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物事の基本は筋肉

超獣戦隊ライブマン』感想・第3-4話

◆第3話「オブラー悪魔変身」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「いかがでしょう? 私の実験計画は」
 「そうへりくだりながらも君は自分の計画に酔い痴れ、自惚れている。自信たっぷりだな」
 1-2話では一言しか喋らなかったビアス様が、「へりくだり」「酔い痴れ」「自惚れ」という言葉のチョイスも含め、冒頭から色気たっぷりの演技で超格好いいぃぃぃぃ!! そして左肩の出っ張りが重そう(笑)
 「良い、いや、そうでなければならん。この計画は、我が武装頭脳軍ボルトの科学力を証明する、素晴らしい計画だ」
 ビアスはオブラーの提案した計画を褒め称え、その背後で早速、爪を噛むような仕草を見せるケンプもおいしく、黙って銃を磨くガッシュなど、画面の奥行きを使って細かくキャラを肉付け。また冒頭の言葉でビアスのみならずオブラーの性質も表現されているのが、実に上手い。
 「見納めだな、この顔も」
 ビアスはオブラーの両頬に手を添えて甘く囁き、オブラーはオブラーで陶酔した表情で瞳を輝かせ……これあれだ! 今だと多分、森川智之さんが声アテるやつだ! と約30年前の中田譲治さんの美貌と美声が全力で炸裂し、アバンタイトルから凄まじい濃さ(笑)
 なお、中田譲治さんご本人のツイートによると、ビアスのイメージ造りには『ラビリンス』のデヴィッド・ボウイと『魔界転生』の沢田研二を参考にしたとの事で、成る程納得。
 考えてみると、シリーズでスタート時点のボスキャラが人間大&完全顔出しなのは、『超電子バイオマン』のドクターマン以来かと思われますが、悪の組織を率いるカリスマ性をどうやって見せるのか、においてスタンダードであった“異形の脅威感”を離れ、“生身の醸し出す妖しさ”を軸に据える、面白い方向性が打ち出される事に。
 街にはオブラーの指揮の下に現れたウィルスヅノーが市民達に謎の薬物を打ち込み、動物ヘッドの付いた格好いいバイクでパトロール中だったライブマンはこれと遭遇。動物ヘッドの口がぱかっと開くとライトが出てくるギミックが素敵なバイクなのですが、勇介たちの手製なのか、星博士がこっそり改造していたのか、少々気になります(笑)
 現場に落ちていた薬品を基地で分析したライブマンは、その中身が特殊なウィルスである事を知り、勇介は2年前、まだケンプ達が科学アカデミアに在籍していた頃の事を思い出す。
 その時、勇介は、アカデミア内部のアスレチックジムで筋肉と対話していた。
 科学アカデミアも若き科学者達に筋トレを推奨していた事が明らかになり、やはり、筋肉こそが真理への扉なのです。
 ケンプ役の広瀬さんがアクションも出来る方である事を考えると月形も相応に鍛えた肉体の持ち主である可能性は高く、勇介と月形の友情は、教室ではなくアスレチックジムで育まれていたのかもしれません。
 「よお月形、また会ったな! 今日はベンチプレスで勝負しようぜ!」
 「ふっ、愚かな男だ天宮勇介。俺の筋トレ理論はおまえの100年先を行っている。筋トレとは――ただ数をやればいいものではない」
 「なにぉぉ?! 俺の根性、見せてやるぜ!」
 (端から見ると)ふたりはなかよし。
 そして勇介は、さして仲良くない相手にも軽い調子で話しかけて、相手の性格によっては余計に距離を取られるタイプだった(笑)
 「いつの日か必ず証明してみせる。人間はもっともっと凄い生命体になれるんだ! これまでの人間なんてくだらない存在さ。……そんな体、くだらないね。実にくだらない!」
 勇介からの筋友の誘いを撥ね付けたオブラーこと尾村豪は執拗に筋肉を否定し、勇介はオブラーが唱えるウィルス進化論の証明の為に、人体実験を行っているのではと推測。
 オブラーを探す3人は、アジトでウィルス注入中のオブラーを発見し、第1話から美獣とサイボーグの姿で「人間をやめた」事を見せつけてきたケンプ&マゼンダに続き、オブラーが「人間をやめようとする」姿を克明に描く事で、勇介たちとの断絶がより強調されるのは、上手い構成。
 モヒカン兵士が迎撃に飛び出してきて乱戦となり、アジトの外まで殴り飛ばされた丈は、ウィルスの影響か弱り切って地面に倒れていたオブラーを発見。
 「助けてくれ……苦しい……助けてくれ……」
 その姿にオブラーを助けようとする丈だが、復讐に逸る勇介は「トドメを刺す」を推奨し、主人公たちの強烈な動機付けである復讐の一念を改めて強調。
 2年前の出来事のみならず、アカデミア島攻撃による大量虐殺に関わっている事でその正当性を補強しつつ、弱り切ったオブラーの姿を見ても果断を下そうとする勇介&めぐみと、そうは言っても同輩への情に揺れる丈を対比する事で、強い復讐心と割り切れない思い(3人の抱える人間性)の双方を同時に描き出しているのが鮮やか。
 勇介に2年前の事を、めぐみにアカデミア島&星博士の事を言わせる事で、どちらにも相応の重みを持たせるのも上手く、正味17分の中で如何に人物の心情を的確に掴みだし、劇的な展開に持っていくのかという80年代中期戦隊作劇における、曽田脚本を中心としたスタッフの技術が光ります。
 1-2話はさすがに詰め込みが過ぎた感がありましたが、今回は演出面にも余裕が出ていて、表情の切り取り方や画面の構成など随所に長石監督らしい芝居の見せ方となり、各キャラクターの抱える情念の部分がグッと深まったのもお見事。
 「待ってくれ! こいつだって、始めっからこうじゃなかったんだ!」
 隙あらば眉間にライブラスターを撃ち込みかねない勇介達に対し、アカデミア入学当時、豪が溺れた子犬を助けに海へ飛び込んだ出来事を語る丈。
 「自分が泳げない事も忘れて、子犬を助けようとしたやつなんだ。あの時の豪が、本当の豪なんだ。俺は、子犬を助けようとした時の、尾村豪に戻ってほしいんだよ」
 「甘いぞ丈。こいつはもう悪に魂を売ったんだ!」
 「でも……」
 そこに怪人と戦闘員の追撃が迫り、丈はオブラーを背負って走り出し、勇介とめぐみは結果的に足止めを担う事に……苦笑して受け入れる勇介とめぐみですが、落ち着いて考えると、だいぶ酷いな、丈(笑)
 逃走途中、オブラーに頼まれて近くの川に水を汲みに行く丈だが、その間にオブラーの体には変異が始まり、顔には狂気の笑みが浮かぶ。そして戻ってきた丈を待ち受けていたのは、異形の牙と爪を剥き出しにした尾村豪……ならぬ、Dr.オブラー!
 「このチャンスを待っていたんだ」
 「騙したのか?!」
 「あの時、子犬を助けようとした事……俺はどうかしてたのさ。あれは俺にとって唯一の恥ずべき過去の汚点。……それを見たおまえは、絶対に殺さねばならぬ!」
 一方から見た篤い友情の記憶が、一方にとっては忘れたい過去の汚点だった、と同じ出来事に対して全く逆の意味づけが行われるのは断絶のクライマックスとして鮮烈ですが、香村純子さんが今作を好き、と聞いた上で見ると、『ジュウオウジャー』『ルパパト』で香村さんが要所で用いていた作劇パターンの一つなのは、興味深い点。
 オブラーは悪魔変身により完全な着ぐるみ怪人の姿へと変貌し、驚愕した丈は合流した勇介とめぐみにやるせない表情を向け、その肩を黙って叩く勇介。
 「Dr.ケンプは美獣に変身した。Dr.マゼンダも自己改造した。しかし君たちは人の姿を残している。愚かな人間を否定する者が、人間の姿を残すなんて恥ずかしいと思わんのかね。人間を乗り越え、人間以上の存在になるとは、完全に人間を捨て去り、私のようになることだ」
 オブラーは様子を見に来たケンプとマゼンダに向けて高らかに告げ、言葉の途中で川面に異形と化した自らの姿を写すのが秀逸。
 「今、Dr.オブラーは最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体に進化したのだ」
 ……あ、なんか、それ、駄目なパターンでは(笑) (ハカイダーとかハカイダーとかハカイダーを思い浮かべつつ)
 「このやろぉぉ!! おめぇってやつは! おめぇってやつは! 豪!」
 それでも胸ぐら掴んでオブラーの中の豪の存在に一片の望みを賭ける丈だが、無造作に殴り飛ばされてしまう。
 「おめぇってやつはよ……もう、尾村豪じゃねぇ……もう、友達でもなんでもねぇ! ――イエロー・ライオン!!」
 第1話から紛糾していた「どの辺りが友達……?」問題ですが、とりあえず勇介と丈は「一度でも一緒に食事したら友達」ノリ風と順当に収まり、友情は半ば一方的にせよ、丈と豪に関しては生死の狭間を共にくぐり抜けた仲といえますが、それ自体がオブラーの持つ恐らくは肉体的なコンプレックスを刺激して報復に駆り立てている、というのは納得。
 ライブマンは変身して戦闘になり、今回も、爆発が、近い! イエローはオブラーに崖の上から蹴り飛ばされて結構な高さを転落し、頭脳獣と挟み撃ちを受けるが、オブラー光線が頭脳獣に誤爆。その隙を突いて飛び道具からなんとかバスター(早口で聞き取れない)を召喚し、ライブマンはウィルスヅノーを撃破。
 ギガファントムで巨大化するとコロンが基地を浮上させて大型輸送機が発進し、合体メカはモチーフ強調路線になったものの、空中戦艦ポジションの存在は継続。輸送機はミサイル攻撃で牽制してから各種メカを出撃させ、合体ライブディメンションすると、大変ざっくりスーパーライブクラッシュ。
 丈(ライブマンサイド)と豪(ボルトサイド)の対比の掘り下げに尺を採った関係で登場2回目にして短めの巨大戦となりましたが、ライブロボのデザインそのものにシリーズこれまでに無かった新鮮みがあるので、戦闘そのものは見栄えがします。わかりやすい格好良さというか。
 「……すまん。俺が甘かった」
 「いや、誰も防げやしなかったさ。……悔しいけど、あいつらの科学は想像を絶している」
 「……でもいったいなにが……なにがあの人達を変えてしまったのかしら」
 ライブマンの復讐に懸ける想いと人として割り切れない気持ち、相反する二つの感情を描いた上で、そもそも月形たちはなぜ悪魔に魂を売って人間を辞めたのか? という点を口にするのは、良い目配り。
 ナレーション「彼らの青春に、何があったのかはわからない。ライブマンにわかっている事はただひとつ。彼らとは戦わねばならぬ事。青春の全てを燃やし尽くして、悪魔の野望を打ち倒すのだ!」
 沈思黙考する3人を、ナレーションさんが超あおって、つづく。
 終わってみると、ナレーションさんが一番、鬼だ。

◆第4話「暴け!ダミーマン」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 「Dr.オブラー……見事な自己改造だった。これで、我が武装頭脳軍ボルトの陣容は、名実ともに揃ったというわけだ」
 「ライブマンという思わぬ邪魔が入りましたが、必ずや愚かな人間共を滅ぼし、地球を、我ら真の天才だけの王国にしてみせましょう」
 そういえば語られていなかったボルトの当面の目的が明かされ、右手首(腕時計の位置)に真紅の薔薇を身につけているケンプの服装が凄い(笑) マゼンダはマゼンダで孔雀の羽のような飾りを背負っており、この人達に、地球を支配させてはいけない……!
 大教授の肩書きを持つビアス様、最初から宇宙基地付きで現れたので、地球人なのか地球外生命体なのか現段階では判然としないのですが、2年前にスカウトしたメンバーが前線指揮官を担っているところを見るに、人材不足なのか、それとも募集要項が厳しすぎたのか。
 衣装か? 衣装の感性が合わないと駄目なのか……?!
 マゼンダはモヒカン兵士を人間に偽装するダミーマンを生み出すと、電送ヅノーによりガス会社の施設に送り込んだダミーマンが笑気ガスを発生させるバイオテロを決行。
 「これはマゼンダの仕業よ」
 「あの……幾ら科学アカデミア時代優等生だったとはいえ、その推理は、ちょっと突飛すぎるんじゃありません?」
 現場を立ち去るダミーマンにつけられた、マゼンダお手製の香水の残り香からボルトの陰謀を文字通りに嗅ぎ取るめぐみだが、マゼンダの攻撃を受け、電送ヅノーの能力によって囚われの身となってしまう。
 「科学アカデミアでは、私と張り合ってたつもりかもしれないけれど……今じゃ私の足下にも及ばぬ事、思い知ったでしょ?」
 めぐみを探す赤黄には次々と電送爆弾が送り込まれるが、それによりコロンが電送信号の発信源を特定し、コロンと基地の設備が超優秀なのは、星博士が造ったからで突破する力技(笑) 従来作なら、瀕死の博士から基地を託された3人がそこでバトルスーツを発見してライブマン! となりそうなところを、スーツとメカは自家製という点で独自性を打ち出した今作ですが、ヒーロー達の独力と先達の協力が重なり合っている、というのは今後の物語の中でも活きていってほしい部分。
 そして、めぐみの頭脳を信じなかった赤黄がめぐみ救出の為に体を張る姿で、ライブマンというチームの基本的な関係性が成立し、立ち上がりの4話でしっかりと基礎を組み立ててきます。
 「電送ヅノーは電気椅子にもなれるのだ」
 赤黄が爆発に飲み込まれる姿を見せつけられためぐみには処刑が迫り、どうして付けたんですかその機能(笑)
 だがそこに、いかにも怪しすぎるモヒカンにサングラスの2人組が入り込み、グレートタイタンばりに空気の重かった今作に、山田監督がコミカルな味付け。
 「俺たちのめぐみちゃんをだっこすんじゃねぇ!」
 なんだか、台詞が迫真のリアリティです(笑)
 「めぐみのおつむと俺たちのパワーがあればおまえ達には負けはしないぜ!」
 どうやら、ライブマンの各種装備はめぐみが設計、勇介と丈が製造、を担当していたようで、鍛えた筋肉はこの日の為に……力こそパワーだ!
 第4話にして、“若く優秀な科学者(の卵)”の筈だった勇介が「俺の頭脳はそこまで優秀じゃないぜ!」と力強く宣言し、言い回し自体はユーモアをともなっているのですが、前回オブラーが「最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体」になる事で人間以上の存在を自負し同輩を嘲っていた姿の対比として、手を取り合い力を合わせる事で高みを目指すライブマン(人間)の姿勢を明確に示しているとも取れます。
 そこから「ライブマン!」のちょっと気障な言い回しは格好良く、海をバックに3人並んで変身、個別名乗りからの爆発! は山田監督っぽい演出。
 電送爆弾攻撃に苦戦するライブマンだが、ドルフィンアローからトリプルライブラスターで電送能力を封じ、青春爆発バスター。今回の一番凄い科学は明らかに電送ヅノーだったので、惜しい頭脳獣を喪いました。
 巨大頭脳獣の攻撃で吹き飛ばされたドルフィンが海に落ち、マシンバッファロー(輸送機)からアクアドルフィンが出撃。水中で青を回収してボルト戦闘機と海中戦を挟んでの合体ライブディメンションで変化が付けられ、獅子の口からライブロボビームを放ったロボは、超獣剣でスーパーライブクラッシュ。
 一件落着の後、めぐみとコロン作のビーフシチューが振る舞われ、才媛めぐみも料理は苦手だった……でオチになるのかとおもいきや、料理もお手の物だった、と無類のアイドル力が発揮されて、つづく。
 ビアスの失策はめぐみをスカウトしなかった事になりそうですが……ファッションか、ファッションのセンスが合わなかったのか。
 3人戦隊という事で順当にめぐみ回となってマゼンダと絡み、友達かどうかは微妙だけどアカデミア時代は同室であった事が判明。どちらかといえばマゼンダがめぐみを意識して一方的にライバル心を燃やしていたような描写になっていますが、手堅く掘り下げが進み、次回――筋友、ドライブ対決?!