東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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瀬奈お嬢様は手も速い

 録画失敗した『キラメイジャー』と『ゼロワン』ですが、TV朝日系の番組配信サイトの存在を教えていただいて見る事が出来、無事に感想書けました。『ゼロワン』も今週中に追いつければ配信で見られるので、なるべく見たい方向で(やや弱気)。

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第9話

◆エピソード9「わが青春のかるた道」◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久
 「せなはやみ!」
 充瑠・為朝を連れてランニングしていた瀬奈(前回を踏まえて、皆で基礎トレーニングを分担する事にしたのでしょうか……?)を見下ろし、太陽を背負って高圧的に声を掛ける女性の登場が、まずは掴みでインパクト大。
 女性は一方的に瀬奈を嘲弄すると悠然と去って行き……この人、瀬奈とたまたま出会ったのをいい事に突っかかりたかっただけなのか……?(笑)
 明朗快活で怖い物知らず、負けん気の強い瀬奈らしくないやりこめられ方に戸惑う充瑠と為朝だが、邪面師出現の報に現場に急ぐと、そこには額に百人一首の取り札を貼り付けられて苦しむ人々が……!
 「地獄百人一首、スタートだ」
 今回もう、この辺りまででも、見た価値あって満足。
 下の句ををたどたどしく読む充瑠とすらすら読む瀬奈の姿で百人一首に対する知識の差をスムーズに示し、瀬奈は元々、競技カルタをやっていた事が判明(なお、百人一首が題材となったのは、役者さんの特技からとの事)。さきほど瀬奈に突っかかってきた女性は、瀬奈の幼なじみであり、競技かるた界の現クイーン・村雨真木埜(むらさめ・まきの)。
 5人が合流して変身するキラメイジャーだが、百人一首邪面の地獄百人一首に付き合わされる羽目になり、いっけんふざけているようで、一歩間違えると被害者の頭が無惨に吹き飛ぶ、というのが実に素晴らしい(笑)
 「ここでは俺が、ルールブックだ!」
 その経験と並外れたスピードにより、邪面師が読み上げる札を快調に取っていく緑だが、「お手つきでも爆発する」という言葉に過剰に反応。実は瀬奈は、あまりにも速すぎる反応速度を逆手に取られ、当時ライバルであった真木埜にお手つきへの誘導を繰り返された事で競技カルタの道を離れた過去があったのだった。
 トラウマになっている過去を思い出した緑は、精神的動揺もあってお手つきしかけるがギリギリで踏みとどまるも、正しい札があわや大爆発でR15寸前――その危機を救ったのは、村雨真木埜。
 いつの間にやらつかつかと歩み寄っていた真木埜が、右手の一閃で取り札を高々と弾き飛ばす姿が滅茶苦茶格好良く、今回屈指の名シーン(笑)
 「何をしてるのせなはやみ!」
 真木埜は地獄百人一首そっちのけでキラメイグリーンに食ってかかり……あれこの人、瀬奈達が慌てて走り出したのが気になって、後を追って物陰から様子をじっと見ていたのか……?(笑)
 地獄百人一首を展開する事でキラメイジャーの直接打撃力を封じるも、それにより一般市民である現役かるたクイーンの介入を許してしまった邪面師は、困惑の隙を突かれてブルーに切りかかられると一時撤収。ヨドンへイムでは、百人一首を雅やかと表現したり、黙って突っ立っているガルザを心配したり、クランチュラさんは、ホントいい人だな……(笑)
 為朝・時雨・小夜の3人は、地獄百人一首に対抗する為にクイーン真木埜に指導を乞い、
 「わかりました。平和を守る為なら、喜んで」
 とすんなり受け入れる姿で、回想シーンでは憎々しげに瀬奈を追い詰めていく真木埜が、根っからの悪人ではないというか、瀬奈が絡んでいない限りはむしろ善良らしい事を示し、瀬奈に代わって読み札を取ったシーンの劇的な見せ方も効果を発揮。
 真木埜に関わるなんてまっぴら御免、と基地を飛び出した瀬奈の元には緑の魔石を抱えた充瑠が訪れ、
 「どうでしょう。ちょっとドライブいたしませんか?」
 と瀬奈と充瑠を乗せてホントは邪魔な充瑠め空気を読みなさいぬぎぎぎぎ、と思っているけど、敏腕執事に徹して気分転換のドライブで瀬奈をエスコートするマッハが格好いい見せ場。
 瀬奈は、競技カルタの場で精神的な揺さぶりをかけられ、小馬鹿にされ、小学生の頃は仲の良かった真木埜といつしか疎遠になってしまった過去を語るが、充瑠は、真木埜は瀬奈を見下しているのではなく、恐れているからこそ瀬奈の長所を逆手に取って嫌がらせを繰り返していたのでは、と指摘。
 短所を克服するよりも、長所(煌めき)を大事に伸ばす、今作の基本テーゼと瀬奈の抱えるトラウマが接続された頃、為朝たちが特訓を受けていたかるた教室に百人一首邪面が乱入。更に、前回ラストで闇のパワー――タランチュラが「邪メンタル」と呼称――に覚醒したガルザが現れて「俺が札を呼ぼう」と読み札係を買って出て、ライバル幹部が朗々と百人一首を読み上げ続ける得体の知れない空間が発生(笑)
 取った手段はともかくとして、王族の立場から解放された事で、大変自由に人生を謳歌しております、ガルザ。
 ……そういう点では、王族と民衆の関係をどう捉えるのか、というのとはまた別に、民(誰か)の為に自らの自由を犠牲にする(文字通りに身を削る)事を厭わない兄の姿勢がガルザには理解できなかったのかもしれず、これはもしかすると、「ヒーローと大衆」の関係に置き換えて、今作のテーマになってくる可能性もあるかもしれせん。
 負けた方が絵札にされてしまう闇のゲーム・ヨドン百人一首に為朝らは次々と敗北し、駆け付けた瀬奈と充瑠の前で、上の句と下の句が滅茶苦茶となった真のヨドン百人一首の罠にはまった真木埜もまた敗北。
 「ごめんね、ずっと。あたしがクイーンになれたのは、瀬奈が居なくなったから。でも、戦えなくなって……ずっと寂しかった」
 自分の遙か先を行く瀬奈のスピードに打ち勝つ為に、長所を弱点と誤認させる罠を仕掛け精神的なダメージを与えて追い落とした事を謝罪した真木埜は絵札となり、その想いを受け取った瀬奈が袴姿にフォームチェンジして、魔進マッハ大興奮(一応、瀬奈のキラメンタルが盛り上がっている事の副作用のようですが、やはりマッハは踏まれたい路線なのではという疑念)。
 真木埜が勝負の為に瀬奈の人間性までも傷つけかねない手段を取っていた(実際に傷つけてもいた)のは覆せない事実の面があるのですが、それが「見下されていた」のではく、「ライバルとして認められていた」からこその行為だったと知るや煌めきが加熱する、というのは、凄くキラメイジャーらしいメンタル(笑)
 「あたしらしく思いっ切り突っ走らせてもらうから!」
 小倉百人一首の基本知識が全く通用しない、上の句も下の句も滅茶苦茶なヨドン百人一首だが、瀬奈は百人一首邪面の動きだけに集中する事で後の先を取り続ける驚異のカウンターアタックで、札を連続で奪取。得意のフィールド・やりたい放題のルール、で自らの圧倒的優位を信じていた邪面師がそれを凌駕する瀬奈のスピードに精神的敗北を喫した事で絵札にされていたメンバーは解放され、『ちはやふる』に始まって『ジョジョの奇妙な冒険』に着地(笑)
 「もう暴力で行くぞ!」
 ファイティングポーズを取った百人一首邪面は身も蓋もない事を言い出し、今回も大変楽しい怪人でノリがいい。
 だが、暴力はむしろこちらの独壇場、とフル名乗りから三十一文字で揃い踏みしたキラメイジャーは主題歌インストに乗せて怒濤の連続攻撃を仕掛け、企画の立ち上げから参加していくパイロット版監督らしく、山口監督が、これが『キラメイジャー』だ!という世界観を見事に表現。
 スタート前はちょっと不安もある抜擢でしたが、山口監督のノリがここまではまるとは、というか、スタッフそれぞれの煌めきも重ね引き出す企画・設計がお見事。
 百人一首邪面が爆散すると保険適用により街には平安京邪面獣が出現し、侵略対象惑星の文化研究を欠かさないクランチュラは、基本的にインテリないしヨドン軍における貴族階級なのだな、と色々納得(笑)
 怪獣とキラメイジンは札が舞い散る中で激突し(この演出も秀逸)、「この戦いで試させてもらう」と参戦したガルザは、逃げ遅れた車を人質に取って「卑怯者」のそしりを受けると、体中にパワーがみなぎって大興奮。
 「やはりそうか! 卑怯者と呼ばれると、このオーラは喜ぶ!」
 ……つまり、悪のMパワー?!
 早川健快傑ズバットに代表される、歴代M系ヒーローを彷彿とさせる危ない事を言い出したガルザですが、キラメンタルにはどうも、ちやほやされると光り輝く面があるようなので、そのネガ的なパワーである事を示しつつ、今後の活動の理由付けに用いられそう。
 人質を助けるべく魔進エクスプレスが召喚され、それに乗り込んだ緑がキングエクスプレスを発動。
 「よかろう。クリスタリアに伝わる、伝説の四巨神の一角、もう一度味わおう」
 毎度「おのーれーー!」をやるのかと心配されたガルザは、無料お試し期間を宣言して余裕を見せ、どうやらエクスプレスに4形態あるようですが、下半身が4タイプあるのか、上半身が4タイプあるのか……毎度ガルザを間抜けな状況に陥らせない為には、下半身が他にもあるというのが妥当な解決策になりそうですが、それで最後はエクスプレス5身合体?
 また、今回はキングエクスプレスに緑が乗り込む事で赤以外でも単独操縦が可能である事が示され、前回のチームアップ回→赤単独ロボに集約、はやはり無理があって勿体なかったですが、キングエクスプレス自体は柔軟な運用が可能なロボと位置づけ。
 音速の巨神キングエクスプレスは素早い動きで人質を救出すると、超高速攻撃で邪面獣を切り刻み、エクスプレスブーメランで大勝利。
 「キラメンタルの戦士達よ、また会おう」
 ガルザは、前回は突然の事で慌てたけど今回は1000%シナリオ通りだったのだ、と重ねて主張すると余裕で分離・帰還し……クランチュラさんからすると滅茶苦茶迷惑でしたが、クランチュラさんの堪忍袋は、きっと木星並みに大きい。
 四巨神への言及、あえて下半身になる事を受け入れる、という行動から見るに、ガルザはガルザで、巨神乗っ取りを目論んでいる可能性もありそうでしょうか……(となると上半身が増える事になりますが、果たして)。
 今回もキラメイジン棒立ちになってしまいましたし、パートナー魔進の存在感が薄くなってしまうと本末転倒なので、単独ロボ3体追加はさすがに無い、と、思うのですが……追加戦士の割り当てもありそうなので、その辺りはお楽しみにしたいと思います。
 旧友との間にわだかまっていたトラウマを解消した瀬奈は、真木埜とマッハで仲直りし、清々しくまとめて、つづく。
 「スピード」の名の下に、あらゆる身体能力をひとまとめにしてしまうのはだいぶざっくりでしたが、瀬奈はフィジカルモンスターの類というか、天然で人を絶望に落とす超天才ぽい所があるなと思わせつつ、それらをゲスト含めて“キャラクターの魅力を引き出す為のギミック”として割り切って使い、大体まあいいか、と思わせる形で気持ちの良い着地にまとめてみせたのはお見事。
 ゲストキャラの“嫌な面”が“素直になりきれなかった面”を上回ってしまうと納得しがたい部分が大きくなってしまう危うさはありましたが、登場シーンのインパクトから右腕一閃、そして危険を顧みずヨドン百人一首に挑む姿を描いて丁寧にフォローし、個人的には十分に好感が上回って見る事が出来ました。
 それも含め、快作だった第2話に続き、「いや。あいつら極めて本気だ」を今作のスタイルとして描いてきた山口監督も好演出で、滑稽さと恐ろしさの同居したヨドン軍の見せ方は、今後も楽しみです。