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野良犬は死なない

仮面ライダーゼロワン』感想・第26-27話

◆第26話「ワレら炎の消防隊」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也
 飛電vsZAIA、お仕事対決4回戦は……消防士対決。
 消防士ヒューマギア・119之助が、ZAIAスペックを装備したベテラン消防士・穂村とミッション型式の消防訓練の成果を競い合う事になり、ここまで不足していたZAIAスペックの性能描写を行ってくれたのは良かったです。
 対決そのものは中身の空虚さをテンションで誤魔化す方向でしたが、レイダーが乱入した途端に、ロッカーの中から対策要員が出現するのは空気を切り替えるスイッチとして秀逸。
 そしてレイダーの攻撃によって爆発が起きると、にぎやかしだった消防隊の面々が即座に仕事モードに入って救助活動を開始するのが、テーマにした職業への敬意が見えて良かったところ。
 ZAIAスペックの描写にせよ、テーマとして取り上げた職業の尊重にせよ、今作ここまで欠けがちだった要素なので、新たに参戦した上堀内監督の意識が出たのかな、と思える部分。
 一方デイブレイクタウンでは、構えた拳銃を下げた迅が滅の拘束着を外し、文字通り「自由」を与える姿を象徴化。
 「人類滅亡の為に戻ったんじゃないのか、迅」
 「それよりもやるべき事があるんだ」
 復活した迅は、アークと再接続していない事が判明し、迅が「死と再生」(どうやって再生したかは謎ですが)を経験する事によって真の「仮面ライダー迅」になり得た、というモチーフが組み込まれているように思われます(そしてそれは、「復活した救世主」でもある)。
 「僕は、僕のやり方で、ヒューマギアを解放したいんだ」
 とにかくポイズンキーを取り戻そう、とお散歩に出た2人を待ち受けていたのは、あんぱん片手に徹夜で張り込んでいたらしい、青い狂犬・不破諌。
 「迅! 滅を脱走させたのは、お前だな」
 「ああ。正確に言うと……僕たち、だけどね」
 無かった事にされるのではないかとドキドキしていた謎フード(「亡」担当?)の存在が再浮上し、銃を構える不破に向けて迅は優雅に歩を進めていく。
 「もう一人の奴がレイドライザーをばらまいている仲間か! そいつはどこに居る?!」
 「……案外近くに居るかもね」
 笑顔のまま平然と歩き続ける迅は、どこか気圧される不破の耳元に囁きかけ、謎フードについてはミステリー要素として引っ張りつつ復活後の迅の不気味さを強調。
 「……舐めやがって……!」
 真横を通り過ぎていった迅に背中を向けたまま(迅も背後で足を止めたまま)怒りの不破さんが変身するシーンは大変格好良く、上堀内監督演出の力で物語の温度を一段階引き上げてきます。
 一方の迅も背後を向かないまま(変身したバルカンも一歩も動かず)に新たな変身を披露し、炎の翼に包み込まされるようにしてフェニックス……!
 (※筆者は現在、「フェニックス」という言葉に過剰反応する病気にかかっているので、適当に聞き流して下さい。全て、藤宮博也が原因です)
 変身を終えた両者はお互い振り向きざまに殴り合いに突入し、アサルトバルカンの転がり銃撃を膝の頭でガードしてみせるのが格好良かったフェニックスは、炎刃舞踏を炸裂させ、バルカンまたも完・封・負・け(前回以来5回目)。
 じわじわと負け犬ムーヴに飲み込まれつつある不破は、這いつくばって地面を舐めながらポイズンキーはZAIAにあるんじゃねーのと口を割り、この連敗から立ち直れるのか少々心配になってきました。
 天津からも迅からも、噛みつこうとするも果たせないきゃんきゃん吠えるだけの脅えた野良犬扱いを受けているので、次のステージへ向けたタメだとは思われますが、果たしてどう弾けるか。
 暴れるだけ暴れてレイダーが姿を消した火災現場では、機械の冷静すぎる判断から心肺停止者を見捨てようとした119に、穂村が大激怒。その反応を見た天津は119に絶滅ドライバーを取り付けるよう唯阿を促し、天津にとっては他人の命など生命保険の値段分ぐらいの価値しかないだろうにせよ、火事場の真っ只中でヒューマギアを故意に暴走させようとする展開そのものが面白みを感じない上に、天津の外道働きに唯阿が荷担する動機を推測させる要素がチラリとも仄めかされないので、天津に唯々諾々と従う唯阿の姿が、単純にストレス。
 また前回、天津の目的を知った事により「買収を阻止する為にお仕事対決に力を注ぐ理由」は強くなったのですが、同時に、ヒューマギア暴走の根幹的原因といえるアークについてもわかったので「お仕事対決をアルトが応援している理由」が無くなっており、暴走を物語の軸に持ってくるとどうしても、暴走を防ぐ為にアルトは他にやる事があるのでは(対決の見届けは他の人に任せればいいのでは)……となってしまうのも苦しい。
 ……まあ、お仕事対決には両社の社長の立ち合いが必要だったりするのかもしれませんが、そういうちょっとした描写の積み重ね不足が、物語全体に大きな傾斜を生んでしまっているのはつくづく残念。
 天津は、暴走する119の姿を火災現場をレポートする報道カメラの前に見せつけて混乱をあおり、ゼロワンは119マギアを止めようと冷凍ガスを噴射するが、今日も現れるヒューマギア絶対壊したいマン。
 「大切な社員は、社長の俺が守る」
 ワークゼロワンはサウザーの攻撃を防ぐとお仕事セイバーで119の暴走を解除し、しつこく切りかかってきたサウザーを迎撃。
 「ヒューマギアが命を救えるって事を、必ず証明してみせる!」
 ヒューマギアに命なんて救えない、としつこく絡んでくるサウザーに啖呵を切るゼロワンですが……そもそも、ヒューマギア開発の発端は医療分野からだったのでは。
 前々回、絨毯爆撃で世界観を焼け野原にしたとはいえ、さすがに地中に埋まった基礎の部分まで無かった事にするのは無理があり、消防士ギアという個別の事例について話しているのはわかるにしても、ヒューマギア大好き社長とヒューマギア滅ぼす社長が3周遅れぐらいの論点について争っているのは「命」というキーワードの有機的連動とそれにより発生する劇的さを著しく削いでしまいました。
 歴史の復習が必要そうなダブル社長はひとまず矛を収め(普通に正面から殴り合うと負けますからねサウザー!)、火災現場での失態を謝罪する119。
 「命に対する理解が足りなかった!」
 だがそれは自分も同じであり、穂村隊長にお互い大切な事をラーニングさせてもらったな……と肩を組むアルトですが……消防士ギアをラーニングしたのは……いったい……? もはや、災害現場に配備する事が問題なのではレベルの評価になっているのですが、消防士ギアは実用準備段階なのかどうなのか、分野において進出の度合いが違うのは当然として、ヒューマギアが「居て当たり前の業種」なのか「これから進出したい業種」なのかが毎度あやふやなので、余計なところで困惑してしまいます。
 イズからの急報を受けたアルトと119は現場に戻り、先程カメラに向けて「ヒューマギアが暴走したぞー。みんな避難しよー」とかやっていたのに、消防活動は普通に継続中だし、煽った天津は普通に立っているし、暴走を複数人に目撃された119が平然と戻ってきても誰もリアクションしないしで、物凄い茶番劇が展開しているのですが、もはや、火事と喧嘩は江戸の華、みたいな扱いになっているのか、ヒューマギアの暴走。
 救助対象役だった副社長一派が建物の3階に取り残されており、助けた方が勝ちという事にしよう、と天津がいつものように頭のおかしい事を言い出して、つづく。

◆第27話「ボクは命を諦めない」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也
 「ならなんで突っ立ってんだ?! 救助に向かうぞ!」
 「彼女はもうA.I.M.S.ではありません」
 「……人を救うのに、立場なんて関係あるか!!」
 唯阿さんの手を引っ張って火事場へ突入する不破さん、は滅茶苦茶格好良かったですが(冷静沈着な美人が強引な男に引っ張られて目を白黒、というのも良い)…………あなた、自分しか水被ってないぞ。
 あと、ライダーになるなら水被る必要あるのか。
 それから、せめてコート脱いで。
 前回、デイブレイクタウンでなます斬りにされた筈の不破さんが、もはや某課長ばりに「俺は死なない」になっている一方、本格的な生命の危機に陥る副社長一派の口からヒューマギアへの夢が語られ、なんだかんだと飛電への愛をアピール。
 絶望的な状況の中、激しい炎に巻かれながらも119は救助ルートを作る為に前進し、そもそも、災害現場などにロボットを投入するのはこれが出来るからですよね……というのはあるのですが、果たしてこれだけ高性能の人型ロボットに対し、人間はロボットとして接し続ける事が出来るのか? という問い、境界線はどこに引くのか引かれるべきなのか(実際、穂村は119に人間性を見る事により、実際の人間2名の救助を諦める致命的な錯誤を犯しているわけで)、は『ゼロワン』全体の物語と巧く繋がってほしいところであり、119の皮膚コーティングが消失していくと徐々に素体のボディが露わになっていく見せ方は劇的。
 ……だったのですが、119が自らの命を賭して救助ルートを確保したところに、不破さんも唯阿さんも、凄い普通に生身で入ってきたぞ(笑)
 焼け焦げた119が瓦礫を支えながら活動停止していく絵が印象的なだけに、防火服の穂村と並んで駆ける不破と唯阿の姿が映像的に大変な惨事になっているのですが、A.I.M.S.特製耐火耐衝撃耐その他諸々特殊コート、なのでしょうか(とでも思わないとさすがにやっていられません)。
 「……ご苦労様、119之助」
 レイダーを倒して現場に戻ってきたアルトが救助活動の顛末を知り、機能を停止した119之介を笑顔で讃えるのは、アルトがヒューマギアの本分について踏み外しているわけでない事も確認されて(それ故に迅とは相容れないのでしょうが)、良かったです。
 同時に、119がヒューマギアの本分に殉じる事により、前回のリスタートを踏まえて「ヒューマギアとは何か」の再構築が初期に近い形で試みられているのですが、とすれば119の最期を看取ったアルトの対応には、「役割を全うしたロボットは満足して死ね」というジャンパーソンイズムの脈動を感じるところで、「それを笑顔で送ってやる」のが現状のアルトの立ち位置といえるでしょうか。
 ……背負って持ち帰ろうとするのは少々やり過ぎに感じたのですが、人間としては多少行きすぎでも、“戦友への対応”と考えればわからないでもなく。
 「彼は紛れもなく、消防士でした!」
 副社長達を助けたのは自分ではなく119だ、と自らの勝利に異議を唱えた穂村は119に敬礼を送り、それに同調しようとした唯阿だが、天津に一睨みされるとなぜか催眠術でも受けたかのように従順になってしまい、疑問の多々あった唯阿の行動理念に不穏な気配が(急に理由が決まった感じの描写ですが)。
 つけてて良かった忠○回路!?
 そこに乱入してきた野良犬により、レイダーが落としたZAIAスペックの持ち主が、ZAIA開発部の社員と判明。更にレイドライザーは民間人用に作られたZAIAの製品と判明し、腕力による証拠隠滅を宣言したサウザーのポイズンブレイクを受け、アサルトバルカン、3話連続6回目の大爆発。
 ……現状、ワークゼロワンが頭5つぐらい抜けて強い扱いの為、引き立て役が見事にスライドして参りました!
 「我が社のイメージはクリーンでなければならない」
 「……一企業の社長がやる事かよ」
 サウザーは証拠品をグリグリと踏みつぶし、イズの映像記録に全部残っていると思うのですが(ヒューマギアによる記録映像が証拠品になりうるのは、裁判編で実証済み)、実際に法廷で争ったら勝てるかどうかは別にして、天津の行動に急にツッコミが入り出した観。
 「やっぱり、人間て、悪意に満ちてるな」
 迅が乱入して炎の中でサウザーとフェニックスが激突し、サウザーはさすがにフェニックスと互角の戦いを見せるが、必殺キックを打ち合うとよくわからない成り行きで都合良くポイズンキーが床を転がり、フェニックスはまんまとそれを奪取。
 「人間の好きなようにはさせない。……ヒューマギアは、僕が解放する」
 目的のキーを手に入れたフェニックスは立ち去っていき、床に転がってひくひくしている不破さんの横で、アルト・イズ・唯阿が棒立ちでそれを見送るのが大変間抜けな絵になっているのですが、ハッタリを効かせた劇的な絵作りを好む上堀内監督だけに、話の都合でどうにもならなかったシーンが悪目立ちしてしまう所はあり。
 「ヒューマギアが人間社会に必要か否か、それを決めるのは我々じゃありませんよ。――全ての結論は、世論の投票に委ねましょう」
 政府により、デイブレイクタウン跡地の再建――特区としてのヒューマギア自治都市の再開発が承認され、天津はそれに関する国民投票の場を、お仕事対決最終戦に指定。
 「ヒューマギアを是とするか非とするか。演説対決で決着をつけましょう。飛電或人」
 ようやく、“世間”という要素が浮上し、ここに持っていきたかったのか……という絵図は頷ける一方、地道な積み重ねの不足も否応なく目立ってしまうのですが、次回、ラブ&ピース。