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『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第6話

◆エピソード6「ツレが5才になりまちて」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:下亜友美)
 難手術をキラッと成功させて椰子の木基地に戻った小夜は、昔からなんでも出来る女だったんですか、という充瑠の問いを微笑で受け流すが、なにやら思い当たる節があるらしい時雨が「キーワードは絶体絶命だな」と口にした途端、笑顔を消すと時雨を制圧。
 「いい子は、余計な事言わないの」
 ……アニキはこのまま、小夜ねえに蹂躙される役回りが板についてしまうのでしょう、か。
 小夜が落とした写真を拾う充瑠だが、そこに写る少女について質問しようとした矢先、ヨドン反応が発生。今回のヨドン軍は、最小のゲートから未熟で小さな邪面獣を先に地球に送り込み、その後で邪面師が餌になるエナジーを集めて現地で邪面獣を成長させる作戦を展開し、話をスムーズに運ぶ為なのですが、ガルザに丁寧に作戦を説明するクランチュラさん、なんかいい人だな……。
 街を騒がし人々を追い回すデジカメ邪面は、背面ほぼフラットだったり割とざっくりして見える造形なのですが、本体右側に不気味な人の顔の意匠が入り、中央のレンズ部が巨大な瞳を示している、という異形の怪人観はシンプル故に非常に良く出ており、今作の怪人路線はやはり好み……なんか、無駄に応援したくなります(笑)
 (※微妙に既視感あるな、と思ったら、映画泥棒か(笑))
 「みんなバえてるよ~、凄くいい!」
 デジカメ邪面の能力は、撮影した対象を別空間に閉じ込め転送してしまう事であり、接近戦を挑んで背後から切りかかった青と緑が、意表を突く360度大回転により撮影されてしまう。
 「はい、ポーズ」
 「いえいっ!」
 「事務所に確認を!」
 今回の白眉(笑)
 前作が、メインライターも問題があるがサブライターも大概問題がある(恐らくプロデューサーが脚本に求める基準が甘い)作風だった事と、途中リタイアな事もあって箱斬殺事件の印象が強すぎる下亜友美さんという事で、おっかなびっくり先行で見ていたのですが、この台詞が出てきた事で、ぐっと前向きな気持ちで物語に入れました。
 「やっぱキラメイジャー、写真うつりいーね!」
 「無許可撮影は、不潔の極み!」
 “カメラ”という素材を扱うにあたって、「有名人戦隊」という特性を拾って盛り込む事により今作ならではの消化が成されており、作品の要点が見えている、というのは安心感と信頼の醸成に繋がります(デビュー当時から、この「作品のツボ」を見つけ出すのが抜群に巧かったのが、小林靖子)。
 青と緑を助けようとデジカメに銃を突きつける桃だったが、助っ人に現れたガルザに背後から列車で轢かれ、変身解除。食らい付こうとするもガルザに投げ飛ばされた小夜は思い切り頭部を岩にぶつけ……フィクションながらだいぶ心配になる痛そう加減。「データがもう一杯」で撮影続行が不可能になったデジカメを連れてガルザは撤収し、雑魚を始末して小夜に駆け寄る充瑠と為朝だが……
 「……お兄ちゃん達、だれ?」
 「「…………えーーーーっ?!」」
 脳に強い衝撃を受けた事で、小夜の記憶は5歳児の時にまで戻っていた!
 「こうなった以上、戦いは俺とおまえでやるしかない」
 「……そうなのかな」
 「話聞いただろ。戦いの場で、5歳の子に出来る事はない」
 マブシーナに脅え、木に引っかかった風船が取れずに泣き、大人の落ち着きはどこへやら、打って変わって泣き虫になった小夜5歳は役者さん熱演で危機感を引き上げ、声質的にはむしろ5歳児の方がはまって聞こえる点は、若干なんともかんとも。
 「……5歳だからこそ、出来る事もあるんじゃないかな」
 「馬鹿言ってんじゃねぇ。そもそも、今の小夜ねえのキラメンタルじゃ、弱すぎてキラメイジャーになれない」
 例の如く言い方は荒っぽいですが、実質5歳児を戦場に連れ出すとか鬼畜か!?という相変わらずの常識人ぶりを発動してメンバーの安全に注意を払い、君はホントいい奴だな!
 参謀役の為朝が、割と常識と良識のレベルが高い事が充瑠の柔軟な閃きを煌めかせる設計として効果を発揮しているのですが、その設計上どうしても引き立て役になりかねない部分を考慮してか、為朝は基本的に有能かつ、総合的なチームの安全係数を常に考えて動いている人物(この辺りもeスポーツチャンプらしいところ)として描かれているのが、目配りを感じます。
 その為朝は為朝で、前回は「怪人の能力を利用して一芝居打つ」弾けぶりを見せましたが、主に無茶をするのは自分とリーダー(次いで押さえ込み係の時雨)、というのが一つ為朝らしさであったのかな、と。
 前回といえば、eスポーツチームのリーダーとしては、メンバーに対して言葉を選んで背中を押すモチベーターの部分も見せていたのですが、キラメイジャーでは言動にデリカシーが不足するのは、それぞれ対等以上の相手関係だからこそ素でビシビシ言える間柄を楽しんでいるところがあるのかもしれません。
 ……とか、為朝は、妄想が捗るなぁ(笑)
 第一印象だと好きになるタイプのキャラではなかったので(私のストライクゾーンは大概、時雨とか小夜の辺り)、我ながら意外、というのも含め、今のところ為朝はかなり気に入っております(ので、若干贔屓気味)。
 一方で、充瑠の踏み台にならないよう為朝の描写に気を配った余波として、時雨が若干割を食い加減かなと心配な部分はあるのですが、アニキの次のメイン回は真っ当に格好いい話をやってあげてほしい(笑) (第3話自体は、傑作回でしたが)
 充瑠は、写真に写っていた合気道教室の先生の元を訪れ、泣き虫だった小夜が、道場で飼っていた犬を助けた事をきっかけに大きく成長した過去を知る。
 「覚悟をした小夜くんは、もう泣かなかったね。自分は誰かを救う人間なんだと決めたのかな。……確か、医者になりたいと言い出したのも、この頃だな」
 「……小夜さんの覚悟」
 一方の為朝は、マブシーナが純度の高いキラメイストーンの場所を感知できる事を知ると、預かった白い魔石を持ったまま故意にデジカメに撮影される事で、連れ去られた人々の居場所を見つけだす作戦を立てる。
 「それでは為朝さんが危険です!」
 「これしか方法は無い! 充瑠、絶対しくじるなよ」
 再出現したデジカメを前に黄は赤に後を託し、戦力計算はドライな一方で、自分自身は平然と囮に使える――そして「リーダー」とは、背負わされた期待に応えられる人間である、と考えている節が見える――為朝がやたらめったら格好いいのですが、長短裏表、の部分ではあるように思えるので、いずれ充瑠と為朝が真っ正面からぶつかるエピソードは期待したいです。
 「邪面師! バえてる俺を撮りな! 見栄えいいのは、確実だ!」
 赤とグータッチを交わした黄は、白い石を片手にデジカメを挑発し、あまりに格好良すぎた為か、直後にSNSに投降した事のある決めポーズ5連発で落とされましたが、一貫した、撮られ慣れている人達、のスタンス(笑)
 最後はサムズアップで撮影された為朝はデジカメ空間の中に入り込み、マブシーナ姫が首尾良く白い魔石の反応をキャッチ。……なんとそこは、上空高くに潜んでいた、邪面獣の体内であった!
 アイデアの繋がりは面白かったのですが、前半撤収時の「データがもう一杯で、一旦、中の連中を例の所へ連れていきます」は、データ=本体メモリ、例の所=邪面獣の体内、と解釈するのが妥当に思われるので、厳密に考えるとこの時点の為朝はまだデジカメの本体メモリ内部の筈であり、物語の都合で作戦の成立過程を1ステップ飛ばしてしまったのが美しく詰め切れずに惜しかったところ(一度撤収した後、ガルザのひらめキングによりWi-Fiを搭載されて無線接続できるようになった可能性はありますが)。
 「今こそ……覚悟の時!」
 キラメイメンバーを含む囚われの人々の居場所はわかったが、そこに到達するには飛行系の魔進が必須……赤は小夜5歳の説得を試み、幼い小夜が立ち上がるきっかけとなった、命に対する「無理」「絶体絶命」というキーワードが、その心を揺り動かす。
 「こんな時こそ、未来の小夜はこう言うよ。エモい、って」
 だがその赤も、説得途中で小夜をかばってデジカメ空間に吸い込まれてしまう事に。
 「子供だってキラメイジャーだ! 覚悟さえ決まれば、きっと出来る!」
 充瑠は小夜のキラメキを信じて全てを託し、「キラメキに年齢は関係ない」&「誰かの為に大きな力が発揮される」というポイントを抑えてくれたのは作品テーマとして良かったのですが、それを集約する言葉が「覚悟」になってしまったのは、少々引っかかったところ。
 なにぶん小夜が5歳児に戻っている為、小夜の中に秘められた芯の要素を本人の言行から表現しづらく周辺から埋めていくしなかったのでしょうが、中身を詰め切れずにマジックワード頼りでまとめてしまった感はあり、「他者の想いを大事にする」という充瑠の基本路線の上に乗ってはいるものの、少々浮き気味に聞こえてしまいました。
 今回単位では許容範囲ですが、下手に頼りすぎると大脱線しかねないので、慎重に扱ってほしいワード。
 「……無理じゃない。……絶体絶命なんかじゃない! みんなは、小夜が守るって決めた!」
 前半から画面の中に取り込んでいた桜の演出は狙い澄まして綺麗に嵌まり、桃色の吹雪が舞い散る中で、キラメイピンク復活。
 「変身できた! 絶体絶命の時ほど、燃えて輝くのが小夜さんなのですね!」
 魔進ヘリコも活動可能となり、上空へ飛んだピンクとヘリは、乙女の吐息からのくすぐりアタックにより、邪面獣の中から解放した人々の回収に成功。デジカメ邪面は、その衝撃で墜落したクラウド邪面獣に押し潰されて圧死し、大健闘だっただけにきちっと始末してやってほしかった気持ちはありますが、良い怪人でした!
 残ったクラウド邪面獣はスカイとランドの連続攻撃でさくっと撃破し、ヨドン軍の侵攻を阻むキラメイジャーだが、純粋に物理が原因な5歳児問題は解決せず。
 キラメイジャーにはなれるし楽しそうだからいいんじゃない、と割と鬼畜な事を言い出す面々だが、追いかけっこをしていたマブシーナがつまづいた拍子に小夜と頭をぶつけ……正面からクリスタルヘッドバットを受けた上に床に倒れた際にも重ねて頭を打った小夜が割と普通に心配になるのですが、とにもかくにも記憶が回復。
 ……今回の事例から導き出されるは、クリスタリア人が地球人類の脳に何らかの干渉が可能なのではという仮説ですが、充瑠の見た夢の一件を含め、急ぎ検証が待たれます。
 ――そう、地球は、既に、狙われている(誰に?)
 完全復活を遂げた小夜は、5歳児モードの際の記憶こそないものの、充瑠に熱烈に迫られた気がする、と微笑み、照れまくる思春期の男子、でつづく。
 キラメイジャーの女帝もといお姉さんポジションの小夜、初メイン回にしていきなりの5歳児モードによる過去の暴露こそあったものの、チーム最後のストッパーという事もあってか、オーソドックス寄りのお姉さんキャラの座は堅持。某「変だよね」事件と違い、誰も小夜をからかおうとしないまま終わる事に、圧倒的ヒエラルキーの差を感じる君臨ぶりとなりました。
 前作から参加の下亜友美(以前に紹介した荒川さんのインタビュー記事によると、脚本職で東映に所属との事)がサブライター初登板となり、悪くない出来。上述したように、怪人と戦隊の特性を巧く拾って噛み合わせてくれたのは、“作品らしさ”が出て秀逸でした。
 ところでEDおまけパート、博多南5歳(自称)が小夜に抱きつこうとするも合気道でシめられるのですが、アバンタイトルで親類の手術を成功させた小夜の手を熱烈に握りしめるところで小夜が一瞬「えぇ?」みたいな顔をしており……博多南さんは、小夜からセクハラを警戒されていないか。……あまり気持ちのいいギャグになる予感がしないので、今回だけの勢いにしておいてほしい部分。
 次回――メンバーがそれぞれ得意分野で充瑠を鍛えるのは、現時点での関係性を整理しつつキャラそれぞれの色を出せて面白くなりそうで、期待。