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ディザスター

仮面ライダーゼロワン』感想・第24話

◆第24話「ワタシたちの番です」◆ (監督:諸田敏 脚本:高野水登
 制御不能となってイズにさえ襲いかかるアークゼロワンだが、サウザーがこれまでジャックしたプログライズキーの力を集めて放ったドウブツ大団円の直撃を受け、変身解除。
 「予言しましょう。あなたはヒューマギアによって……破滅する」
 かつてなく白目を剥いて気絶したアルトは国立医電病院に入院し、三日間の昏睡の末に目を覚ますとマッチが見舞いに訪れる。
 「私はあの時、わざと暴走したのです」
 ……あの、なんか、滅茶苦茶言い出したんですが。
 「出来るだけ劇的なシチュエーションで、お二人の縁結びをしたかったのです」
 ペンキ屋こそ千明のベストマッチな相手、と一芝居打った事を告白するマッチ、自発的に暴走を試みるヒューマギアの時点で完全にアウトな気がする上に、マッチが暴走してペンギンが乗り込んできたらアルトが変身するのは想定できた筈であり、間接的にアルト瀕死の原因を作っているのですが謝罪の素振りも見せず、ベストな縁組さえ出来れば周囲がどうなっても構わない1000%婚活マシーン(まあマシーンなのですが)と化しているのですが、もうこれはスリーアウトチェンジなのでは。
 「そうだったのか……」
 じゃないぞ、アルト。
 「本当は暴走するフリに留めておくつもりだったのですが……アークの力は想定以上でした」
 完全に暴走したのはマッチにとっても予定外だった、と言い訳を付け加えるのですが、それを通すと、「ヒューマギアが人間の悪意を感じた時」に無線接続してくる筈のアークが、マッチの「悪意を感じたフリに騙された」事になってしまうのですが、本当にそれでいいのか。後、マッチがアークの接触によるヒューマギア暴走のプロセスについて完全に把握している事になっていますが、本当の本当にそれでいいのか。
 ここ数話、一つ一つの「情報」の価値に全く頓着しない作劇が続き、物語世界のフレームがどんどん歪んでいきます(どの情報が、どれだけの価値と意味を持っているのか、というのはそのまま物語世界の枠組みを決める要素なので)。
 マッチの行動に関しては、ヒューマギア自身がアークの思惑さえ越えて進化している可能性、の布石なのかもしれませんが、今の状況で、アークの格を下げてマッチの株を上げる必要性がわからず大変困惑。
 そして、まがりなりにも第2部においてキーとなっていた「悪意」という要素を大変軽い扱いで消し炭にしてしまい、足下から床――進行中の物語が拠って立つ基準――がまるまる消えてしまう事に。
 「今度は、私たちが、アルト社長を助ける番です」
 この後、アークにラーニングされた悪意に対抗する為に、これまで登場した様々なヒューマギアの想いをラーニングした新装備が作られ、ここまでの積み重ねの集約として展開そのものはわかるのですが、マッチの種明かしがあまりにもあまりすぎて、流れていく映像をぼんやりと見るだけに。
 後、「人間の悪意」に対抗するのが「ヒューマギアの善意」というのも、少々引っかかりを覚えるところではあり。
 一方、物凄い勢いで小物坂を直滑降していく天津社長は、情報を引き出す為に近付いてきた俳優ギアにまんまと騙されていた事を知り……知り……シンギュラリティによる人間的進化、という事なのかもですが……マッチといい俳優ギアといい、目的の為に嘘をつき人間を騙すヒューマギアって、それはもう退場処分なのでは。
 マッチはまだ「婚活」という行動基準の為であり、ギリギリ嘘も方便の範疇に入るかもしれませんが、イズの指示だろうとはいえ(それはそれで大問題なのですが)俳優ギアは明らかに悪意を持って天津を騙しており、主人公が夢を託すヒューマギアが、24話かけて到達した現時点での進化の極致が「目的の為なら平然と人間を騙す」なのですが、どうしてそうなった。
 散々、「人間の悪意」を用いてヒューマギアを望まぬ暴走に駆り立ててきた天津が、「ヒューマギアの悪意」によって足下をすくわれるのは皮肉と言えばこれ以上なく皮肉ですが、人間に向けて悪意を示すヒューマギアはもはや滅亡迅雷ネットと変わりないので、「飛電(アルト)の敵になら悪意を向けてもいいのか」「天津なら騙してもいいのか」といえばそれは強く否ではないかと思い、相手が天津だから、と慎重さを欠いて、とてつもない地雷を踏んでしまいました。
 (この流れの先に線を引いていくと、ラスボスは是之助-イズラインになるしかないのでは)
 怒りの天津は絶滅ドライバーを取り出して俳優ギアを強制的に暴走させるとサウザーに変身し、前回-今回と、あまりにも「悪意」「暴走」という物語の中心となっている要素の扱いが軽すぎます。
 これらは物語世界(ゲーム)の骨組みを支える極めて重要な柱(ルール)なのですが、ただでさえ第2部に入ってから複数の構造的問題が発生、各種キー要素の扱いも雑になって亀裂を生じさせていた所へトドメの一蹴りを入れる形となり、今作劇中における「悪意」とは何か? 「暴走」とは何か? といった個々の事物の定義付けが実質的に崩壊。虚構を構成する骨組みが支えを失う事により『ゼロワン』という物語世界そのものがほぼ砂礫と化してしまう事に。
 よって、画面上ではこれまでの物語を集約するお仕事善意ブレードを構えたゼロワンがアークの束縛を乗り越えているのに、それらを構成する要素が意味と繋がりを失ってしまっている為に、背中には廃墟しかない、という空前の大惨事が発生。
 ……まあ、あまりにも綺麗さっぱり倒壊したので、次回から実質新番組だと思えば、かえってスッキリ見られるかもですが。
 ワークゼロワンの新必殺インパクトで大爆発したサウザーは、こうなったら腕力でなく財力で勝利してやる、と捨て台詞を残して逃走。一方、A.I.M.S.では厳重に拘束していた筈の滅が姿を消し、不破隊長、またも大・失・態でつづく。