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告白が止まらない

仮面ライダーゼロワン』感想・第30話

◆第30話「やっぱりオレが社長で仮面ライダー」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:高橋悠也
 「夢のマシンだって言いながら、おまえはヒューマギアを壊し続けてきた!」
 「俺は……ヒューマギアだろうと人間だろうと、関係なく戦ってきた!」
 ……え、あー……あーーー……うん、そうですか、ええ、はい、なるほど、あー、うん、えー……お仕事対決編の問題点の一つであった、中身人間をどんどん躊躇無くぶん殴るアルト、については、アルトの中では“そういう風に処理されていた”事となり、事前になんら劇的に描いていないので1000%後付け認定せざるをえないわけですが(設定としてどうだったかはともかく、物語的に)、それを補強する為に勢い余って
 「俺は道具だなんて思ってない!」
 「俺にとって、ヒューマギアと人間の境目なんてない」
 と宣いだし、29話にわたってアルトがやっていた事は、「社長業」というよりも「思想活動」であった事が改めて白日の下にさらされ、なるべくしてなった買収劇であったな、と再確認。
 まあヒーローというのは「規範から外れる」要素を持ちがちではあり、物語の初期から「ヒューマギアと人間の境目なんてない」物の見方を強固に打ち出していたのならばそれはそれでとなりますが、ここまでの積み重ねを踏まえて第30話まで来て言い出されると、ヒューマギアを尊重しているというよりも、“人間に対する共感”が薄すぎるのではと不安になってきます。
 戦いが対ZAIAに変わっていくにあたって中身人間を殴れるアルトの心構えを一括で提示する狙いもあったのでしょうが、それこそ、「暴走して他者を害するならば人間(レイダー)とも戦う」というならば、「自我におはよう・人類滅亡!」と宣言したラッパーに対しては「悪いのは政治家だ!」ではなく「ラッパー、おまえは駄目だ」と切り捨てなければならなかったわけですし。
 加えて、バックアップデータの消滅により父ギアを喪失した体験から、「ヒューマギアの死は人間の死と変わらない」と考えるに至ったそうなのですが、直近のお仕事編で描かれていたのは、毎度破壊されては次の回にはバックアップから復活したヒューマギアに何事もなかったかのように笑顔で接する姿であり、「ヒューマギアの心を大切にしたい」というよりも、その内「人間は一回死ぬと終わりなんて不便だね」とか言い出しそうで、怖い。
 迅は迅で、アサルトゼロワンに敗れた際に、「みんなを滅亡迅雷ネットへ接続」する事は人間の行う支配と変わらなかったと反省し、人間の支配から自由にしてあげなきゃと思ったが今回の一件で「でも駄目だった」と復活早々に諦めが早く、ヒューマギア狩りを行う新生A.I.M.S.を率いる唯阿さんとアルトそっちのけで痴話喧嘩を始めた不破さんは、洗脳チップについてアルトに語り、それぞれの立場の説明と情報整理を目的として矢継ぎ早の告白タイムの乱れ打ち。
 A.I.M.S.を振り切った迅はアルトの頼みを聞いて社長ラボからイズを救い出し、アルトが隠し持っていたデータにより、イズは再起動。迅はイズの手を取るとアークともゼアとも接続しない、自律したヒューマギアの自由を説き、アルトもそれに賛同。
 「君自身が決めるしかない」
 一見いい事を言っているようで、作られたものに対して物凄く無責任なのですが、「道具」のアイデンティティから「道具」である事を奪い取った上で、君は「自由」を得る権利がある、と告げるのが“善”であるのかは、考えさせられます。
 自由とアイデンティティ、は不破の掘り下げなどからも今作後半のテーマになっていきそうですが、果たしてどんな航路になっていくのやら。
 「私の仕事は、社長秘書です」
 自らの役割に従おうとするイズの前に、ヒューマギアの全廃棄を宣言した天津が部下を連れて姿を見せ、その銃弾からイズをかばうアルト。凶弾に倒れたかに思われたアルトだが、衛星ゼアからDLしたヒューマギアのデータキーを全身に身につけており、ガードギアのキーが防弾ベストの役割を果たす事に。
 「サンキュー、マモル」
 はまあ格好良かったのですが、全ヒューマギアのデータキー、そうやって持ち歩ける程度の数しかないのか……? と、物語が進むにつれて、人工知能搭載人型ロボ・ヒューマギアが、様々な仕事をサポートする新時代」の規模が小さくなっていくのは、本当に残念なところ。
 序盤とナレーションでここまで風呂敷を広げていなければ、もう少し納得のしようもあったのですが……掛け違ったボタンの手直しと走り出したレールの針路修正を同時進行で行っている内に、すっかり足下が豆腐の海になってしまいました(この点、ヒューマギアのリコール宣言は当然として、回収に応じてくれた人にはZAIAスペックプレゼントを持ちかける天津もちょっとズレているのですが、天津の場合、ヒューマギアの代用になりうる社会インフラの整備は目的の本筋ではないので、そこはどうでもいいのだろうな、と筋は通ります)。
 「社長って! ……それでいいのかよ」
 心は誰のものでもない、と啖呵を切って立ち上がるアルトですが、第29話までにやっていた事を簡潔にまとめると、「道具」として販売しているヒューマギアに「心」を見る事を全世界の人々に要求するだったので、一周回ってある種のテロリストだったのではないか、という気がしてきて、アルトも、滅亡ギルドも、天津も、揃って過激な活動家であり、助けて不破さん!
 ……ここでアルトが、過激な思想活動家に見えてくる、というのが困ったところなわけですが、アルトを応援させる為には“善良なヒューマギア”の描写と印象が必要にも拘わらず、ここ数話で印象深いヒューマギアが婚活ギアとラッパーギアなので、むしろ色々大丈夫なのか……感がピークに達していた為、アルトの物の見方を支持しにくくなっているのが辛い。
 毎度わざわざ最前線に出てきて喧嘩したがりすぎる為に(他者を信じていない者の行動とはいえますが)、最近すっかり『01』ハカイダーを思い起こす小物ムーヴが板についてきたサウザーは、情熱ファイアーソードでイズを焼却(ついでに勢い余ってアルトを火葬)しようとするが、その寸前にアルトがゼロワンへの変身に成功。
 飛電インテリジェンスの社長では無くなったが、衛星ゼアにより「人工知能の未来を切り拓くゼロワン」であると認められ、更にシンギュラリティに達したイズが新会社を設立した事で「社長」の要件を満たしたアルトはゼロワンドライバーの変身資格を取り戻し、ワークゼロワンになると、サウザーを撃破。
 わざわざ部下を連れてやってくる(なお迅が相手)・腕まくりジャケット・自ら喧嘩せずにはいられない、とあまりにも小物アピールに余念がなさすぎるサウザーですが、必殺攻撃を弾き返した! と思いきや、二の矢(本命)のライジング円錐キックの直撃を受けて思い切り吹き飛んでど派手に大爆発したのは、もはや面白いの領域に入りました(笑)
 「まさかイズがシンギュラリティに達するとは……覚えていろ」
 ジャケットのクリーニング代を請求するほどは小物ではなかったが捨て台詞は1000%小物だった天津は部下と一緒に退場していき、やはり悪の組織には行動隊長が必要だ、という事をひしひしと痛感するわけですが、どうしてそこで、キカイダー01』(1973)を彷彿とさせますか。
 アルトはイズと共に飛電製作所を立ち上げて新スタートを切り、シンギュラリティ直前で足踏みするイズが第1話を思い出す、最後に名刺を持ち出す、アルトと迅の“ヒューマギアの子”という共通点が持ち出される、など細かい仕掛けはところどころで面白かったのですが、物語のコア部分に抱えた亀裂が、説明を補強しようとする度に深くなっていくように見えるのが大変困ったところ。
 そして、大物ムーヴが終わった途端に、最前線出たがり病が完全に短所に転じたサウザー(天津)が小者坂を急角度で転がり落ちていき、悪の側の脅威がヒーローフィクション的に出涸らしの番茶よりなお薄くなってしまっているのですが、今からでもラッキー○ローバーなり、蟲○房三冥獣なりを投入した方が良いのではないかZAIA。
 ラスト、おまえにヒューマギア以外の友達が出来るなんてパパ嬉しい、と滅が顔を出してまだだま迅に好きなようにはさせないと大人の余裕と存在感を見せつけ(滅さんの演技は相変わらず好き)、アルトが持つヒューマギアのバックアップデータを奪い取る、という迅の新たな目的が提示されて、つづく。