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風よりも速く

光戦隊マスクマン』感想・第32話

◆第32話「オヨブー必殺走り」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 勇者の剣とレンズドグラーの特殊能力を組み合わせる事で、太陽光線を強力な消滅光線に変える実証実験が行われ、その成功を確認して、上司に向けてサムズアップするオヨブー、おいしい(笑)
 チューブが着々と強力な破壊兵器を準備しているとは知るよしも無く、今日も今日とてバイクで流していたケンタは、廃車置き場で見覚えのあるレーシングカーと再会する。それは2年前、ケンタがチューンナップし、進也というドライバーを乗せてレースで優勝した、思い出深い1台であった。
 さらりと語られるこのくだりですが、ケンタ、闇討ちからの拉致監禁の末に姿レーシングチームに引き抜かれていた前身が明らかになり、姿長官の闇は深い。
 進也の弟・直也より、レーシングドライバーとして前途洋々だった筈の進也が、事故でドライバーとして再起不能の診断を下され、失意の内に東京を離れて場末のバーでうらぶれている現状が語られ、どう見ても飲み屋の用心棒扱いなのですが、光戦隊は関係者の闇も深い。
 かつての友を救う為、直也と共に思い出の車を修理したケンタは進也の元を目指すが、オンボロ車の運転に難儀している内に、荒野で消滅光線の練習中だったレンズドグラーを轢いてしまう(笑)
 その際の衝撃で、光線を増幅するドグラーの大事なレンズが外れて車内に飛び込んでしまい、そもそも車検を通っていないので公道を走れない為にオフロードの裏道を進んでいるのではないかとちょっぴり不安になる暴走車を、ひたすら走って追いかけるオヨブー!!!
 ……えっと、あの、凄く面白いんですけど、面白いんですけど、なんだこの話(笑)
 かつての友を救う為、という理由こそあれ「バトル開始前から明らかな危険運転を繰り広げるヒーロー」と、「それを止めようと全力で疾走する地底忍者」という構図の倒錯が、変則的な面白さを生む事に。
 正義の地底忍法サンダーボルトを受けて停車したところに、勇者バラバの一刀両断を受けそうになる暴走車だが、レッドマスクらが駆け付けて、追いかけっこ再開。
 「オヨブー!」
 「地底一速い男から逃げられると思っているのか!」
 EDにも使われるなど、序盤から「走る」スタイルが印象的でしたが、そこがアイデンティティだったのかオヨブー!
 ダイレクト・ドア・アタックにより一度はオヨブーを振り切る暴走車だったが、再びの襲撃を受けて遂にレンズを奪われてしまい、サブタイトルにも名前の入ったオヨブー、まさかのミッション・コンプリート。
 さすが、できる男オヨブー。
 ドグラーにレンズがセットされ、刀の錆、ならぬ消滅光線の藻屑にされそうになる暴走車だが、何者か(姿長官?)から連絡を受けて現場にやってきた進也がその光景を目撃。二人を助けようとして勇を奮った進也は、松葉杖を捨て斜面を駆け下りて暴走車の元へ辿り着くと、無我夢中でかつてのドライビングテクニックを駆使して消滅光線を次々と回避していき、肉体的には治っているが精神的に……というよくあるトラウマの払拭を、すかさずカーアクションに繋げる事で、劇的な飛躍に成功した格好いい流れ。
 「やっぱりこの車が好きなんだ。どの車よりも一番、この車が」
 そして、“この車”だからこそ進也は立ち直れたのだ、と車の意味づけを補強する事により、ケンタ達のここまでの無茶を上手くフォロー。
 勇者の剣に吹き飛ばされていた仲間達(今回から秋服仕様)も復帰してケンタもオーラマスク。5人揃ったマスクマンに向けて迫る消滅光線、だが、その時――
 「ぬ?! 太陽が?!」
 「正義の光は、お前達の為に輝きはしないのだ!」
 空が曇ってきて必殺攻撃使用不能という状況自体は大変間抜けなのですが、ヒーロー側の台詞の力で上手く誤魔化して改めて主題歌バトルに突入し、今回はこういった、要所要所の台詞が良かったです。
 「オヨブー、よくも追い回してくれたな。礼をするぜ!」
 画角を広く取り、全身を炎に包んで飛び回りながら電光を放つ地底忍法オヨブーファイヤーvsブラックマスクは大変格好良く、新登場の盗賊騎士よりも強化バラバよりも強化イガムよりも、地底忍者の大技の演出が格好いいのが凄く『マスクマン』です(笑) 苦戦する黒だがマスキーロッド手裏剣返しでこれを打破し、合間に挟まるレンズドグラーは赤青黄桃の一斉攻撃を受けて瀕死になったところに黒を加えてジェットカノンでオケランパ。
 グレートファイブは、レンズドグラーのダッシュ体当たりを受け止めると、逆さに抱えて頭部を何度も地面に叩きつけ、最近のマスクマンロボは投げ掴み技がえぐい路線、からのファイナルオーラバーストでフィニッシュ。
 「この車は……俺だったんだな、ケンタ。一度は、レースを捨てたけど、やればまた走る事が出来るんだ」
 ケンタと直也の奮闘により自己を再生した進也は思い出の車に乗って東京への帰路につき……さすがにドアは取り付けられているもののリアガラスが思い切り砕け散ったままで、官憲の目をかいくぐって無事に東京まで帰り着けるのか大変心配です!
 演出的には、見送るケンタ達を振り返る兄弟の姿をわかりやすく映せたのですが、往路でケンタが色々やらかしている事もあり、進也の運転免許と社会復帰の行方はどっちだ。
 予告時点ではどうなる事かと思いましたが、オヨブー回として満足いく扱いに加え、色々と無茶はしつつもケンタ側のドラマも上手くまとまり、思わぬ秀逸回でした。
 次回――ようやくキロスに再フォーカスで、存在感の上昇を期待したい。