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ゼロワン荒野に立つ

仮面ライダーゼロワン』感想・第25話

◆第25話「ボクがヒューマギアを救う」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也
 OPにワークゼロワンが入り、今作の細かいマイナーチェンジ路線は好感が持てるのですが、そうなってくるとそれはそれで、バルキリーはどうしてOPに居るのだろう? なんて気持ちも湧いてきてちょっと切ない今日この頃、衛星ゼアと通信が取れなくなった事で、イズの依頼でラボを調査していた博士ギアが、ラボに仕掛けられた高性能ジャマーを発見。
 「何者かが、このラボに侵入したという事ですか」
 ……うんまあ、このラボ、もはやザルだしな……。
 アルトのいちいち過剰なリアクションのちょっと面倒くさいノリから、カメラを大きく窓の外→ビルの外観へと引いていくと、飛電ビルの屋上ヘリポートに新たなライダーの影……? というのは空気の切り替えが格好良く、演出は『リュウソウジャー』に入っていた上堀内監督が参戦。
 初のパイロット版抜擢だった『リュウソウ』はどうしたのかと思ったらラスト3話しっかり担当しており、放映当日の3月1日は、なんと驚きの1時間スーパー上堀内タイムでした。
 セキュリティなんて犬に喰わせろでお馴染みの飛電インテリジェンス社長ラボまで、ズカズカと入り込んできた不破から滅失踪の情報がもたらされたのを切っ掛けに、一同はヒューマギアの製造開発に携わってきた博士ギアの口から、滅の出自を始め12年前から今日に至るヒューマギア史の表と裏について聞かされる……。
 という形で、12年前のデイブレイク前夜に始まって、これまでの出来事を時系列で整理しつつ、滅亡迅雷ネット誕生の秘密など適宜新たな情報を挟み込みながら個々の要素を改めて物語の中にピン留め。
 前回の感想で触れましたが、とにかく、情報の制限や錯綜を通り越して、誰が何を知っていてそれぞれがどれだけ重要なのか、がしっちゃかめっちゃかになっていたので、総集編要素を盛り込みつつ一度ほぼ全ての情報を整理し直す事により、アルト(&イズ)と不破はここまでは知っています、という事を明確にする大掃除を敢行したのは、良かったと思います。
 「衛星アークは全人類を滅亡させる為に、自らを宇宙へと発射しようとした。しかしアルト社長の父上、飛電其雄が衛星アークとの戦いに備えて既に、開発していたのだ――仮面ライダーを」
 今回OPに祖父・父のキャストクレジットが無い事を考えると、この辺りは劇場版で明かされた要素との擦り合わせでしょうか……?
 アルトの「本当の両親」については引き続き謎のまま、多くの犠牲を払いアークの打ち上げは阻止され、湖底に沈む。その後もヒューマギアの研究開発を続けていた飛電は、遂に4年前、ヒューマギアネットワークのコアとなる衛星ゼアの打ち上げに成功。だが滅亡迅雷ネットもまた闇の底で牙を研ぎ続けており、ヒューマギアのシンギュラリティを人類絶滅に利用しようとするが、其雄の遺志を継いた是之介がゼロワンドライバーを完成させていたのであった――。
 「つまり、人類滅亡の為に生み出された悪意の力が、ゼツメライズキーのデータであり、人とヒューマギアの未来を切り拓く為に生み出された善意の力が、プログライズキーという事だ」
 第2部のキーになっており、天津社長がアークにラーニングさせた事が重視されている「悪意」はともかく、2話ぐらい前から急に言い出した「善意」の扱いはどうも強引ですが、とにもかくにも二種類のキーについても定義付け。
 博士ギアから、滅の行方について情報を持っているとすれば裏で糸引くZAIAなのでは? と焚き付けられたアルトと不破は天津の下に乗り込むが、1000%悪びれないでお馴染みの天津は、そもそもA.I.M.S.設立及び技術供与は対アーク(マギア)の為のシナリオ通り、と言い放つ。
 そしてその主軸を成す“兵器”こそが――仮面ライダー
 「自分でアークを生み出しておいて、滅亡迅雷ネットを倒す為に、仮面ライダーの力を使うなんて」
 「飛電は仮面ライダーという素晴らしい兵器を開発した。しかしアークという恐怖がなければ意味はありません」
 「仮面ライダーは兵器じゃない!!」
 「いいえ。人類を脅かす恐怖に立ち向かう、人類最強の兵器。それが仮面ライダーです。いずれ警察や軍に利用されるようになれば、莫大な利益を生む」
 「つまり、兵器ビジネスこそが、ZAIAの本当の目的」
 天津が求めていたものは、「人間とは醜く汚い生き物だ!」といった永遠の14歳の発露ではなく、徹底的にビジネスに利用する為の“人類の敵”であると明らかになり、以前にも口にしていた「仮面ライダーは兵器」という言葉が再浮上。
 これは『ビルド』でも持ち込まれていた要素なので大森Pのこだわる部分の可能性はあり、そもそもの「仮面ライダー」が「悪の秘密結社の生み出した生物兵器」であると考えれば本歌取りといえる一方、平成ライダー》は一度それを“正義と悪が元をただせば同根である”という所まで抽象化した作品群なので、「仮面ライダーを兵器として見る視点」そのものが、固有名詞としての「仮面ライダー」をメタ前提にしている部分がある事で、どこか物語から浮き加減になっているようには思えます(恐らくこれは、私が近年の《ウルトラ》シリーズに感じがちな引っかかりと近い種類のものなのかな、と)。
 A.I.M.S.もZAIAの道具にすぎない、と言われて天津に食ってかかる不破だが、天津は全く動じない。
 「それだ……君は私を恐れている。恐怖に対するその怒りが争いを生む。その争いをビジネスに変えるのがZAIAだ」
 ここは、天津(ZAIA)の本質が何か、が見えてとても良い言い回しでした。
 「よせ! 手を出したらこの人の思うつぼだ」
 不破を止めるアルトに関しては、ここ数話、思い切り殴り合いを繰り広げていた記憶しかありませんが(笑)
 「他人事ではありませんよ。飛電が私のものになれば、飛電のテクノロジーも全て兵器に変わるのですから」
 「……渡さない。俺の会社は絶対に」
 天津の真意らしきものが見えた事により、最近どうにも共感しにくくなっていた「アルトのヒューマギアへの偏愛」以外のところで「俺の会社」を守る理由が発見され、「天津の目的」に対して「アルトのやるべき事」が明確になり、ここ10話ほどの霧を晴らす糸がようやく繋がりました。
 長かった……。
 「俺はZAIAの道具なんかじゃない。……俺は……俺のルールで相手をぶっ潰す! それが、仮面ライダーバルカンだ!」
 不審なヒューマギアがデイブレイクタウン付近で目撃されたとの情報が入り、現場へ急ぐ途中、ダッシュについてこれずに足を止めたアルトに声をかけられた不破は、それはそれで危ない俺ルールを改めて宣言。
 「……その先にある、不破さんの夢ってなんだ?」
 「夢?」
 メインテーマが流れ出し、息を整える為に下を向いた姿勢が、かつて其雄の最期を看取った時の顔の向きにそのまま重なるのが、非常に秀逸。
 「うん。俺は、どんな時も夢を忘れずにいたい。だから……」
 アルトは、腕の中の其雄に向けて、笑ってみせる。
 「人と、ヒューマギアが、一緒に笑える未来の為に戦う。それが――仮面ライダーゼロワンだ」
 前回、物語世界のルールに対する極めて雑な扱いがトドメとなって、「個々の事物の定義付けが実質的に崩壊。虚構を構成する骨組みが支えを失う事により『ゼロワン』という物語世界そのものがほぼ砂礫と化してしまう」事態に陥った今作ですが、思い切って更地になったのをいい事に、地面に散らばった情報を整理・再構築して「これまでの『ゼロワン』はこういう物語でした!」と新社屋を建ててしまう力技で、もつれた糸を解きほぐし、改めてのヒーロー宣言。
 なにぶん突貫工事なのでいつ柱が折れるか雨漏りするか壁に穴が空くかはわかりませんが、大変久々に、『ゼロワン』の長所が発揮される事に。
 笑顔のアルトに対し、しばし瞑目する不破……その「夢」はまだ語られず、しかし二人は、森の中を行進してくるマギア軍団に対し、ともに変身。
 滅を追うべく先行するバルカンに公認バスターを預けたゼロワンはマギア軍団に立ち向かい、雑魚を相手に「ファイナルストラッシュ」発動してしまいましたが、それファイナルでいいのか(笑)
 一方、滅に追いすがるバルカンの前に立ちはだかる炎の凶鳥――仮面ライダー迅フェニックス。
 借り物の力だった事に加え、マスクや装甲の模様が左右非対称なデザインが、どこか不安定さや歪さを感じさせたゼツメファルコンに対し、赤黒ボディでシンメトリカルかつスマートなフェニックスは、「大人になった」という印象。
 ワイヤーアクションを交えた気合いの入った一騎打ちでアサルトバルカンを撃破し、変身を解いた迅もスーツ姿(こちらは非対称なライン入り)になっており、更にヘッドギア部分の形状が変化。
 「ただのヒューマギアじゃない。僕は進化した」
 地面でひくひくしている不破と、駆け付けたアルト&イズに対し、博士ギアを操ってアークの情報を故意に流したと迅は語り、長らく大変あやふやだったアークの所在情報に関しても、「飛電もA.I.M.S.も今の今まで知りませんでした!」という事に(まあこれに関してはZAIAが隠蔽していたとして納得はできますが)。
 「迅……おまえの目的は」
 「……人間からヒューマギアを解放して、自由を与える。それが僕――仮面ライダー迅だ」
 嫌な予感に応える形で、「仮面ライダーとは何か」の対比もぴたっとはまり、情報の整理と統合・世界観再構築・滅亡ギルド復活・アルトの目標確認・それぞれの仮面ライダー宣言、とまさにリスタートのエピソードになりましたが、ここに参加できない唯阿さん……。たまに変身もする美人秘書ポジションだと思うとちょっとおいしいですが、秘書というより「道具は使いよう」されそう感満載の唯阿さん……。頑張れ唯阿さん……。
 愕然とするアルトと不破を残して陣は姿を消し、そして再び、深い闇の底――。
 「よく戻ってきた。人類滅亡の狼煙をあげるぞ」
 「……滅、僕はそのために戻ってきたわけじゃないんだ」
 迅は何故か、滅パパに銃口を向ける?! でつづく。
 ……ところで、迅の復活に物凄く驚く不破さん、謎フードの存在を完全に失念しているようなのですが、メモリーポリスに記憶でも消去されたのか。謎フードを追いかけて不穏な雰囲気でフェードアウト……の部分で何があったのかは全く語られないまま、次回登場時には妙にパワーアップ(演出の勢いだけかもですが)して登場した不破さんですが、ここが拾われるのかは、気になるところ。
 取り返しがつかなそうなものも含め、負債はまだまだ残っていますが、敵対する存在の劇中における位置づけ・主人公は何の為に何と戦うのかがしっかり押さえられた上で(むしろこの8話ほど、そこが行方不明になっていたのが驚きなわけですが……)、大仰なはったりの駆使を好む上堀内監督の演出もはまって、いや今回は面白かった!
 そして次回――あ、お仕事対決はまだ残っているんですね、ハイ。