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昆虫魂とセキュリティ

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第9-10話

◆巻之九「雷兄弟と砂時計」◆ (監督:諸田敏 脚本:前川淳
 ジャカンジャに招かれたゴウライジャーは、“アレ”を見つけだすまでは互いに協力し、その時が出たら“アレ”次第……と肝心の“アレ”に関してはひたすらぼかしたまま傭兵契約を結び、口に出してはいけない系のものなか、皆フィーリングで会話しているだけなのか(笑)
 悪玉サイドの目的であり、物語のキーになっている要素が代名詞で進むという、これはこれで思い切った手法(例えば『ゴーカイジャー』なら、“宇宙最大のお宝”を終始「アレ」で進めているようなものなわけで)。
 疾風流でも“アレ”について首をひねる中、鷹介だけはゴウライジャーの行動にどうしても納得がいかない事を引きずっており、吼太の言葉にダイレクト質問を決意して、単細胞で直情径行のみならず、思考法もひたすら真っ直ぐな主人公像が固まっていく事に。
 ジャカンジャ×ゴウライジャー・コラボ作戦第1弾として街にはセミ忍者が出現して次々と人を襲い、繁殖忍者の肩書きが怖い……!
 初動をセミ忍者に任せた霞兄弟は、釣った魚を焚き火で焼くアウトドア生活をしながら「我らには切り札がある」と悪い顔でほくそ笑み、鷹介はそんな二人が潜む迅雷の谷を単身訪れる。
 「何をしに来た?!」
 「あんた達に会いに来たんだよ。ちょっと聞きたい事があってさ。質問その1、“アレ”ってなんだ? 質問その2、それってそんな大事なものなのか? 質問その3、地球を見捨ててジャカンジャの仲間になるほど、大事なもんなのか?」
 個人的な好き嫌いとしてはちょっと一直線に過ぎますが、真顔での質問とやや訥々とした口調が絶妙にはまったのに加え、質問の度にカットを割って顔がアップになっていく事でリズム感を付けたのは好演出。非常に、鷹介らしさ、が印象づけられるシーンとなりました。
 「構うな。行くぞ」
 お兄さん、超正解(笑)
 だが一鍬は鷹介の ロン毛被り 甘ちゃんぶりが気に入らないと変身して攻撃を加え、兄に比べるとかなり喧嘩っ早くて好戦的。キャラ配置的には一甲と鷹介がライバル関係になるのかと思いきや、感情で動くタイプとしてまずは一鍬と鷹介がぶつかり合う事に。
 「俺は戦いに来たんじゃない! ……ていうか、俺達が戦ってる場合じゃないって気がするんだ! だから!」
 「それがムカつくって言ってんだよ!」
 同じ地球のニンジャとして一緒に戦える筈だと信じる鷹介は変身しないまま説得を試みるも、一方的な攻撃を受け、とうとう崖下に転落。
 100人の生け贄を集めたセミ忍者は、貼り付けた宇宙セミに生け贄の精気を吸わせる事で成長させ、そのセミが更に繁殖を繰り返し増殖していく宇宙忍法・昆虫魂を発動する為の羽化の儀式を開始し、繭のようなものに包まれた人々が無表情で山中の木に貼り付いている姿は、雰囲気が出て良い映像でした。
 儀式を止めようとする青黄は、ジャカンジャと手を組んだゴウライジャーに阻まれて今回も実力差を見せつけれるが、鷹介が復活して、


 「話し合いは終わりだ。これからは……」
 「これからは?」
 「殺し合いだ!」
(『仮面ライダー(新)』第1話より)
 を宣言。
 立ち上がり爽やか仲良し路線だった今作ですが、ハリケンジャーvsゴウライジャーは「流派の因縁」を前振りにしつつかなり本格的なバトルを展開。いずれ手を組みそうな気配を出しつつも現時点での見せ方は完全に悪のライバル路線で、それこそ『ビーファイター』のブラックビートなどを思い出します。
 ……ブラックビート、“悪の昆虫戦士”としてはまさに完成形、という超絶格好いいデザインだったのですが……が……ふふっ(遠い目)
 ハリケンジャーがゴウライジャーの壁を乗り越えられないまま迫る羽化の儀式の完成だったが、その直前、セミ忍者が寿命を迎えて死亡し、儀式は失敗。
 ……うーん……チューズー坊が繰り返し時間を気にして作戦のタイムリミットが示唆されてはいるのですが、“思わぬどんでん返し”というよりは“ナンセンスギャグ”としか受け止められない一方で、エピソードのトーンはシリアスで怪人も特に面白おかしいキャラ付けでは無かった為に、解決法だけ激しく浮いて不発弾になってしまった印象。
 一応、街で接触した青黄との戦闘で少し時間を稼いだ扱いなのでしょうがそこの見せ方も弱く、儀式に入ってからはゴウライジャーに手も足も出ないまま目の前で100人単位の犠牲を出す寸前だったので、もう少しヒーローの干渉が欲しかったところです。
 ゴウライジャーの強さを見せつける、しかしまだハリケンジャーとは白黒つけない、その上でジャカンジャの作戦は失敗に終わる、という要件をまとめるのが難しかったのでしょうが、ジャカンジャの自爆に終わるなら、そこの流れを面白く描いてほしかったな、と。
 ……ところで、牙忍の紋章が、“松の図像”(鏡餅でも可)に見えて仕方ないのは私だけでしょーか。

◆巻之十「雷神と滅びの谷」◆ (監督:諸田敏 脚本:酒井直行)
 吼太の提言により、“アレ”の情報を求めて迅雷の谷へと潜入するハリケンジャー
 「この前入った時は(セキュリティシステムは)無かったぜ」と請け合う鷹介だが、霞兄弟が谷の電力システム復旧に成功した事により各種トラップが再起動。今回の脚本は宮下さんではないのですが、宮下さんの参加している作品で「セキュリティ」という単語が出てくると、どこからともなくレーザーが飛んできそうな気がして仕方がありません。
 そして最後は、谷ごと自爆だ!!
 ……まあ基本的に忍者の隠れ里なので、殺す気の仕掛けがあって普通ではありますが。
 一向に封印の洞穴を見つけられない3人は、同じく谷へと潜入中だったサーガインとフラビージョと出くわしてしまい、七本槍“最強の剣士”を名乗るサーガインと直接激突する事に。
 「お相手つかまつる」
 剣を取っては案外と正々堂々だったサーガインは二刀流でハリケンジャーの攻撃を軽々と受け止め、フラビージョの面倒見が良かったり、地味にサーガイン回(笑)
 洞穴でシステム調整をしていた霞兄弟がこの戦闘に気付き、ジャカンジャ組はいちはやく撤収。残されたハリケンジャーは、霞兄弟に発見されてしまう。
 「話し合いの次はコソ泥の真似か!」
 「コソ泥だと?!」
 「コソ泥じゃなきゃなんだ!」
 ぐうの音も出ない!
 「よせ! 話をするだけ時間の無駄だ」
 ゴウライジャー視点の底辺ランクが“アメーバぐらい”まで下がったハリケンジャーの前で、霞兄弟は本日もタメを効かせたシノビチェンジから雷散らしてフル名乗り。
 「売られた喧嘩は!」
 「買うしかないか」
 いや、君らがしている事は、立派な不法侵入だからな……!
 反省の色が皆無の侵入者達に対し、ゴウライジャーはシノビメダルを用いてバイク・バリサンダーを召喚するとハリケンジャーを蹂躙し、デザインもアクションもこれは非常に格好いい!
 「500年前、こんなやつらに負けただけで、ゴウライジャーが封印されたと思うと、悲しくなるぜ」
 惨めに地面に這いつくばるハリケンジャーの前で、ゴウライジャーは更にカブトとクワガタのシノビマシンを召喚し、このスタイルで登場して巨大メカを持っていないわけが無いだろうとは思っていましたが、初の本格登場から4話目にして専用メカが遂にお披露目。
 「ゴウライビートル!」「ゴウライスタッグ!」
 対抗意識を燃やしたおぼろさんが疾風流シノビマシンを発進させて火に油を注ぎ、力の入ったマシン戦が展開。形勢不利のハリケンジャーが忍風合体するとゴウライジャーは迅雷合体を発動して轟雷神が推参し、報復は報復を呼び戦火を広げていくのです……。
 カラクリ魔剣の攻撃にびくともしない轟雷神は、おぼろが完成させた第4のカラクリボールを同じ能力によって奪い取り、顔の怖いアックスの攻撃を受けた旋風神、完敗。
 「轟雷神が目覚めた今」
 「この谷にもう用は無い」
 「ゴウライジャー様、100点満点、花丸」
 ゴウライジャーは去って行き、新たな巨大戦力の登場にムカデ様は考え込み、火花をあげながら地面に横たわる旋風神、でつづく。