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のせてくれ

ウルトラマン80』感想・第5話

◆第5話「まぼろしの街」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:山浦弘靖
 遅くまで残業をしている内に終電に乗り遅れた矢的の前に停まる、一本の電車。
 「そうか、これが本当の最終電車なんだ」
 ダイヤが乱れていたと思い込む矢的だが、乗り込んだ電車が矢的の知らぬ間に線路ではない奇妙な空間を走り、いずことも知れない駅に辿り着くのが、面白い映像。
 矢的が降り立った終電の街は奇妙でどこか不可思議な雰囲気を漂わせ、“終電の後に来る電車”という都市伝説めいた導入から“不思議な世界”に入り込む『ウルトラQ』的な展開なのですが、すっかり日本のサラリーマン生活に慣れてしまった矢的80の、ウルトラ戦士とは思えないぼんやりした反応の数々が、そこはかとないおかしさ(笑)
 駅前で乗り込んだタクシーは再び駅へと戻ってしまい、ようやく強い不審を抱いた矢的は、2人組の警備員に警棒を向けられる。
 「矢的猛、いや、ウルトラマン80。おまえを逮捕する!」
 「なに?」
 「まんまと罠にかかったな」
 全ては、矢的猛を捕らえる為に用意された仕掛けであり、つまりベム星人は、矢的先生の残業癖を把握した上で、終電を逃す日を今か今かと待ち続けていたのだ!
 「そういう事だったのか。逮捕できるならしてみろ!」
 ウルトラ魂に火の点いた矢的は思わぬきびきびした動きでベム星人を殴り飛ばすと、カバンを地面に叩きつけ……それ、生徒達の答案用紙が入っているのでは……変身しようとするが、変身不能
 「四次元空間では貴様は変身できん!」
 「死ね。ウルトラマン80!」
 銃を向けられた矢的は、足下のカバンを蹴り飛ばして(テスト……)不意を突くと反撃に転じ、予想外の機敏さで体当たりから上段蹴り、そして回し蹴りを炸裂させ、ちゃんとカバンを拾って逃げてホッとしました(笑)
 個人情報流出による懲戒免職処分の危機は免れたものの、複数の銃弾を受けた矢的は四次元の街で起動するメカゴジラめいたロボット怪獣を目撃しながら気絶し、翌日の学校では「蒸発」の噂が囁かれてしまう事に。
 矢的蒸発?! への反応で、多少強引ながら学園のキャラクター達を掘り下げていくのですが、最近はあまり使わない表現になった気がする「蒸発」が一般的な用語として用いられている事に時代を感じます。
 UGMは、三次元世界に出現したロボット怪獣の対処に追われ、四次元の街の夜景では足下から照らす証明の効果もあって格好良く見えたロボット怪獣は、青空の下だとそうでもありませんでした(笑)
 次元移動能力を駆使して出没するも、UGM戦闘機の攻撃を受けて損傷したロボ怪獣は一時撤収。その足音に目を覚ました矢的はベム星人のメカ工場を発見するが、正面から突入をはかるほど、理性を失ってはいなかった。
 (畜生、このままじゃ歯が立たないぞ。どうしたらいいんだ……)
 弱気になる矢的だが、カバンの中の採点用紙に目を止めるとくじけるわけにはいかないと奮起をし、冒頭から強調していた採点用紙が、生徒/学校/守りたい日常、と矢的を繋ぐ象徴として機能。そんな矢的の耳に、学校で声を揃えて矢的を呼ぶ子供達の声が響き……声の出所を探った矢的は四次元空間発生装置を発見すると、これを破壊。
 満を持して80に変身すると、ロボット怪獣の四次元バリアに苦戦するもこれを撃破し、労働力として囚われていた人々ともども、現実空間への帰還に成功するのであった……。
 ナレーション「猛は言いたかった。自分が、ウルトラマン80に変身して怪獣を倒したと。しかし、もしそれを言ってしまえば、地球を去らねばならないのだ。あの生徒達とも、別れなければならないのだ。そんな事は絶対に出来なかった」
 キャップからの連絡に、突如、功名心と葛藤する矢的先生ですが……もしかしてこの光の国ルール、諸先輩の活躍により伝説化した「地球に行って怪獣を倒してきたい」ウルトラ人が続出した為に制定されたのでは(笑)
 秘密の戦いに耐えられる心の持ち主だけが、地球に行く事が出来るのだ!
 第2-4話で物語の軸となった「新任教師・矢的猛が、生徒達の問題に体当たりでぶつかっていく」要素を離れ、『ウルトラQ』+『ウルトラセブン』といった感のある“不思議な味わい”の導入は演出も含めて面白かったです。そういったシリーズらしさと同時に、トラブルの発端・逆転の契機、を学園要素と繋げて車の両輪にしようとはしているのですが、矢的先生の信頼感ゲージが急にクライマックスだったり、矢的と生徒達の関係性が話の都合によりけりになるのは、残念なところ。
 UGMメンバーの掘り下げや印象的な怪獣も良く、割合面白かったのですが、今作コンセプトの難しさをますます感じさせるエピソードとなりました。