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進め勇気の旗掲げ 七つの海を駆け抜けろ

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第1-2話

 放映時に後半戦は見ているのですが、当時は00年代戦隊をほとんど視聴していなかった事もあり、この機会に改めてなるべく初見気分で(感想内で先を踏まえずに)見ていきたいと思います。
 折角なので、時期になったら大傑作『ゴーカイジャーVSギャバン』も配信してほしいなぁ……。

◆第1話「宇宙海賊現る」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久

 ――五つの力を 一つに合わせて 鳴らせ平和の 虹の鐘

 冒頭から地球を蹂躙する、宇宙帝国ザンギャックの大艦隊……
 ナレーション「――だが地球には、その強大な悪に立ちはだかる、戦士達が存在した。愛と、夢と、平和と……人々の笑顔を守り続けてきた、34のスーパー戦隊だ! ――この戦いが、世に言う、レジェンド大戦である」
 大量の戦隊ヒーローたちが一堂に会する、作品コンセプトを物量で表現したインパクトのあるシーンからザンギャックの兵士団と大乱戦に突入し、個性的な技を見せたり、一部ヒーローのフィーチャーがあったり、近い属性でコンビ攻撃したり、戦闘をイメージシーンだけで終わらせないのが、掴みでいい感じ。
 いつ果てるとも知れない壮絶な死闘の末、34のスーパー戦隊はザンギャックの大艦隊に対して、全ての力を結集した突撃を行う――。
 ナレーション「……こうして、地球の未来は守られた。だが、スーパー戦隊の戦士たちは戦う力を失い、伝説となった。そして、時は流れ……」
 地球に近付く、真紅の巨大な宇宙帆船。その中には、地球にあるとされる“宇宙最大のお宝”を目的とする5人の若者達の姿があったが、時同じくして宇宙帝国ザンギャックの艦隊も地球に近付いていた。
 「どうするマーベラス? 下手に関わると面倒だぞ」
 「うまく関わりゃいい」
 「やっぱりそっち?」
 「――それが、海賊ってもんだろ」
 真っ赤なコートを翻した船長が謎のキーを構えて不敵に笑い、これに関しては先の盛り上がりを知っているというのはどうしてもありますが……レジェンドから海賊へとキーポイントを抑えて、実にワクワクする導入。
 ナレーション「冒険と浪漫を求めて、宇宙の大海原を行く若者たちが居た。宇宙帝国ザンギャックに叛旗を翻し、海賊の汚名を誇りとして名乗る豪快な奴ら。その名は――」
 「「「「「海賊戦隊・ゴーカイジャー!!」」」」」
 一番最初に、作品世界の重要な前提となる「レジェンド大戦」(スーパー戦隊の歴史そのもの)を示す尺を採る関係があったのでしょうが、「敵の性質」「ヒーローの性質」「敵とヒーローの関係」という“戦隊1話で示される基本事項”が、全てタイトルナレーションに圧縮されている、という物凄い力技(笑)
 ……宇都宮-中澤ラインとしては、『ゲキレンジャー』の手法、といえなくもないのでしょうか。
 5人の海賊たちは帝国の賞金首である事が明らかとなり、派手な艦隊戦、いきなりのロボット登場からスタート。艦隊を壊滅させた海賊たちはそのまま地球へと舵を向け、オフィス街に乱暴に停船すると地上に降り立ち……描写が悪の組織扱い(笑)
 そして高いところから一方的に自分たちの要求を宣言し(音楽はコミカルですが)……完全に、悪の組織だ(笑)
 こんなセルフパロディから始まっていたとはビックリですが、自称海賊戦隊は、“宇宙最大のお宝”に対する市民の反応の薄さに首をひねり、ひとまず船長の音頭で食事に向かう事に。ルカの指輪を売って現地通貨をがっぽり入手……というのは上原正三フォロワーの荒川さんだけに、『宇宙刑事ギャバン』のパロディでしょうか(バード星の宝石を売って現金を入手するエピソードが2回ほどある)。
 スナックサファリ(こちらは直球で秘密戦隊ゴレンジャー太陽戦隊サンバルカン』より)でカレーを食べようとする5人だが、その寸前に、店の外壁が爆発!
 先程5人が壊滅させたのはザンギャックの先遣艦隊に過ぎず、帝国皇帝の息子が自ら率いる大艦隊が、地球に到達してしまったのである。
 「あれが来たって事は奴ら、本気でこの星を征服する気だよ」
 帝国艦隊から大兵団と行動隊長(怪人ポジション)が送り込まれると地球は瞬く間に破壊の猛火に包まれ……ガレオンに戻ろうとする途中、園児と保母が犠牲になろうとする姿にアイムが気付いた事から、5人は足を止める。
 「……行かないの?」
 「気の毒だけど、この星に明日はもうないかもね」
 「そして、帝国の領域の一部となるか」
 「わたくしたちのふるさとと、同じように」
 スタンダードなヒーロー像ならここですぐさま助けに行くところですが、ハカセは無視して戻る気満々だったり、他のメンバーも強大な帝国を前に今この場だけ人助けをする事に消極的だったり(臆しているのではなく、あまり意義を感じていない&後が面倒といった風情)と、チームの特性を強烈に打ち出し。
 「……気に入らねぇな」
 だが、弱者をいたぶる行動隊長の姿に口をへの字に曲げたマーベラスが進み出るとその後に揃って続き、実にピカレスクヒーローな立ち上がり。
 「気に入らねぇもんはぶっ潰す。――それが海賊ってもんだろ」
 あくまでも、“正義の味方”ではなく、“通りすがりの宇宙海賊”として「うっさい、ばーーか」を言い放った5人は、海賊戦隊ゴーカイジャーにゴーカイチェンジ。
 「派手に行くぜ」
 「まさか……35番目のスーパー戦隊?」
 この時期恒例の廃墟的ロケ地でワイヤーアクションを盛り込みつつ派手に立ち回り、それぞれの武器をパスして、緑と桃が二丁拳銃、青と黄が二刀流アクションを見せるのが格好いい。そして、空中ブランコに足を引っかけた状態で銃を撃つアクションをさらっと入れてくる緑(クレジットの配置からすると、アクターは竹内康博さんでしょうか)。
 「あれ行ってみるか」
 群がる有象無象の大兵団に対し、キーを交換したゴーカイジャーが再びゴーカイチェンジすると、その姿は秘密戦隊ゴレンジャーのものとなり、幼稚園の先生がメタな説明を始めるのは苦笑いが浮かんでしまいましたが(ここだけどうにかならなかったものか……)、ゴーカイジャーはゴレンジャーハリケーンを発動し、一般兵達をゴミ清掃車でお片付け。
 更に、シンケンジャーマジレンジャー、と続けて変身し、この力は一体?! と海賊戦隊最大の特徴を畳みかけ、行動隊長は元に戻って一斉攻撃ファイナルウェーブで撃破。
 「あーあ……やっちゃった。あたし達、完全に帝国を敵に回しだよね」
 成り行きにより、先遣隊どころか帝国の遠征部隊と正面衝突してしまったゴーカイジャーの面々が今後の動向を考えていると、助けた園児らか礼を言われるが、背中が痒そうな表情でぷいと顔をそむけたマーベラスは、そのまま歩き出していってしまう。
 「あたし達は宇宙海賊。お宝探しに来ただけよ」
 仲間達も次々とそれに続こうとするが……
 「でも、だったらどうして、奴らと戦ってくれたんですか?」
 「……それは……」
 「……カレーライスだ」
 「「「え?」」」
 「カレーを食い損ねて俺達は腹が立ってた。ま、そんなとこだ」
 「だから別に、お礼を言われる理由はないよ」
 海賊の流儀を見せ、ちょっと変わった、そしてちょっと面倒くさい5人組は母船に戻っていくのだった……でつづく。
 シリーズ過去作品を世界観の前提として物語の中にダイレクトに取り込み、34のスーパー戦隊を受け継ぐ者として登場しながら、正統派の戦隊ヒーロー像とは一線を画す異色のピカレスク戦隊像が力強く打ち出されているのは、今見ても思い切った設定。
 ただそれにより、漫然と過去を引き継ぎその遺産の上に胡座をかくのではなく、彼らは、彼らなのだという海賊戦隊の在り方が明確になり、あくまでも、「ゴーカイジャーの物語」である事を強く主張するスタートとなりました。
 加えて、ゴーカイジャー自身が、“過去の戦隊と距離を取る”事により、“過去ヒーローを利用する”感覚が低減される効果も働いており、そういった要素も見越した設定でもあったのかな、と。
 戦隊としてはここまで異色な導入になると、反発を招く可能性も当然考慮していた諸刃の剣ではあったと思うのですが、そこで振るわれるのが、短時間でキャラクターの魅力を引き出す事に関しては無類の腕を持つ荒川稔久の匠の筆で、ゴーカイジャーは元より、今回段階では顔出しレベルの悪役達も、ある程度の人間関係が判断できる作りは、お見事。
 それらを整理してわかりやすく見せる、中澤監督の演出も冴えています。
 キャラクターの力でねじ伏せられるものがある、という事に良い意味で自覚的な作りで、次回――海賊船長は地球の少年に何を語るのか。

◆第2話「この星の価値」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久

 ――力と技と団結の これが合図だ エイエイエイオゥ!

 ナレーション「地球の平和と、人々の笑顔を守り続けてきた、34のスーパー戦隊。宇宙帝国ザンギャックとの戦いで失われたその力を受け継いだのは、とんでもない奴らだった!」
 『ボウケンジャー』視聴後に改めてOPを聞くと、
 たった一つ 自分だけの 宝物誰も探してる
 は物凄く『ボウケンジャー』ですが、作詞に際してオーダーしたフレーズだったりするのでしょうか。
 そして、「海賊戦隊だから」だとは思うのですが、OPで割と海が強調されているのは、“戦隊中興の祖”長石多可男を想う時に、ちょっと沁みます。
 「とっととお宝手に入れて、この星から逃げるしかねぇな」
 ザンギャックから地球を守る、なんて気はさらさらない海賊たちは、地球の寒さが身に染みたのか、第1話に比べてメンバー揃ってえらい厚着となり、鳥の占いに出た「いい事を教えてくれる」黒い服を着た人を探す事に。
 ……だがこの星には、黒い服を着た人が多かった。
 当惑する海賊達は“宇宙最大のお宝”について知っていると学ラン――黒い服――の少年に声をかけられるが、それは海賊に近付く為の真っ赤な嘘であり、キーを盗み取ろうとした少年は失敗して逃走。
 「油断も隙もねぇな」
 「いや、油断も隙もあったぞ」
 事前に気付いて取り押さえたつもりのマーベラスはまんまとキーを掠め取られており、唯我独尊のカリスマ系リーダーと見せて端からメッキが剥がれ落ちていくのは、某不滅の牙の系譜の人なのか(笑)
 マーベラスは少年を追い、宣言通りに少年をギタギタにしてしまわないか、心配になって後をついていくアイム。
 「……おまえ、俺をなんだと思ってんだ?」
 「わからないからついてきたのです」
 一方、残り3人は動き回るのが面倒くさいのでお留守番。
 「マーベラス、あのガキがよっぽど気に入ったんだな」
 「え?! どうして? あんなに怒ってたのに」
 「不意打ちでレンジャーキー奪いにきたのが、楽しかったんじゃない?」
 「その無鉄砲さに、同じ匂いを感じたんだろう」
 物語の開始時点から戦隊であり、迷いの無さや武器交換アクションなどから一体感強めのチームとして始まったゴーカイジャーですが、桃緑と青黄の間でマーベラスへの理解度に差がある事が示され、この1シーンで人間関係の立体感がぐっと増すのが実に鮮やか。
 「おいおまえ」
 そのマーベラスは、キーを手にした少年を見つけると頭上の手すりの上に仁王立ちしながら声をかけ、いいキャラしているなぁ(笑)
 「返せ」
 「やだ! だってあんた達、地球を守る気ないんだろ」
 「ないね」
 清々しく、断言。
 「これはもともと地球のもんだよ! 地球を守る為に使うべきなんだ。絶対返さない」
 「それが地球のもんだろうがなんだろうが、今は俺のもんだ。俺が命の恩人から預かって……約束を果たす為のな」
 勢いでウェットな事情に口を滑らせ、浪花節から逃れられないところを垣間見せるマーベラスは、レジェンド大戦で殺された祖父の仇討ちの為にキーを使おうとする少年の言葉に、かつて、自分にキーを託して戦いの炎の中に消えた命の恩人の事を思い出す……。
 ――「俺の分まで生きろ。そして、“宇宙最大の宝”を必ず手に入れろ!」
 そこへザンギャックが再襲来して市民がザクザクと殺されていき、シリーズ35作目にふさわしい最大最強の侵略者、を強調する意図もあったのでしょうが、中澤監督は割と人的被害を明確に描いていく印象。
 マーベラスは豪快携帯を少年にレンタルし、勝てたらキーをやる、と約束。意を決した少年はシンケンレッドに変身すると、おぼつかないながらも雑兵を切り倒していくが、行動隊長相手には手も足も出ず、一方的な攻撃を受けて変身解除。
 「駄目だ……俺の力じゃ……地球を守れないんだ」」
 「わかったか。守りたきゃおまえは別の方法で地球を守れ」
 「……どうやって?」
 「甘えてんじゃねぇよ。そんなのは自分で考えろ」
 キーと携帯を拾ったマーベラスは少年に背中を向けるがふと足を止め、ここでマーベラスのブーツだけを映すワンカットが上手い。
 「おい! この星に守る価値はあるか?」
 「ある。絶対!」
 背中を向けたままの問いに即答した少年に、半身を向けるマーベラス
 「……どこにある?」
 「……どこにでもあるよ。海賊なら、自分で見つけろ!」
 お宝を探す者達へ少年は力強く焚き付け、いや巧い、ここでジョーとルカがニヤリと笑うのが、海賊たちの心に何が届くのかを示して、凄く巧い。
 ゲストキャラが“この星の価値”を「語る」のではなく、それを「見つけてみろ」と言い放つ事により、答は誰かに「教えて貰う」ものではなく、自分で「見つけだす」のものなのだ、と作品そして海賊戦隊のカラーを力強く示しました。
 「なるほど。……じゃあな」
 正義の旗は掲げないが、心意気は買う流儀の海賊達は走り去っていき、最後に、あまりにも地球人と距離が離れすぎではと思っていたジョーがポン、と少年の頭を叩いていくのも絶妙。5人が部分的に、少年を海賊の魂を持つ者と認めたのだと感じ取れ、毎度このプロセスを通すのは構築が難しくなりそうですが、今作の基本スタイルを第2話で鮮やかに見せてくれました。
 「賞金首の海賊やろうどもがなんのようだ」
 「ちょっと探しもんがあってな」
 破壊の限りを尽くすザンギャックの前に並んだ5人はゴーカイチェンジ。先に少年との会話で「スーパー戦隊? 何それ?」と、ゴーカイジャーが使っている力――地球のヒーロー達についてそもそも何も知らない事が明らかになり(キーも預かり物)、「手に入れたこの力の意味」を海賊自身が探していくのも、物語の一つのテーゼになりそうでしょうか(その辺りは記憶がない)。
 ゴーカイジャーは今回も派手に戦いの火ぶたを切り、ゴーカイピストルの効果音とエフェクトによる、実弾バカスカ撃っている感は改めて凄く格好いい。そして戦闘中にハカセらしさを表現するドタバタ要素をふんだんに盛り込みながら、普通に跳んだり跳ねたりするよりも高度なアクションをさらっとやっているのではと思われるゴーカイ緑凄い。
 ゴーカイジャーはミサイル怪人相手にデカレンジャーとなってミサイルの雨を撃墜すると、ハリケンジャーになって影の舞を浴びせ、シンケン・ガオ・マジ・ゴセイ・ゲキ、の5レッド変身から怒濤の連続攻撃で怪人を撃破。
 ゴーカイチェンジは戦隊ごとに限らない、というのを見せたゴーカイジャーに対し、ザンギャック司令部では科学担当が旗艦から巨大化ビームを地球へ発射。怪人と砲台兵士が巨大化してガレオンが出航し、まずはガレオンで一当たり後、格納されていた4台のメカで一斉攻撃を行ってから、本邦初公開の海賊合体でゴーカイオーが完成。
 二刀流でド派手に立ち回ると、胸部に突き出た大砲による連続砲撃で大勝利を収めるのであった。
 「マーベラスさん、ギタギタにするとか言って、本当は、あの子の事を考えてあげていたのですね」
 「……そいつはどうかな」
 「買いかぶりすぎじゃない?」
 慌てるアイムにジョーとルカは笑顔を向けて冗談であった事を示し、うちの船長は面倒くさい、が共通認識になる中、果たして鳥の占いは当たったのか?
 ゴーカイジャーが「いい事」を教えてもらったのかどうかは仄めかされるに留まり、力を求め、それに敗れ、しかし自分に出来る事を見出してヒーローの背中を押す役割を担った少年が、クレジット上で名無しの(故に普遍的存在としての)「少年」とされているのは、面白いところです。
 夕陽を浴びて飛ぶガレオンの姿を見つめる謎のフード姿の男が現れて、つづく。
 基本、リアルタイム時に後半を楽しんでいた事実があるので甘めの視点になっていますが、過去ヒーロー登場系の作品に対する興味が薄い身としては(最初から見てはいなかった理由であり)、あくまで過去ヒーローは作品世界の前提要素と特殊能力のギミックに留まり、コンセプトにメタ要素は含まれているものの、それに寄りかかる事なく「ゴーカイジャーの物語」として作られているのは、入りやすいパイロット版でした。
 その点で、ゴーカイジャー自身は地球の過去ヒーロー達の力にも存在にも思い入れがない――だからこそ、「この星の価値」とともに「この力の意味」を探していく(のであろう)構造は、非常に秀逸。
 次回、サブタイトルからして過去作品との関係性が強まりそうなので、そこでどのぐらいのバランスで見せてくるかでまた印象が変わってきそうですが、まずは上々のパイロット版でした。