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狙われたホットドッグ

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第10話

◆エピソード10「時雨おいかける少女」◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久
 「ガルザ、前回もスモッグジョーキーを乗っ取られて、邪メンタルが覚醒したなんて、勘違いだったのか? きのどくー」
 前回の今回でガルザへの対応が注目されたクランチュラですが、さすがに厭味を飛ばし、ホッとしたような、残念だったような(笑)
 「貴様こそのほほんとしていいのか」
 感情の起伏が激しい事には定評のあるガルザはクランチュラの首をねじりあげ、のほほん、という形容が実に似合うクランチュラは、既に次なる作戦が動き出している事を宣言。
 その頃ココナッツタワーでは、キラメイブルーがソードの刀身を伸ばし、遠い間合いの対象を切り裂いた直後にすかさず刃を消滅させる、という新たな剣技を披露。
 「工夫すれば、もっと技を増やせる筈だ」
 充瑠がキラメンタルでキラメイストーン(ソードの素材)を変化させていたのを参考にした、と語って今後の様々な変則攻撃の可能性を広げる布石とし、わざわざ姫様と小夜を立たせたのは、(一歩間違えれば俺はマブシーナや小夜を傷付けてしまうかもしれない…………だが、それがいい! この肌にひりつくギリギリの緊張感こそが俺の剣を研ぎ澄ますのどぁぁぁぁぁ!)と、藁人形相手だとアニキのキラメンタルが盛り上がらないから、です!
 この辺り、キラメイメンバーは基本、本番や土壇場に強いというか、緊張感や声援を力に変えられるトップアスリート脳が資質の一つなのかと思われますが(充瑠もどんどん、ふてぶてしくなっていますし)、小夜さんレベルになると多分、脳内に不屈闘志@絶好調時、が住んでいる。
 本日も冒頭は格好良く決めた時雨だが、博多南に昼食をつまみ食いされると早速の顔芸を披露し……同期の『ゼロワン』も顔芸路線なので、シンプルに子供受けが良いという事なのかもですが、個人的にはあまり、顔芸頼りになりすぎるのは、避けて欲しい演出(時雨に関してはどうも、落差を演じる事に役者さんがノリノリというのもあるみたいですが)。
 一方、年下トリオは都市伝説のネットアイドル・ヨドミヒメに夢中で、時雨は何故か、その顔に見覚えが……?
 ――その夜、都市伝説通りに配信サイトへのアクセスに成功した充瑠達は歌って踊るヨドミヒメに釘付けとなり、思わぬタッチの荒川アイドル回でした!(笑)
 だがそれこそがヨドン軍の新たな作戦であり、歌の暗示にかかってしまった充瑠たちは正気を失い、画面の中から飛び出したライブチケットを心臓に打ち込まれて活動不能になってしまう。
 「ヨドミヒメは、邪面師?」
 「いや……人間が操られている可能性がある」
 同席していたマブシーナ(地球人類と肉体の組成が違う事から、チケット無効化)から事の顛末を聞いた時雨が運んできたのは……大量の熱烈なファンレター。
 「さーすが人気俳優、モテるなー」
 ファイヤーのからかいに、照れるでも自慢げになるでも無く、軽く手をあげてさらっと流すアニキ格好いい……(笑)
 そのファンレターの差出人・良世こそがヨドミヒメに瓜二つであり、容疑者の住所を提供するも同行を拒んだ時雨だ女帝に逆らえる筈もなく引きずられていくと、そこに待ち受けていたのは……
 「しぐたん?!」
 結婚を前提にしたお付き合いを迫るちょっと熱烈すぎるファンだった。
 「早い話が、ストーカーなの……?」
 「それほどでも~」
 率直にコメントする小夜に対して敵意を向けるのではなくむしろ照れ笑いを浮かべる事により、“大変迷惑だが端から見ている分には面白いキャラ”を成立させたのは、今回の白眉(笑)
 これが“嫌な感じ”が前に出てしまうとドタバタ要素を楽しみにくくなってしまうのですが、前回に続いて、ちょっと振り切れたゲストキャラの魅力をしっかり引き出して面白さに繋げ、煩悩と技術が高度に融合した荒川マジックと、脚本を汲んだ山口監督の押し引きのバランスがお見事。
 「つかぬ事を聞くが、君は最近仮面を被った化け物と接触があったんじゃないか?」
 「うん、あったよ! ト音記号のおじさんの事でしょ?」
 ト音記号のおじさん”は凄まじい破壊力……!
 「アーイドルになりたいのなら、オレに任せればすぐになれるさ。このオレと、ケイヤクしないかー?」
 良世は、しぐたんと釣り合う人気者になる為にト音記号のおじさんの誘いに乗った事を朗らかに明かし、時雨グッズの溢れる部屋でテーブルを挟んでお茶する地球人と邪面師、の図はついつい『ウルトラセブン』を想起するところですが(『セブン』第8話「狙われた街」に、主人公と敵宇宙人がちゃぶ台を挟んで向かい合う著名なシーンがある)、山口監督から荒川さんへのサービスシーンでしょうか(笑)
 ネット株で儲けていると称するうら若き女性にしては、(推しに注ぎ込んでいるにしても)安アパート暮らしなのは、このネタをやりたかったのではというか、全般あまりにもノリが良すぎる山口監督、なんか段々、もしかして個人的に荒川さんのファンなのでは……? という気もしてきました。
 「今すぐ、やめるんだ」
 「だったら、結婚してくれる?」
 「えぇぇぇぇ?! いや、それは、その……」
 「ほら、やっぱまだ自分にふさわしくない奴だと思っている」
 良世はキラキラした眼差しから一転、ガラリと表情及び声のトーンを変え、ゲストキャラのキャスティング及び演技も、前回に続いて当たり。
 どこから切除するべきか……とこの状況を伺っていた小夜が、姫様が気付いたヨドンの気配をチェンジャーで確認すると、ト音記号のおじさん、出てきた。
 良世の、背中に、乗っていた。
 ゴスロリ少女の背中におぶわれるマントとタイツの怪人が姿を現し、戦隊史上でも希に見る気がする(無いとは言わない)、むしろこれは《不思議コメディ》寄りなのでは?! という、酷すぎる絵面(笑)
 青と桃は変身するが、今度はト音記号のおじさんもといミュージック邪面が良世を背負って走り出し、酷い、酷すぎる……! よくもこんな酷い絵をフィルムにして、大変素晴らしい……!!
 今回、後半の展開にはやや不満があるのですが、ここまでで、大体、1話分は面白かったです(笑)
 青はロングソードの一閃で雑魚を一掃し、派手な爆発を背景にスローモーションで残心の見せ場。……そういえば前回の感想で隙間が無くて書き損ねたのですが、カルタ会館に百人一首邪面が出現した際に背中にクイーンをかばう姿は時雨のスタンスがも見えて格好良かったです。直後に、クイーンが自ら参戦を申し出るぶっ飛んだ人だったので目立ちませんでしたが!
 逃げる邪面師の前に回り込んだ桃は背中に背負った良世を盾にされるが、群がる雑魚を蹴散らすと(銃を手にしたまま戦闘員に足から組み付いて馬乗りになった上で至近距離から銃弾を叩き込むアクションが凄くてえぐい)跳弾を利用して華麗に攻撃するも、直撃の寸前に両手を広げて割って入ったヨドン兵がカバーリングして大爆発し、どうして、戦闘員に、そんな見せ場を(笑)
 いざとなったら良世を盾にするのもいとわない邪悪さは邪悪さで見せつつ、爆発を見つめながらの「サンキュー、スタッフ」が素晴らしいリアクションで、怪人の台詞回しも面白さに花を添えて絶好調。
 「ファンどもをご招待した、今度のライブで、作戦は完成する」
 青と桃は邪面師の音波攻撃(今回、唯一の邪面師からの攻撃(笑))に攪乱されて良世ともども逃走を許してしまい、椰子の木タワーに戻った時雨は、魔進格納庫で体育座り。
 「時雨と結ばれる為に、悪に魂を売ったとはのう」
 「何故なんだ……一年前、俺は彼女に、きっぱり断ったのに」
 ――(回想)――
 「じゃあハッキリゆって! 良世のこと嫌いなら、もう諦める!」
 「……ファンだと言ってくれる人の事を、俺は、嫌いにはなれない。……だが、今の俺には、芝居しかないんだ。ごめん……」
 ――(回想終わり)――
 頭を優しく撫で、両肩に手を置き、やたら雰囲気を出しまくる時雨の回想に、魔石たちから一斉に駄目出しは大変面白かったです(笑)
 「え? え??」
 「優しさじゃなくて、ただのかっこつけだ!」
 ぐふぉ?!
 何故か、どこかの風来坊が吐血級のダメージを負った!
 「ガックシだよ! 全部アニキのせいじゃん!」
 ジェッタにすら批判を浴びて時雨が大ショックを受ける一方、ヨドミヒメの歌声に反応して全国各地で人々が姿を消し、椰子の木基地で眠っていた充瑠たちも瞬間移動してしまう。そして翌日、邪面獣に闇エナジーを捧げる為のライブが開催されようとするが……会場は無人
 充瑠達がワープする際に響いていた呪文と、マブシーナに弾かれたチケットの解析から小夜がライブ会場を突き止め、誘導信号の元を破壊した事で人々の洗脳が解除されたのだ……というのは、小夜が小夜ゆえに優秀なだけで問題を解決してしまい、ここまで面白かっただけに、大雑把すぎて残念。
 「ライブは、中止になったって事だ」
 赤黄緑が戦列に復帰した所に遅れて青が推参し、時制と変な化学反応が。
 「受け入れてくれるの?!」
 「いいや――斬る」
 良世に対して今度こそ誠意を示す、と宣言したブルーは剣を構えると、延長したキラメンタルの刃の中間を消す事で、良世に背負われた邪面師だけを切り裂く一撃を放ち、ト音記号のおじさんを成敗。
 「成る程。見事なキラメンタルのコントロールだ」
 ガルザは物陰からこれを見て重々しく頷き、前回-今回と、手に入れた邪メンタルの制御と活用の為に検証を重ねている、と行動に理由を付ける事で、俺ルール或いは美学系悪役とは差別化を図り、頭を使っているイメージが出来たのは、上手い部分。
 邪面師は爆死するが、その闇エナジーによりライブ会場に擬態していた邪面獣が覚醒。テーマ挿入歌に乗せてキラメイジンの戦闘となり、今回も気軽に緑の乗り物にされかけるスモッグジョーキーだったが、「俺を侮るな!」と闇のオーラを爆発させて合体を強制解除し、面目は保ちましたが、キングエクスプレスの存在感や如何に。
 「もう邪メンタルは意のままだ」
 ライブ怪獣に背後を取られたキラメイジンに恐竜の攻撃が迫るが、「ひらめクイーン!」で女王誕生を宣言した桃の発案により合体を一時解除する事で拘束を脱し、バーンブラッカー、またも誤爆(何度目だ)。
 再合体したキラメイジンは振り向きざまにライブ怪獣をダイナミックし、クランチュラさんは、ガルザの今晩のおかずを一品減らしても許されると思います。
 本日の晩餐が寂しい予定も知らずガルザは余裕を見せて去って行き、基地へ帰還しようとするしぐたんに再び迫るストーカー。今度こそきっぱり断ろうとする時雨だが、近付いてきた良世から、妙に構えのしっかりした中段蹴りを受ける事に。
 「良世のことを斬るなんて、もうこっちから切る!」
 予測のつくオチでしたが「(物理的に)斬る」と「(関係を)切る」を掛け、何故かつきまとってきた側に「切られる」という不条理なあるある感は上手くまとまりました。
 「お姉様! 良世と~、おつきあいしてください!」
 そして、会場で助けられたのをきっかけに良世の熱情は小夜に向けられ……というのも定番といえるオチでしたが、女王様はイケメンモードを発動してそれを軽くあしらい、おののく男衆、でつづく。
 早々に年下トリオが戦力外となり体裁としては年上コンビ回ながら、これといってコンビならではの化学反応が生まれなかったという点では不満な出来だった一方、“ト音記号のおじさん”の圧倒的な破壊力でヨドン軍方面は十二分に面白かったという点では実に今作らしさの出た一本。
 同期の『ゼロワン』が、“エピソード怪人の面白さ”が皆無な作品だけに、今作におけるヨドン怪人の奇天烈な面白さは、ますます光ります。
 あと今回、ジェッタはアニキの無批判な賛美者というわけではなく、格好いいアニキ、格好良くあろうとするアニキは好きだけど、駄目なアニキにはしっかり批判をぶつける姿が描かれたのは、良かった点。
 次回は、劇場版エピソードZERO、その次は1-2話の編集版となるようで、撮影が止まっているだろう事を考えると少なく見ても6月一杯ぐらい通常放映は難しそうに思われますが、今後順調に新型コロナウィルスが沈静化していったとしても、場合によっては例年より10話ほど少なくなる可能性もありそう。
 現行でも大変でしょうが、商業販売のスケジュールと密接に関わっているので、終了時期を後ろに倒す、というのは厳しそうですし……ここまで順調なだけに,話数減は辛いですが、下手をすると枠そのものの存続危機も出てきかねませんし、とにかく、この大きな波を乗り越えていってくれる事を、祈りたいです。