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解答するネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第35話

◆Episode35「反乱-リボルト-」◆ (監督:阿部雄一 脚本:太田愛 特技監督菊地雄一
 い、いっしー……。
 はさておき、ゴーガビーストを倒しきれないまま倒れた燐がティルトによって身柄を回収される一方、プロメテの子らがラファエルを完成させ、燐は助かる、と喜ぶ査察官側近だが謎の人影の攻撃を受けて倒れてしまう……て、アンノウン・ハンドさん、今、アメリカ?
 「貴方の任務は終わりました。以降、貴方は千樹憐とは無関係です」
 憐が連れ去られるのを目撃した瑞生は慌てて孤門に連絡を取り、憐を姫矢と同じ目には遭わせない、と孤門はその救出を決意。
 それはティルトへの反乱行為になるがわかっているのか? と問う副隊長に対し、「……わかっています」と正面から見つめ返すシーンは格好良く、孤門くんがぼんやりわたわたボーイから急速に一人前の顔になっていくのですが、まあ人生、何かをきっかけにそういう劇的な脱皮をする事はあるとは思いつつ、間に10話ぐらいすっ飛ばした感は否めないのですが、実際に10話ほどすっ飛ばされていたのでありました……てまあ、あのまま10話続けても、孤門くんの羽化に納得がいく流れになったのかは微妙ではありますが。
 「隊長…………僕たちは何かを守っていると信じて戦ってきた! 憐もそうです! 憐はずっと僕たちと一緒に戦ってきたんです! たとえティルトに叛旗を翻す事になっても、今彼を見殺しにして、この先僕たちは何を守れますか?! 何を救えますか?!」
 ここまでの積み重ねを通してウルトラマンという“戦友”への思いを孤門くんは隊長にぶつけ、特に「今彼を見殺しにして、この先僕たちは何を守れますか?! 何を救えますか?!」は、はるばる遠く第1話からようやく“ナイトレイダーとしての孤門”に焦点が結ばれて良かったのですが、そこに至る過程こそが“物語”であると考えた時、『ネクサス』における「守る」とは「信じる」とは「戦う」とは何か? いったい何をもって『ネクサス』は『ネクサス』であると言えるのか――その証明には10話どころかもっと足りない、という感触は否めず。
 お陰で、副隊長がここで一緒に立ち上がるのは過程をすっ飛ばしすぎて意味不明の領域(査察官の言葉が最後の一押しになった、とみなすのも親切に過ぎる)ですが、とにもかくにもNR和倉チームは憐の救出を決意し、バックアップに石掘を残して実験室へと出入りじゃ出入りじゃぁ!
 「デュナミストの実験を今すぐやめていただきたい。彼は我々の仲間です」
 「どうしてわからないのです。ウルトラマンの光の秘密を解明する事こそ、人類を、破滅から救う唯一の道なのです。……デュナミストは光の容れ物。単なる光の器にしかすぎない」
 前回-前々回でキャラクターとしての奥行きが増した事により、「彼の命は間もなく尽きる。その前に、今度こそウルトラマンの光の秘密を解明する事が、我々の責務なのです」と心を鬼にして大の為に小を切り捨てる事を選ぶ管理監の姿勢が信念の一つの形として成立しており、視線の動きや言い回しの変化で、表に出している言葉以外のニュアンスをにじませる堀内正美さんの芝居は、随所で今作を救ってくれています。
 「光を力に変えるのは、人の意志です。デュナミストが自らの意志で、己の命をかけて戦おうとするからこそ、光は力となる。私はデュナミストが単なる光の器だとは思わない! 光を、人類が手に入れるべき兵器だとも思わない!」
 これに対する隊長の解答は美しいのですが、やはり途中の計算式はすっ飛ばしてしまっているので、解答欄だけが遊離しており、それを繋ぐ糸が足りません(ここでは主に、隊長の人格/心境の変遷がダイジェストすぎて)。
 「我々はウルトラマンを解放する!」
 強行突入したNRは憐を連れ出すとチェスターを強奪して逃走し、追撃を命じる管理官を止めたイラストレーターは、カタツムリビーストとの対策にNRらを利用しようと提案。
 脱走先の山中では、いっしーが何やら不気味な薄ら笑いを浮かべ……うーん……そっち……?
 真犯人にするにはいっしー出番少なすぎて、色々どうしようもないと思っていた隊長が、どうしようもないどころか真性の外道でした! の方が個人的には好みだったんですが(笑)
 孤門が、駆け付けた瑞生に憐の命が残り僅かな事を告げると、憐は日本へとやってきた真相を語る。
 「俺は……耐えられなかったんだ。……ただ人を心配させて、悲しませて、出来る当てのないラファエルを待ってる。それだけで俺の時間は終わっていく。それが耐えられなかった……。天使は、ラファエルは来ない。だから俺、どうせ短い時間なら、誰も俺が死ぬってことを知らないところへ行こうと思った。……したら、なんでかわかんねけど、俺みたいな失敗作んところに光が振ってきて、迷わなかった。自分にもまだ、出来る事があるんだと思ったら、すっげぇ嬉しかった。……遊園地でずっと見てた、子供達や、親や沢山の人達、ああいう人達を自分は守れるって。そう思ったら、ホント嬉しかったんだ」
 憐がこだわっていたものは“生の証明”であったとして、第1部における孤門とセラと繋げられ、前半と後半を繋ぐ線が一つ引かれるのですが…………何故、そういう人を狙って、棺桶と一緒に降りてくるのか、光よ(笑) ……いや、降りてくる、というよりも、そういう魂の持ち主に引きつけられる習性、なのかもしれませんが。
 第1部ラストの姫矢の着地点同様、遊園地にまつわる布石を活かして“憐の物語”としては納得の行く一方、それが孤門やリコ、溝呂木らと繋がりきらないのが今作らしい不足なのですが、果たして最終的に、『ネクサス』の物語、としてまとまってくれるのか。
 「孤門……俺はまだ戦える。……戦ってれば、死ぬ事だって忘れていられる。――俺はまだ戦える」
 イラストレーターからカタツムリビースト活動再開の連絡を受けた隊長は、憐の処遇に関してティルトに逆らいはしたが、ビーストを倒し人々を救う使命を捨てたわけではないと、ニュータウンへ。現場まで孤門のデルタ機に乗せられた憐は、発進前に副隊長にかけられた言葉を思い出す。
 「死ぬ気で戦う事と、死んでもいいと思って戦う事は、全く違う事よ。生きるために戦いなさい。たとえ明日が無くても」
 そう……生き残れば生き残っただけ、ビースト野郎をぶち殺せるからなぁ!!
 「生きる為に……」
 一つ頷いた憐は絶叫と共に変身し、夕焼けに照らされてビル街に出現する巨大カタツムリ、夕暮れの空をバックに折りたたみ傘を掲げる憐、黄昏の中で対峙するネクサスとビーストの姿は、それぞれ格好いいカット。
 捨て身の戦いではなく、生きる為に……“光”を前向きに受け入れ直す、というのも意図的な第1部ラストとの重ねと思われますが、カタツムリ相手に優勢に戦いを進めるネクサス。しかしその背後に開いた闇の穴からケルベロスビーストが出現して挟撃を受け、大苦戦。ここでチェスターが参戦して支援攻撃を行うとメインテーマに乗せて反撃となり、カタツムリビーストはチェスターが撃破。残るケルベロスには、疾走するネクサスの影に隠れてビーストに迫ったチェスターが散開攻撃、ひるんだところにネクサスがアームブレードを叩き込んで、フィニッシュ。
 ネクサスとNR、両者の共闘を映像的にはこれでもかと強調し、倒れる二体のビーストだが、その体が青い光の粒子となって消滅すると上空の黒雲の中に吸い込まれていき、その内部に黄金に輝く巨大ビーストが姿を見せる?! で、To be continued...