・黒十字軍の首領、黒十字王」
 かつて『秘密戦隊ゴレンジャー』に敗れ去った黒十字軍・黒十字総統を思わせる巨大な十字架ヘッドの怪人は、スーパー戦隊とそれを信じる者達への復讐を望み、殿下と同盟を締結。
 ……これが『ディケイド』だと真ん中に人間の顔を出して敢えて古めかしいチープさを強調してきたりしそうですが(若干の偏見があります)、そこそこに見栄えのする怪人スタイルで一種のリメイクしてくれているのはホッとするところ。
 地上では幼稚園にあんパンを配り歩く青梅五郎/デンジブルーが、ウメコ/デカピンク、餃子職人/リュウレンジャーと出会う一幕が描かれ、相変わらず、「D」というより「エコ」に見えます、エコあんパン。
 そして、ミニパトから顔を出すマーフィに見る、竹本監督の愛。
 ガレオンに戻った海賊達は、最近手に入れてチェック洩れしていたゴセイナイトのキーを見つけだし……まあそもそもこの人達、模様などから類推して総当たりのゴーカイチェンジでセットを探していったと思われるので(たぶんノリノリで始めたマーベラスが途中で飽きて、最終的にはほんとんどハカセがチェックしてエクセルにまとめました)、何この銀色……ゴセイジャーなの……? となっても仕方ありません。
 (※顔だけで戦隊ヒーローの見分けを付けると、家族から不思議なものを見る目を向けられるので気をつけよう!)
 これを使って罠にはめてやろうぜ、とあくどい顔になるマベを一応止めるアイムとハカセだが、そこに、ゴセイグレート強襲(笑)
 「今度は手加減しないぞ、ゴーカイジャー
 空中合体でこれを迎撃するゴーカイオーだが、その隙に天使赤が船内に侵入してナイトキーを奪おうとする寸前、海賊赤が戻ってきて戦闘となり、結果的にゴセイキーどころか箱ごと抱えて逃走を図る天使赤が大変アグレッシブ。
 巨大ロボも加わったレンジャーキー争奪戦の第二幕が上がるが、ザンギャックの協力を得た黒十字王の爆撃によりナイトのキーを除いて宝箱がまるごと奪われてしまい、更に黒十字ベルトを身につけた旧作ボスクラスが生み出され……また出たぞ、ブラジラ。
 黒水大臣ダゴン(元冥府神)・黒地大臣ヨゴシマクリタイン(元総裏大臣)・黒気大臣ブラジラ(元救星主)による、黒十字三大臣合体・正義不信任を受けた海賊と天使は光の中に飲み込まれ……マベ&アラタは時間の止まったオフィス、ハカセ&アイム&ハイド&エリは断崖絶壁の吊り橋の上、ジョー&ルカ&アグリ&モネは太秦へ、それぞれバラバラに飛ばされて担当大臣の攻撃を受ける事に。
 「これで地球を守り続けてきた、スーパー戦隊の歴史も終わりだ。ぬははははははは!」
 その頃、青梅&ウメコ&亮は、リストラされて人生に絶望するサラリーマンの話に耳を傾けており、おもむろに餃子を食わせる天火星(笑)
 『ゴセイジャー』のメインテーゼであった「諦めない」を軸に据えつつ、ヒーロー達が一般市民に明日への希望を諭し、クライマックスの布石でもあるのですが、あまりにもメタかつストレートすぎて、個人的にはノれず。
 2011年6月11日、という公開時期を考えると、これぐらいストレートで良かった面はあったのかもしれませんが、幾ら過去ヒーロー達とはいえ、説諭に至る積み重ねを外部情報に依存しすぎていて、この物語単位ではどうしても、初対面で人生訓を説いてくる人達、としてしか捉えきれず。
 ……そう考えると「変身」というのは、その“積み重ね”を強引に接続してくる機能性を有しているのだな、と改めて。
 黒十字王が地球人に復讐を宣告する中、異空間に閉じ込められた海賊と天使は、マベとアラタがブラジラのホーミングレーザー攻撃に苦戦。会話能力のあるハカセとアイムは一時停戦を申し出てハイド&エリとスクラムを組み、何やら打開策を閃くハカセ
 太秦では活動的イエロー繋がりという事でか台詞を重ねまくっていたルカとモネが自分たちの相性の良さを認め、ジョーはジョーでアグリの諦めない姿勢を戦士として評価し、え、俺の強さ認めてくれるのマジ……?! みたいな顔になるアグリの姿に全米が泣いた
 女性コンビが町娘の扮装でヨゴシマクリタインにサインを求めて武器を手放させると、男性コンビが強襲を仕掛け、「人生……二回目の、アイムソーリーーー!」で、『ゴーオン』はせこいギャグを入れてこそ『ゴーオン』、が貫かれました(笑)
 一方、本編ではマジレンジャーとまともに戦わないまま内ゲバで粛正されてしまったダゴンは、天装術を用いた騙し討ちによって倒され、再登場しても、割と酷い扱い……。
 オフィスビルでは、マベが身を挺してレーザー攻撃から市民を守ったのを目にしたアラタが天装術でマベを守ったのを切っ掛けに、レーザーを誘導しているビービー虫を発見し、二人の反撃がスタート。
 「一緒に居て……わかったよ。君たちは、海賊だけど、海賊じゃない。心の中に――」
 「つべこべ言ってんじゃねぇよ、天使野郎」
 マベは照れ隠しにアラタの鼻の頭をはたき、それ以上言われると、精神ダメージによる吐血で死にますからね……。
 危うく失血死を免れたマベとアラタのコンビはダブル攻撃で一気に救星主を仕留め、直近のラスボスという事でか、割と強敵としてしっかり描かれたブラジラ大爆発にて全員が通常空間に帰還。鳥が拾っていたゴセイナイトキーによりゴセイナイトも復活しており、海賊戦隊と天装戦隊は、打倒・黒十字王の為に手を組む事に。
 「天使と海賊、意外といい組み合わせかもよ」
 「……よし。やるか!」
 海賊戦隊の特質を活かして、激突~共闘までの流れがスムーズとなり、実質的な『VS』映画としては、かなり楽しい出来。パーティ分割は行いつつも、ゴセイメンバーもかなり多めに絡んでくれた事でやり取りが自然になったのも良かったところ。
 かくして心を一つにする海賊と天使だが、その前に立ちはだかるのは、黒十字王がレンジャーキーから生み出した、歴代スーパー戦隊の力の影!(これによる地球攻撃を最大の復讐として準備していたのは納得)
 「よくもこんなに居たもんね」
 「変な感じ……なんか私たち、悪者みたいじゃん!」
 「まあ……海賊だしな」
 冒頭のスーパー戦隊大集合トライアングルが今度はヒーロー達の敵となり、ゴーカイチェンジ&天装でフル名乗りから、群がるシャドウヒーロー達と、次々と切った張ったを繰り広げる、色々な意味で物凄いバトルに突入。
 ……今作ここからだいぶやけっぱちというか、二度とこんな機会は無さそうだから物量の限りを放り込んでしまえ、みたいな事になり、過剰なギミックが“物語”の皿からこぼれ落ち、好みからは外れていく作りになってしまったのですが、空前絶後という点では実に空前絶後
 開幕からバンク映像で次々と必殺バズーカが炸裂し、それを放った戦隊を切り伏せるとレンジャーキーの姿に戻る事が判明し、戦隊ヒーローが戦隊ヒーローを切り倒していく少々酷い絵ですが、“力はあくまで力に過ぎない”のは、本編のテーゼを補完している、とはいえる形に。
 天使赤は危うくジャッカーコバックされそうになるもなんとか勝利を掴み、ゴセイナイトは追加戦士たちを次々と切り刻み、誰が作品を食いかねないかといえばやはりゴセイナイトという判断だったのか、今作ゴセイナイトはだいぶ控え目なのですが、ここで満足(笑)
 同色バトルは面白い通り越して映像的にやり過ぎ感ありましたが、これも今作ならでは、のバトルではありましょうか。
 なお、カブトライジャーは赤チームなのに、クワガライジャーは何故か緑(黒)チームに割り当て。
 壮絶な死闘の末に遂に全てのレンジャーキーを回収するW戦隊だが、その疲弊を見計らって黒十字王が巨大化。攻撃を受けたW戦隊は変身解除に追い込まれてしまうが、その時、取り戻したレンジャーキーが光り輝くと特別出演の過去ヒーロー達が次々と姿を見せてエールを贈り、崖に並んだ大量のスーパー戦隊をバックに再変身。
 「我ら、スーパー戦隊!」
 「ばぁかなぁ!!」
 スーパー戦隊バズーカが誕生し、黒十字王を35周年記念スペシャルで消し飛ばすとその力は再びキーに戻るが、しぶとい黒十字王は真の姿・黒十字城(巨大怪獣)へと変貌して街を襲い、結構なカタストロフ。
 「僕たちも……諦めなければ必ずなんとかなる!」
 中学生になった望少年や、途中に出てきたサラリーマン、デンジロボの玩具を握りしめた幼稚園児らの声援が巻き起こり、それが玩具を通してゴーカイオーとゴセイグレートに力を与え……ここも私としては、メッセージ性が物語の器をはみ出しすぎてメタの領域に入ってしまい――「メタ要素を含んだメッセージ性」と「メッセージ性そのものがメタ」は違い、後者にならないように“物語”を構築するのが技だと思うので――好みの範疇を外れてしまったのですが、あまりにも色々なものをまとめて詰め込もうとしすぎたかな、と(上述の通り、黒十字ヒーロー軍団が登場して以降、そういう映画、ではありますし、撮影~編集の段階で、公開当時の世相を意識して敢えてより直接的な表現を選んだ可能性はありますが)。
 今度は大量の戦隊ロボ軍団が背後に並び、『ゴレンジャー』主題歌に乗せて巨大黒十字内閣と戦隊ロボ軍団が戦う混沌とした戦場の中に叩き込まれる、ブレドラン詰め合わせ(笑)
 最後はゴレンジャーの“大いなる力”によりバリブルーンと合体したゴーカイオーが5つの星の力で黒十字城を打ち破り、救われる地球。護星天使たちは、スーパー戦隊の力をひとまずゴーカイジャーに集めておくのが得策と判断し、ナイトも合わせてキーを預ける事に。
 「俺たちに、地球を守れと言われても困る」
 「ふっ、予想された答だな」
 超余裕を見せるゴセイナイト(ミニヘッド)、もうこのまま、外付けモラル判定機として船内に残ってもいいのでは(笑)
 「だって、あなた達がいいと思ったものは、護るんでしょ?」
 「いいのかな~、そんなにあたし達を信用して」
 「大丈夫。でも、もっともっと地球の事を好きになってくれたら嬉しい」
 「好きだよ、僕。この星も、この星に住んでる人も。……それに、きっと……」
 にこやかに答えたハカセの視線はガレオンの舳先に立って格好つけるマベの方へと向けられ、不敵な笑顔を浮かべるマーベラスの姿から皆の笑顔が次々と映され、そして、地球の空を進むガレオンを見つめる銀色の海賊……? で、エンド。
 序盤から矢継ぎ早に繰り出されるサービス精神が、終盤、器から溢れてしまった面はありますが、『ゴーカイvsゴセイ』そして『ゴーカイジャー』における「ゴセイジャー」編としては綺麗にまとまっており、ラスト、ガレオンの舳先をアラタが気に入ると、「いつでも来ていいぞ」とマベが言うシーンは、かなりお気に入り。
 ……マベは、猫なんだな、と何となく。

 ※追記:考えてみると、これだけの過去キャストを集め、スーツだけではなく本人登場を描いた事だけで一つの大きな価値と意味があったのでしょうが、今見るとそこは割と当たり前のように受け止めてしまえるのが、『ゴーカイ』後の10年であるのかも、なとど思ってみたり。